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第二百四十八話 フラン、キレた!!
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「今日は飲むわよー!」
「おー!」
「「おー」」
シースとコレトが高々とビールジョッキを掲げる。私とフランも雰囲気に合わせてジョッキを掲げる。
ここは銀の閃光の拠点。私とフランは銀の閃光のメンバーであるシースに呼ばれた。なんでも、女子会をするらしい。
メンバーは私、フラン、シース、コレトの4人だ。
泊りがけでの女子会で、皆パジャマに着替えて、シースの部屋に集合している。
部屋の中央にある背の低いテーブルを囲むように、皆が床に座る。床にはふかふかのカーペットが敷かれており、座るのが苦にならない。
「さあさあ、色んなお酒があるわよ。ワインにエールにウイスキー、日本酒もあるわよ。おつまみもいっぱい買って来たわ」
「流石シースね」
大中さまざまなお酒の瓶とおつまみの袋、カップが並べられる。飲む気満々みたいだ。
「そういえば、他の銀の閃光のメンバーはどうした?」
「ホウリ君たちと何処か行ってるらしいわ。何処に行くのかは頑なに教えてくれなかったけど」
「怪しいわね。もしかして浮気とか?」
「ホウリが付いておるならば、それは無かろう」
フランが秒でジョッキを空にして言う。
「あら、良い飲みっぷりね」
「わしはスキルで酔えんからのう。王都にある酒を全部飲むことも出来るぞ」
「それは勿体ないわね。お酒で酔えないなんて、醍醐味の半分を損してるんじゃないかしら?」
「二日酔いも無いんじゃ。一長一短じゃろ」
話をしている間もフランは飲む手を止めない。もうビールを3杯も飲み干してしまった。
「というか、ミエルも酔えんじゃろ。状態異常完全無効のスキルがあるんじゃし」
「そうだな」
酔いというのは、一種の状態異常だ。状態異常に耐性があれば、酔いを和らげたり、完全に無効にできたりする。
私とフランは湖くらいの酒を飲みほしても酔う事は無い。
「へー、ミエル……さんも凄いんですね」
「ああ。ありがとう」
コレト……さんとぎこちなく言葉を交わす。フランも異変に気付いたのか、話に割り込んでくる。
「そういえば、ミエルとコレトは初対面じゃったか」
「あれ?そうなの?」
「ああ。ロワとノエルとは会ったみたいだが、その時は私は留守にしていてな」
闘技大会の時にノエルにスキルを付与した時に会ったらしい。だが、私は騎士団に行ってて会う事は叶わなかった。
「だったら自己紹介でもする?」
「そうね。始めましてミエルちゃん。私の名前はコレト・ガーナ。オダリムで神殿長をやっているわ」
「私はミエル・クラン。王都で騎士団長をやっている」
「あら?騎士団長さんだったの?」
「そういうコレト……さんも神殿長だったのか」
「コレトで良いわよ」
ノエルにスキルを与えたと聞いていたから、神殿関係者であることは知っていた。だが、思ったよりも偉い立場だった。敬語……は使わない方が良いか。
「ミエルちゃんが団長だったとはね。やっぱり長って苦労が多いわよね」
「部下の動向にも気を配り、急務が出来たらこなす。入ったばかりの頃は朝まで帰れないことも多かった」
「そうよねー、私なんて王都に召集された時に、他の領地の神殿長から『女の癖に』って嫌味を言われるのよ?」
「それは私も言われている。最近は仕事の出来ない奴の戯言として受け流しているがな」
「私もそうしているわ」
コレトが笑いながらジョッキを空にする。思ったよりも話しやすいな。仲良くなれそうだ。
「ふっふっふ、場も温まってきたところで本題に行きましょうか」
「本題?」
「女子会って言えば恋バナでしょ」
「こ、恋バナ?」
「あら良いわね」
シースの言葉を聞いたコレトが、楽しそうに日本酒をコップに注ぐ。
「最近は周りに浮いた話が無くてね。甘酸っぱい話を聞きたいのよ」
「それが女子会を開いた理由か」
思いもしない理由に私の心は焦りが生まれる。
「あ、あったばかりの者に自身の恋バナをしろというのか?」
「そうよ?」
「いやいやいや、流石にそれは……」
「別に良いじゃない。減るものじゃないし」
ポテチを摘まみながらシースがあっけらかんと言う。
「まあ、言いたくないなら言わんでも良いじゃろ」
「そう?」
「というか、言い出しっぺのお主が先に話さんかい。この中で既婚者はお主だけじゃし、ミルとはどうなんじゃ?」
「どうって?」
「夫婦なんじゃろ?イチャイチャしたりとか無いのか?」
「そうねー」
チビチビとエールを飲みながら、シースが天井に視線を向け考え始める。
「私とミルは幼馴染でね。幼い時からいつも一緒なのよ」
「どのくらい一緒にいるんだ?」
「25年ね」
「お主の年も25じゃったな」
「という事は、生まれてからずっと一緒にいる訳なの?」
「そうね。そんなに長くいると、皆が想像していることは起こらないわ」
確かに傍にいることは当たり前になっては、ときめく事も無いか。
「なんで結婚なんてしたんじゃ?」
「好きではあるのよ?けど、情熱的な愛って訳じゃないのよ」
「ちなみに、ミルのどんな所が好きなの?」
「難しいこと聞くわね?何が好きって思ったいうよりも、傍に居ないと落ち着かないって感じね」
「なるほどな」
そういう「好き」もあるのか。そういえば、私はロワのどこが好きなのだろうか?
