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第百三十六話 お前のようなBBAがいるか
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馬車に揺られる事30分、ホウリさんのメモから情報を得た私たちは、メモに書かれている教会がある地区までやって来た。ここは王都の端にある地区で建物が少なく緑が多い。地区の中心には目的地である教会が見える。
私は乗って来た馬車を下りて、大きく伸びをする。その後ろからフランさんも馬車から飛び降りた。
「うーん、やっと着きましたね」
「ワープが使えれば一発だったんじゃがな。何とかしてこの国の法を変えられぬものかのう?ホウリに見積もりでも出させるか」
「リフォーム感覚で法を改正しようとするの止めてくれません?」
本当に出来そうな所が怖い。
「さて、さっさと教会に向かいましょうか」
「待つんじゃ」
走り出そうとした私の肩をフランさんが掴んでくる。
「なんですか?早くしないと時間が……」
「焦るでない。今教会に行ったとしてどうするつもりじゃ?素直に犯罪に加担しておるか聞く気か?」
「それは……」
「こういう調べものは下準備が大切なんじゃ。良く言うじゃろ?急がば金を仕損じるとな」
「似たような意味の言葉が混ざって、最終的に守銭奴になってませんか?」
だが、フランさんの言う事も最もだ。確かに今すぐに教会に行ったとしても有益な情報が得られるとは限らない。下準備をした方がいいだろう。
「でも、私って情報から気付きを得るのは得意なんですけど、0から情報を調べるのは苦手なんですよね」
「検察の仕事ではないからのう。ここはわしに任せておくんじゃな」
「フランさんって調べもの得意なんですか?」
「緊急時の為にホウリに色々と仕込まれておるからのう」
「あー、なるほど」
ホウリさんの考えそうな事だ。そう言う事ならフランさんに任せて、私はサポートに回った方が良いかもしれない。
「まずは何をしますか?」
「無難に聞き込みじゃな。わしの後についてまいれ」
フランさんが迷いなく街の中を歩いて行く。その背中はいつもよりも大きく見えた。
「どこで聞き込みをするんですか?」
「教会とは生活に密接に関係がある。こういう端の地区では特にそうじゃ」
「つまり?」
「雑貨店とかの日常で使う店で聞き込みを行う」
「なるほど」
フランさんはそう言うと近くの雑貨店まで歩を進める。しかし、扉に手を掛けようとした時にふと動きを止めた。
「どうしたんですか?」
「そう言えば言い忘れておった事があった。わしらが捜査している事は奴らに知られてはならんじゃろ?」
「そうですね」
「じゃから変装する」
「変装?」
フランさんの言ってる事は最もだけど変装ってどうやるんだろう?
私が疑問を持った事を察したのかフランさんが説明を始める。
「スキルでわしとお主の姿を変化させる」
「そんなスキルがあるんですか?」
「無い。じゃから、これに頼る」
フランさんは真っ赤な宝石が付いた指輪を見せてニヤリと笑う。
「これを使って印象を操作するスキルを使えば、自分の姿を好きな姿に見せることが出来るんじゃ」
「それもホウリさん作ですか?」
「別の者が作った。設計図はホウリが作ったみたいじゃがな」
「あの人なんでも出来過ぎるでしょ……」
「いない奴の事はどうでもよい」
「どんな姿にするんですか?」
「わしはお婆ちゃんにする。実年齢的にも良いじゃろ」
「フランさんって何歳なんですか?」
「レディに年齢を聞くでない。お主はどうする?」
「そうですね……」
うーん、いきなり聞かれても困っちゃうな。
「モデルさんみたいに背が高くてスタイルを良くしてください。顔も可愛い感じじゃなくて美人な感じにしてください」
「数秒も考えずに答えおったな。色々と察する所があるが敢えて聞かんでおこう」
フランさんが目を閉じると付けていた指輪が輝き始めた。瞬間、フランさんの顔に皺が入っていき80歳位まで年をとった。
