魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百六十一話 ファイナルパターゴルフ

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 宿に戻ると3人が食堂で飲み物を飲みながら談笑をしていた。イトウはちゃっかりとロットの傍を陣取っている。
 ロットは気まずそうに顔を反らしていたが、俺に気が付くと手を挙げて俺にアピールしてきた。


「……こっちだ」


 俺は3人が座っている席に座る。


「早かったな」
「色々とすっ飛ばしたからな」
「……何か飲むか?」
「どうせすぐに出ていくからいらない」


 俺はテーブルに坑道の地図を広げる。


「説明を始めるぞ。まず、ゴーレムだが厄介な事にスーパープラチナゴーレムだった」
「本当か?」
「そのスーパープラチナゴーレムって何なの?」
「スーパープラチナゴーレム……長いからスパゴレって略すが、スパゴレは文字通りスーパープラチナで出来たゴーレムだ。通常のゴーレムよりも固く、凶暴性は低い」
「……凶暴性は低いのか?ならば、なぜ問題になっている?」


 ロットの質問にミエルが答える。


「スパゴレはスーパープラチナが主食なのだが、その際に零れた岩が固まってミニゴーレムが作り出される。ミニゴーレムは好戦的でMPを感知するとすぐに襲ってくる」
「数も多いから厄介だ」
「更に、スパゴレは体がスーパープラチナで出来ているからダメージを与えるのも難しい」
「そんな相手とどうやって戦うの?」
「……下手に戦えば洞窟が崩れるのではないか?」


 ロットの言葉はもっともだ。生半可な攻撃ではダメージを与えられず、ダメージを与えられる程の攻撃は洞窟を落盤させるかもしれない。今のままでは手も足も出ないだろう。


「だから、スパゴレを洞窟の外に誘い込む」
「……どうやって?」
「スパゴレはより純度の高いスーパープラチナに惹かれる性質がある。それを利用する」
「おびき出すの?でもスーパープラチナはどこから持ってくるのかしら?」
「村に残っていたスーパープラチナを買い込んだ。今、鍛冶屋で持ちやすく加工している」
「この時間でそこまでやっていたのか?」
「……量はどの位だ?」
「5㎏だ」


 全部村の外に売りに出されていたら危なかったが、まだ残っていて良かった。


「それでスパゴレをおびき寄せる訳か」
「……だが、5㎏のスーパープラチナを持って洞窟の中を動き回れるのか?」
「ミニゴーレムも沢山いる。スーパープラチナを持っている奴は機動力も落ちるし、かなり厳しんじゃないか?」
「それについては考えがある」


 俺は指輪よりも二回り大きい輪っかをテーブルに乗せる。イトウが興味深そうに輪っかを摘まんだ。


「これは何かしら?婚約指輪?」
「……こんな無骨な結婚指輪があるか」
「あら、私は無骨なのも好きよ?」


 イトウがロットに向かってウインクする。ロットはイトウの言葉を無視して輪っかを奪う。


「……何かの魔道具か?」
「これを付けてMPを流すと、付けた物の質量が半分になる」
「私の盾にも付けている魔道具だ。盾を素早く構えられて中々便利だぞ」
「その魔道具を複数付ければ重さは問題ない」
「ミニゴーレムはどうする?」
「全部無視してスパゴレだけ引きつれる。スパゴレさえ倒せればミニゴーレムも全滅するし相手する意味はない。この布を被れば身にゴーレムから襲われる事も無いから安全に引き付けられる」
「……一ついいか?」
「なんだ?」
「……スーパーシルバーが確保できているのであれば、スパゴレを倒さなくてもいいのではないか?」


 確かに5㎏もあればミエルの盾には足りるだろう。そう言う意味ではスパゴレを倒す意味はない。だが、


「今後、スーパープラチナを大量に使う用事があってな。ここで解決しておきたい」


 かなり重要な用事だからスーパープラチナの供給は元通りにしておきたい。


「そういう訳だからここでスパゴレは倒しておきたい」
「……そう言う事なら分かった」
「で、その囮は誰がやるのだ?」
「一番早い俺がやる」
「私たちは護衛って訳ね?」
「いや、全員外で待っていて欲しい」


