魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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魔王と勇者の二人旅 第二話 なんでぇ!?

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 ゴビゴビ遺跡を向かう途中、わしらは近くの街である「ディング」に寄っていた。
 わしらは宿を取り、部屋の中で今後の行動を話し合う。


「フランは物資の調達、俺は情報の収集な。3時間後に部屋に集合だ」
「うむ」


 砂漠の移動で、水や食料が不足した。じゃから、情報の収集も兼ねてディングに寄る事になったんじゃ。


「遅れたら昼飯おごりだからな。気を付けろよ?」
「分かっておるわい」


 ちなみに、わしのこだわりで旅の時の食料や水、消耗品は現地で調達するようにしている。
 王都にワープしたら簡単に調達は可能じゃが、それだと旅の醍醐味がなくなるからのう。
 そんな訳で、わしはホウリと別れ街の中に繰り出したのじゃった。


☆   ☆   ☆   ☆


 ディングは砂漠の街というだけあって、王都の建物と造りが違う。
 コンクリート白い壁で出来ていて、平館が多い。壁には窓のように穴が開いてあって風通しが良さそうじゃ。
 行きかう人も、日差しを防ぐために顔まで厚着している人ばかり。王都ではまず見ない光景じゃな。
 商品は地面に敷かれた布の上に並べてある。


「安いよー」
「そこのお姉さん、この果物買ってかない?」
「この道具どうだい?ここでしか手に入らないよ?」


 店の前で、店員たちは行きかう人たちに声を掛けておる。
 そう思っていると、わしにもおじさんに声を掛けられた。


「お姉ちゃん、冒険者だね?このヤシの実、買ってかないかい?」
「ヤシの実?」


 商品に目を向けると、乾いたレーズンのような物が入った袋が山のように積まれていた。1つ1000Gか。


「これがヤシの実?ヤシの実って大きなものではないのか?」
「これはここらで生っている『アキノヤシ』を乾燥させたものだ。栄養価が高くて保存も効く。旅にうってつけさ」
「ふむ、珍しいのう。1つくれ」
「まいどあり」


 1000Gを渡し、袋を受け取る。袋を開けてアキノヤシを口に入れてみる。
 意外と甘くて癖が無く食べやすい。噛めば噛むほど甘みが出て美味いのう。これなら、普通にお菓子作りにも使えそうじゃ。


「中々良いのう。10個もらおうか」
「まいどあり!」


 1万Gを手渡し、10個の袋を受け取る。こういう珍しい食料も旅の醍醐味じゃな。
 ホクホク顔で街の中を練り歩き、干し肉や乾パン、水などを買って歩く。


「ふう、これだけ買えば10日間は持つな」
「おねーさん」


 買い出しも終わり、街の観光に移ろうとすると、小さい女の子に呼び止められた。
 相変わらず顔まで厚着をしておって表情は伺い知れん。目だけが暗い服の中で光っている。


「なんじゃ?」
「ねえねえ、掘り出し物があるんだけど買わない?」
「掘り出し物?どんなものじゃ?」


 少女は懐から半透明の黄色味を帯びたクリスタルじゃった。


「なんじゃこれ?」
「綺麗な石だよ。買わない?」
「綺麗な以外に価値はないのか?」
「無いよ!」
「元気だけは良いのう」


 誇って言うことではないと思うんじゃがな。それにしても綺麗なだけの石か。ふむ……
 わしは石をジッと見つめてみる。


「いくらじゃ?」
「1000万Gだよ!」
「買った」
「え!?」


 少女の目が分かりやすく大きく見開かれる。


「な!?1000万Gだよ!?1000Gじゃないよ!?」
「分かっておるわい」
「ただの石だよ!?何の価値もないよ!?」
「それも聞いた」
「あ、もしかして、からかってる?お金が無いのに見栄を張ったらダメだよ?」


 わしは金貨の入った袋を少女に突き出す。
 少女は袋を受け取って中を覗く。すると、さっきよりも大きく目を見開いた。


「これ全部10万Gコイン!?」
「そうじゃ。100枚あるから1000万Gじゃ。これで文句なかろう?」
「ええ……」


 なぜか少女がドン引きする。わしは普通に買い物をしただけなんじゃがのう。


「それで?売らぬのか?」
「……まあ、いっか」


 少女は石をわしに手渡してくれる。


「うむ確かに」
「ただの石に1000万Gも出すなんて、おねーさんも物好きだね?」
「ただの石に1000万Gも出すわけなかろうが」
「え?どういうこと?」
「そのままの意味じゃ」


 わしは買った石をアイテムボックスに仕舞いながら説明する。


「この石ってただの石ではないじゃろ?」
「え!?」


 3度目となる少女の驚愕。


「なんでそう思ったの!?」
「鑑定しただけじゃ。これってゴビゴビ遺跡の宝を手に入れるためのカギなんじゃろ?」
「嘘!?鑑定しただけで分かるものじゃ……」
「わしなら分かる」