顔とか性格が好きなのは勿論だ。だが、それだけでかと聞かれると、すっきりしない。
「難しい顔をしてどうした?」
「いや、何でもない」
今は考えるのは止めておこう。他の皆に心配をかけてしまう。
「さあ、私のことは話したわ。次はコレトが話しなさい」
「私?」
「ナップと良い感じなんでしょ?どうなのよ?」
「……はぁ」
シースがニヤつきながら聞くと、コレトが急に不機嫌になった。
そして、ウォッカの瓶を取ると一気に呷った。
「んぐっんぐっ」
「ちょっと!?そんなに一気に飲んだら!?」
「ぷはー」
コレトの顔が真っ赤に染まる。そして、シースはチョコレートの包みを剥ぐと、そのまま口に放り込んだ。
「うううう……ナップ君なんて……」
「これは何かあったみたいだな」
「何かあった?違うわ、何もないのよ」
「何も無い?」
すると、コレトがテーブルに突っ伏して泣き始めた。
「うわあああん!なんで何もしてこないのよおおおお!」
「ど、どうしたんじゃ?」
「ひぐっ……ぞれがねえええ!」
泣きながらであったから、要領を得ない話だった。
話をまとめると、遠方ながらも2人はデートを重ねていった。プレゼントを贈りあったりもしたし、自宅に招きいれることもあったそうだ。
しかし、ナップから告白されることは無かった。
「私はずっと待ってるのよ!?なのに何も言ってこないなんて信じられる!?」
「お主はファンクラブがあるからのう。迂闊に付き合うと、他の男を敵に回すと考えておるのではないか?」
「そんなの、ナップが気にするはずないわ」
「ならば、告白するのに臆しておるのかものう?」
「それもあり得ないわ。ナップは良いと思った子にはすぐに告白するタイプよ」
「そういえば、わしもあったばかりで求婚されたのう」
「そんな事があったのか」
何かあったとは聞いていたが、まさか求婚されていたとは。
シースの言葉にコレトが更に激しく泣き始める。
「だっだら、なんで私には何もいっでごないのよおおおお!」
「それは……分からないわ」
「そうじゃな。ナップに聞くのが一番手っ取り早いじゃろう」
「わだしのごどなんでずきじゃないのよおおお!」
大泣きを始めるコレトをフランとシースが困ったように眺める。
しかし、私だけは別のことを考えていた。
「コレト、ナップはコレトの事を好きな筈だぞ」
「ひっぐ……じゃあ、なんで何も言ってこないのよ」
「コレトのことが本当に好きだからじゃないか?」
「本当に好き?」
コレトがテーブルから顔を上げて、涙でぐちゃぐちゃの顔で見て来る。
「本当に好きだからこそ、拒絶されるのは怖い。だから告白も怖くて出来ないんだ」
「で、でも今まではすぐに告白してたって……」
「それは本気じゃないからだ。おそらく、周りに恋人がいた焦りから告白をしたんだろう」
「つまり、すぐに告白していないからこそ、いつもより本気だと?」
「そういう事だ」
コレトは私の話を目を丸くして聞く。
「考えたことも無かったわ」
「良いこと言うではないか。自身の経験に基づいておるような、妙な説得力があるわい」
「……そんな事は無い」
「ありがと、ミエルちゃん」
「役に立てて何よりだ」
コレトは涙を拭って優しく微笑む。その表情には迷いは無かった。
「面白い話が聞けたわね。じゃあ、次はフランちゃんね」
「わし?」
「フランちゃんって浮いた話って聞かないじゃない?だからこそ知りたいのよ」
「わしに浮いた話など無いぞ?」
