魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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Ifストーリー えらいねー

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※今回は本編とは別の世界線のお話です。


 とある日の昼、ホウリを抜いたスターダストの皆で居間でゆっくりしておった。


「平和ですねー」
「そうだねー」


 湯呑でお茶を飲みながら、わしらは平和を享受していた。すると、玄関からインターホンが鳴り、来訪者の存在を告げてきた。


「誰でしょうか?」
「わしが出よう」


 居間を出て玄関に向かい扉を開ける。すると、見覚えのある白衣を着たやる気のなさそうな男が立っていた。


「ミント?」
「よお、ホウリいるか?」
「いないぞ」
「そうか。だったら家の中で待たせてもらおう」
「おい、ちょっと待つんじゃ」


 ミントがわしの言葉を聞かずに家に入っていく。まあ、知らぬ仲でもないし家に入れるくらいでよいか。何か変な事をしようとしたらシバいて家の外に放り出そう。
 ミントと共に居間に入ると、皆が少しびっくりしたような表情になる。


「ミントさんじゃないですか」
「邪魔するぜ」
「邪魔するなら帰ってやー」
「俺は邪魔なのか?」
「あれ?ホウリお兄ちゃんが『邪魔する』って言われたら、そう言えって言われたよ?」
「ホウリらしいな」


 ミントがそう言って椅子に座る。そんなミントにミエルが不思議そうに聞く。


「それで何か用か?」
「発明品が出来たんだが、テストがまだでな。ホウリにテストを頼もうと思ってな」
「どんな発明品なんじゃ?」


 ミントがアイテムボックスから、缶ジュースくらいの大きさの懐中電灯のような発明品を取り出す。


「これが発明品、セトゴッドだ」
「何に使うんですか?」
「これを使えば若返る事が出来る」
「なんて?」
「若返りだ」
「……それって凄い発明品じゃないんですか?」


 ロワがセトゴッドを手に取ろうとする。わしはその手を掴み、セトゴッドに触れられないようにする。


「得体のしれない物を気安く触るでない。怪我では済まぬぞ?」
「す、すみません……」
「それで、若返りって具体的にどういう事だ?」


 ミエルの質問にミントがニヤリと上機嫌に笑う。


「前にホウリから魔剣を預かっただろ?あれを解析していくと色んなことが分かってな。若返りが出来そうだって思ったんだ」
「それで出来たのか?」
「ああ。これが完成すればきっと凄いと思うんだよ。具体的にはだな───」


 子供のようなキラキラした目でミントが語る。こいつは本当に発明が好きなんじゃな。
 ミントが語る理屈はあんまり話す理屈は分からぬ。皆も同様のようで、あまりピンときていないようじゃ。
 適当な所でロワが手を挙げてミントの話を遮る。


「お話はよく分かりませんが、要は発明品をホウリさんにテストして貰おうって事ですか?」
「……そうだ」


 話を切られて不機嫌になるミント。


「それでホウリが来るまで待つのか?」
「そのつもりだったが、あいつがいつ帰って来るかって分からないんだよな?」
「そうじゃな。夜には帰って来ると思うが、具体的な時間は分からぬのう」


 ミントが困ったようにセトゴッドを手に取る。


「早くこいつの性能を試してみたいな」
「お主自身で試せば良いじゃろ?」
「危険だし嫌だ」
「そんな物をホウリに試そうとしておるのか」


 わしは呆れながらもミントの前に湯呑を置く。


「それで?どうするつもりじゃ?」
「そうだな……」


 ミントはセトゴッドを弄りながら考え込む。すると、何かを思いついたように手を打った。


「そうだ、お前たちがこの発明品のテストをすればいいんだ」
「今の話を聞いて、やると言う訳ないじゃろ」
「本当に良いのか?フランって500歳を超えているんだろ?少しくらい若返ってみたいとは思わないのか?」


 その言葉にわしは少し心が揺れ動く。
 わしの寿命は残り多くない。この発明品で若返る事が出来れば、まだ皆と過ごせるかもしれぬ。その考えがわしの心を揺れ動かしていた。