 俺の言葉に全員が目を見開いて驚く。


「……大丈夫か?」
「さっきも同じように洞窟に入った。多少荷物が増えても問題ない」


 作戦は単純。俺がスパゴレを洞窟から誘い出して、全員で一斉にボコボコにする。ロットとミエルとイトウの高火力3人組がいれば何とかなるだろう。


「倒せなかった場合は?」
「そんな事は考えるな。全力で叩け」
「今回はいつもとは違って場当たり的だな?」
「仕方ないだろ。確実な方法は時間がかかる。今はあまり時間がないからある程度行き当たりばったりになるのは仕方がない」


 とはいえ、こんなに時間に追われながら倒す事になるとは思わなかった。本来であれば綿密な計画を立てて盗伐する所だし、不安が無いと言えば嘘になる。


「そう言う事だから、明日の9時に鉱山前に集合だ。それまでは好きに過ごしていいが、疲れは残すんじゃないぞ?」
「……ホウリはこれからどうするつもりだ?」
「村長と話をしてくる。戦うなら許可がいるだろ?」
「それもそうね。行ってらっしゃい」


 3人に見送られながら俺は宿を出る。外はすっかりと日が暮れており、これから夜が始まろうとしていた。
 俺は村長の家へと向かう。本来ならば確実に家にいる時を見計らって偶然を装っていくんだがな。今は村長が家にいることを祈ろう。
 走る事数分、村長の家が見えてくると窓から明かりが漏れているのが見えた。俺は胸を撫でおろしながらドアをノックする。


「はいはい」


 扉が開き角や装飾は付いたヘルメットを付けたドワーフが出て来た。


「夜分に恐れ入ります、この村の村長、レンソウ様でしょうか?」
「そうだけど、どちらさまで?」


 俺はフランが書いた盗伐許可証を見せながら、この村に来た目的を説明する。
 俺の説明が終わると、村長の目がキラキラとしだす。


「……以上が説明になります」
「本当に鉱山が復活するのか!?」
「私たちも復活の為に全力を尽くします。しかし、今のままではゴーレムを盗伐することが出来ません。そこで、ある事をお願いしたいのです」
「ああ、何でも言ってくれ」


 俺は好感が持てるような笑顔で口を開く。


「鉱山への足場を爆破したいんです」
「……は?」


 村長が口をだらしなく開いて訳が分からないという顔をする。ここまでは予想通りだ。
 俺は笑顔で説明を続ける。


「スーパープラチナゴーレムはミニゴーレムと違って少し知力があります。足場から踏み外してくれるのは期待できません。足場に乗った時に爆破して下に落とすしかありません」
「足場を作るにはかなりの月日が必要だ!爆破してしまってはゴーレムがいなくなっても鉱山で仕事が出来ない!」
「ゴーレムがいたら何年も使えないかもしれないですよ?」
「しかし、流石に爆破は……」


 村長は足場の爆破に渋っている様子だ。村の事を考えると当たり前か。だが、ここは折れて貰うしかない。


「村長さん、確かに足場が使えなくなるのは不安でしょう。しかし、今の状況を継続するのも良くないのではないですか?」
「うーん……」


 村長が腕を組んで悩む。心が揺れ動いているようだ。あと一押しって所だな。
 俺は悩んでいる村長の手を掴む。村長は驚いたように俺の目を見つめてくる。


「足場の作成には伝手を頼んで早めに作るようにします!住民の方には迷惑かけません!お願いします!」
「……分かった。そこまで言うならあなたに一任しよう」
「ありがとうございます!」


 俺は村長に頭を下げる。よし、これで足場を爆破しても怒られないな。何も話さずに爆破したとあっては、最悪指名手配される可能性があった。許可が取れて何よりだ。
 村長に謝罪とお礼を言って家を後にする。
 明日の朝までは攻めることは出来ないから、足場に爆弾を仕掛けた後に洞窟の中でミニゴーレムの数を減らすか。
 そう思って俺は鉱山へと走しったのだった。
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