魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第九十七話 へぇ、デートかよ

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「そういう訳だから、俺とフランは忙しくなる。しばらくは3人で行動してくれ」


 フランとの話を終えたホウリはそう告げた。フランだけではなくホウリもお仕事することになるとは思わなかった。
 だが、フランの為であれば仕方がない。ここは3人で行動しよう。


「分かりました」
「えー、皆でお出かけ出来ないの?」
「悪いな。やる事が終わるまで待っていてくれ」
「むー、分かった」
「どのくらい掛かる予定だ?」
「ハッキリとは分からないが俺は1ヶ月くらいだな。フランは半年くらいの仕事を片付けているから気合によるな」
「分かった、ホウリが戻るまで2人は私が面倒みよう」
「助かる」


 そういう事で、魔国にいるしばらくの間、私達は3人で行動する事になったのでした。


☆   ☆   ☆   ☆


 3人になった私達はフランに貰ったガイド本を片手に魔国の王都へ繰り出した。


「どこ行きます?」
「どんなところがあるんだ?」
「この近くですと、綺麗な花が咲いている通りやゲームセンターなどがありますね。服屋やレストランもあります」
「ノエル、ゲームセンターに行きたい!」
「だったらそこに行こう」
「わーい!」
「僕が案内しますね。こっちです」

 
 ロワの先導の元でゲームセンターへ向かう。
 魔国の王都も人国と同じように人でいっぱいだった。違いと言えば魔族の割合が高いという所だ。
 街行く魔族をノエルは興味深そうに見ながら言う。


「本当に魔族の人っていろんな種族がいるんだね」
「そうだな、全種族を把握している奴は学者とかしかいないだろう」
「ラッカさんも魔族の獣人族なんですよね?」
「そうだ。獣人族は身体能力が高く、魔法系の適正が低いのが特徴だ」


 魔族は人族でいう職業が無く、種族でスキルの適性が決まる。人族のように自分の意志で適性を決めることが出来ないというデメリットはあるが、種族によっては人族よりも強大な力が手に入ることもある。


「種族が違うことで色々あったみたいだが、今はフランが上手く治めているみたいだな」
「人族との戦争を終わらせたのもフランさんなんでしたっけ?」
「へぇー、フランお姉ちゃんって凄いんだね」


 フランが効いたら飛んで喜びそうだ。仕事で疲れているだろうし、後でフラン本人に直接言ってもらおう。
 そうこうしているうちに目的地であるゲームセンターへ着いた。ここではサバイバルゲームやチャンバラといったゲームを楽しむことが出来る。それぞれのゲームをすることでポイントが手に入り、様々な景品と交換できる。
 また、獲得ポイントでランキングがあり、上位10位に入れば店の中に張り出される。まあ、初心者にランクインは出来ないと思うから気軽に楽しもう。


≪ゲームセンターへようこそ!何名様でしょうか?≫


 店に入ると笑顔の店員が出迎えてきた。当たり前だが、魔語で話してくる。遠征で魔語が話せるようになって良かったと心の底から思う。
 店員はデフォルメされたバンパイアがプリントされたエプロンを着ており、笑顔でお辞儀してくる。


≪大人2人と子供1人です≫
≪かしこまりました、入場料として5000Gいただきます≫


 店員に5000G払いチケットとパンフレット、カードを3枚受け取る。


≪このカードにゲームのポイントが記録されます。また、遊んだゲームの履歴も記録されますので無くさないようにしてくださいね≫
≪わかりました。ありがとうございます≫
≪いってらっしゃいませー≫


 笑顔の店員に見送られながら私たちはゲームセンターへ入る。中は思ったよりも広く、各ゲームのエリアが複数ある。おかげで、1つの回転率がいいのか、あまり待たずにゲームが出来そうだ。
 私達は貰ったパンフレットを広げてゲームの種類を確認する。


「まずはどこに行くか」
「サバイバルゲームなんてどうですか?丁度3人チーム戦がありますよ」
「ノエル、サバイバルゲームが良い!」
「ではサバイバルゲームに行こう」


