魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百六十二話 ザ・エンドってね

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 翌日の朝、俺が洞窟を出ると、3人が鉱山の前に集まっていた。各々が得意武器を持って戦闘に備えている。全員時間通りに集まったみたいだな。
 足場を下って3人の元へと向かう。


「よう」
「貴様、今どこから来た?」
「見てただろ、坑道からだ」
「……坑道で何してたんだ?」
「ミニゴーレムの数を減らしてた。引き付ける時に邪魔になるからな」
「一晩中戦ってたの?」
「まあな」


 経験値稼ぎも兼ねているし丁度良かった。硬かったから倒すのに苦労したが、十数体は倒せた。それだけ倒せれば十分だろう。


「準備の最終確認だ。まずはミエル」
「ああ」


 ミエルはいつもの鎧に大剣を装備したスタイルだ。ただし、盾は装備していない。今回は防御なんてせずに秒速で倒すからだ。


「MPも満タンで万全だ」
「問題ないな。次はロット」


 ロットは身の丈よりも大きい両刃の斧を担いでいる。動きは遅くなるが、その一撃はドラゴンをも屠る程に強力だ。


「……準備は出来ている」
「みたいだな。最後にイトウ」


 イトウは薄いタンクトップの格好で鈍色に輝く巨大なハンマーを持っていた。硬い敵には鈍器、セオリー通りだな。


「あたしも準備万端よ」
「よし、じゃあ始めるぞ」
「その前に一ついいか?」
「なんだ?」
「あいつらは何なんだ?」


 そう言いながら、ミエルが村へと繋がる道へ目を向ける。
 そこには村人のドワーフたちが家の陰に隠れながら、こちらを覗いていた。ひそひそと囁き声が聞こえてくる。


≪あの人達何してるの?≫
≪なんでもゴーレムを倒しにきたらしいよ≫
≪坑道で働けるようになるのか!?≫
≪でも、あんな少人数でゴーレムを倒せるの?≫
≪村長が許可を出したみたいだし、大丈夫じゃない?≫
≪でも……≫


 こんな調子で期待半分、疑い半分といった様子でこちらを見ている。


「話を聞く限り、特に害はなさそうだ。無視していくぞ」


 村人から目を離して、これからの流れを軽く確認する。


「……以上だ。質問はあるか?」


 俺の質問に3人は首を振る。この3人は理解力が高くて説明が楽でいいな。


「俺は肝心のスーパープラチナを鍛冶屋から受け取って来る。1分くらい待っていてくれ」
「了解」


 俺は全速力で鍛冶屋に駆け出す。鍛冶屋にたどり着くと扉を蹴り飛ばしながら開ける。
 驚いた様子の店主におれは近付く。


≪親父、出来てるか?≫
≪あ、ああ≫


 困惑しながらも鍛冶屋の親父が注文したスーパープラチナを出す。注文通りスーパープラチナが削られ取っ手のようになっている。これで持ち運びが便利になった。


≪ありがとう。助かったよ≫
≪いいって事よ≫


 親父に頭を下げて、魔道具を取っ手に付ける。
 そして、アイテムボックスに入れて鉱山へと走る。


「待たせたな。始めてもいいか?」
「問題ない」


 俺はMPを遮断する布を被って足場に乗る。


「打ち合わせ通り俺がスパゴレを引き付ける。お前らが戦闘が出来るように構えておけ」


 そう言って昨日と同じように洞窟へ入る。
 昨日と同じルートでスパゴレの元へと向かう。昨日よりは気持ちミニゴーレムが減っているし、スムーズに進めている。
 何の障害も無くスパゴレの元へとたどり着く。スパゴレは昨日と同じように壁を削って鉱石を食べている。
 俺はアイテムボックスからスーパープラチナを取り出して魔道具に魔力を込める。
 瞬間、今まで見向きもしなかったスパゴレがこちらに向く。そして、もの凄い勢いでこちらに走って来た。予定通りだ。
 俺はスーパープラチナを持って出口に向かって走る。スパゴレも追ってくるが、流石に俺の早さに追いつくことは出来ない。
 スーパープラチナの重さもそこまで気にならない。想定していた魔道具の使い方じゃないが、思った以上に使い方に幅がある。作っておいて良かったな。
 数分の追いかけっこを経て、出口までたどり着く。前と同じように出口を出ると、ワイヤーを使って足場から飛び降りる。
 着地して3人の元へと走る。


