魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第九十一話 俺は不死身だ

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───サンド・ローブオ───
サンド・ローブオはサンドの街の領主である。評判としては悪くなく、サンドの街を発展させようと手を尽くしていた。サンドの街は昔から経済状況や立地が悪く、何度も解体の危機にあっていた。ローブオがサンドを納めている時にもそれは変わらず、色々と手を尽くしていたようだが、状況が良くなることは無かった。だが、1年前に誰かにあってから、人が変わったかのように国家転覆を企み、準備を進めるようになった。誰にあったかはローブオ以外知ることはない。─────Maoupediaより抜粋



☆   ☆   ☆   ☆



 国王様の周りにいる兵士たちが少しずつ距離を詰めている。そして、私たちがいる装置がある部屋の入り口にも兵士がいて逃げられない。
 護衛の人たちも苦戦しているみたいだし、絶体絶命だ。


「どうしましょうスイトさん?」
「そりゃ、やる事は一つしかないだろ」


 スイトさんが私の前に出て拳を構える。


「全員ぶっ飛ばす!」


 無茶だとは思うが、それ以外に方法がない事も事実だ。だけど、いくらスイトさんが強くても、この強さの人を大勢相手にするのは無理だ。
 私がスイトさんにサポートを頼んだ理由は2つある。1つは高い記憶力を持ってるから。もう1つは戦闘力が高いからだ。
 敵の屋敷に行くのだから戦闘になることは想定していた。だから、いざという時に国王を守れる人が欲しかったのだ。しかし、状況は私が思っていたよりも深刻だ。護衛の人たちが歯が立たない程、敵の戦力が高いとは思わなかった。
 そんな私の考えを知ってか知らずかスイトさんは拳を握りしめてやる気満々みたいだ。


「さあ!どこからでもかかってこい!」
「うおおおお!」


 兵士の1人が剣を振り上げてスイトさんに襲い掛かる。スイトさんは向かってくる剣を拳で反らすとそのまま顔に回し蹴りをした。スイトさんの回し蹴りをまともに受けた兵士は床へと叩きつけられて、白目を向きながら意識を失った。


「なるほど、こいつらステータスは高いが戦い方は素人に毛が生えた程度だ。屋敷の仕掛けを解けば戦力が大幅に落ちるぜ」
「無駄ですよ。この屋敷には兵士のステータスを大幅に上げる装置が仕込まれていますが、装置は固い壁の中にあります。兵士達の攻撃をしのぎつつ、装置を破壊することが出来ますか?」


 パンケが勝ち誇ったように言う。そんなのどうしようもないじゃない!


「……ラビ、お前だけは俺が逃がす。王都に戻ったら反乱が起きていることをギルドの連中に知らせてくれ」
「そんな!それじゃスイトさんが!」
「このままじゃ全滅は目に見えている。お前が逃げることが状況の打破に繋がるんだ」
「スイトさん……」


 私は自分の目に涙が溜まっていくのを感じる。このままだとスイトさんは死んでしまうだろう。だけど自分にはどうすることも出来ない。何もできない自分が情けなくて涙があふれ出す。
 そんな私の様子に気が付いたスイトさんは私にいつも通りの笑顔を向ける。


「心配するな、俺は死なない。必ず検察室に帰るぞ」
「……はい」


 スイトさんの覚悟を感じて私も覚悟を決める。私が早く戻ってきて、皆を助ける。助かるにはこれしかない。


「いいか、3つ数えたら外へと走るんだ。分かったな?」


 スイトさんの言葉に私は小さく頷く。
 落ち着け、私なら出来る。私にしかできない。私がみんなを助けるんだ。
 呼吸を整えて頭の中で3つ数える。1つ……2つ……3つ……今だ!


