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第二百四十七話 さあ…闇のゲームの始まりだぜ
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「つまり、ステータスというのは本人の許可なく閲覧することは禁止されており、違反すると投獄される恐れが……」
6時間目の社会の授業を聞きながら、ボーっと窓の外を眺める。
決して授業が退屈って訳じゃない。なんだか最近、刺激が足りないなー、ふとそう思っただけ。
おつかいしていた時は色々と楽しかったなー。失敗したときもあったけど、領主さんの護衛とか、工場の襲撃とか、普通じゃ出来ないこともやったし、何より楽しかった。
けど、最近はお勉強したり、訓練したり、皆と遊んだり、凄く平和だ。それは良いことなんだけど、刺激が足りなくて退屈。そんな気持ちになっちゃう。
窓の外で風で揺れている木を見ていると、スピーカーからチャイムが鳴った。
(キーンコーンカーンコーン)
「今日の授業はここまでです。10分後にホームルームを始めますので、待機しておいてください」
そう言ってナマク先生が出ていった瞬間、皆が一斉に騒ぎ始めた。
「終わったー」
「今日どこ行く?」
「あ、そろそろ宿題しないと」
「だったらさ、図書館に行かない?」
解放感からか、皆のテンションが高い。けど、今日のノエルはテンションが上がらない。
「あれ?どうしたのノエルちゃん?」
「コアコちゃん」
机で突っ伏しているとコアコちゃんがやって来た。
「別にどうもしないよ?」
「でも、いつもより元気ないよ?何かあったんじゃないの?」
「何も無いよ。むしろ、何も無いのが原因なんだし」
「どういうこと?」
ノエルは今の気持ちを説明する。すると、コアコちゃんが首を傾げた。
「うーん?要はやる事が無くて暇ってこと?」
「そんな感じ」
どうにも何かをやろうという気持ちが出ない。どうしようか。
「コアコちゃん、何か面白いこと無い?」
「いきなり言われても、何もないよ」
「ほんと?おばけが出たり、怪獣が出たりとかで良いんだよ?」
「要求が重すぎるんだけど?」
そんなことを話している内にドアが開く音がした。視線だけドアに向けると、ナマク先生が戻って来ていた。
「これからホームルームを始めます。皆さんは席についてください」
ナマク先生の言葉に、皆は大人しく席に着き始める。ノエルも体を起こして、ナマク先生の話を聞く。
「これからホームルームを始めます。まずは遠足についてですが──」
ナマク先生の話を聞きながら、ノエルは再び窓の外を眺める。ちょっとでも良いから、何か変わったことでも起こらないかな?
「───連絡は以上です」
ナマク先生の話が終わり、ノエルも放課後に何をしようかと考え始める。
「それと、今から呼ぶ生徒はホームルームの後、職員室に来てください。ノエル・カタラーナ───」
唐突に自分の名前を呼ばれて、思わずナマク先生を向く。
その後、サルミちゃん、コアコちゃん、マカダ君、パンプ君の名前が呼ばれた。
「───以上です。それではホームルームを終わります。十分に気を付けて帰宅してください」
ナマク先生は顔色一つ変えずに教室を出ていった。ノエル達、何かしたっけ?