「えー本当?ホウリ君とか良い感じじゃない?」
「それは無いのう」
フランがワインを飲んで、チーズをかじる。
フランとホウリは魔王と勇者。いずれは殺しあわなければならない。仮に愛し合ったとしても待つのは悲劇だけだ。
そう思うとホウリの事を想っていても、態度には出さないだろうな。
そんな事情を知らないディーヌとコレトは追及を続ける。
「本当?傍から見ているとお似合いよ?」
「他人からどう見られているなど関係ない」
「意固地になってない?本音を話していいのよ?」
「くどいぞ」
他の2人からの追及を受けながら、フランは鬱陶しいそうな表情でワインを飲む。
だが、その目には一抹の寂しさと熱が込められている気がした。
だが、もしもフランが魔王ではなく、ホウリがただの冒険者だったら。フランはどうするのだろうか。
「ねぇねぇ教えてよ」
「私たちは言ったのにズルいわよ」
「言ったであろう?わしはホウリの事など、どうとも思っておらん」
2人の追及をかわしているフランを見つつ、心がざわつくのを感じた。
☆ ☆ ☆ ☆
「おえええ……気持ち悪い」
「あ、頭が割れそう……」
「昨日、あれだけ考えも無しに飲みまくっていたらそうなるじゃろ」
「ふ、フランちゃん……スキルでなんとかしてくれない?」
「自業自得じゃ。わしを頼るでない」
「……もしかして、しつこく恋バナしようとしたこと、怒ってたりする?」
「別に~、わしが寝たいと言ってもしつこく聞いてきたことなど、まっっっったく気にしておらぬぞ?」
「お、怒ってるわよね?」
「怒っておらぬぞ?」
「目が怖いんだけど」
「おねが~い、謝るから何とかしてよ~」
「怒っておらんから、謝る必要は無い。では、わしはもう行くぞ。そろそろ公演の時間じゃ」
「「そんなご無体な~!!」」
「おー!」
「「おー」」
シースとコレトが高々とビールジョッキを掲げる。私とフランも雰囲気に合わせてジョッキを掲げる。
ここは銀の閃光の拠点。私とフランは銀の閃光のメンバーであるシースに呼ばれた。なんでも、女子会をするらしい。
メンバーは私、フラン、シース、コレトの4人だ。
泊りがけでの女子会で、皆パジャマに着替えて、シースの部屋に集合している。
部屋の中央にある背の低いテーブルを囲むように、皆が床に座る。床にはふかふかのカーペットが敷かれており、座るのが苦にならない。
「さあさあ、色んなお酒があるわよ。ワインにエールにウイスキー、日本酒もあるわよ。おつまみもいっぱい買って来たわ」
「流石シースね」
大中さまざまなお酒の瓶とおつまみの袋、カップが並べられる。飲む気満々みたいだ。
「そういえば、他の銀の閃光のメンバーはどうした?」
「ホウリ君たちと何処か行ってるらしいわ。何処に行くのかは頑なに教えてくれなかったけど」
「怪しいわね。もしかして浮気とか?」
「ホウリが付いておるならば、それは無かろう」
フランが秒でジョッキを空にして言う。
「あら、良い飲みっぷりね」
「わしはスキルで酔えんからのう。王都にある酒を全部飲むことも出来るぞ」
「それは勿体ないわね。お酒で酔えないなんて、醍醐味の半分を損してるんじゃないかしら?」
「二日酔いも無いんじゃ。一長一短じゃろ」
話をしている間もフランは飲む手を止めない。もうビールを3杯も飲み干してしまった。
「というか、ミエルも酔えんじゃろ。状態異常完全無効のスキルがあるんじゃし」
「そうだな」