「フランお姉ちゃん?」


 わしが固まっておると、ノエルが心配そうに袖を掴んできた。その表情を見てわしは正気に戻る。
 わしはそんなノエルにとびっきりの笑顔を向ける。


「何でもないわい」
「その発明品は持って帰るんだな。私達はそんな怪しい物を使うつもりはない」
「……そうか」


 きっぱりと断られたミントは残念そうに席を立つ。


「だとしたら、ここにいる意味は無いな」
「そうなんですか?面白そうなので僕は使っても良いと思ってたんですが……ゴフュ!」


 ロワが余計な事を言いそうになり、肘打ちで黙らせる。
 かなり異様な光景であったが、もうどうでも良くなったのかミントは無表情で居間を出ようとする。そんなミントが今を出る前にぼそりと呟いた。 


「……若くなればギャップで好きな奴に惚れられるかもな」
「少し考えたんだが、人助けをするのに多少のリスクは関係ない。私が協力しようじゃないか」


 そう言ってミエルがミントから発明品を奪い取る。こやつは本当に……。
 わしが呆れておると、ミエルが上機嫌なミントから使用方法を聞いていた。


「ここから光が出るから若返る対象に向けて、ここのボタンを押せば使える」
「なるほど」


 使用方法を聞いたミエルは意気揚々とセトゴッドを使う。


「いざ!」


 ミエルはセトゴッドのボタンを押す。すると、セトゴッドから光が出て来てミエルに命中した。
 瞬間、ミエルの体がみるみるうちに縮み始めた。声も上げずに胸を抑える。


「ミエルさん!?」


 ロワが心配そうな声を上げる。じゃが、ミエルはそれでも声を上げずに胸を抑える。ロワがどうしたものかとオロオロしていると、ミエルがノエルよりも小さくなる。そして、ミエルの若返りはそこで止まった。


「ミエルさん?大丈夫ですか?」
「苦しくないか?」
「ノエルが治療した方が良い?」


 わしらが心配そうにミエルに話しかけると、ミエルは顔を上げる。そこには5歳くらいに幼くなったミエルがいた。体だけ縮んでおるから、元から来ている服がブカブカになっておる。
 そんなミエルはわしらを視界に入れると、可愛らしく首を傾げた。


「あれ?あなた達誰?」


 本当に若返ったのを見てわしらが困惑している中、先に動いたのはノエルじゃった。


「可愛い~!」


 ノエルがミエルをぎゅっと抱きしめる。当のミエルはというと、いきなり抱き着かれてびっくりしたのか、咄嗟にノエルを突き放す。


「いきなり何するんですか!」
「あ、ごめんね。ノエルはノエル・カタラーナ。ノエルお姉ちゃんって呼んでね」
「ノエル?え?パパとママはどこ?」


 いまだに今の状況が飲み込めていないのか、ミエルが怯えた様な表情になる。
 その様子をミントだけは面白そうに見ながらメモを取っていた。


「なるほどな、肉体だけじゃなくて記憶も若返るのか。改良の余地はあるな」
「そんな事言っとる場合か?これどうするつもりじゃ?」
「試作品だから時間経過で戻る筈だ」
「時間経過ってどのくらい?」
「さあな。それも確認する為のテストだ」


 なんとも頼りない言葉じゃが、分からんからテストしておる訳じゃし仕方ない。


「ミエルを問題はどうするかじゃな」


 ミエルはというと、相変わらず怯えているようで部屋の隅で震えている。ノエルが優しく話しているが、全く心を開く気配がない。


「もう、考えたりするのは疲れたのう。暴れたりしないからこのままで良いのではないか?」
「流石にそれは酷いんじゃないですか?」


 本気で面倒になって考えることを放棄しそうになる。
 ロワに言われて何とか思考を回す。しかし、何も思いつかん。


「ホウリが来るまで頑張るか」
「まずはミエルさんと仲良くなる所からですね」
「じゃがどうする?ノエルよりも幼い者との接し方など分からぬぞ?」
「せめて、同じくらいの子がいれば良いんですが……。あ、そうだ」