 サバイバルゲームのエリアに向かうと後ろに弓を背負ったバンパイアのキャラクターの着ぐるみが出迎えてきた。
 着ぐるみは私たちを見るとジャンプしながら話し始めた。


≪ようこそ!僕の名前は『ヌガー』!ここはサバイバルゲームエリアだよ!サバイバルゲームは初めてかな?≫
≪初めてだ≫
≪だったらルール説明をするね≫


 少し話が長かったので、サバイバルゲームのルールを箇条書きにする。

・サバイバルゲームは弓や銃で相手を攻撃して当たったら1ポイント入るゲーム。時間内に相手よりも多くポイントを獲得したら勝ち。ポイントは壁に表示されているから、そこで確認出来る
・スキルは使っても良いが事前に使用スキルの申請が必要。危険性があると判断されたスキル以外であれば1人2つまで使用可能
・武器は弓、銃、長剣、ナイフの4つ。複数もっても良いが、持ちすぎると動きにくくなるというデメリットがある
・武器とは別に盾も用意されており、チーム戦の場合は1人のみ使用可能。
・意図的な直接攻撃や魔道具の持ち込みは禁止


≪以上が大まかなルールだよ≫
≪なるほど、大体わかった≫
≪それは良かった。個人戦と団体戦があるけど、どっちで遊ぶ?≫
≪団体戦で頼む≫
≪了解!フリーマッチとランクマッチがあるけど、どっちにする?≫
≪ねーねーヌガーさん、2つはどう違うの?≫
≪お嬢ちゃんは魔語が上手だね。人族かな?≫
≪ふふん、凄いでしょ?人族だけどいっぱい勉強したんだ≫
≪それは凄い!≫


 ノエルとヌガーが楽しそうに話しているのをロワが首を傾げながら眺めている。


「ミエルさん、何話しているか通訳してもらっていいですか?」
「ああ、すまない。ロワへの配慮が足りなかった」
「いえ、大丈夫です」


 ロワへ通訳しながらヌガーから細かい仕様を聞く。
 まず、フリーマッチとランクマッチの違いだが、ランクマッチは遊んだ時の戦績によって相手が決まるマッチでフリーマッチは戦績に関係なく相手が決まるマッチだ。


≪初めての人はランクマッチがおすすめだよ!≫
「だそうだ。どうする?」
「フリーマッチがいい!」
「いいのか?強い人と当たるかもしれないぞ?」
「僕もフリーマッチが良いです。やるなら強い人とやりたいです」


 ロワとノエルが気合の入った目で力説する。2人がそう言うのであればいいか。


≪フリーマッチで頼む≫
≪フリーマッチ!?≫


 私の言葉にヌガーが大げさに驚く。おすすめとは違うものになったが、それにしても驚き過ぎではないか?
 私が困惑していると、ヌガーが私の耳元まで近づいてきた。


≪すみません、あまりこういう事はお客様に言いたくないんですけど、今のフリーマッチは初心者の方におすすめしてないんですよ≫
≪なぜだ?≫
≪あまりマナーが良くないお客様が対戦相手になる可能性がありまして。その方々の性でフリーマッチはあまり人がいない状況なんですよ≫
≪具体的には何をしてくる?≫
≪暴言や事故を装った直接攻撃、3つ以上のスキルの使用などです≫
≪そんなにひどいのであれば出入りを禁止すればどうだ?≫
≪チームの1人がこの施設のオーナーの息子でして。皆あまり強く言えないのです≫


 なるほど、だからフリーマッチを希望する者を止めているのか。


≪小さな子供さんもいますし、彼氏さんが怪我するのは嫌でしょう?≫
≪そそそんな!彼氏だなんて!私たちはただのパーティーメンバーだからな!≫
「ミエルさん?どうかしましたか?」
「ななななな何でもない!」