「全員構えろ!」


 俺は叫びながら持っていたスーパープラチナを置いて足場を見上げる。スパゴレは足場の上に乗っているが、ミニゴーレムと違って落下せずにこちらを覗き込んでいる。やっぱり他と比べて知性があるな。
 俺はスイッチを押す。すると、事前に仕掛けていた爆弾が轟音を上げて爆発し、足場が破壊されていく。
 スパゴレが落下し着地の衝撃で地面が揺れる。落下の衝撃でスパゴレの表面に付いていた岩が剥がれ落ちる。すると、岩で隠れていたスーパープラチナがが朝日に照らされて輝きを放つ。
 後ろでは、多数のスーパープラチナを目撃した村人の感嘆が聞こえてくる。


「あれ全部がスーパープラチナか?」
「そうだ」
「かなり多いわね?あれだけあれば盾が何十個も作れるわよ?」
「……売ればいくらになるんだ?」
「相場にもよるが、今は50億って所だな」
「大金持ちになれるな」
「雑談はここまでだ」


 スパゴレが立ち上がりこちらを見据えてくる。スパゴレの防御と攻撃は通常のゴーレムよりも圧倒的に高い。
 普通であれば広い所で物理攻撃を殺到させてダメージを与えて倒す。しかし、今はそんな事をしている暇はない。高火力で押し切ってやる。


「作戦通りいくぞ!イトウ!」
「分かったわ!」


 俺は新月を抜いてイトウと一緒にスパゴレに突進する。
 スパゴレの大振りの腕を回避して、煙幕多めの爆弾を放る。黒い煙がスパゴレの視界を覆って視界を覆う。
 その隙にイトウがハンマーを振りかぶりスパゴレに攻撃する。


「おらああ!」


 雄々しい叫びと共にイトウの一撃が炸裂する。俺はイトウのハンマーに合わせて新月を投げる。
 新月はハンマーとスパゴレの中に入り込み、釘の要領でスパゴレに突き刺さる。しかし、スパゴレの体がかなり固く、薄くヒビを入れるだけに終わった。
 俺は次の手を打つために合図を出す。


「ミエル!ロット!」


 俺の合図と共にミエルがスパゴレに突進する。その後ろでロットが回転して攻撃の威力を溜めている。
 ロットのスキルは武器を回転させるほどに威力が上がる。体に負担がかかるから見境なく上げる事は出来ないが、それでもかなりの威力を上げる事が出来る。


「だが、それだけは足りない」


 そこでミエルの出番だ。ミエルがいれば足りない攻撃力を補うことが出来る。
 ミエルはヒビが入って怯んでいるスパゴレに向かって大剣を構える。すると、スパゴレは近付いてきたミエルに向かって大きな腕を振り下ろす。
 ミエルは避けようとせずにスパゴレに突っ込む。それを見たロットもスパゴレに向かって突進した。


「……行くぞ!」
「ああ」


 ロットは大斧を振りかぶって…………
 ミエルにスパゴレとロットの攻撃が命中する。瞬間、ミエルの体が虹色に光り完全にダメージを遮断する。ダメージを無効化するプロフェクションガードだ。
 このスキルはタイミングを合わせれば、複数の攻撃を無効化出来る。タイミングはかなりシビアだが、ミエルの腕があれば十分に狙える。
 そして、虹色の光は大剣に吸い込まれていき大剣が輝く。


「ダブル……アップ!」


 受けた攻撃の威力の倍を大剣に乗せるスキル、ダブルアップ。最強の一撃であるロットの攻撃とスパゴレの剛腕、それの2倍の威力になるとどうなるか。
 ミエルが虹色に輝く大剣をスパゴレのヒビに向かって振り下ろす。


「うおおおおおおおおおおお!」


 大剣がスパゴレに命中し、体を砕きながら壁に叩きつけた。
 スパゴレは光の粒になりながら消え、後には大量のスーパープラチナだけが残った。


≪≪≪おおおおおおお!≫≫≫


 背後から村人たちの感嘆の声が聞こえてくる。
 何とか倒せたが、時間としてはギリギリだ。さっさと王都へ帰ろう。


「終わったな。さっさと帰るぞ」
「分かっている」
「……そうしよう」


 3人を連れて村の外へと向かおうとする。しかし、イトウだけはその場を動こうとしなかった。


「どうした?」
「ごめんね、あたしはこの村に残るわ」
「そういえば、鍛冶を見ておきたいって言ってたな。盾の仕上がりが遅れなければ別にいいぞ」
「そう言ってくれると助かるわ」


 イトウと村の出口まで一緒に向かう。バギーバイクを4つ出して、1つを村の門の前に置く。


「バギーバイクは置いておく。盗られるなよ?」
「分かってるわよ」
「世話になったなイトウ」
「じゃあねミエルちゃん。ロットさんもまた会いましょう」
「……ああ」


 ロットはイトウに軽く挨拶をすると、バギーバイクに乗る。イトウはロットにウインクすると手を振った。


「じゃあね」
「おう、またな」


 こうして、俺達はマトトの村を後にしたのだった。
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