 ロワが何かを思いついたのかポンと手を叩く。そして、ロワはミエルが使っていたセトゴッドを手に取る。


「僕が子供になれば良いんです。同じ子供だったら話も聞いてくれるでしょう」
「待たんかい!その発明品は記憶まで……」
「スイッチオン!」


 わしの言う事も聞かずにロワがセトゴッドを起動する。思考が鈍っておって反応が遅れた!このままでは被害者が増えるだけじゃ!
 そう思ってても既にロワは光に包まれており、胸を押さえ若返りが進んでおる。ここで下手に手を出しては、わしまで被害を受ける可能性がある。ここはそのまま見守るしかない。


「くっ……考え無しに使うでない……」


 わしの呟きは発明品を使ったロワには届かない。
 当のロワはどんどんと若返りが進行している。そして、ミエルと同じくらいの年齢まで若返ると、やっと若返りが止まった。
 ロワも来ていたからだが縮み服がブカブカになっている。それに付けていた布がズレ落ち、首に掛けるような形になる。


「これは……」


 露わになったロワの素顔を見てわしは驚愕する。今のロワはさわやか風のイケメンという感じじゃ。しかし、5歳くらいのロワはかなり可愛いらしいという感じじゃった。
 目はクリクリしており、表情も非常に愛らしい。将来が有望である事はみれば明らかじゃ。
 ロワはわしを見ておったが、ミエルと同じように首を傾げた。


「ここ何処?お姉ちゃん誰?」
「あー、どうしたものかのう?」


 記憶は5歳くらいじゃろうし、どう説明したものか。ロワじゃし適当で良いか。


「お主の両親に王都を案内するように言われてのう?」
「そうだったんだ!よろしくお願いします!」


 ロワが元気よく頭を下げる。
 確かにロワじゃし適当で良いかと思っておったが、あっさりと信用し過ぎではないか?


「む?そうじゃ」


 ロワが単純であるのならば、ミエルの相手をしてもらえば良いのではないか?同じ子供であれば気が合うかもしれぬし。
 わしは思い立ってロワに話をしてみる。


「ロワや、あの子と遊んでくれないか?」
「あの子?」


 ロワが怯えているミエルの方を見る。


「あの子と遊べばいいの?」
「名前はミエルという。少し会話するだけでも良いから頼めぬか?」
「分かった!」


 ロワが元気よく頷く。あつかいやす……素直な子で良かったわい。
 ロワが顔をうずめているミエルに近付き笑顔で話しかける。


「ミエルちゃん!遊ぼ!」
「……誰?」
「僕はロワ!よろしくね!」


 ロワが手を差し出すと、ミエルはロワの方を向く。すると、ロワを見たミエルの顔がどんどんと赤くなっていった。
 そんなミエルにロワは首を傾げる。


「ミエルちゃんどうしたの?気分悪いの?」
「……!なんでもない!」


 ロワに顔を覗かれて咄嗟に顔を背けるミエル。明らかに惚れておるな。十数年後には惚れるし自然な事か。
 ロワはというと、ミエルの言葉を信じたのか、笑顔になって再び手を差し出す。


「それじゃ、遊ぼっか」
「遊ぶの?だったら皆でおままごとでもしない?」
「いいね!ミエルちゃんもやらない?」
「私は……その……」


 ミエルは自分もやると言い出せぬのか、もじもじとしている。


「ミエルちゃん?もしかして、おままごと嫌いだった?」
「いや、そうじゃなくて……」
「じゃあやろっか。ノエルちゃんはお母さん役で、僕がお父さん役ね」
「じゃあノエルは子供役!」
「お、お母さん役だなんて……」


 ロワの言葉にミエルが顔を真っ赤にする。
 その後、3人はおままごとを始める。仲良さそうにしておるから、これで何とかなるかのう?
 そう思い、興味深そうにメモを取っているミントと共に3人を見守るのじゃった。
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