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魔王と勇者の二人旅 第二話 なんでぇ!?
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ゴビゴビ遺跡を向かう途中、わしらは近くの街である「ディング」に寄っていた。
わしらは宿を取り、部屋の中で今後の行動を話し合う。
「フランは物資の調達、俺は情報の収集な。3時間後に部屋に集合だ」
「うむ」
砂漠の移動で、水や食料が不足した。じゃから、情報の収集も兼ねてディングに寄る事になったんじゃ。
「遅れたら昼飯おごりだからな。気を付けろよ?」
「分かっておるわい」
ちなみに、わしのこだわりで旅の時の食料や水、消耗品は現地で調達するようにしている。
王都にワープしたら簡単に調達は可能じゃが、それだと旅の醍醐味がなくなるからのう。
そんな訳で、わしはホウリと別れ街の中に繰り出したのじゃった。
☆ ☆ ☆ ☆
ディングは砂漠の街というだけあって、王都の建物と造りが違う。
コンクリート白い壁で出来ていて、平館が多い。壁には窓のように穴が開いてあって風通しが良さそうじゃ。
行きかう人も、日差しを防ぐために顔まで厚着している人ばかり。王都ではまず見ない光景じゃな。
商品は地面に敷かれた布の上に並べてある。
「安いよー」
「そこのお姉さん、この果物買ってかない?」
「この道具どうだい?ここでしか手に入らないよ?」
店の前で、店員たちは行きかう人たちに声を掛けておる。
そう思っていると、わしにもおじさんに声を掛けられた。
「お姉ちゃん、冒険者だね?このヤシの実、買ってかないかい?」
「ヤシの実?」
商品に目を向けると、乾いたレーズンのような物が入った袋が山のように積まれていた。1つ1000Gか。
「これがヤシの実?ヤシの実って大きなものではないのか?」
「これはここらで生っている『アキノヤシ』を乾燥させたものだ。栄養価が高くて保存も効く。旅にうってつけさ」
「ふむ、珍しいのう。1つくれ」
「まいどあり」
1000Gを渡し、袋を受け取る。袋を開けてアキノヤシを口に入れてみる。
意外と甘くて癖が無く食べやすい。噛めば噛むほど甘みが出て美味いのう。これなら、普通にお菓子作りにも使えそうじゃ。
「中々良いのう。10個もらおうか」
「まいどあり!」
1万Gを手渡し、10個の袋を受け取る。こういう珍しい食料も旅の醍醐味じゃな。
ホクホク顔で街の中を練り歩き、干し肉や乾パン、水などを買って歩く。
「ふう、これだけ買えば10日間は持つな」
「おねーさん」
買い出しも終わり、街の観光に移ろうとすると、小さい女の子に呼び止められた。
相変わらず顔まで厚着をしておって表情は伺い知れん。目だけが暗い服の中で光っている。
「なんじゃ?」
「ねえねえ、掘り出し物があるんだけど買わない?」
「掘り出し物?どんなものじゃ?」
少女は懐から半透明の黄色味を帯びたクリスタルじゃった。
「なんじゃこれ?」
「綺麗な石だよ。買わない?」
「綺麗な以外に価値はないのか?」
「無いよ!」
「元気だけは良いのう」
誇って言うことではないと思うんじゃがな。それにしても綺麗なだけの石か。ふむ……
わしは石をジッと見つめてみる。
「いくらじゃ?」
「1000万Gだよ!」
「買った」
「え!?」
少女の目が分かりやすく大きく見開かれる。
「な!?1000万Gだよ!?1000Gじゃないよ!?」
「分かっておるわい」
「ただの石だよ!?何の価値もないよ!?」
「それも聞いた」
「あ、もしかして、からかってる?お金が無いのに見栄を張ったらダメだよ?」
わしは金貨の入った袋を少女に突き出す。
少女は袋を受け取って中を覗く。すると、さっきよりも大きく目を見開いた。
「これ全部10万Gコイン!?」
「そうじゃ。100枚あるから1000万Gじゃ。これで文句なかろう?」
「ええ……」
なぜか少女がドン引きする。わしは普通に買い物をしただけなんじゃがのう。
「それで?売らぬのか?」
「……まあ、いっか」
少女は石をわしに手渡してくれる。
「うむ確かに」
「ただの石に1000万Gも出すなんて、おねーさんも物好きだね?」
「ただの石に1000万Gも出すわけなかろうが」
「え?どういうこと?」
「そのままの意味じゃ」
わしは買った石をアイテムボックスに仕舞いながら説明する。
「この石ってただの石ではないじゃろ?」
「え!?」
3度目となる少女の驚愕。
「なんでそう思ったの!?」
「鑑定しただけじゃ。これってゴビゴビ遺跡の宝を手に入れるためのカギなんじゃろ?」
「嘘!?鑑定しただけで分かるものじゃ……」
「わしなら分かる」
わしの鑑定で分からぬことなどほとんど無い。ミエルの毒くらいのものでないと、わしの鑑定を誤魔化すことはできん。
「じゃが、これって1つじゃと意味ないんじゃろ?」
「……ふふふ、これは面白くなりそうだね?」
「どういうことじゃ?」
わしの質問に少女が楽しそうに答える。
「実はね、その石はおねーさん以外にも渡したんだ」
「わしの他にも1000万Gを用意した奴がいるのか?」
「そんなのおねーさん以外にいないよ。本当だったら、私の無理難題をこなした人だけが手に入れられるんだ」
「無理難題?」
「ここらに出没する怪鳥の討伐とか、砂漠で採れるレアなフルーツを持って来たりとかね」
「ふーん?」
それならやりそうな奴もおるか?
