魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第九十八話 その答えはデュエルの中で見つけるしかない

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「完全にやり過ぎた……」


 サバイバルゲーム終了後、私はベンチで頭を抱えていた。
 頭に血が上っていたとはいえ、相手をボコボコにし過ぎた。流石に相手を完封するのはやりすぎだったろう。心なしか、周りの客の視線も私達に向いている気がする。


「はぁ……」
「元気出してください、ミエルさん」


 ロワがジュースを差し出してくる。私は笑顔を作りながらジュースを受けとる。


「ありがとうロワ」
「どういたしまして」


 ロワとノエルは私の隣に座ってジュースを飲み始める。
 私もストローでジュースを吸うが心は晴れない。途中から、明らかに敵の戦意は喪失していたしやり過ぎだったのではないか?


「あの方々が今までやってきた事も大概ですし気にしなくてよいのでは?お店の方も感謝していましたし、ミエルさんが気にすることじゃないですよ」
「そんな事よりももっと遊ぼうよ」
「……そうだな」


 いつまでもこんな事で気を落としていてはいけない。気持ちを切り替えてこの時を楽しもう。


「さて、次はどこで遊ぶ?」
「ここで自転車に乗れるみたいですよ。皆でレースしましょうよ!」
「それいい!やろうやろう!」
「分かった、次は自転車レースだな」


 こうして、私たちは日が暮れるまで目一杯ゲームセンターで遊んだのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


「さて、そろそろ帰る時間だな」
「えー、もっと遊びたい!」


 私の言葉にノエルが駄々をこね始める。


「ダメだ、もうすぐ夕飯の時間だから帰らないと」
「やだー!もっと遊ぶ!」


 私の袖を取って駄々をこねるノエル。だが、今から城に向かわないと帰り道が暗くなってしまう。分かりやすい道だとはいえ、なるべく明るいうちに帰りたいし、夕食の時間も近い。
 どうやって駄々をこねるノエルを説得するかと頭を悩ませていると、ロワが座り込んでノエルをと視線を合わせた。


「ノエルちゃん、ミエルさんを困らせちゃダメだよ。ご飯の時間も近いし、そろそろ帰ろ?」
「でもー」
「時間はいっぱいあるし、楽しかったらまた来ようよ。今度はホウリさんやフランさんと一緒にさ。だから、今日は帰ろ?」
「うーん、分かった」
「よーしいい子だね」


 ロワがノエルの頭を撫でて立ち上がる。


「行きましょうか」
「すまないロワ、助かった」
「別に良いですよ。それよりも早くお城に向かいましょう。僕、お腹空いちゃいました」
「そうだな」


 普段は頼りない所もあるが、いざという時はフォローをしてくれる。流石はロワだ。だからこそ、私はロワの事が……
 そこまで考えた私の顔が火が出るほど熱くなる。な、何を考えているんだ私は!


「どうしましたミエルさん?」
「な、何でもない!」


☆   ☆   ☆   ☆



「そろそろ食堂に行くか」


 魔国の仕組みを調べていると夕飯の時間になった。俺は食事をするために食堂へと向かう。
 食堂を開けると、メリゼがフランが座るであろう席の横に立っており、既にテーブルには沢山並べられている。用意がまだなら手伝おうと思ったが不要みたいだな。
 俺は椅子に座って、持ってきた資料に目を通す。ここの予算はここに回しても問題ないな。後は、この制度を廃止して代わりの制度を……


「一つよろしいでしょうか?」


 資料を読んでいる俺にメリゼが話しかけてくる。
 資料から目を外して、メリゼの方へ視線を移した。


「なんでしょうか?」
「旅の間、魔王がお世話になっていたようですので、そのお礼をと思いまして」


 そう言うと、メリゼは高級そうな包みに入ったワインを差し出してきた。


「そうですか、無理しないで良いですよ?」
「大切な魔王が世話になったのです。これくらいの事はさせてください」
「いえ、そうじゃなくて
「!?」


 俺の言葉を聞いたメリゼの顔に動揺が走る。


「……なんの事でしょうか?」
「隠さなくていいですよ。初対面からあんなに殺気を出されていたら嫌でも気が付きますので」
「そうでしたか」


 メリゼが差し出したワインをアイテムボックスに仕舞う。
 おそらく、フランの傍にいる俺が気に入らないんだろうが、そこまで指摘すると逆上しかねない。黙っておいた方がいいだろう。


「皆の前で露骨に態度に出す事はないと思いますが、2人きりの時くらいは素で話してもいいですよ」
「では、遠慮なく」


 メリゼはメガネを直すといつもと同じ口調で話し始める。


「魔王様に近付くんじゃねえゴミ野郎」
「思ったよりストレートな罵倒が来たな」


 相手がそのつもりならこちらも敬語を使わなくていいな。


「お前よりも私の方が魔王様の役に立つ。お前は子供のお守りでもしておくんだな」
「俺も不要な事には手を出さない。だが、必要と判断したならなら手を出すのも辞さないぜ?」
「お前に何が出来る?」
「フランの仕事を減らす事は出来る」
「人族の分際で魔族の政治に口を出すという事か?」
「魔王様の言いつけでな。仕方ないだろ?」
「しかし……」


 メリゼが反論してこようとした時、扉が開いて死にそうな表情のフランが入って来た。


「よう、お疲れさん。久々の仕事はどうだった?」
「最悪じゃよ。書類を確認して承認のハンコを押す。そんな単純作業が何時間にも渡ってしなくてはならん。せめて美味い飯でも食わんとやってられん。そっちの調子はどうじゃ?」
「大体7割くらいは減らせそうだ」
「それは楽しみじゃ」