 わしの鑑定で分からぬことなどほとんど無い。ミエルの毒くらいのものでないと、わしの鑑定を誤魔化すことはできん。


「じゃが、これって1つじゃと意味ないんじゃろ?」
「……ふふふ、これは面白くなりそうだね?」
「どういうことじゃ?」


 わしの質問に少女が楽しそうに答える。


「実はね、その石はおねーさん以外にも渡したんだ」
「わしの他にも1000万Gを用意した奴がいるのか?」
「そんなのおねーさん以外にいないよ。本当だったら、私の無理難題をこなした人だけが手に入れられるんだ」
「無理難題?」
「ここらに出没する怪鳥の討伐とか、砂漠で採れるレアなフルーツを持って来たりとかね」
「ふーん?」


 それならやりそうな奴もおるか?


「じゃが、ただの石と説明して、そこまでする奴がおるか?」
「それは、お話していく過程で、そこはかとなく明かすつもりだったんです」
「そうじゃったのか?」


 つまり、ただの石が1000万Gという衝撃を与え、後から遺跡のカギを明かす。そして、欲しくなったところに無理難題を吹っ掛ける、のが本来の流れなんじゃな。


「わしはそれらをすっ飛ばして、この石を手に入れた訳か。なんだか申し訳ないのう?」
「別に良いけどね。そのおかげで面白そうなものを見られそうだし」
「どういう事じゃ?」
「言ったでしょ?その石の残りはこの街の人に配ったって」
「成程のう。石を奪い合えということか」


 こいつはわしらが石を取り合うのを見たいわけなんじゃな。悪趣味なやつじゃ。


「何人に配った?」
「おねーさんを含めて5人。他の持ち主と協力できれば、別に奪う必要はないよ?」
「無理難題を言うでない」


 ゴビゴビ遺跡にあるスノーダストクリスタルは1つだけ、大人しく協力できるとは思えん。


「じゃあ奪い合うしかないね」
「それが狙いじゃろうが」
「まあね。じゃ、私はこれで」


 そう言うと、少女は跡形も無く消え去ったのだった。後には買った石だけが残ったのだった。


「さてと、ここからどうするべきか」


 わしらもスノーダストクリスタルを狙う以上、石を集める必要がある。となると、まずは持っている奴の特定。そして石の奪取。


「ホウリに相談するか」


 そう思い、わしは宿まで戻ったのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


「──ということがあったのじゃ」
「成程」
「何か分かったか?」
「そいつ、人間じゃないな」
「それはわしにも分かる」


 先ほどのやり取り最中、わしは少女を鑑定してみた。
 誰も深部まで行ったことが無い遺跡のカギ、それをただの少女が持っている。そんなの不自然じゃ。
 じゃが、鑑定しても少女の情報は微塵も出てこなかった。


「あやつの正体は?」
「遺跡の亡霊か何かだろ。気にすることじゃない」
「気になるわい」


 どんなことを経験したら亡霊を気にならなくなるんじゃろうな?


「で、どうやって他の持ち主を特定する?」
「そこは俺に任せろ。1時間で特定してやる」
「1時間で4人も特定するのか?」


 ホウリとはいえ、流石に早すぎる気がする。何をするつもりじゃ?


「いや、まずは1人を特定する」
「1人だけか?」
「ああ、気になる事があってな」
「気になる事?」
「その石を手に入れる時、相手の想定を超えたんだろ?だったら今回も超えてやろうぜ」


 ホウリがニヤリと笑う。その顔にわしも思わずニヤリと笑い返した。


「じゃな。あんな奴の思い通りになるのはシャクじゃ」
「決まりだな」
「それで、どうやって特定するんじゃ?」
「遺跡のカギを欲しがるのは冒険者や調査隊だ。そういう風帽で誰かを探していそうな奴を見つける。見つけたら鎌をかける」
「意外と簡単じゃな?」


 もっと手間がかかると思ったが、そうでもないのか。意外と拍子抜けじゃな。


「行くぞ。時間をかけると、この街が戦場になる」
「かもしれぬのう」


 スノーダストクリスタルの手がかりがあるのだ。持っていそうな奴を襲う者が出てきても可笑しくない。
 わしらは再び街に繰り出し、石を持っていそうな奴を探してみる。


「あやつは怪しくないか?」
「あれは落とし物を探しているだけだな。視線が下に向いてるだろ?人を探すには不自然だ」
「そうか。ならば、あやつはどうじゃ?何かを探しているように、辺りを見渡しておるぞ?」
「あれは人を待ってるだけだな。石を持ってる奴を探しているなら、もっと観察するような視線のはずだ」
「そうか。ならば、あやつはどうじゃ?一人の女子を観察するように見ておるぞ?」
「あれはただのストーカーだ」
「ふむ、難しいのう?」
「ぐぼわっ!?」