同じことを思ったのか、サルミちゃんも血相を変えてやって来た。
「あんた何したのよ!」
「ノエルじゃないよ!」
「嘘おっしゃい!あんたが何もしていないんだったら、なんで呼ばれるのよ!」
「ノエルが原因だったらノエルだけ呼ばれるよ!皆が呼ばれるんだから、ノエルのせいじゃないよ!」
「ほらほら、ここで言い争っても仕方ないよ」
ノエルとサルミちゃんの言い合いに、パンプ君が割って入ってくる。マカダ君も後ろで腕を組んでみている。
『パンプの言う通りだ。今は職員室に行こう』
「そ、そうだよ。仲良くしよ?」
「……あんた達の言う通りね」
「ごめんなさい」
「私も悪かったわよ。いきなり過ぎて混乱しちゃったわ」
「とりあえず、職員室に行こうか」
「はーい」
周りの皆が放課後に何をするのか話している中、ノエル達は恐る恐る職員室に向かった。
廊下を歩いている間、ノエル達は無言だった。さっきは皆もどうなるか分からないって言ってたけど、あんまり良い話じゃないって思ってるみたい。
重苦しい空気の中、ノエル達は職員室の前に立つ。
「……開けるわよ?」
サルミちゃんが引き戸に手をかけ、ノエル達は神妙に頷く。
「失礼します」
ガラガラという音と共に扉を開ける。職員室の中では色んな先生が席で仕事をしていた。
ナマク先生も奥側の席で小テストの採点をしている。皆でナマク先生の所に行くと、ナマク先生もこっちに気付いて顔を上げた。
「来ましたね」
「その……どんな用ですか?」
コアコちゃんが恐る恐る話を切り出す。
すると、ナマク先生は引き出しから一枚の紙を取り出した。
「オカルト研究クラブが正式に受理されました」
「え?ほんと?」
「本当です」
「よ、良かった~。何か叱られるんじゃないかと思ったよ~」
「皆さんは成績も良いですし、何も叱ることはありませんよ。ただ、ノエルさんは騒がしいことが多いので注意してくださいね」
「はーい」
授業が終わると叫んでいたのがいけなかったのかな?
とはいえ、何にもなくて一安心だ。皆も胸を撫でおろしている。
そんな様子をナマク先生は不思議そうに見ながら立ち上がる。
「では、これから部室に案内します。着いてきてください」
「はーい」
走り出したい欲求を堪えて、大人しくナマク先生の後ろを歩く。
校舎の2階に上がり、廊下の奥の教室の前で立ち止った。
「ここがオカルト研究クラブの部室です」
「遂にクラブ活動が出来るんだね!」
『早く入ろうぜ!』
「おっさきー」
『あ、ズルいぞノエル!』
「私が部長だよ!私が先に入るべきだよ!」
皆が我先にと部室の中に入る。きっと、色んな本とか、怪しい道具とかが所狭しと……
「あれ?」
ワクワクしながら扉を開けると、部室の中には大きな机が1つと6つの椅子があるだけだった。
中に入って周りを見渡してみて何も無い。
「あれ?本当にここが部室?」
「何にも無いじゃない」
「最初はどのクラブも同じです。最初の活動を始めますので席に着いてください」
ノエル達は大人しく席に着く。すると、机の中央にナマク先生が紙を置いた。
「『必要物資申請書』?これって?」
「クラブ活動に必要な物を記載してください。それを生徒会が吟味し、許可が出されられた物は後日、部室に届けられます。また、今後の部費の目安にもなるので、必要な物は忘れずに記載してください」
「結構重要なんだね」
「この申請書を書くことが最初のクラブ活動ってこと?」
「その通りです」
「よーし、じゃあ早速……」
ノエルが申請書を取ろうとすると、右から目にも止まらぬ速さで奪われていった。
びっくりして右を見てみると、パンプ君が紙を握りしめていた。強く握りしめすぎてちょっとだけ紙がクシャってなってる。
「パンプ君?」
『どうしたんだ?』
「君達、まさか適当に書こうと思ってないだろうね?」
「その通りだけど?」
「やっぱりね」
パンプ君がため息を吐いて、申請書をアイテムボックスに仕舞う。これで、ノエル達は申請書には手が出せなくなっちゃった。