目を丸くして驚いていると、フランが口を押えて笑った。
「びっくりしたか?」
「まあそりゃあ……」
「お主はリアクションが良いから話していて楽しいのう。それともう一つ言っておく事があるんじゃが──」
『──人に言えない事はこうして念話で伝える』
「うわ!」
急に頭の中にフランさんの声が響いてきた。
声を出して驚いてしまったが、サンドの街に乗り込んだ時に似たような事があった事を思い出した。そう言えばフランさんは念話が使えるんだった。これなら他の人に会話を聞かれる事も無いだろう。
『分かりました』
『うむ、ちゃんと聞こえているようじゃな。ラビはわしの孫という設定でいくからの』
『了解です』
フランさんは軽く頷くと、今度こそ店の扉へと手を掛ける。
扉に付いているベルと共に扉が開け放たれる。店内には野菜やお肉と言った食料品やゴミ袋やお薬といった多種多様なものが置いてある。流石は雑貨屋さんだ。
フランさんはいつの間にか持っていた杖を突きながら店を回る。私はフランさんに付いて行く形で店を回る。
フランさんは野菜やお肉を見ながら偶にカゴに商品を入れていく。どこからどう見ても買い物にお婆ちゃんと孫にしか見えないだろう。
フランさんはしばらく店を回った後に、店員さんに話しかけた。
「店員さんや、洗剤はどこにあるのかのう」
「洗剤だね」
店員さんは洗剤をフランさんに持ってくる。フランさんは洗剤を受け取ると嬉しそうにカゴに入れた。
「すまないのう、この地域に引っ越してきたばかりで何も分からなくてのう」
「そうなんだ」
「この辺りは事件が多いから孫に反対されたんじゃ。わしはのどかで良いと思うんじゃがのう」
フランさんが私に視線を向けてくる。ここで私に話を振られているのだと気が付く。フランさんの言う通りこの地区は犯罪が多い。しかも、犯人が捕まらずに今も調査中の事件も多い。
私の本当のお婆ちゃんがこの地区に引っ越すと言ったとしても反対するだろう。
「私からしたら、のどかでも犯罪が多いと心配なのよ。本当だったら今にでも連れて帰りたいくらいだわ」
半分本音で私は話す。内心はバレないかヒヤヒヤものだったが、店員はニコニコと笑っている。不審に思っていないようだ。
「じゃがのう、私は良い所だと思うんじゃけどのう」
「はぁ、いつもそんな調子なんだから」
「それでのう、毎日お祈りしたいと思ってるんじゃが、教会に行きたいんだけど足が悪いから大変でのう」
ここでフランさんが本題に切り込む。
店員さんはフランさんの言葉を笑顔で聞いている。
「良い移動方法はないかのう?」
「それならこの近くから馬車が出ているから、それに乗って行けば10分で着きますよ」
『ここで教会について聞いてみるんじゃ』
フランさんの言葉が私の頭に響いてくる。そうか、私が心配性という孫という設定だから、何を聞いても自然に見えるだろう。フランさんそこまで考えていたんだ。
感動しつつ私は話を続ける。
「でも、いくら教会でも安全と限らないでしょ?もしかしたらその教会に犯罪者がいるかも?」
「そんな訳ないじゃろ。お主は心配過ぎなんじゃよ」
「心配するに決まってるでしょ!ねえ、教会の評判とかどうなの?」
私の核心を突く質問に店員さんが笑いながら答える。
「別に悪い評判とかはないですよ。神父も親身になって話を聞いてくれますし、教会の中も綺麗で良い所ですよ」
「貴方も行った事があるの?」
「ええ勿論。犯罪とは縁遠い良い所ですよ」
「ほら、わしの言った通りだったじゃろ?」
フランさんが勝ち誇ったように私を見てくる。
こうして見るとフランさんのお婆ちゃんの演技がとても上手い。違和感なく本当のお婆ちゃんと話している気分になる。
店員さんも違和感を抱いている様子はなく、その後も普通に話していく。
その後も他愛のない話をしながら、私たちは情報を集めるのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