 俺とフランの会話にメリゼがメガネを上げながら口を開く。


「魔王様、差し出がましいようですが、この男に国の大事を任せるのは止した方が良いのでは?」
「なぜじゃ?」
「この男は人族です。人族に有利な法律なんかをつくるの恐れがあります」
「それは心配いらん。ホウリに人族の為に働くメリットはない。それに、こやつはある意味で一番信用出来る奴じゃ」
「しかし……」
「くどいぞ。わしの決定に何か不満でもあるのか?」
「いえ、そういう訳では……」


 フランに睨まれたメリゼは口を閉ざし、それっきり話さなくなった。


「そういえば、3人はまだか?」
「夕飯の時間は伝えてあるからそろそろだろ」


 そう言っていると、扉が開いてロワ、ミエル、ノエルが食堂へ入って来た。


「ただいま戻りました」
「すまない、少し遅くなった」
「ただいまー、おなかすいたー」
「遅かったな?何かあったのか?」
「少し迷ってな。危うく反対側に向かいそうになった」
「そうだったか。とにかく飯にしよう」
「はーい」


 俺は全員が席についた事を確認して手を合わせる。


「いただきます」
「「「「いただきまーす」」」」


 全員でテーブルの上にある料理に手を付け始める。献立はフランの好物であるエビチリに麻婆豆腐、チョリソーといった辛い食べ物が多い。ノエルにも食べられそうな物もありそうだから大丈夫そうだな。


「これ結構おいしいですね」
「そういえば、3人はどこに行ってたんだ?」
「ゲームセンターに行ってきたよ!」
「ほう?あそこはかなりの種類のゲームがあるが何をやったんじゃ?」
「サバイバルゲームをやった。フリーマッチでな」
「初めてでフリーマッチ勝利は凄いな」
「ミエルさんが色々と作戦を立ててくれたおかげです」


 ミエルがいるなら納得だ。練度が低い奴が相手ならいい勝負するかもしれない。


「どんな奴が相手だったんだ?」
「弾を無制限に持っていて、スキル使い放題のチート野郎だ」
「わしが言うのもなんじゃが、良く勝てたのう」
「ロワとノエルの複製で矢と弾を複製して相手の有利を潰した。次にロワのスネッグアローで敵をいぶりだして、出てきたところを矢と銃で狙撃。機動力があるノエルで2人を抑えて、残りを私が抑える。後は狙撃と剣でボッコボコにした」
「そういえば、ノエルちゃん試合時間5分間ずっと魔装してましたね」
「ふっふーん、ホウリお兄ちゃんといっぱい特訓したもんね」
「点差は?」
「586対0」
「頑張ったな」
「いや、頑張ったで済む差ではないじゃろ。軽く伝説になっとるじゃろ」
「伝説って?」
「ああ!」


 3人だけで心配だったが思った以上に楽しめそうだ。


「魔王様、どうぞ」
「うむ、ありがとう」


 メリゼが注いだワインをフランが上機嫌で飲む。自身の国の施設が褒められて嬉しいのだろう。


「明日もどこか行くのか?」
「そのつもりですが、色々と行きたい所が多すぎて迷いますね」
「魔国には何か月もいるんじゃから、沢山遊ぶがよい」
「いや、遊びっぱなしだと、特訓を再開した時にダレるからな。来週からは全員に課題を課す」
「えー、特訓やだー」
「特訓も大切じゃからな。頑張るがよい」
「そういえば、フランさんは休みないんですか?」


 ロワの言葉に機嫌が良くワインを飲もうとしたフランの動きが止まった。
 その様子を不思議そうに見る。


「どうしたんですか?」
「……わしはしばらく休みなしの予定じゃ」
「あ……すみません……」


 フランが頭を抱えてワイングラスを置く。1日しか働いていないのに凄い疲弊してやがる。いままでの旅が楽しかっただけに、仕事がつら過ぎるのかもしれない。
 頭を抱えたフランを見たロワが恐る恐るメリゼへと話しかける。


「あの……少しはお休みをいただいてもいいのでは?」
「魔王が旅に出ていたせいで各部署の仕事が滞っております。休んでいる暇はありません」
「そうですか……」
「まあ、頑張れ」
「頭痛がするわい……」


 眉間にしわを寄せながらワンを飲み干すフラン。そして、料理を猛然と食べ始めた。


「そんなに勢いよく食べるとお腹を壊すぞ」
「食わんでやってられるか。今のわしの楽しみは食べることだけじゃ」
「そう言われると強くは言えないな」


 そう言うと、フランは再びご飯を食べ始める。これは後で後悔することになるな。
 勢いよくご飯を食べるフラン。すると、後ろからメリゼがフランに耳打ちする。


「魔王様、一つよろしいでしょうか?」
「なんじゃ?」
「ホウリ様との手合わせをお許しいただきたいです」


 メリゼの言葉にフランが驚いて振り返る。どうやらメリゼは俺をぶちのめしたいらしい。


「どういう風の吹き回しじゃ?」
「聞くところによると、ホウリ様は人国で開かれた闘技大会の優勝者だそうで。一度私も手合わせしてみたいと思っておりました」
「ふむ、わしは構わないが。ホウリはどうじゃ?」
「俺も良いぜ」
「ならば明日にせい。流石に今日は時間が遅い」
「かしこまりました」


 恭しく礼をするメリゼ。だが、目はしっかりと俺を睨みつけていた。
 一筋縄ではいかない予感をさせながら、この日の夕食は終わったのであった。
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