「何するの!?」
「まさか、好き勝手に申請しようと──」
「そんな訳ないでしょ」
パンプ君が申請書の代わりに手帳を取り出す。
「僕が思うに、適当に物を書くのは逆効果だよ」
「なんで?いっぱい書いた方がお得そうじゃない?」
ノエルの言葉にパンプ君は首を振る。
「いっぱい書くと、本当に必要じゃないものも買うようなクラブ、つまり無駄遣いするクラブって思われるんだよ」
「それはダメなの?」
「部費が上がりにくくなるよ。無駄遣いするクラブには、あんまりお金を渡したくないでしょ?」
「そっか」
「いっぱい申請しても大部分は認められないだろうし、本当に必要な物だけ申請しようね」
「なるほどね」
いっぱい申請しても、普通に申請するよりちょっとだけ物が増えるだけ。だったら、今後のために最初は物が少なくても、部費が上がりやすい方を選ぶ。確かにそっちの方が良いね。
「やるんじゃないの」
サルミちゃんが感心したようにパンプ君を見る。そして、何かを決心したように勢いよく立ち上がった。
「決めたわ!部費の管理はパンプに任せるわ!」
「え?」
サルミちゃんがパンプ君をビシッと指さす。
パンプ君は何のことだか分からないのか、1分くらい固まる。ノエル達も突然すぎて、何も言えなかった。
『いきなりなんだ?』
皆が黙っている中で、マカダ君が質問を投げかけた。
「別に難しい話はしてないわよ。金勘定が得意なパンプに会計をしてもらう。合理的でしょ?」
『そういうのって部長が任命するんじゃないのか?』
「じゃあ、コアコが良いって言えばいいのね」
皆の視線は一斉にコアコちゃんに向く。
「あわあわ……」
コアコちゃんはしきりに視線を泳がせ、ノエルに縋りついてきた。
「ノエルちゃん、どうしよ~」
「んー、そんなに難しく考える必要ないんじゃない?」
「え?」
「コアコちゃんがどう思うのかを素直に言えば良いんだよ」
「でも……」
不安そうなコアコちゃんにノエルは手をbにして笑う。
「大丈夫!合わなかったら変えても良いんだから!」
「……分かった」
コアコちゃんは決心したように頷くと、パンプ君に向き直った。
「パンプ君、頼めるかな?」
「分かった。出来るだけやってみるよ」
「ありがと!」
コアコちゃんが笑いかけると、パンプ君が頭を掻いてソッポを向いた。
ん?パンプ君の耳、ちょっと赤くなってる?まさか?
ロワお兄ちゃんと話すときのミエルお姉ちゃんと同じ反応。間違いない。
そっかー。パンプ君ってコアコちゃんのことー。なるほどねー。確かにコアコちゃんって大人しそうで可愛いし、その気持ちは分かるなー。
『ん?何ニヤついているんだ?』
『べっつにー』
言いふらすことでも無いし、これはノエルの心の中に仕舞っておこう。
話を元に戻すために、ノエルは大きく手を叩く。皆の視線が集まったのを確認して話を始める。
「さあ!それじゃ、ここからは必要な物を決めていくよ!」
「けど、オカルトに何が必要かなんて知らないわよ?」
「そこは部長であるコアコちゃんに聞けばいいよ」
「私!?」
「なんで驚いてるのよ。あんた以外に詳しい人間いないわよ」
『それに、コアコが部を作りたいって言ったんだしな』
「えー?本当に私が決めて良いの?」
「勿論だよ」
「うーん、どうしようかな?パっと思いつくのはウィジャ盤とか呪術の本とかだけど」
「詳しいことは分からないけど、絶対に必要無いことは分かるわ」
「はい!お菓子は部費で買えますか!」
「買えません」
こうして30分の話し合いの結果、本棚、小物を仕舞う棚、何冊かのオカルト本を申請することになった。
☆ ☆ ☆ ☆
「申請する物も決まったし、今日のクラブ活動はここまでかな?」
「あ、そうだ。クラブ活動が始まったら皆に提案しようと思ってたことがあってね」
「なによ」
「この前、ここの近くで幽霊を見かけたんだ」
「幽霊?見間違いじゃないの?」
「本当だよ!物凄い速さでマントと鉄仮面を付けた人?が路地裏を駆けていったの!」
『怪しい格好をした人じゃないのか?』