 とりあえず、ディメンションでストーカーの腹を殴り、他の目ぼしい者を探す。
 すると、ホウリが1人の男に目を向けた。


「お、あいつだな」
「本当か?」


 男は行きかう人をジッと観察しておる。まさに、石を探しておるような視線じゃ。


「よし、殴って奪うか」
「待て待て待て」


 腕まくりをしながら拳を振り上げると、ホウリに肩を掴まれた。


「なんじゃ?殴って奪えば解決じゃろ?何か問題があるか?」
「明らかに強盗だろうが。問題しかねぇよ」
「あ、そうか」


 冷静になって拳を収める。そういえば、法律なんてものがあったのう?面倒じゃな。


「今、魔王として思ってはいけない事を考えなかったか?」
「別にそんなことないぞ?」


 勘のいい奴じゃ。


「じゃが、殴って奪えないのだったら、どうすれば良いんじゃ?」
「姿を消してアイテムボックスからこっそり奪ってこい」
「それも犯罪じゃからな!?」


 犯罪を止めたくせに、犯罪を命じてくるか!?正気かこいつ!?


「別に奪ったままにしろって訳じゃない。石の鑑定を済ませたら、アイテムボックスに返してこい」
「む?良く分からんが分かった」


 ホウリの考えは分からんが、やれというならやった方がいいじゃろう。
 わしはインビシブルで姿を見えなくして、男の隣に移動する。そして、スキルで男のアイテムボックスを開ける。
 ふむ、やはり石があったな。ホウリの見る目は確かのようじゃ。
 石を取り出して鑑定をして、念話でホウリと連絡を取る。


『鑑定が終わったぞ』
『どうだった?』
『わしが持っている石と同じじゃ』
『やっぱりな。石を元に戻して帰ってこい』
『了解じゃ』


 バレぬように石をアイテムボックスに戻して、ホウリの元へ戻る。


「で、何をするつもりじゃ?」


 わしの問いにホウリは答える代わりに右手の人差し指を立てて3回振る。そして、左手で〇を作ると目の前に持って来た。


「そういことだ」
「成程のう」


 わしは全てを察し、それ以上は何も聞かなかった。


「明日、この街を出発する。それまでは自由行動だな」
「お主はどうする?」
「美味そうなスイーツ屋があったから、それを巡るつもりだ」
「わしも一緒に行って良いか?」
「勿論だ」


 こうして、わしらは石のことを忘れてディングの街を楽しんだのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


「いやー、楽しかったのう」
「だな」
「お主は一番どこが良かった?」
「一番最初のスイーツ店だな。アキノヤシを使ったパウンドケーキが見事だった。フランは?」
「わしはスパじゃな。気持ち良すぎて、稽古の疲れが消し飛んだわい」
「また来たな」
「じゃな~」
「ちょっと待って!」


 わしらがお喋りをしながら街を出ていくと、昨日の少女が目の前に出現した。


「ああ、昨日の」
「こいつが話に聞いていたやつか。始めまして」
「これはご丁寧に……じゃなくて!」


 少女は怒っているのか、地団太を踏む。


「まだ石は全部手に入れてないでしょ!?なんで街をでているの!?」
「だって、必要無いし」
「必要ない!?おねーさん達ってゴビゴビ遺跡に行くんじゃないの!?」
「その通りじゃ。間違って無いぞ」
「じゃあなんで……」
「そりゃあ、必要無くなったからだ」


 わしらは買った石をアイテムボックスから5取り出した。


「え!?なんで5個持ってるの!?おねーさんってただ遊んでただけだよね!?」
「やっぱり見てたか」


 こやつは奪い合いを楽しみにしておった。つまり、こやつは何処かでわしらを見ている筈じゃ。
 じゃから、わしらは敢えて戦闘は避けた。こやつの思惑に乗るのが癪だからのう。


「それで、この石をなぜ5個持っているかだったな」
「そうだよ!他の皆はちゃんと持ってるの確認したよ!」
「複製したんじゃよ」
「複製できるものじゃないよ!?出来たとしても物凄いMPを使う筈だよ!?」
「わしなら楽勝じゃ」


 ホウリは石が同じであると確認し、複製で数が揃えられることを確信した。
 だから、わしが石を複製して数をそろえたという訳じゃ。


「まあ、石の特徴がそれぞれ違ってたとしても、持っている奴から盗んで複製するけどな」
「どの道、戦闘を避けられる訳じゃ」
「くっ……私はこんなの認めないんだからね!」
「じゃあどうするんだ?」
「遺跡のトラップを凶悪にしてやる!絶対にあなたたちには最奥までたどり着けませんからね!」


 そう言うと、少女は跡形も無く消え去った。
 少女が消え去った後に、ホウリがわしに視線を向けて来る。


「だそうだが、どう思う?」
「決まっとるじゃろ?」


 わしはニヤリと笑って答える。


「俄然燃えて来たわい」
「それは良かったな」
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