魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第九十六話 やってみせろよホウリィー!

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 俺達はワープ可能区間を抜け魔国へと入る。目的地である魔国の王都は、本来であればワープ可能地区から3日かかる距離にある。また、国境には検問所があり、本来はそこで手続きをしないと国の行き来は出来ない。
 だが、フランがかなり急いでいるという事情があり、今回は特別に王都の傍にある森までワープしてきた。
 フラン曰く、「わしが許す。わしが法じゃ」らしい。事実、魔国の王は法の反面もあるらしく、適用の範囲は人国よりも広い。半年も自分の国を留守するのはどうかと思うがな。
 ワープしてから1時間、森の奥に外壁が見えてきた。 


「ついたぞ。あれが魔国の王都じゃ」
「あれが魔国の外壁ですか。人国の外壁よりも黒いですね。何か意味があるんですか?」
「かっこいいじゃろ?」
「特に意味はないんですね」


 外壁の門には人国と同じように行列が出来ていた。並んでいるのは魔族が多いが、ちらほらと人族の姿も見える。
 その様子が珍しいのかノエルが興味深そうに眺めている。


「わあぁ、色んな人がいっぱいいるね!あっちの人は角があるし、こっちの人はネコミミと尻尾が付いてるよ。ラッカお姉ちゃんみたい!」
「魔族は色んな部族がいるからのう。ここにいる以外の部族もたくさんいるぞ」
「どのくらいの部族がいるの?」
「細かいのを含めれば100はいるのう」
「凄い!」


 フランの説明にノエルが興奮したように声を上げる。
 元が日本人である人族とは違い、魔族は初めからこの世界にいる種族を指す。だから、多種多様な種族がおり、領地も種族事に分けている。色々と問題も絶えないようだが、文化も色々あって楽しいらしい。


「さて、わしらも街の中に入るとするか」
「あの列に並ぶのか?だとしたら街に入るのは夕方になりそうだな」
「そんな事せんでも街には入れる。付いてこい」


 そう言うと、フランは列とは反対の方向へと歩いていく。
 歩く事数分、フランは何もない壁で立ち止まる。


「付いたぞ」
「何もないではないか。ここからどうやって入る?」
「まあ見とれ」


 フランはクレジットカード大のカードを取り出すと壁の隙間差し込んだ。
 瞬間、ガチャガチャという機械音と共に壁が下がり始めた。完全に壁が下がると、フランが得意げに胸を張った。


「どうじゃ、政府関係者でないと使えない秘密の通路じゃ。凄いじゃろ」
「秘密基地みたいで凄いです!」
「フランお姉ちゃんかっこいい!」
「ふふん、そうじゃろ?さあ行くぞ」


 ドヤ顔のフランに先行されながら街の中へと入る。
 壁を通り抜けると、武器を持った憲兵が待ち構えていた。憲兵はフランを見ると膝をついて頭を下げる。


「お帰りなさいませフラン様。大臣がお待ちでございます」
「そうか……」
「すぐにお城に向かった方が良いでしょう」
「そうさせてもらおう」


 憲兵の言葉にフランの顔色が一気に悪くなる。さっきまでドヤ顔していた奴とは思えないな。
 死にそうな表情でフランはこちらを見る。


「すまぬ、本当は街を見て回りながら城に向かいたかったのだが、そうもいかぬみたいじゃ」
「フランは仕事があるのだから仕方ない」
「早く城に向かいましょう」
「そうじゃな……」


 苦虫を噛み潰したような顔をしながらフランが頷く。どれだけ城に行きたくないんだ。


「城に行きたくない訳ではない。大臣に会いたくないだけじゃ」
「似たような物だろ」
「そうかもしれぬ」


 いつもみたいな元気がなく、言葉のキレも無い。本当に大臣に会いたくないんだろうな。


「城まではどうやっていくんだ?」
「地下に直通のトロッコがある。そこから短時間で向かおう」
「トロッコ!ノエル、トロッコ乗りたい!」
「僕も!早く行きましょう!」
「こっちじゃ、付いてこい」


 フランが俺達を先導して飾り気のない四角い建物の中に入る。建物の中には地下まで続く階段があるだけだった。


「暗いですね。そこが見えないです」
「割と深くに作っておるからのう。明かりは点けるが気を付けて進むんじゃぞ」
「はーい」


 フランが皆の周りに光球を出現させ、暗い階段を下りていく。俺達も足を踏み外さないように気を付けながら階段を下りる。
 1分程下り続けると、階段が終わり地面が表れた。地面に立ったフランは壁にあるスイッチを押す。すると、魔道具が作動し地下を明るく照らし出した。