雑貨店で食材や洗剤などを買って店を出る。
結局、雑貨店ではあまり有益な情報を得られなかった。毎回有益な証言が得られるというのは甘い考えなのだという事は分かっている。しかし、時間が無い中で空振りだったのは心にくるものがある。
私は念話でがっかりな心情をフランさんに伝える。
『……はぁ、収穫なしですか』
『そうとも限らんぞ?』
私の言葉にフランさんが皺くちゃな顔のままで笑う。
『何か分かったんですか?』
『わしはスキルで相手が嘘をついているか分かる。あやつは嘘を吐いておった』
『本当ですか?』
『教会が犯罪とは縁遠いという言葉じゃ。真っ赤な嘘じゃった』
『そうなんですか!?』
私にはあの人が嘘を吐いているようには見えなかった。私だけだったら本当に収穫無しで終わってしまっただろう。
『教会が犯罪とは無関係となると、やっぱり怪しいですね』
『関係無い者にしては詳しいし、関係が無ければ嘘を吐く理由もない。関係者である可能性が高いのう』
『あの人の事を調べるのも良いかもしれませんね』
『そうじゃな。確かあやつには妻がいて、この先の服屋で働いているようじゃし、そこに行ってみるのが良いじゃろう』
次の方針を決めた私達は服屋へと向かう。雑貨屋から進むこと約10分、目的地の服屋へとたどり着いた。
私とフランさんは同じように服屋で買い物をする。さっきの人から聞いていた奥さんの特徴を思い出して、それっぽい店員さんに話しかけてみる。
「店員さん、この服の一回り小さいサイズはないかのう?」
「すみません、この服は今あるサイズしかないんですよ」
「そうか、残念じゃ……」
フランさんが残念そうに顔を伏せる。それを見た店員さんが申し訳なさそうな表情になる。
「その服は無いんですけど、お客様にお似合いの服でしたら沢山ありますよ。例えば……」
店員さんは一生懸命にフランさんの服を選ぶ。フランさんもそれに付き合い、結局進められた服をいくつか買う事になった。
レジで店員さんにお金を払いながら、店員さんと話す。
「本当にありがとう。おかげで良い服が見つかったのじゃ。流石はあの雑貨屋の奥さんじゃな」
「あら?夫にあったんですか?」
「ええ、とてもいい旦那さんでしたよ」
私とフランさんの言葉に店員さんの顔がほころぶ。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「しかもわしと同じで教会に通っておるんじゃろ?親近感が湧いてのう」
「そうですね。毎週足しげく通っているんですよ」
「それは熱心ですね」
「今日も行くんだー、って張り切ってましたよ」
「わしもご一緒したいものじゃな。何時に行くんじゃ?」
「8時に言って10時頃に帰ってきます」
「それはわしには無理じゃな。もう寝ておる」
「それは残念ですね」
フランさんが残念そうに俯き、店員さんが困ったような表情になる。
今日も教会に行く。これは良い事を聞いた。私とフランさんはお礼もそこそこに服屋を後にした。
『フランさん、さっきの聞きました?』
『ああ、今夜教会に向かうのであれば後を付ければ何か分かるかもしれぬな』
『じゃあ夜まで待機ですか?』
『一度戻って準備をしよう。今夜決着が着けばそれで良いじゃろ?』
『……そうですね』
今夜で決着が着く。そう思うとなんだか緊張してきた。
『憲兵所に行って憲兵を可能な限り招集してきます』
『そんなに大勢引き連れてバレたらどうする?お主とわしだけで行動するに決まっておろう?』
『……へ?いっぱい人がいたらどうするんですか?私一人じゃ捕まえきれませんよ?』
『終わる時間を見計らって集結させるようにすればいいじゃろ。わしがおれば潜入だろうが武力制圧だろうが楽に終わる』
『それはそうかもしれませんけど……』
この時間に制圧が終わってるから集まって欲しいっていう招集命令は聞いた事が無い。前代未聞なのは間違いないだろう。
『わしも一度家に帰って夕飯を食ってくる。今日の7時にここに集合でどうじゃ?』
『夜ごはん?こんな大切な時に?』
