魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百三十五話 美味しいから大丈夫

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「解読終わったぞ」


 事件の資料を読み込んでいる私にフランさんが声を掛けてくる。解読までに1時間、かなり時間がかかっている。心なしか疲弊している気がする。


「どうでしたか?」
「……疲れた」


 内容について聞いたつもりだったけど、先に疲れについて言及された。やっぱり解読に相当疲れているみたいだ。


「お疲れ様です。何か飲みますか?」
「冷蔵庫に瓶ジュースがあった筈じゃ。持ってきてくれぬか?」
「分かりました」


 キッチンに向かって冷蔵庫から瓶ジュースを取りだ……


「瓶ジュース多すぎない!?」


 冷蔵庫には所せましと瓶ジュースが並んでいる。種類も数十種類あり、よくもこれだけ集めたなと呆れてしまう。多分、ホウリさんの趣味なんだろう。
 私は元気が出そうな味の瓶ジュースを選んでフランさんに持っていく。


「どうぞ」
「うむ、ありがとう」


 フランさんは瓶の蓋を掴むと栓抜きも使わずい一気に開け去り、中身を一気に呷る。


「ふぃー、生き返るわい」
「結果はどうでした?」
「ホウリが調べたリューレの犯罪歴と証拠の見つけ方が書いておったわい。お主らが調べた2倍は情報があったのう」
「さ、流石はホウリさん……」


 凄い人だとは思っていたけど、こちらが苦労して集めた情報を超えられると悲しくなってくる。


「解読内容を紙に書き起こしてやる。少し待っておれ」


 そう言うとフランさんは真っ白い紙を取り出した。今分かっている情報は書かないとしても、相当な量の情報の筈だ。書くのにそうな時間を要するだろう。


「あのフランさん大丈夫ですか?情報の記載までとなるとかなり大変なのでは?」
「心配ないわい」


 フランさんが紙をなぞっていくと紙に文字が浮かび上がって来た。
 私が目を剥いて驚いていると、フランさんがいたずらっぽく笑う。


「驚いたか?頭に浮かんだ事を文字にするスキルじゃ。これならすぐに書けるじゃろ?」
「事務の人が欲しい物を聞かれてそのスキルが欲しいって言ってましたね。かなりレアなスキルって聞きました」
「レアな割に効果が微妙じゃからがっかりスキルと言われておる。ほれ、出来たぞ」
「ありがとうございます」


 フランさんから紙を受け取り内容を見てみる。見た限りだと犯罪は私達が調べた事と同じような事が書かれている。
 問題はどういう証拠が残されていると思われるのかだ。物的証拠から口止めされていないであろう証人、裁判での相手の反論とそれの崩し方。必要な情報がすべて書かれている。


「これならいけますね」
「証拠を集めるのはわしらでやらないといけぬがな。後3日で全て集めきれるか?」
「いえ、3日で全ての証拠を集めきる必要はないです」
「どういうことじゃ?」


 私達のゴールはリューレを捕まえる事だ。何かの罪で捕まえられれば後から別の罪でも再逮捕出来る。つまり、全ての罪を立証するのではなく1つの罪を確実に立証できればいいのだ。


「なるほどのう。となると、次はどの罪の証拠を集めるかじゃな」
「そうですね。勾留出来るだけの罪であれば何でも良いんですが……」


 私はホウリさんの書置きを舐めるように読み込む。何か立証しやすいものはないかな……


「……ん?」


 私が注意しながら読み込んでいると、とある事に気が付いた。気のせい?いや、これは気のせいにしては……
  違和感の正体を確かめる為には地図がいる。


「フランさん、王都の地図ありますか?」
「あるぞ」


 フランさんから王都の地図を受け取って窃盗の際の逃走ルートや、連続爆破の被害があった場所を線で結んでみる。


「何しとるんじゃ?」
「フランさん、ここ見てください」
「なんじゃ?」
「ここに書いてる場所が別の所にも書いてあります」


 窃盗の情報に書いてある場所が、脱税の情報にも書かれている。他にも監禁と言った情報にも同じ場所の近辺が関りがあると記載されている。
 私の説明にフランさんも眉を顰める。