「馬の何倍も速かったんだよ?あんな人いないよ!」
「私としては、物凄い早い不審者の線を推すわ」
「だからね、それを調査しようって思ってさ。オカルト研究クラブの初活動だよ!」
「初めの活動にしては良いんじゃない?って、ノエル?顔が青いよ?」
「え?そ、そんなこと無いんじゃないかな?」
『さっきから話に入ってきてないし、どうしたんだ?』
「何でもないよ!ま、前にコアコちゃんから聞いた話に似てるなって思っただけだよ」
「そう言えばノエルちゃんには先に話していたっけ。どう?面白そうだよね!?」
「う、うーん……止めた方がいいんじゃないかな?」
「なんで!?」
「コアコちゃん、近いよ」
「あ、ごめん」
「珍しいわね。こういう話、あんたならすぐに食いつきそうじゃないの」
「だ、だってさ、幽霊じゃなくて暗殺者とかだったら、危ないでしょ?だから、やめた方が良いんじゃないかなーって」
「馬鹿馬鹿しい。暗殺者なんている訳ないでしょ」
『俺は襲われたことあるがな』
「何か言った?」
『別に。けど、ノエルならそんな危険くらいで怖気づいたりしたりしないだろ?』
「そんなこと無いよ。ノエルほどに慎重な人はいないよ」
「慎重な人は廃工場に突撃しないんじゃないかな?」
「あんたさっきから変よ?」
「まさか、何か知ってるとか?」
「そんな訳ないじゃん!なんでノエルが怪しい人を知っているのさ!」
『それは分からないが、その慌てっぷりは何か知ってるだろ?』
「し、知らない!じゃあ、ノエル習い事の時間だから!またね!」
「あ!逃げた!」
「あんたが習う事なんて無いでしょ!皆、追うわよ!」
「うん!」
『おう!』
「分かった!」
6時間目の社会の授業を聞きながら、ボーっと窓の外を眺める。
決して授業が退屈って訳じゃない。なんだか最近、刺激が足りないなー、ふとそう思っただけ。
おつかいしていた時は色々と楽しかったなー。失敗したときもあったけど、領主さんの護衛とか、工場の襲撃とか、普通じゃ出来ないこともやったし、何より楽しかった。
けど、最近はお勉強したり、訓練したり、皆と遊んだり、凄く平和だ。それは良いことなんだけど、刺激が足りなくて退屈。そんな気持ちになっちゃう。
窓の外で風で揺れている木を見ていると、スピーカーからチャイムが鳴った。
(キーンコーンカーンコーン)
「今日の授業はここまでです。10分後にホームルームを始めますので、待機しておいてください」
そう言ってナマク先生が出ていった瞬間、皆が一斉に騒ぎ始めた。
「終わったー」
「今日どこ行く?」
「あ、そろそろ宿題しないと」
「だったらさ、図書館に行かない?」
解放感からか、皆のテンションが高い。けど、今日のノエルはテンションが上がらない。
「あれ?どうしたのノエルちゃん?」
「コアコちゃん」
机で突っ伏しているとコアコちゃんがやって来た。
「別にどうもしないよ?」
「でも、いつもより元気ないよ?何かあったんじゃないの?」
「何も無いよ。むしろ、何も無いのが原因なんだし」
「どういうこと?」
ノエルは今の気持ちを説明する。すると、コアコちゃんが首を傾げた。
「うーん?要はやる事が無くて暇ってこと?」
「そんな感じ」
どうにも何かをやろうという気持ちが出ない。どうしようか。
「コアコちゃん、何か面白いこと無い?」
「いきなり言われても、何もないよ」
「ほんと?おばけが出たり、怪獣が出たりとかで良いんだよ?」
「要求が重すぎるんだけど?」
そんなことを話している内にドアが開く音がした。視線だけドアに向けると、ナマク先生が戻って来ていた。
「これからホームルームを始めます。皆さんは席についてください」
ナマク先生の言葉に、皆は大人しく席に着き始める。ノエルも体を起こして、ナマク先生の話を聞く。
「これからホームルームを始めます。まずは遠足についてですが──」
ナマク先生の話を聞きながら、ノエルは再び窓の外を眺める。ちょっとでも良いから、何か変わったことでも起こらないかな?