「じゃが、ただの石と説明して、そこまでする奴がおるか?」
「それは、お話していく過程で、そこはかとなく明かすつもりだったんです」
「そうじゃったのか?」
つまり、ただの石が1000万Gという衝撃を与え、後から遺跡のカギを明かす。そして、欲しくなったところに無理難題を吹っ掛ける、のが本来の流れなんじゃな。
「わしはそれらをすっ飛ばして、この石を手に入れた訳か。なんだか申し訳ないのう?」
「別に良いけどね。そのおかげで面白そうなものを見られそうだし」
「どういう事じゃ?」
「言ったでしょ?その石の残りはこの街の人に配ったって」
「成程のう。石を奪い合えということか」
こいつはわしらが石を取り合うのを見たいわけなんじゃな。悪趣味なやつじゃ。
「何人に配った?」
「おねーさんを含めて5人。他の持ち主と協力できれば、別に奪う必要はないよ?」
「無理難題を言うでない」
ゴビゴビ遺跡にあるスノーダストクリスタルは1つだけ、大人しく協力できるとは思えん。
「じゃあ奪い合うしかないね」
「それが狙いじゃろうが」
「まあね。じゃ、私はこれで」
そう言うと、少女は跡形も無く消え去ったのだった。後には買った石だけが残ったのだった。
「さてと、ここからどうするべきか」
わしらもスノーダストクリスタルを狙う以上、石を集める必要がある。となると、まずは持っている奴の特定。そして石の奪取。
「ホウリに相談するか」
そう思い、わしは宿まで戻ったのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「──ということがあったのじゃ」
「成程」
「何か分かったか?」
「そいつ、人間じゃないな」
「それはわしにも分かる」
先ほどのやり取り最中、わしは少女を鑑定してみた。
誰も深部まで行ったことが無い遺跡のカギ、それをただの少女が持っている。そんなの不自然じゃ。
じゃが、鑑定しても少女の情報は微塵も出てこなかった。
「あやつの正体は?」
「遺跡の亡霊か何かだろ。気にすることじゃない」
「気になるわい」
どんなことを経験したら亡霊を気にならなくなるんじゃろうな?
「で、どうやって他の持ち主を特定する?」
「そこは俺に任せろ。1時間で特定してやる」
「1時間で4人も特定するのか?」
ホウリとはいえ、流石に早すぎる気がする。何をするつもりじゃ?
「いや、まずは1人を特定する」
「1人だけか?」
「ああ、気になる事があってな」
「気になる事?」
「その石を手に入れる時、相手の想定を超えたんだろ?だったら今回も超えてやろうぜ」
ホウリがニヤリと笑う。その顔にわしも思わずニヤリと笑い返した。
「じゃな。あんな奴の思い通りになるのはシャクじゃ」
「決まりだな」
「それで、どうやって特定するんじゃ?」
「遺跡のカギを欲しがるのは冒険者や調査隊だ。そういう風帽で誰かを探していそうな奴を見つける。見つけたら鎌をかける」
「意外と簡単じゃな?」
もっと手間がかかると思ったが、そうでもないのか。意外と拍子抜けじゃな。
「行くぞ。時間をかけると、この街が戦場になる」
「かもしれぬのう」
スノーダストクリスタルの手がかりがあるのだ。持っていそうな奴を襲う者が出てきても可笑しくない。
わしらは再び街に繰り出し、石を持っていそうな奴を探してみる。
「あやつは怪しくないか?」
「あれは落とし物を探しているだけだな。視線が下に向いてるだろ?人を探すには不自然だ」
「そうか。ならば、あやつはどうじゃ?何かを探しているように、辺りを見渡しておるぞ?」
「あれは人を待ってるだけだな。石を持ってる奴を探しているなら、もっと観察するような視線のはずだ」
「そうか。ならば、あやつはどうじゃ?一人の女子を観察するように見ておるぞ?」
「あれはただのストーカーだ」
「ふむ、難しいのう?」
「ぐぼわっ!?」
とりあえず、ディメンションでストーカーの腹を殴り、他の目ぼしい者を探す。
すると、ホウリが1人の男に目を向けた。
「お、あいつだな」
「本当か?」
男は行きかう人をジッと観察しておる。まさに、石を探しておるような視線じゃ。
「よし、殴って奪うか」
「待て待て待て」
腕まくりをしながら拳を振り上げると、ホウリに肩を掴まれた。
「なんじゃ?殴って奪えば解決じゃろ?何か問題があるか?」
「明らかに強盗だろうが。問題しかねぇよ」
「あ、そうか」
冷静になって拳を収める。そういえば、法律なんてものがあったのう?面倒じゃな。
「今、魔王として思ってはいけない事を考えなかったか?」
「別にそんなことないぞ?」
勘のいい奴じゃ。
「じゃが、殴って奪えないのだったら、どうすれば良いんじゃ?」
「姿を消してアイテムボックスからこっそり奪ってこい」
「それも犯罪じゃからな!?」
犯罪を止めたくせに、犯罪を命じてくるか!?正気かこいつ!?