 幸いにも魔語で話していたおかげでロワには会話は聞かれていないようだ。
 動揺しきった私を見たヌガーは呆れた様子で話す。


≪そういう事なのでランクマッチにしていただけませんでしょうか?≫
≪理由は大体わかった≫
≪だったら……≫
≪だが断る≫
≪な!?≫


 私の言葉にヌガーが焦ったように話す。


≪話聞いてましたか!?≫
≪聞いていた。権力を振りかざしている奴を見ると虫唾が走ってな。叩き潰したくなった≫


 私の頭の中にカロンの顔が浮かぶ。今思い出してもイラつく。あんな奴が好き勝手している思うと私もやる気になるというものだ。


≪……どうなっても知りませんよ?≫
≪分かっているさ≫


 話がまとまり、私たちはフリーマッチに案内された。


☆   ☆   ☆   ☆


 全員が思い思いの武器を取ってサバイバルゲームのステージへ移動する。
 武器はロワが弓、ノエルが銃とナイフ、私が剣と盾を選択した。こうしていると、いつも使っている武器と同じだな。
 お試しで銃と弓は使ってみたが、本来の銃や弓よりも射程は短めだった。威力が高すぎると危険だし仕方のない事だが、いつも使っているものよりも勝手が違うのはやりにくいだろう。
 ……と思っていたのだが、ノエルもロワもいつもと変わらない様子で的に中てていた。この2人はやっぱり色々とおかしい。


「さて、2人ともフィールドの形は頭に入っているな?」
「はい、バッチリです」
「ノエルも覚えたよ」


 2人とも自信ありげに頷く。この2人なら任せてもよさそうだ。
 フィールドは私の2倍くらいの高さの障害物が色んな形で置かれている。たやすく登れる高さではないし射撃から身を隠すのが主な使い方だろう。


「いいか、私たちの目的は相手に勝つ事じゃない。相手を完膚なきに叩きのめす事だ」
「ですが、相手は汚い手を使ってくると聞きました。勝てるのでしょうか?」
「ホウリに比べれば奴らの汚さなど、買ったばかりの雑巾みたいなものだ。私たちが負ける道理はない」
「確かに」


 ロワが納得したように頷く。相手の手の内はある程度分かっている。
 さあ、戦いを始めよう。


☆   ☆   ☆   ☆



≪ああー、フリーマッチに来る奴減ったなー≫
≪俺たちが強すぎて誰も勝てないからな。しょうがねえよ≫


 スタッフの控室でゴロゴロしながらレソンと話していると、ガラシが唐突に控室へ入って来た。
 

≪どうした?対戦相手でも来たのか?≫
≪そうなんだよアオト!≫
≪マジか!≫


 ランクマッチに行けば強い奴らに当たるから勝てないからフリーマッチで遊んでいたが、最近はめっきり対戦相手が減っちまった。
 余程腕に自信があるのか知らないが、俺たちがこのゲームの厳しさって奴を教えてやるぜ。


≪対戦相手はどんな奴だ?≫
≪男と女とガキが1人ずつだ≫
≪ガキがいるのか。こりゃ楽勝だな≫
≪おいおい、ガキに怪我させるなよ?≫
≪分かってるって≫


 急いで武器を持ってフィールドに向かう。久々のカモだ、せいぜい楽しませてもらうとしよう。
 フィールドに付くと既に相手が並んで待っていた。ガラシの言う通り、男と女とガキが1人ずつか。男はヒョロガリだしガキは戦力にならねえ。女は身のこなしからして少しはやりそうだが、3人で攻めればたまらない筈だ。こりゃ、楽しい戦いになりそうだ。


≪1分後に開始します。それぞれのチームは位置についてください≫


 アナウンスが鳴り、俺たちは障害物に身を隠しながら開始の合図を待つ。


≪さっきの女、良い女だったな。試合が終わったら誘ってみるか?≫
≪いいな、俺たちの強さにメロメロになるかもな≫


 そんな事を言っていると、試合開始のブザーがなる。さて、軽く相手してやりますか。


≪いくぜ!レソン!ガラシ!……へ?≫


 レソンとガラシに声をかけ意気揚々と飛び出そうとすると、既に2人の肩に矢が命中していた。壁に表示されている得点表を見ると、相手に2ポイントが入っている。
 バカな!?射線がここから射線が通る所なんて何処にもない筈だ!
 俺が周りをしきりに見渡していると、障害物の陰から矢が軌道を変えながら飛んできた。持っている盾を構えることも出来ず腹に矢を受けてしまう。


≪あの男のスキルか!?≫
≪これじゃ障害物が意味ないじゃないか!?≫
≪怯むな!こっちの矢の数の方が多い!今は防御だけに専念して、矢が尽きたら一気に畳みかけるぞ!≫