「───連絡は以上です」
ナマク先生の話が終わり、ノエルも放課後に何をしようかと考え始める。
「それと、今から呼ぶ生徒はホームルームの後、職員室に来てください。ノエル・カタラーナ───」
唐突に自分の名前を呼ばれて、思わずナマク先生を向く。
その後、サルミちゃん、コアコちゃん、マカダ君、パンプ君の名前が呼ばれた。
「───以上です。それではホームルームを終わります。十分に気を付けて帰宅してください」
ナマク先生は顔色一つ変えずに教室を出ていった。ノエル達、何かしたっけ?
同じことを思ったのか、サルミちゃんも血相を変えてやって来た。
「あんた何したのよ!」
「ノエルじゃないよ!」
「嘘おっしゃい!あんたが何もしていないんだったら、なんで呼ばれるのよ!」
「ノエルが原因だったらノエルだけ呼ばれるよ!皆が呼ばれるんだから、ノエルのせいじゃないよ!」
「ほらほら、ここで言い争っても仕方ないよ」
ノエルとサルミちゃんの言い合いに、パンプ君が割って入ってくる。マカダ君も後ろで腕を組んでみている。
『パンプの言う通りだ。今は職員室に行こう』
「そ、そうだよ。仲良くしよ?」
「……あんた達の言う通りね」
「ごめんなさい」
「私も悪かったわよ。いきなり過ぎて混乱しちゃったわ」
「とりあえず、職員室に行こうか」
「はーい」
周りの皆が放課後に何をするのか話している中、ノエル達は恐る恐る職員室に向かった。
廊下を歩いている間、ノエル達は無言だった。さっきは皆もどうなるか分からないって言ってたけど、あんまり良い話じゃないって思ってるみたい。
重苦しい空気の中、ノエル達は職員室の前に立つ。
「……開けるわよ?」
サルミちゃんが引き戸に手をかけ、ノエル達は神妙に頷く。
「失礼します」
ガラガラという音と共に扉を開ける。職員室の中では色んな先生が席で仕事をしていた。
ナマク先生も奥側の席で小テストの採点をしている。皆でナマク先生の所に行くと、ナマク先生もこっちに気付いて顔を上げた。
「来ましたね」
「その……どんな用ですか?」
コアコちゃんが恐る恐る話を切り出す。
すると、ナマク先生は引き出しから一枚の紙を取り出した。
「オカルト研究クラブが正式に受理されました」
「え?ほんと?」
「本当です」
「よ、良かった~。何か叱られるんじゃないかと思ったよ~」
「皆さんは成績も良いですし、何も叱ることはありませんよ。ただ、ノエルさんは騒がしいことが多いので注意してくださいね」
「はーい」
授業が終わると叫んでいたのがいけなかったのかな?