「行け!」


 スイトさんが兵士たちに殴りかかる。それを見た私は部屋の出口に向かって思いっきり走り出そうとする。しかし、


「……え?足が動かない?」


 足が床に縫い付けられたように動かない。極度のプレッシャーによるもの?いや、昨日のチイラとあった時のようなプレッシャーは感じられない。となると、これは誰かのスキルによるものという事になる。
 スイトさんの方へ視線を向けると体が動かせないようで、苦々しい表情をしていた。
 スキルという事は十中八九、敵の攻撃だろう。だとしたら、私たちの考えは読まれていたことになる。
 唯一の突破口も潰されて状況は絶望的。けど、まだ諦めたらダメだ。何か方法が無いか考えないと……あれ?
 考える為に周りを見渡すと、スイトさんだけじゃなくて、周りの兵士も同じように動け無くなっていた。
 追い詰めているのに味方ごと動けなくするなんて考えられないし、もしかしてこれって……


『おーい、聞こえておるかー?』
「!?」


 私が考えを巡らせていると、頭の中にフランさんの声が流れてきた。念話?だけど今はスキル使えない筈じゃ?それよりもフランさんはどこに?
 色々と聞きたいことが頭を駆け巡るが、声が全くでない。スイトさんの方へ視線を向けると、目を丸くして驚いていた。スイトさんにも聞こえているみたいだ。


『聞きたいことは色々とあるじゃろうが、今の状況だけ簡単に説明する。まず、念話はラビとスイトにのみ送っておる。また、お主らの動きを止めておるのはわしじゃ。理由は後で説明するが、今はお主らに動かれては困る。悪いようにはせんからそこでおとなしくしておれ』


 言いたいことだけ言うと、フランさんからの念話は途絶えてしまった。相変わらず、体も動かず声も出ない。だが、兵士たちも動かないみたいだし危険はないみたい。
 そうだ、国王は!
 国王へと視線を向けると先ほどと同じように兵士たちに追い詰められていた。
 護衛の人は国王を守ろうと槍を構えて兵士たちを威嚇している。そんな中、国王は凛とした表情でローブオを見据えている。


「……なぜこのような事を?」
「決まっている。この国を正しく導くためだ」


 ローブオをの答えを聞いた国王は眉をひそめる。意外だ、てっきり自分は国王になるために反乱したのかと思っていた。


「貴様がこの国を正しく導けるとでも?」
「私ではない。あの方が導くのだ」


 あの方?だれだろう?


「あの方?私よりも国王にふさわしい者がいるとでも?」
「貴様は所詮は人間に過ぎない。あの方は人間を超越した存在なのだ!」


 今まで無表情だったローブオが目を見開きながら力説する。正直、気持ち悪い。


「そのような人物がいるとでも?」
「貴様なんてあの方と比べたらちっぽけだ!なぜならばあの方は!」


 ローブオは両手を天に掲げると高らかに言い放つ。


「神そのものなのだから!」


 一瞬、ローブオが何を言っているのか分からなかった。神様そのもの?今は神がいるかも疑問視されているのに、神そのものがこの世界に来たというのだろうか?到底信じられない。


「そいつは今どこに?」
「そんな事、私が知ることではない!私がこの国を征服した時に、あの方は姿を見せてくれるのだからな!」


 言ってることがめちゃくちゃだ。神と名乗る怪しい奴の為にこんな危険を冒して、正気とは思えない。何かに操られていると言われた方がしっくりくる。


「さて、冥土の土産はここまでだ。そろそろ死んでもらおう。行け!」


 ローブオの号令で兵士たちが一斉に国王へと襲い掛かる。やられる!そう思った瞬間、


「やあ!」


 可愛らしい声と共に小さな女の子が飛び出す。女の子は兵士の懐に潜り込むと、次々と拳を叩き込んで気絶させていった。見た目とは違い力強い攻撃だ。


「弓矢部隊、前へ」


 それを見たローブオは冷静に弓矢の部隊を前に出した。普通だったら狼狽えると思うんだけど、かなり冷静だ。
 近距離のみと分析して遠距離から一方的に攻撃するつもりなんだろう。小さい子にも容赦がない。


