魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第二百十一話 本当に裏切ったんですか!

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 一週間後、噴水広場には大きな演説のステージが出来ていた。ノエルはホウリお兄ちゃんと一緒にステージの端にある待機テントに来ていた。


「いよいよだ。準備は良いな?」


 ノエルは返事をせず頷く。ホウリお兄ちゃんはそれを見てテントの中に入っていく。
 後を追ってテントの中に入ると、スーツ姿の人たちが沢山いた。テントの中の雰囲気はかなりピリ付いていて、緊張感が高まっている。
 スーツの一人がホウリお兄ちゃんに話しかけてくる。


「ホウリさんですね。お待ちしておりました」
「お疲れ様です。領主様はどこに?」


 軽く見た感じ、テントの中にはそれっぽい人はいない。どこにいるんだろ?


「領主様はお忙しく、まだお越しになっておりません。演説までにはお越しになると思います。ところで、そちらの方は?」


 スーツの人がホウリお兄ちゃんの後ろにいるノエルを手で示す。


「こいつは今回の護衛だ」
「その方がですか?」


 ホウリお兄ちゃんの答えにスーツの人は首をかしげる。


「失礼ですが、信用できるのですか?」
「なんでそう思ったんですか?」
「恰好からですが?」
「人を見た目で判断してはダメなんですよ?」
「いやでも……」


 スーツの人が疑いの視線をノエルに向けて来る。
 ノエルはフランお姉ちゃんから借りた鉄仮面を被っていて、黒いローブを羽織っている。髪もホウリお兄ちゃんの審判の色ブラックオアホワイトで黒く染めていて、変装は完璧だ。
 変装しないとノエルが目立ってしまうから、しょうがないね。ちなみに、声もあまり出せない。……あれ?どうやって意思疎通すればいいんだろう?まあいっか。
 ノエルの紹介で微妙な雰囲気になるテント。そんな中でホウリお兄ちゃんが紹介を続ける。


「見た目は怪しいと思いますが腕は確かですよ」
「怪しいのは自覚しているんですね。お顔は見せていただけないんですか?」
「申し訳ございませんが、都合により素性を明かすことは出来ません。こちらでは把握しているので問題はないと思いますよ」
「見たところ、かなり幼いようですが?」
「腕は確かですよ」
「はぁ……」


 顔をひきつらせたスーツの人は所定の場所まで戻っていった。良く分からないけど、大丈夫みたい。


「じゃ、俺は外で護衛しますので、後はこの怪しい奴に任せます」
「もう怪しいって認めましたね!?」


 そう言い残してホウリお兄ちゃんはテントの中から去っていった。後にはノエルと顔を見合わせているスーツ姿の人達が残った。


「…………」
「…………」


 誰も何も言わず、重苦しい雰囲気だけが流れていく。正体を隠す必要が無ければいっぱい話すんだけどなー。皆も仲間みたいなものだし、仲良くなっておきたいな。でも、喋れないんじゃしょうがないよね。
 時計を見ると、演説まで1時間くらいある。それまでこの雰囲気が続くのは耐えられないかなぁ。
 雰囲気を誤魔化そうと、持ち物の調子をみてみる。今回は拳銃は持っていない。撃っちゃうと音でバレちゃうしね
 今回は護衛だし遠距離攻撃は用意していない。その代わり、拘束する道具は結構用意している。
 その一つが腕時計型ワイヤーだ。腕時計の形をした装置の横からワイヤーが引き出せるようになっている。ワイヤーは横のスイッチで好きな長さで切断できる。
 ただし、ホウリお兄ちゃんのように飛ばしたりMPを使って操作したりは出来ない。あくまで、ワイヤーをコンパクトに仕舞えて好きに取り出せる装置だ。
 犯人を見つけたらこれで手足を縛って行動不能にする。そういう使い方が主だろう。
 後はホウリお兄ちゃんから貰った魔法巻物スクロールとかナイフとかかな。持ち物の数を絞ったから確認する物も少ないや。
 確認も終わっていよいよやる事がなくなったノエルはテントの中を観察する事にした。
 スーツの人たちの数は6人。ホウリお兄ちゃん曰く、全員が何かしらの防御スキルを持っているらしい。何を持っているか知らないけど、6人もいれば大丈夫かな。
 次にテントの中にある物だ。と言ってもテントの中の物はかなり少ない。演説に使うマイクとスピーカー、後は領主さんが座る椅子くらいかな。
 スーツの人達は座っているし、明かりは四隅にあるランプだけだ。領主さんは演説の直前に来るみたいだし、あんまり物は必要ないのかな。
 とりあえず、怪しい所が無いか一つ一つ調べようかな。


「貴様、何をしている」


 ランプに手を掛けようとした時、スーツの人たちの一人がノエルの手を掴んできた。全員、似たような恰好で特徴が無いから、誰が誰だかわかりにくいかな。
 いやいや、今はそんな事はどうでも良い。何とかして調査しないと。