とはいえ、何にもなくて一安心だ。皆も胸を撫でおろしている。
そんな様子をナマク先生は不思議そうに見ながら立ち上がる。
「では、これから部室に案内します。着いてきてください」
「はーい」
走り出したい欲求を堪えて、大人しくナマク先生の後ろを歩く。
校舎の2階に上がり、廊下の奥の教室の前で立ち止った。
「ここがオカルト研究クラブの部室です」
「遂にクラブ活動が出来るんだね!」
『早く入ろうぜ!』
「おっさきー」
『あ、ズルいぞノエル!』
「私が部長だよ!私が先に入るべきだよ!」
皆が我先にと部室の中に入る。きっと、色んな本とか、怪しい道具とかが所狭しと……
「あれ?」
ワクワクしながら扉を開けると、部室の中には大きな机が1つと6つの椅子があるだけだった。
中に入って周りを見渡してみて何も無い。
「あれ?本当にここが部室?」
「何にも無いじゃない」
「最初はどのクラブも同じです。最初の活動を始めますので席に着いてください」
ノエル達は大人しく席に着く。すると、机の中央にナマク先生が紙を置いた。
「『必要物資申請書』?これって?」
「クラブ活動に必要な物を記載してください。それを生徒会が吟味し、許可が出されられた物は後日、部室に届けられます。また、今後の部費の目安にもなるので、必要な物は忘れずに記載してください」
「結構重要なんだね」
「この申請書を書くことが最初のクラブ活動ってこと?」
「その通りです」
「よーし、じゃあ早速……」
ノエルが申請書を取ろうとすると、右から目にも止まらぬ速さで奪われていった。
びっくりして右を見てみると、パンプ君が紙を握りしめていた。強く握りしめすぎてちょっとだけ紙がクシャってなってる。
「パンプ君?」
『どうしたんだ?』
「君達、まさか適当に書こうと思ってないだろうね?」
「その通りだけど?」
「やっぱりね」
パンプ君がため息を吐いて、申請書をアイテムボックスに仕舞う。これで、ノエル達は申請書には手が出せなくなっちゃった。
「何するの!?」
「まさか、好き勝手に申請しようと──」
「そんな訳ないでしょ」
パンプ君が申請書の代わりに手帳を取り出す。
「僕が思うに、適当に物を書くのは逆効果だよ」
「なんで?いっぱい書いた方がお得そうじゃない?」
ノエルの言葉にパンプ君は首を振る。
「いっぱい書くと、本当に必要じゃないものも買うようなクラブ、つまり無駄遣いするクラブって思われるんだよ」
「それはダメなの?」
「部費が上がりにくくなるよ。無駄遣いするクラブには、あんまりお金を渡したくないでしょ?」
「そっか」
「いっぱい申請しても大部分は認められないだろうし、本当に必要な物だけ申請しようね」
「なるほどね」
いっぱい申請しても、普通に申請するよりちょっとだけ物が増えるだけ。だったら、今後のために最初は物が少なくても、部費が上がりやすい方を選ぶ。確かにそっちの方が良いね。
「やるんじゃないの」
サルミちゃんが感心したようにパンプ君を見る。そして、何かを決心したように勢いよく立ち上がった。
「決めたわ!部費の管理はパンプに任せるわ!」
「え?」
サルミちゃんがパンプ君をビシッと指さす。
パンプ君は何のことだか分からないのか、1分くらい固まる。ノエル達も突然すぎて、何も言えなかった。
『いきなりなんだ?』
皆が黙っている中で、マカダ君が質問を投げかけた。
「別に難しい話はしてないわよ。金勘定が得意なパンプに会計をしてもらう。合理的でしょ?」
『そういうのって部長が任命するんじゃないのか?』
「じゃあ、コアコが良いって言えばいいのね」
皆の視線は一斉にコアコちゃんに向く。
「あわあわ……」
コアコちゃんはしきりに視線を泳がせ、ノエルに縋りついてきた。
「ノエルちゃん、どうしよ~」
「んー、そんなに難しく考える必要ないんじゃない?」
「え?」
「コアコちゃんがどう思うのかを素直に言えば良いんだよ」
「でも……」
不安そうなコアコちゃんにノエルは手をbにして笑う。
「大丈夫!合わなかったら変えても良いんだから!」
「……分かった」
コアコちゃんは決心したように頷くと、パンプ君に向き直った。
「パンプ君、頼めるかな?」
「分かった。出来るだけやってみるよ」
「ありがと!」
コアコちゃんが笑いかけると、パンプ君が頭を掻いてソッポを向いた。
ん?パンプ君の耳、ちょっと赤くなってる?まさか?
