魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百五十二話 絶対合格してやるぞぉぉぉぉぉぉぉ!

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 試験当日、試験会場である騎士団の前に僕はいました。
 ここまで僕はホウリさんと共に、文字通り死ぬ気で勉強をしてきました。絶対に落ちる事は許されません。


「考えてみれば、こういう重要な時に誰もいないのは初めてですね」


 いつも、ホウリさんやミエルさんに見守られながら戦っていたのですが、今は周りに誰もいません。今日は本当に一人で戦わないといけません。ミエルさんにはいて欲しかったのですが、試験する側の人間が一緒にいると良くないらしいです。
 心細いですが、ここは頑張ってやり抜きましょう。そして、ミエルさんと同じ騎士団に入るんだ!
 心の中で決意を固め、深く息を吐く。


「よし、頑張るぞ!」


 パチンと頬を叩いて騎士団の中に入る。
 受付の人に試験であると伝えて、個室に通される。個室に案内されている間も僕の心臓はうるさいくらいに鳴っています。


「ここでお待ちください」
「あ、ありがとうございまひゅ……」


 明らかに口が回っていないのが自分でも分かります。頑張ろうとしても緊張はどうにもならないみたいです。
 不安から、単語帳を取り出して読みます。


「あの魔物の弱点は……ここの地方で出現しやすい魔物は……」


 なんだか落ち着いてきました。この調子でいきましょう。
 単語帳を唱えて心を整えていると、扉が開いて試験管の人が入って来た。僕は反射的に立ち上がって試験官の人を迎えます。


「よろしくお願いしま……」


 頭を下げかけたけど、試験官の人を見て背筋が凍った。
 その人は優しそうで包容力がありそうな顔で笑いかけて来た。


「おはよう、ロワ君」
「お、おはようございます長官!」


 試験官は長官であるキャンデさんだった。僕は挨拶をしながら思わず敬礼をしてしまう。


「そんなに緊張しないでくれ。私の事は空気とでも思っていい」
「そうもいきませんよ……」


 一番偉い人が見張っている中で緊張しない方が難しいでしょう。


「な、なんで長官がここに?」
「ロワ君の様子を見にね。何か不満かね?」
「そういう事ではないんですけど……」


 余計なプレッシャーがかかるので不満ですけどね!
 僕の本心を知ってか知らずか、長官が笑顔でテスト用紙を裏側で置いてきた。


「それじゃ、試験を始めようか。筆記用具以外は仕舞ってね」
「分かりました」


 鉛筆と消しゴム以外をバッグに仕舞って、大きく息を吐く。


「準備はいいかい?始め!」


 長官の合図と共にテスト用紙をめくる。こうして僕の長い戦いが始まったのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


「そこまで!」


 長官の合図で僕は鉛筆を置く。
 4時間にも渡る死闘を終えて、僕はテーブルに突っ伏しました。


「疲れた……、こんなに頭を使ったのは久しぶりだ……」


 頑張ったおかげで1か月前よりも分かる問題が増えたけど、それでも半分は解けなかった。合格できるかは全く分からない。


「……切り替えよう」


 ショックな気持ちを抑えながら僕は立ち上がる。ご飯を食べたら実技試験だ。今落ち込んでいる暇はない。


「どうしたんだい?かなりショックを受けているようだけど?」
「あまり問題が解けなかったんですよ。それがかなり悔しくて……」
「へぇ、変わってるね」


 長官があっけらかんとした口調で話す。あれ?なんだかおかしくない?


「えっと、これって騎士団に入るための試験なんですよね?」
「そうだよ」
「それが出来なかったから落ち込んでるんです」
「だから変わってるって……あ、そうか」


 長官が納得したように手を叩く。


「ロワ君って、騎士団試験の事を良く知らないんじゃない?」
「何をするかは知ってますよ?」
「そうじゃなくて、この試験の比率の事だよ」
「比率?」


 どの問題が点数が高いとかかな?確かに配点は書いてなかったけど、何か関係があるのかな?勝手に後半の問題の配点が高いと思っていたけど違うのかな?