「わあ!これがトロッコ!」


 トロッコを見たノエルが飛び上がりながらはしゃぎ始める。
 トロッコは坑道にあるような物よりも1周り大きく、5人であれば優々と乗ることが出来るだろう。線路の先は視認できない程続いており、長い距離に渡っている事を感じさせる。


「僕がいちばーん!」
「あ!ロワお兄ちゃんズルい!」


 ロワとノエルが競うようにトロッコに乗り込む。俺達もトロッコに乗り込みフランが先頭に乗り込む。


「出発するぞ。しっかり捕まっておくんじゃ」
「はーい」


 フランは先頭にある魔石を持ちMPを込め始める。
 トロッコは徐々に動き始め、速さを増していく。


「うおー!はやーい!」
「とても速いですね!どこまで早くできるんですか!?」
「音速は越えられる。危険じゃから、やらぬがな」


 そう言ってる間にもトロッコはどんどん早くなっていく。今は時速40㎞くらいか。これ以上に早くなるのかよ。
 移動する事数分、トロッコは徐々に速度を落としていき、完全に止まった。


「付いたぞ」
「わーい!」


 ノエルがトロッコから飛び降りる。ロワもトロッコから降りながら大きく息を吐いた。


「かなり早かったですね。これ、一般に開放して通行料を取れば稼げるんじゃないですか?」
「この人数をこの速度で運べるのフラン以外にいると思うか?」
「それもそうですね」


 城へのアクセスに特化しているし、需要が見込めない。なにより、緊急用と思われるここを一般に開放したらフラン達が使えなくなる。
 地下鉄みたいに街の色々なところを結べれば、需要が凄いと思うがな。


「この階段を上がれば城に付くのか?」
「そうじゃな。城の傍の小屋に続いておる」


 フランは明かりを消すと再び光球を出現させる。フランに続き来た時とは逆に階段を上る。
 数分で地上にたどり着き外の扉を開ける。


「ここが魔国の城じゃ」
「おお、人国のお城に負けず劣らずの大きさですね」


 周りの建物よりも何十倍も大きい城がそこにはあった。例に漏れず城壁の外には兵士が多く居て、厳重な警備だという事が分かる。
 そんな警備が厳重な城へフランは当たり前のように歩を進める。門番はフランの姿を見ると頭を下げる。


「おーい、帰ったぞ」
「フラン様、帰りなさいませ。今門を開けますね。そちらの方々はお客様ですか?」
「そうじゃ。旅で色々と世話になってのう。そういえば大臣の様子はどうじゃ?」
「笑顔でしたよ、不自然な程に」
「そうか……」


 門番の言葉にフランが頭を抱える。どうやら、大臣はかなり不機嫌みたいだな。


「今まで実感がありませんでしたけど、やっぱりフランさんって偉い人だったんですね」
「お城に行くんだったらおめかしした方が良かったかな?」
「必要ないだろ。フランが気にするとは思わないしな」


 そうこう言っているうちに門が完全に開き切る。すると、その中にメガネで浅黒い肌の男が待っていた。フランはその男を見ると目を見張って驚く。


「な、なぜお主がここにいる?」
「大臣として王を迎えるのは当然です。お帰りなさいませ、魔王」
「た、ただいまメリゼ」


 フランは引きつった顔のままメリゼを手を向けて話始める


「こやつはわしの補佐をしてくれておる大臣のメリゼ・シャーべじゃ」
「スターダストの皆さま初めまして、魔王の右腕のメリゼ・シャーべでございます。種族はバンパイアでございます。以後お見知りおきを」


 恭しく頭を下げるメリゼに俺達も頭を下げる。


「私はスターダストのリーダーをしています、キムラ・ホウリです。よろしくお願いします」
「僕はロワ・タタンです。弓使いをしています」
「私はミエル・クランです。これからよろしくお願いします」
「ノエルはノエル・アロスって言います。よろしくお願いします」
「ん?アロス?」


 ノエルの言葉にメリゼが首を傾げる。


「ノエル、もう偽名使わなくていいんだぞ?」
「偽名?」


 ノエルは俺の言ってる意味が分からないのか、不思議そうな顔をする。


「もしかして、自分の本名忘れたのか?」
「本名?……あー!そうだった!ノエルはノエル・カタラーナだった!」
「本当に忘れてたのかよ」


 ノエル・アロスの期間が長かったから無理もないのか?
 俺たちのやり取りを冷ややかな目で見ている。ちょっと騒ぎ過ぎたか?