『わしは可能な限り飯は皆で食べると決めていてのう。悪いが譲る気はないぞ?』
『私は別に良いですけど……』
この大変な状況でよくご飯が食べられるなぁと思う。まあ、フランさんは大変だと思っているのかもしれないけど。
こうして、私たちは待ち合わせの約束をして一度解散をしたのであった。
私は乗って来た馬車を下りて、大きく伸びをする。その後ろからフランさんも馬車から飛び降りた。
「うーん、やっと着きましたね」
「ワープが使えれば一発だったんじゃがな。何とかしてこの国の法を変えられぬものかのう?ホウリに見積もりでも出させるか」
「リフォーム感覚で法を改正しようとするの止めてくれません?」
本当に出来そうな所が怖い。
「さて、さっさと教会に向かいましょうか」
「待つんじゃ」
走り出そうとした私の肩をフランさんが掴んでくる。
「なんですか?早くしないと時間が……」
「焦るでない。今教会に行ったとしてどうするつもりじゃ?素直に犯罪に加担しておるか聞く気か?」
「それは……」
「こういう調べものは下準備が大切なんじゃ。良く言うじゃろ?急がば金を仕損じるとな」
「似たような意味の言葉が混ざって、最終的に守銭奴になってませんか?」
だが、フランさんの言う事も最もだ。確かに今すぐに教会に行ったとしても有益な情報が得られるとは限らない。下準備をした方がいいだろう。
「でも、私って情報から気付きを得るのは得意なんですけど、0から情報を調べるのは苦手なんですよね」
「検察の仕事ではないからのう。ここはわしに任せておくんじゃな」
「フランさんって調べもの得意なんですか?」
「緊急時の為にホウリに色々と仕込まれておるからのう」
「あー、なるほど」
ホウリさんの考えそうな事だ。そう言う事ならフランさんに任せて、私はサポートに回った方が良いかもしれない。
「まずは何をしますか?」
「無難に聞き込みじゃな。わしの後についてまいれ」
フランさんが迷いなく街の中を歩いて行く。その背中はいつもよりも大きく見えた。
「どこで聞き込みをするんですか?」
「教会とは生活に密接に関係がある。こういう端の地区では特にそうじゃ」
「つまり?」
「雑貨店とかの日常で使う店で聞き込みを行う」
「なるほど」
フランさんはそう言うと近くの雑貨店まで歩を進める。しかし、扉に手を掛けようとした時にふと動きを止めた。
「どうしたんですか?」
「そう言えば言い忘れておった事があった。わしらが捜査している事は奴らに知られてはならんじゃろ?」
「そうですね」
「じゃから変装する」
「変装?」
フランさんの言ってる事は最もだけど変装ってどうやるんだろう?
私が疑問を持った事を察したのかフランさんが説明を始める。
「スキルでわしとお主の姿を変化させる」
「そんなスキルがあるんですか?」
「無い。じゃから、これに頼る」
フランさんは真っ赤な宝石が付いた指輪を見せてニヤリと笑う。
「これを使って印象を操作するスキルを使えば、自分の姿を好きな姿に見せることが出来るんじゃ」
「それもホウリさん作ですか?」
「別の者が作った。設計図はホウリが作ったみたいじゃがな」
「あの人なんでも出来過ぎるでしょ……」
「いない奴の事はどうでもよい」
「どんな姿にするんですか?」
「わしはお婆ちゃんにする。実年齢的にも良いじゃろ」
「フランさんって何歳なんですか?」
「レディに年齢を聞くでない。お主はどうする?」
「そうですね……」
うーん、いきなり聞かれても困っちゃうな。
「モデルさんみたいに背が高くてスタイルを良くしてください。顔も可愛い感じじゃなくて美人な感じにしてください」
「数秒も考えずに答えおったな。色々と察する所があるが敢えて聞かんでおこう」
フランさんが目を閉じると付けていた指輪が輝き始めた。瞬間、フランさんの顔に皺が入っていき80歳位まで年をとった。
目を丸くして驚いていると、フランが口を押えて笑った。
「びっくりしたか?」
「まあそりゃあ……」