ロワお兄ちゃんと話すときのミエルお姉ちゃんと同じ反応。間違いない。
そっかー。パンプ君ってコアコちゃんのことー。なるほどねー。確かにコアコちゃんって大人しそうで可愛いし、その気持ちは分かるなー。
『ん?何ニヤついているんだ?』
『べっつにー』
言いふらすことでも無いし、これはノエルの心の中に仕舞っておこう。
話を元に戻すために、ノエルは大きく手を叩く。皆の視線が集まったのを確認して話を始める。
「さあ!それじゃ、ここからは必要な物を決めていくよ!」
「けど、オカルトに何が必要かなんて知らないわよ?」
「そこは部長であるコアコちゃんに聞けばいいよ」
「私!?」
「なんで驚いてるのよ。あんた以外に詳しい人間いないわよ」
『それに、コアコが部を作りたいって言ったんだしな』
「えー?本当に私が決めて良いの?」
「勿論だよ」
「うーん、どうしようかな?パっと思いつくのはウィジャ盤とか呪術の本とかだけど」
「詳しいことは分からないけど、絶対に必要無いことは分かるわ」
「はい!お菓子は部費で買えますか!」
「買えません」
こうして30分の話し合いの結果、本棚、小物を仕舞う棚、何冊かのオカルト本を申請することになった。
☆ ☆ ☆ ☆
「申請する物も決まったし、今日のクラブ活動はここまでかな?」
「あ、そうだ。クラブ活動が始まったら皆に提案しようと思ってたことがあってね」
「なによ」
「この前、ここの近くで幽霊を見かけたんだ」
「幽霊?見間違いじゃないの?」
「本当だよ!物凄い速さでマントと鉄仮面を付けた人?が路地裏を駆けていったの!」
『怪しい格好をした人じゃないのか?』
「馬の何倍も速かったんだよ?あんな人いないよ!」
「私としては、物凄い早い不審者の線を推すわ」
「だからね、それを調査しようって思ってさ。オカルト研究クラブの初活動だよ!」
「初めの活動にしては良いんじゃない?って、ノエル?顔が青いよ?」
「え?そ、そんなこと無いんじゃないかな?」
『さっきから話に入ってきてないし、どうしたんだ?』
「何でもないよ!ま、前にコアコちゃんから聞いた話に似てるなって思っただけだよ」
「そう言えばノエルちゃんには先に話していたっけ。どう?面白そうだよね!?」
「う、うーん……止めた方がいいんじゃないかな?」
「なんで!?」
「コアコちゃん、近いよ」
「あ、ごめん」
「珍しいわね。こういう話、あんたならすぐに食いつきそうじゃないの」
「だ、だってさ、幽霊じゃなくて暗殺者とかだったら、危ないでしょ?だから、やめた方が良いんじゃないかなーって」
「馬鹿馬鹿しい。暗殺者なんている訳ないでしょ」
『俺は襲われたことあるがな』
「何か言った?」
『別に。けど、ノエルならそんな危険くらいで怖気づいたりしたりしないだろ?』
「そんなこと無いよ。ノエルほどに慎重な人はいないよ」
「慎重な人は廃工場に突撃しないんじゃないかな?」
「あんたさっきから変よ?」
「まさか、何か知ってるとか?」
「そんな訳ないじゃん!なんでノエルが怪しい人を知っているのさ!」
『それは分からないが、その慌てっぷりは何か知ってるだろ?』
「し、知らない!じゃあ、ノエル習い事の時間だから!またね!」
「あ!逃げた!」
「あんたが習う事なんて無いでしょ!皆、追うわよ!」
「うん!」
『おう!』
「分かった!」
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