「確かに変じゃな」
「しかも、必須の場所じゃないんですよ。それが無理やりねじ込んだように出てきているんです」


 例えば窃盗をして逃げる時に遠回りになるように、とある場所を通っている。連続爆破や放火の被害があった場所を結ぶとその場所を通るようになっている。


「全部の事件が何かしらでこの場所に関わっている。これっておかしくありません?」
「確かに不自然じゃな。調べてみる価値はありそうじゃ。よく気付いたのう」


 フランさんも可笑しいと思ってくれた。これは重要な情報に違いない。
 ようやく重要情報がつかめたと思った私は思わず興奮しながら立ち上がる。


「そうと決まれば行きましょう!時間がなんですから───」(ぐぅぅぅ)


 私が立ち上がった瞬間、盛大にお腹が鳴った。そう言えば、朝ご飯食べて無かったっけ。
 思わずお腹を押さえた私をフランさんが微笑ましそうに見つめてくる。


「まずは腹ごしらえじゃな。パンの余りがあった筈じゃ」
「い、いえ、私は大丈夫ですので早く調査に……」
「腹が減っては戦は出来ぬと言うじゃろ?それに調査で何かあった時に倒れられても困るしのう」
「うう……」
「分かったら観念して食事するんじゃな。ほれ、行くぞ」


 フランさんに手を引かれてホウリさんの部屋からリビングに連れていかれる。さっきは気付かなかったがリビングのテーブルには山積みのパンがあった。
 ジャムやバターといった小瓶もおいてあり、バリエーションが豊富だ。


「好きなだけ食べるがよい。じゃが、食べ過ぎるでないぞ?」
「分かってますよ」


 フランスパンや塩パンと言ったパンを取って齧ってみる。冷めているが美味しい。
 バターやジャムを付けてみるが、どれも美味しい。高級なホテルの朝ご飯に出てきそうだ。


「これ美味しいですね。どこで売ってるんですか?」
「全部ロワの手作りじゃ。わしも驚いたがのう」


 ロワさんと言えば顔に布を付けた弓使いの人だった筈だ。顔を隠しているが素顔はかなりカッコいいと聞いている。カッコいいのに料理も上手いだなんて凄い。
 少しだけのつもりだったけど、手が止まらない。何個でも食べられちゃいそうな程に美味しい。
 山盛りになっていたパンの山が私とフランさんのお腹の中に納まった。


「ふぅー、思わず全部食べちゃいましたね」
「朝食は定期的にロワに頼んでみるか」


 お腹がいっぱいになって幸せな気持ちでいっぱいだ。このままお昼寝でもしたら幸せだろう。
 いっそこのまま寝ちゃっても……


「ラビ、お主眠るでないぞ?」
「……は!寝てないですよ!?」


 落ちかけてた意識を引き戻して無理やり覚醒させる。このまま眠ったら明日の朝まで起きなかっただろう。危なかった。


「食べたのならばそろそろ行くぞ。時間が無いのじゃろ?」
「……あ、そうでしたね。行きましょう」
「お主忘れておったな?」
「そ、そんな事無いですよ」


 私は誤魔化すようにリビングを出る。すると、フランさんに肩を掴まれた。


「ちょっと待て、今からノエル達に出かけると伝えてくる」
「そう言えば、お二人には話すんですか?」
「情報が情報じゃからな。下手に伝えて他の者から狙われんとも限らん」
「確かにそうですね」


 仮にリューレを捕まえたとしても残党が狙ってくるとも限らない。ノエルちゃんをそんな目に会わせる訳にはいかない。


「そういう訳じゃから少し待っててくれ」
「分かりました。家の門の前で待ってますね」


 家から出てフランさんが広場に駆けていく。私は家の門にもたれながらこれからの事を考える。
 3日後にリューレが魔国に出発するのであれば、その前には逮捕状を揃えておく必要がある。逮捕状はすぐに発行される訳じゃないから、明日には証拠を揃えたい。フランさんがいるとはいえ、明日までに小kを揃えることが出来るのだろうか。
 一番の手がかりはさっきの建物。そこに何かを見つけることが出来なければ厳しくなるが、どのみち手がかりがそこしかない。出来なかったらなんて事は考えないようにしよう。
 次はフランさんに何をしてもらうかだけど、基本的には聞き込みではなく潜入と言った所で力を借りよう。いくら何でも出来ると言っても聞き込みとかは慣れてないだろうし。
 悪いけど戦闘とかも任せてしまおう。


「おーい、待たせたのう」


 頭の中で作戦を立てていると、フランさんが庭から戻って来た。ようやく出発できる。


「じゃあ行きますか」
「そうじゃな」


 こうして、私たちは目的地である街はずれの教会に向かうのであった。
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