「お主はリアクションが良いから話していて楽しいのう。それともう一つ言っておく事があるんじゃが──」
『──人に言えない事はこうして念話で伝える』
「うわ!」
急に頭の中にフランさんの声が響いてきた。
声を出して驚いてしまったが、サンドの街に乗り込んだ時に似たような事があった事を思い出した。そう言えばフランさんは念話が使えるんだった。これなら他の人に会話を聞かれる事も無いだろう。
『分かりました』
『うむ、ちゃんと聞こえているようじゃな。ラビはわしの孫という設定でいくからの』
『了解です』
フランさんは軽く頷くと、今度こそ店の扉へと手を掛ける。
扉に付いているベルと共に扉が開け放たれる。店内には野菜やお肉と言った食料品やゴミ袋やお薬といった多種多様なものが置いてある。流石は雑貨屋さんだ。
フランさんはいつの間にか持っていた杖を突きながら店を回る。私はフランさんに付いて行く形で店を回る。
フランさんは野菜やお肉を見ながら偶にカゴに商品を入れていく。どこからどう見ても買い物にお婆ちゃんと孫にしか見えないだろう。
フランさんはしばらく店を回った後に、店員さんに話しかけた。
「店員さんや、洗剤はどこにあるのかのう」
「洗剤だね」
店員さんは洗剤をフランさんに持ってくる。フランさんは洗剤を受け取ると嬉しそうにカゴに入れた。
「すまないのう、この地域に引っ越してきたばかりで何も分からなくてのう」
「そうなんだ」
「この辺りは事件が多いから孫に反対されたんじゃ。わしはのどかで良いと思うんじゃがのう」
フランさんが私に視線を向けてくる。ここで私に話を振られているのだと気が付く。フランさんの言う通りこの地区は犯罪が多い。しかも、犯人が捕まらずに今も調査中の事件も多い。
私の本当のお婆ちゃんがこの地区に引っ越すと言ったとしても反対するだろう。
「私からしたら、のどかでも犯罪が多いと心配なのよ。本当だったら今にでも連れて帰りたいくらいだわ」
半分本音で私は話す。内心はバレないかヒヤヒヤものだったが、店員はニコニコと笑っている。不審に思っていないようだ。
「じゃがのう、私は良い所だと思うんじゃけどのう」
「はぁ、いつもそんな調子なんだから」
「それでのう、毎日お祈りしたいと思ってるんじゃが、教会に行きたいんだけど足が悪いから大変でのう」
ここでフランさんが本題に切り込む。
店員さんはフランさんの言葉を笑顔で聞いている。
「良い移動方法はないかのう?」
「それならこの近くから馬車が出ているから、それに乗って行けば10分で着きますよ」
『ここで教会について聞いてみるんじゃ』
フランさんの言葉が私の頭に響いてくる。そうか、私が心配性という孫という設定だから、何を聞いても自然に見えるだろう。フランさんそこまで考えていたんだ。
感動しつつ私は話を続ける。
「でも、いくら教会でも安全と限らないでしょ?もしかしたらその教会に犯罪者がいるかも?」
「そんな訳ないじゃろ。お主は心配過ぎなんじゃよ」
「心配するに決まってるでしょ!ねえ、教会の評判とかどうなの?」
私の核心を突く質問に店員さんが笑いながら答える。
「別に悪い評判とかはないですよ。神父も親身になって話を聞いてくれますし、教会の中も綺麗で良い所ですよ」
「貴方も行った事があるの?」
「ええ勿論。犯罪とは縁遠い良い所ですよ」
「ほら、わしの言った通りだったじゃろ?」
フランさんが勝ち誇ったように私を見てくる。
こうして見るとフランさんのお婆ちゃんの演技がとても上手い。違和感なく本当のお婆ちゃんと話している気分になる。
店員さんも違和感を抱いている様子はなく、その後も普通に話していく。
その後も他愛のない話をしながら、私たちは情報を集めるのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
雑貨店で食材や洗剤などを買って店を出る。
結局、雑貨店ではあまり有益な情報を得られなかった。毎回有益な証言が得られるというのは甘い考えなのだという事は分かっている。しかし、時間が無い中で空振りだったのは心にくるものがある。