酔いというのは、一種の状態異常だ。状態異常に耐性があれば、酔いを和らげたり、完全に無効にできたりする。
私とフランは湖くらいの酒を飲みほしても酔う事は無い。
「へー、ミエル……さんも凄いんですね」
「ああ。ありがとう」
コレト……さんとぎこちなく言葉を交わす。フランも異変に気付いたのか、話に割り込んでくる。
「そういえば、ミエルとコレトは初対面じゃったか」
「あれ?そうなの?」
「ああ。ロワとノエルとは会ったみたいだが、その時は私は留守にしていてな」
闘技大会の時にノエルにスキルを付与した時に会ったらしい。だが、私は騎士団に行ってて会う事は叶わなかった。
「だったら自己紹介でもする?」
「そうね。始めましてミエルちゃん。私の名前はコレト・ガーナ。オダリムで神殿長をやっているわ」
「私はミエル・クラン。王都で騎士団長をやっている」
「あら?騎士団長さんだったの?」
「そういうコレト……さんも神殿長だったのか」
「コレトで良いわよ」
ノエルにスキルを与えたと聞いていたから、神殿関係者であることは知っていた。だが、思ったよりも偉い立場だった。敬語……は使わない方が良いか。
「ミエルちゃんが団長だったとはね。やっぱり長って苦労が多いわよね」
「部下の動向にも気を配り、急務が出来たらこなす。入ったばかりの頃は朝まで帰れないことも多かった」
「そうよねー、私なんて王都に召集された時に、他の領地の神殿長から『女の癖に』って嫌味を言われるのよ?」
「それは私も言われている。最近は仕事の出来ない奴の戯言として受け流しているがな」
「私もそうしているわ」
コレトが笑いながらジョッキを空にする。思ったよりも話しやすいな。仲良くなれそうだ。
「ふっふっふ、場も温まってきたところで本題に行きましょうか」
「本題?」
「女子会って言えば恋バナでしょ」
「こ、恋バナ?」
「あら良いわね」
シースの言葉を聞いたコレトが、楽しそうに日本酒をコップに注ぐ。
「最近は周りに浮いた話が無くてね。甘酸っぱい話を聞きたいのよ」
「それが女子会を開いた理由か」
思いもしない理由に私の心は焦りが生まれる。
「あ、あったばかりの者に自身の恋バナをしろというのか?」
「そうよ?」
「いやいやいや、流石にそれは……」
「別に良いじゃない。減るものじゃないし」
ポテチを摘まみながらシースがあっけらかんと言う。
「まあ、言いたくないなら言わんでも良いじゃろ」
「そう?」
「というか、言い出しっぺのお主が先に話さんかい。この中で既婚者はお主だけじゃし、ミルとはどうなんじゃ?」
「どうって?」
「夫婦なんじゃろ?イチャイチャしたりとか無いのか?」
「そうねー」
チビチビとエールを飲みながら、シースが天井に視線を向け考え始める。
「私とミルは幼馴染でね。幼い時からいつも一緒なのよ」
「どのくらい一緒にいるんだ?」
「25年ね」
「お主の年も25じゃったな」
「という事は、生まれてからずっと一緒にいる訳なの?」
「そうね。そんなに長くいると、皆が想像していることは起こらないわ」
確かに傍にいることは当たり前になっては、ときめく事も無いか。
「なんで結婚なんてしたんじゃ?」
「好きではあるのよ?けど、情熱的な愛って訳じゃないのよ」
「ちなみに、ミルのどんな所が好きなの?」
「難しいこと聞くわね?何が好きって思ったいうよりも、傍に居ないと落ち着かないって感じね」
「なるほどな」
そういう「好き」もあるのか。そういえば、私はロワのどこが好きなのだろうか?