「どういうことですか?」
「簡単に言うと、ロワ君にとって試験はあんまり関係ないんだよね」
「……へ?」


 あまりにも衝撃的な言葉に開いた口が塞がりません。


「えっと……説明していただけますか?」
「ロワ君が入ろうとしているのは魔物対策部署だよね?」
「はい」
「その部署は実践に特化しているから、実技試験の方に重きを置いてるんだよね」
「……という事は、僕が勉強した事は無駄だったって事ですか?」
「まったく出来ないんだったら論外だから無駄ではないよ。そうだね……半分は解けて欲しいかな?」


 キャンデさんの言葉に僕は再び冷や汗を流す。
 勉強してなかったら論外になってました。危ない所です。


「そういう訳だからさ、多少解けなくても気にしなくて良いんだよ」
「あ、ありがとうございます」


 何とか笑顔を作ってキャンデさんにお礼を言います。表情が引きつってなければ良いんだけど……。


「そうと決まれば、ご飯を食べて午後の試験も頑張ろう。お昼はお弁当?」
「いえ、食堂で食べようと思います」


 余談ですが、ミエルさんがホウリさんにお弁当を作りたいと言ってましたが却下されてました。ミエルさんには悪いですが、助かったと思ってしまいました。


「じゃあ、私は仕事してくるから。また後でね」
「ありがとうございました」


 キャンデさんはテスト用紙を回収して部屋から出ていきます。


「ご飯食べよ」


 僕も部屋から出て行って食堂に向かう。


「……ミエルさんに会いたいな」


 一人で寂しい気持ちを抑えながら、僕は廊下を進んだのでした。


☆   ☆   ☆   ☆


「やあミエル君。調子はどうだい?」
「いつも通りですよ。私の事よりもロワはどうでした?」
「頑張って試験していたよ。軽く見たけど、学力はギリギリかな?」
「でも、ロワなら実践で取り戻すはずです。私はやる必要は無いと思ってますけど」
「うーん、強情だね?そんなに彼が好きなのかい?」
「ちちがいすよはえんか」
「動揺しすぎじゃないかね?」
「……おっほん。私はロワをエコ贔屓してませんよ」
「そうかい?彼は神級スキル持ちとはいえ、そこまで凄い子には見えなかったけど?」
「ちゃんとした根拠もあります」
「なんだい?」
「私にかすり傷を与えた事があります」
「……それは楽しみだね?」
「ロワを舐めない方がいいですよ」
「みたいだね。なんだか楽しみになって来たよ」


☆   ☆   ☆   ☆


 美味しいご飯を食べて、僕は試験会場である戦闘場に入ります。
 学力では劣りますが、実践なら負ける気がしません。ラビさんとかミエルさんとかノエルちゃんとかフランさんとかホウリさんが相手ではない限りは!
 やる気満々で弓の準備をしていると、戦闘場にキャンデさんが入ってきました。


「やほー。ご飯は沢山食べられたかい?」
「腹5分って所ですね。お腹がいっぱいになると動きが悪くなるので」
「かなり本気だね」


 キャンデさんが楽しそうに笑う。
 学力の試験が微妙だったのです。ここで本気になるのも無理はないでしょう。


「試験内容はなんですか?誰かと戦えば良いんですか?」
「そうだね、この人達と戦ってもらおうかな」


 そう言うと、キャンデさんの後ろから騎士、魔法使い、剣士がやってきました。


「その人達と戦うんですね。最初は誰が相手ですか?」
「全員」
「……へ?」
「全員と戦ってもらおうかなって」
「皆さん、多人数戦してるんですか?」
「ロワ君だけの特別試験だよ」


 神級スキル持ちだからって軽く用意する相手じゃないですよ。


「なんで僕だけ特別なんですか?」
「ミエル君がロワ君は凄いって言ってたから」
「ミエルさんのせいか……」


 多分、ミエルさんには悪気はないと思いますが、結果的に僕の壁となって立ちはだかるとは思いませんでした。


「ま、ミエル君お墨付きのロワ君なら余裕でしょ」
「が、頑張ります」


 キャンデさんがいたずらっぽく笑いかけてくる。ここは出来ないと言えない雰囲気です。頑張って倒さないと。
 見たところ、騎士と戦士が前衛を張って魔法使いが遠距離から攻めてくるのでしょう。魔法攻撃は無効化出来ないので厳しいですが、何とか頑張りましょう。まずはワープアローで距離を取って……。


「言い忘れてたけど、武器はこちらで支給した物だけだからね」
「おっと?一気に厳しくなりましたね?」


 トリシューラも準備していたエンチャントもないと騎士を突破する手段が限られます。合格させる気が無いのでしょうか?


「じゃ、準備が出来たら始めようか?」


 悪戯っぽく笑うキャンデさんから弓と矢筒を受け取る。これどうしよう?
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