私は念話でがっかりな心情をフランさんに伝える。
『……はぁ、収穫なしですか』
『そうとも限らんぞ?』
私の言葉にフランさんが皺くちゃな顔のままで笑う。
『何か分かったんですか?』
『わしはスキルで相手が嘘をついているか分かる。あやつは嘘を吐いておった』
『本当ですか?』
『教会が犯罪とは縁遠いという言葉じゃ。真っ赤な嘘じゃった』
『そうなんですか!?』
私にはあの人が嘘を吐いているようには見えなかった。私だけだったら本当に収穫無しで終わってしまっただろう。
『教会が犯罪とは無関係となると、やっぱり怪しいですね』
『関係無い者にしては詳しいし、関係が無ければ嘘を吐く理由もない。関係者である可能性が高いのう』
『あの人の事を調べるのも良いかもしれませんね』
『そうじゃな。確かあやつには妻がいて、この先の服屋で働いているようじゃし、そこに行ってみるのが良いじゃろう』
次の方針を決めた私達は服屋へと向かう。雑貨屋から進むこと約10分、目的地の服屋へとたどり着いた。
私とフランさんは同じように服屋で買い物をする。さっきの人から聞いていた奥さんの特徴を思い出して、それっぽい店員さんに話しかけてみる。
「店員さん、この服の一回り小さいサイズはないかのう?」
「すみません、この服は今あるサイズしかないんですよ」
「そうか、残念じゃ……」
フランさんが残念そうに顔を伏せる。それを見た店員さんが申し訳なさそうな表情になる。
「その服は無いんですけど、お客様にお似合いの服でしたら沢山ありますよ。例えば……」
店員さんは一生懸命にフランさんの服を選ぶ。フランさんもそれに付き合い、結局進められた服をいくつか買う事になった。
レジで店員さんにお金を払いながら、店員さんと話す。
「本当にありがとう。おかげで良い服が見つかったのじゃ。流石はあの雑貨屋の奥さんじゃな」
「あら?夫にあったんですか?」
「ええ、とてもいい旦那さんでしたよ」
私とフランさんの言葉に店員さんの顔がほころぶ。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「しかもわしと同じで教会に通っておるんじゃろ?親近感が湧いてのう」
「そうですね。毎週足しげく通っているんですよ」
「それは熱心ですね」
「今日も行くんだー、って張り切ってましたよ」
「わしもご一緒したいものじゃな。何時に行くんじゃ?」
「8時に言って10時頃に帰ってきます」
「それはわしには無理じゃな。もう寝ておる」
「それは残念ですね」
フランさんが残念そうに俯き、店員さんが困ったような表情になる。
今日も教会に行く。これは良い事を聞いた。私とフランさんはお礼もそこそこに服屋を後にした。
『フランさん、さっきの聞きました?』
『ああ、今夜教会に向かうのであれば後を付ければ何か分かるかもしれぬな』
『じゃあ夜まで待機ですか?』
『一度戻って準備をしよう。今夜決着が着けばそれで良いじゃろ?』
『……そうですね』
今夜で決着が着く。そう思うとなんだか緊張してきた。
『憲兵所に行って憲兵を可能な限り招集してきます』
『そんなに大勢引き連れてバレたらどうする?お主とわしだけで行動するに決まっておろう?』
『……へ?いっぱい人がいたらどうするんですか?私一人じゃ捕まえきれませんよ?』
『終わる時間を見計らって集結させるようにすればいいじゃろ。わしがおれば潜入だろうが武力制圧だろうが楽に終わる』
『それはそうかもしれませんけど……』
この時間に制圧が終わってるから集まって欲しいっていう招集命令は聞いた事が無い。前代未聞なのは間違いないだろう。
『わしも一度家に帰って夕飯を食ってくる。今日の7時にここに集合でどうじゃ?』
『夜ごはん?こんな大切な時に?』
『わしは可能な限り飯は皆で食べると決めていてのう。悪いが譲る気はないぞ?』
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