「聞こえなかったか?何をしているんだと聞いているんだ」


 スーツの人はノエルを掴む力を強める。振り払う事も出来るけど怪我させたくないし、そもそも話せない。
 ……流石に話せないのは厳しいし、もう話しても良いんじゃないかな?
 バレる可能性はあるけど、声くらいじゃ簡単にバレないでしょ。声色と口調だけ変えて話しちゃえ。口調はホウリお兄ちゃんで、声はフランお姉ちゃんの真似をしよう。


「おい、なんとか言えよ」
「……このランプに爆弾が仕掛けられている可能性があるだろ?」
「あ?」


 スーツの人が不機嫌そうに眉を顰める。すると、後ろに居たスーツの人が話し始める。


「ここにある物は全部私たちが確認したわ。あなたが確認する必要はないわよ」
「一応ノエ……俺も確認しておこう」
「必要ないわよ」
「俺たちを疑うのか?」
「ああ。やれることはやっておこうと思ってな」


 すると、スーツの人がノエルの胸元を掴み上げ、顔を近づけて来る。


「あのな?お前がキムラ・ホウリにとってどういう奴かは知らない。だがな、俺たちは選りすぐりの護衛だ。爆弾を見逃すと思うか?」
「思わない」


 ノエルの言葉にスーツの人が目を丸くする。その隙にノエルは手を叩いて、力が抜けた瞬間に脱出する。
 スーツの人は真っ赤に腫れた手を押え、ノエルを睨んでくる。


「どういう意味だ?」
「お前らが優秀なのは見ればわかる。だが、俺は自分の目で確かめないと納得できないんだよ」
「……ちっ、好きにしろよ」


 スーツの人は舌打をして、定位置に戻っていった。
 ランプに手を掛けるけど、他の人たちからは何も言われなかった。あんまり歓迎されてないみたいだけど、調べる事は出来るみたい。よかった。
 改めて部屋の中の物を調べていく。でも、スーツの人たちの言う通り、怪しい物は見つからない。うーん、やっぱり杞憂だったかな?
 そう思って最後のマイクとスピーカーを調べてみる。ミントお兄ちゃんに発明品については教えて貰ったから、分解して組み立てるくらいは出来る。ミントお兄ちゃんに感謝だ。
 ナイフでスピーカーを分解してみる。爆弾とかじゃなくても何か面白いのないかなー。


「んん?」
「どうした?」


 ノエルは分解したスピーカーの中身を見せる。そこには小さな時計と細長い筒状の物が入っていた。もしかしなくても、これって……。


「時限爆弾だよな?」
「……そうだな」
「本当に!?」


 さっき話したスーツの人もやってくる。


「確かに爆弾ね」
「なんでだよ!全員で調べた筈だろ!?」
「調べた後に持ち込まれたんだろ」
「いったい誰が!?」
「……ねえキューレ」


 スーツの人が領主の椅子の傍にいる人に視線を向ける。


「あなた、確かスピーカーが使えるか確認してたわよね?」
「…………」


 キューレと呼ばれた人は無言で立ち尽くしている。そんなキューレさんに、さっきノエル掴みかかった人が詰め寄る。


「どういう事だ!説明しろ!」
「…………」


 何も答えようとしないキューレさんにスーツの人が掴みかかる。しかし、キューレさんはその手を振り払うと、テントの外へと走った。


「キューレ!」


 手を振りほどかれたスーツの人はキューレさんを追おうとする。しかし、キューレさんが手を後ろに伸ばすと、スーツの地面から伸びた鎖がスーツの人の足に巻き付いた。


「な!?」


 スーツの人が転んでキューレさんがテントの外に出ようとする。ここで逃がしちゃうと不味いよね?
 そう思ったノエルは魔装を使ってキューレさんと距離を詰める。キューレさんは再び地面から鎖を生やしてくる。ノエルはMPを込めたナイフで鎖を切断して、一気に距離を詰める。
 まさか鎖が切断されるとは思っていなかったのか、キューレさんの行動が一瞬だけ止まる。その隙にキューレさんの懐に潜りこんで、足払いで転ばせる。
 転んだキューレさんの上に乗って足と手をワイヤーで手早く縛る。これでよし。
 呆気に取られている護衛の人たちに向かってノエルは話す。


「俺は外の様子を見て来る。爆弾の解除とこの人の処遇はお前たちに任せていいか?」
「あ、ああ」
「助かる」


 ノエルはテントの外に出ようと入口に手を掛ける。


「おい」


 瞬間、後ろから声を掛けられた。振り向くとノエルに掴みかかったスーツの人が立ち上がっていた。そして、言いにくそうに口をモゴモゴさせると、言いにくそうに話した。


「その……助かった。感謝する」


 その言葉を聞いたノエルは手をbにして答え、テントから出る。
 護衛の人の中にも暗殺者さんがいた。相手がこれだけしか手を打っていないと思えない。これは、調査を早急に進めないと。
 ノエルは他の人の視線が合ない事を確認し、街の中へと走った。
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