「撃て!」


 一斉に矢が放たれ何十本という矢が女の子へと降り注ぐ。誰が見ても助からない量の矢だ。このままだと女の子は死んでしまうだろう。だが、女の子は力強く矢の方へと視線を向ける。


「あの降り方だと……うん、大丈夫」


 女の子は軽く頷くと弓部隊の方へと駆け出していく。そして、女の子へと無数の矢が降り注ぐ。


「……くっ」


 女の子は降り注ぐ矢をかわしながら弓部隊へと接近する。


「な!?」


 その様子を見たローブオの表情が初めて変わる。確かにこの数の矢を避けながら接近してくるなんて恐怖でしかないだろう。弓部隊は女の子に向かって再度弓を構える。
 女の子は何発かカスリながらも恐ろしい速度で接近しながら懐から何かを取り出した。あれは……拳銃?


「やあ!」
「ぐわっ!」


 女の子は弓部隊に向かって発砲して弓を落とす。そして、接近しきったところで全員を倒しきる。
 国王はその様子を見ながら髭を撫でる。


「まさか、私がなんの対策もせずに敵の本拠地に乗り込むと思っていたのか?」
「バカな!なぜスキルが使えないはずなのにこれだけの力を!?」


 狼狽えるローブオに女の子が胸を張って答える。


「ふふん、スキルは使えなくても魔装は使えるんだよ。すごいでしょ?」
「いくら魔装が使えてもこの量の兵士を倒すなど……」
「そういう者を連れてきているのだ」


 どこを探したらこんなに子を連れてこられるのだろうか。でも、これで形成は逆転した。まだ兵士たちはいるがあの子に勝てる兵士はいないだろう。
 汗を滝のように流しながら少しずつ下がるローブオ。


「ローブオ様、ここはお逃げください」
「うむ、ここで捕まる訳にはいかないからな。ここは任せた」


 ローブオは身を翻して一目散に駆け出した。


「待て!」


 護衛の人たちがローブオを追いかける。しかし、兵士たちが邪魔をして中々追う事ができない。


「まてぇー」


 女の子も追おうとするが、兵士たちを倒すのに戸惑って追うことが出来ない。


「国王、いかがされますか?」
「何人かを追手として差し向けよ。今から王都へ帰還する」
「は!」


 護衛の人たちは兵士たちを倒しながらローブオの後を追う。
 指示をした国王は魔方陣の間へと向かい、周りに人の姿がなくなった。


「……終わったんですか?」
「だな。これでローブオは有罪。こっちの勝ちだ」
「良かった~」


 安堵感に包まれた私は思わず床にへたり込んだ。


「ここは一応敵の本拠地なんだし、さっさと帰るぞ」
「腰が抜けて動けません」
「しょうがねえな。ほら、おぶってやるよ」
「ありがとうございます」


 スイトさんにおぶられながら王都へと帰る。
 こうして、私の初めての裁判は終わったのだった。



☆   ☆   ☆   ☆


「……ここまでくれば安心だな。しかし、これで私の作戦は全て潰されてしまった。これも全てキムラ・ホウリのせいだ。全く持って忌々しい……」
「忌々しいのはこっちじゃ。お主のせいでどれだけ苦労したと思っとるんじゃ」
「!?、誰だ!」
「お主を追っている者じゃよ」
「ここは私しか知らない通路だ。どうやってここの存在を知った?」
「わしにとっては隠し通路を見つけるなど、子供用の間違い探しを解くくらい簡単な事じゃ」
「くぅ……ここまでか」
「その通りじゃ。逃げられると思わぬ事じゃな」
「逃げる?そんな事はしない。だが、捕まる訳にもいかない」
「どういう事じゃ?」
「こういうことだ。……ぐわぁ!」
「おい!どうした!」
「………………」
「死んでおる……。毒で自害したか。この様子だと、助けることは出来ぬか。なんとも後味が悪いのう」
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