顔とか性格が好きなのは勿論だ。だが、それだけでかと聞かれると、すっきりしない。
「難しい顔をしてどうした?」
「いや、何でもない」
今は考えるのは止めておこう。他の皆に心配をかけてしまう。
「さあ、私のことは話したわ。次はコレトが話しなさい」
「私?」
「ナップと良い感じなんでしょ?どうなのよ?」
「……はぁ」
シースがニヤつきながら聞くと、コレトが急に不機嫌になった。
そして、ウォッカの瓶を取ると一気に呷った。
「んぐっんぐっ」
「ちょっと!?そんなに一気に飲んだら!?」
「ぷはー」
コレトの顔が真っ赤に染まる。そして、シースはチョコレートの包みを剥ぐと、そのまま口に放り込んだ。
「うううう……ナップ君なんて……」
「これは何かあったみたいだな」
「何かあった?違うわ、何もないのよ」
「何も無い?」
すると、コレトがテーブルに突っ伏して泣き始めた。
「うわあああん!なんで何もしてこないのよおおおお!」
「ど、どうしたんじゃ?」
「ひぐっ……ぞれがねえええ!」
泣きながらであったから、要領を得ない話だった。
話をまとめると、遠方ながらも2人はデートを重ねていった。プレゼントを贈りあったりもしたし、自宅に招きいれることもあったそうだ。
しかし、ナップから告白されることは無かった。
「私はずっと待ってるのよ!?なのに何も言ってこないなんて信じられる!?」
「お主はファンクラブがあるからのう。迂闊に付き合うと、他の男を敵に回すと考えておるのではないか?」
「そんなの、ナップが気にするはずないわ」
「ならば、告白するのに臆しておるのかものう?」
「それもあり得ないわ。ナップは良いと思った子にはすぐに告白するタイプよ」
「そういえば、わしもあったばかりで求婚されたのう」
「そんな事があったのか」
何かあったとは聞いていたが、まさか求婚されていたとは。
シースの言葉にコレトが更に激しく泣き始める。
「だっだら、なんで私には何もいっでごないのよおおおお!」
「それは……分からないわ」
「そうじゃな。ナップに聞くのが一番手っ取り早いじゃろう」
「わだしのごどなんでずきじゃないのよおおお!」
大泣きを始めるコレトをフランとシースが困ったように眺める。
しかし、私だけは別のことを考えていた。
「コレト、ナップはコレトの事を好きな筈だぞ」
「ひっぐ……じゃあ、なんで何も言ってこないのよ」
「コレトのことが本当に好きだからじゃないか?」
「本当に好き?」
コレトがテーブルから顔を上げて、涙でぐちゃぐちゃの顔で見て来る。
「本当に好きだからこそ、拒絶されるのは怖い。だから告白も怖くて出来ないんだ」
「で、でも今まではすぐに告白してたって……」
「それは本気じゃないからだ。おそらく、周りに恋人がいた焦りから告白をしたんだろう」
「つまり、すぐに告白していないからこそ、いつもより本気だと?」
「そういう事だ」
コレトは私の話を目を丸くして聞く。
「考えたことも無かったわ」
「良いこと言うではないか。自身の経験に基づいておるような、妙な説得力があるわい」
「……そんな事は無い」
「ありがと、ミエルちゃん」
「役に立てて何よりだ」
コレトは涙を拭って優しく微笑む。その表情には迷いは無かった。
「面白い話が聞けたわね。じゃあ、次はフランちゃんね」
「わし?」
「フランちゃんって浮いた話って聞かないじゃない?だからこそ知りたいのよ」
「わしに浮いた話など無いぞ?」
「えー本当?ホウリ君とか良い感じじゃない?」
「それは無いのう」
フランがワインを飲んで、チーズをかじる。
フランとホウリは魔王と勇者。いずれは殺しあわなければならない。仮に愛し合ったとしても待つのは悲劇だけだ。
そう思うとホウリの事を想っていても、態度には出さないだろうな。
そんな事情を知らないディーヌとコレトは追及を続ける。
「本当?傍から見ているとお似合いよ?」
「他人からどう見られているなど関係ない」
「意固地になってない?本音を話していいのよ?」
「くどいぞ」
他の2人からの追及を受けながら、フランは鬱陶しいそうな表情でワインを飲む。
だが、その目には一抹の寂しさと熱が込められている気がした。
だが、もしもフランが魔王ではなく、ホウリがただの冒険者だったら。フランはどうするのだろうか。
「ねぇねぇ教えてよ」
「私たちは言ったのにズルいわよ」
「言ったであろう?わしはホウリの事など、どうとも思っておらん」
2人の追及をかわしているフランを見つつ、心がざわつくのを感じた。
☆ ☆ ☆ ☆
「おえええ……気持ち悪い」
「あ、頭が割れそう……」
「昨日、あれだけ考えも無しに飲みまくっていたらそうなるじゃろ」
「ふ、フランちゃん……スキルでなんとかしてくれない?」
「自業自得じゃ。わしを頼るでない」
「……もしかして、しつこく恋バナしようとしたこと、怒ってたりする?」
「別に~、わしが寝たいと言ってもしつこく聞いてきたことなど、まっっっったく気にしておらぬぞ?」
「お、怒ってるわよね?」
「怒っておらぬぞ?」
「目が怖いんだけど」
「おねが~い、謝るから何とかしてよ~」
「怒っておらんから、謝る必要は無い。では、わしはもう行くぞ。そろそろ公演の時間じゃ」
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