「騒いでしまってすみません、メリゼさん」
「いえ、構いません。さて魔王、早速ですが執務室に向かいましょう。仕事が溜まっております」
「ちょ、ちょっと待て!まずは皆を部屋に案内する!執務室に行くのはそれからじゃ!」
「それはメイドや執事に任せればいいでございましょう?」
「見知ったわしが案内する方がよいじゃろ!それに言葉も分からぬ者もおるしな!」
「ですが……」
「頼む!30分だけでよい!」
「……分かりました。30分だけですよ?」
「助かる!」


 フランの必死な懇願にメリゼが折れる。仕事したくないって気持ちがまる分かりだ。


「では、わしが部屋に案内しよう。皆の者、付いてくるがよい」
「へいへい、分かったから走るな」


 意気揚々と階段を駆け上がるフランに案内され、俺たちは部屋へと向かった。



☆   ☆   ☆   ☆



「お主ら男はこの部屋を使うがよい」
「わかりました。ありがとうございます」


 案内された部屋は高級ホテル並みに豪華な部屋だった。ベッドはふかふかでシーツの手触りは心地よく、ソファーは座り心地がいい。あまり使わない部屋だとは思うが掃除も行き届いており、埃1つ見当たらない。


「いやー、こんな部屋に1ヶ月も泊まれるなんてラッキーですね」
「じゃろ?わしに感謝するんじゃな」
「持つべきものは魔王って感じだな」
「ふふふ、そうじゃろ?」


 俺たちが満足していると、フランがモジモジしながら俺を見てくる。


「そうしたんですかフランさん?トイレですか?」
「お前な、そう言うのは思ってても言わない方がいいぞ?」


 ロワの的外れな言葉にも反応せず、指を絡ませたまま黙っている。
 このままだとフランは黙ったままだろう。なんとかするか。


「ロワ、ちょっとフランと話がある。ミエル達の部屋に行っててもらえないか?」
「え?なんの話ですか?」
「秘密の話だ」
「わかりました。失礼します」


 部屋からロワを追い出してフランと二人っきりになる。


「で、なんの用だ?何か話したい事があるんだろ?」
「そんなに分かりやすかったか?」
「ロワは気付かなかったみたいだけどな。で?なんだ?」


 俺の言葉にフランが顔をほんのり赤くして口を紡ぐ。二人っきりの密室、恥ずかしがっている女の子、この状況で言われる事は1つだろう。
 黙りこくっていたフランだったが意を決したように口を開いた。


「ホウリ」
「なんだ?」
「仕事を手伝ってください!!!」
「断る」


 フランの言葉を一蹴し部屋から出ようとすると、袖が引っ張られ移動を妨害される。


「頼む!お主が手伝ってくれるのであれば半年の仕事が1ヶ月で終わるんじゃ!皆で楽しく旅をするためにも頼む!」
「自分の仕事は自分でやれ」
「ノエルの事で色々と手を貸してやったじゃろ!?頼む!」
「ノエルを救うことはお前の望みでもあっただろ?そこで恩を売るのはどうなんだ?」
「お願いじゃ、お主の望むものならば何でもやるから!何なら魔国の半分をお主にやろう!」
「そのセリフは王としてどうなんだ?」


 魔王としては正しい気がするが、いち国王としては問題発言だろ。
 とはいえ、フランがいなかったらノエルを救えていたかは分からないし、フランが長期間身動きが取れないのは俺も困る。ここは譲歩してやるか。


「分かったよ」
「仕事を手伝ってくれるのか!?」
「それは断る」
「のおおおおおお!」


 絶望しきったフランに俺は言葉を続ける。


「ただし、これからの仕事は減らしてやる」
「は?これからの仕事?どういう事じゃ?」
「政府全体の仕事の無駄を削っていく。ついでに税金の無駄遣いに関しても改善案を出しておく」
「それは助かるが、どのくらい仕事が減るんじゃ?」
「細かい数字はやってみないと分からないが、今までの経験からして5割は減る」
「5割も!?」
「やってみなと分からないから期待はするなよ。あと、フランから政府関係者には話を通しておいてくれ。その方がやりやすい」
「分かった。お主が口出し出来るようにわしがなんとかしよう」
「そうと決まれば早速行動だ。フランは仕事頑張れよ」
「……少しでも良いから今の仕事も手伝ってくれぬか?」
「往生際が悪い。観念して仕事してこい」
「はーい……」


 肩を落としながらフランが部屋から出ていく。さて、俺もやるか。
 やる事を頭で整理しながら俺は部屋を出るのだった。
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