 相手は矢が30本しか渡されていないのに対し、こちらの用意している矢は100本。全部当たってもそれ以上に当てれば問題ない!
 曲がる矢にはビビったが、こちらの動き全部見えている訳じゃない。動き回ってかわせばいずれ矢は尽きる筈だ。
 俺の読み通り、矢は俺たちを狙っている訳じゃなく、居そうな所へ飛ばしている感じだ。これなら見ていれば簡単に回避できる。


≪今だ!突撃!≫


 丁度30本目が飛んできた後、俺達はすぐさま障害物から飛び出す。
 瞬間、2


≪な!?≫


 訳が分からず矢が飛んできた方向へ目をやると、さっきの男が俺達に向かって矢を構えていた。


≪どういうことだ!?相手の矢はもうない筈だろ!?なんでまだ矢があるんだよ!?≫
≪そんな事俺が知るか!≫


 なおも撃たれ続ける矢を盾で受けながら考えを巡らせる。相手にどれだけの矢があるかは知らないが、このままだとジリ貧だ。だとしたら、多少の被弾は覚悟して突っ込むのが最善だ。


≪全員突撃!多少食らっても構わないから前に出ろ!≫
≪了解!≫


 俺たちは剣と銃を構えて男の元へ走る。本来であれば銃は手軽な反面、10発しか使えない武器だが、こちらには予備の弾が100発ある。いくら弓の腕があっても銃の連射にはかなわないだろ!
 矢が数発当たったが、弾丸をぶち込んじまえば関係ねえ!


≪くらえ!≫


 俺は男に向かって弾丸を発射しようとした。
 瞬間、横から出てきた盾に押されて、弾丸が明後日の方向へ発射される。そこには盾と剣を構えた女の姿があった。


「ロワに気を取られ過ぎたな」


 俺はそのまま剣で切られ、女の後ろから飛んできた矢にも当たってしまう。
 ナイフしか持っていない現状、剣相手は分が悪い。だが、距離を取ってしまえば一方的に矢で攻撃される。


≪レソン!ガラシ!援護しろ!≫
≪それどころじゃねえよ!≫


 何がそれどころじゃねえんだ。こっちは2人を相手にしてるんだぞ?
 そう思って2人の方へ目を向けると、そこには高速で移動しているガキにレソンとガラシが翻弄されている姿があった。
 レソンとガラシも銃で必死に狙っているが、早すぎて狙いが付かず全く当たっていない。対するガキも銃を使っているが的確にレソンとガラシに命中させている。しかも、10発以上撃っているにも関わらず、弾丸が尽きる気配がない。


≪このガキが!調子に乗るなよ!≫


 レソンが向かってくるガキに合わせて蹴りを繰り出す。そこには控室でガキにケガさせないようにしなくちゃな、と言っていたレソンの姿は無かった。
 どんなに早くてもガキはガキ。大人に蹴られてひとたまりもない筈だ。そう思った瞬間、


≪ぐあっ!≫


 蹴りを放った足がガキに当たった瞬間、ボキリという音と共に足が真ん中から折れ曲がった。


≪ぐあああああ!≫
≪あ!ごめんなさい!≫


 あまりの痛さに足を抑えるレソンに向かってガキが手を伸ばす。すると、無残にも折れ曲がっていた足が瞬く間に回復し、折れる前と同じ状態に戻っていた。


≪よかった元通りに治ったね。それじゃ、えい!≫


 ガキがすれ違いざまにレソンをナイフで切り付け、ガラシを銃で狙撃する。


≪なんなんだこいつら!≫
≪よそ見している場合か?≫


 俺が2人の方を見ていると、背後から女が切りかかって来た。女の迫力に斬撃を受けた俺は尻餅をついてしまう。
 女は俺の元へゆっくりと歩いてくると、首に剣を突き出しながら口を開いた。


「立て、まだ試合は終わっていない」
≪ひいいいいい!≫


 この時俺は察した。俺たちは敵に回してはいけない奴らを敵に回したのだと。
 そしてこの日、サバイバルゲーム初の586対0という試合結果が出たのだった。
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