「別に奪ったままにしろって訳じゃない。石の鑑定を済ませたら、アイテムボックスに返してこい」
「む?良く分からんが分かった」
ホウリの考えは分からんが、やれというならやった方がいいじゃろう。
わしはインビシブルで姿を見えなくして、男の隣に移動する。そして、スキルで男のアイテムボックスを開ける。
ふむ、やはり石があったな。ホウリの見る目は確かのようじゃ。
石を取り出して鑑定をして、念話でホウリと連絡を取る。
『鑑定が終わったぞ』
『どうだった?』
『わしが持っている石と同じじゃ』
『やっぱりな。石を元に戻して帰ってこい』
『了解じゃ』
バレぬように石をアイテムボックスに戻して、ホウリの元へ戻る。
「で、何をするつもりじゃ?」
わしの問いにホウリは答える代わりに右手の人差し指を立てて3回振る。そして、左手で〇を作ると目の前に持って来た。
「そういことだ」
「成程のう」
わしは全てを察し、それ以上は何も聞かなかった。
「明日、この街を出発する。それまでは自由行動だな」
「お主はどうする?」
「美味そうなスイーツ屋があったから、それを巡るつもりだ」
「わしも一緒に行って良いか?」
「勿論だ」
こうして、わしらは石のことを忘れてディングの街を楽しんだのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「いやー、楽しかったのう」
「だな」
「お主は一番どこが良かった?」
「一番最初のスイーツ店だな。アキノヤシを使ったパウンドケーキが見事だった。フランは?」
「わしはスパじゃな。気持ち良すぎて、稽古の疲れが消し飛んだわい」
「また来たな」
「じゃな~」
「ちょっと待って!」
わしらがお喋りをしながら街を出ていくと、昨日の少女が目の前に出現した。
「ああ、昨日の」
「こいつが話に聞いていたやつか。始めまして」
「これはご丁寧に……じゃなくて!」
少女は怒っているのか、地団太を踏む。
「まだ石は全部手に入れてないでしょ!?なんで街をでているの!?」
「だって、必要無いし」
「必要ない!?おねーさん達ってゴビゴビ遺跡に行くんじゃないの!?」
「その通りじゃ。間違って無いぞ」
「じゃあなんで……」
「そりゃあ、必要無くなったからだ」
わしらは買った石をアイテムボックスから5個取り出した。
「え!?なんで5個持ってるの!?おねーさんってただ遊んでただけだよね!?」
「やっぱり見てたか」
こやつは奪い合いを楽しみにしておった。つまり、こやつは何処かでわしらを見ている筈じゃ。
じゃから、わしらは敢えて戦闘は避けた。こやつの思惑に乗るのが癪だからのう。
「それで、この石をなぜ5個持っているかだったな」
「そうだよ!他の皆はちゃんと持ってるの確認したよ!」
「複製したんじゃよ」
「複製できるものじゃないよ!?出来たとしても物凄いMPを使う筈だよ!?」
「わしなら楽勝じゃ」
ホウリは石が同じであると確認し、複製で数が揃えられることを確信した。
だから、わしが石を複製して数をそろえたという訳じゃ。
「まあ、石の特徴がそれぞれ違ってたとしても、持っている奴から盗んで複製するけどな」
「どの道、戦闘を避けられる訳じゃ」
「くっ……私はこんなの認めないんだからね!」
「じゃあどうするんだ?」
「遺跡のトラップを凶悪にしてやる!絶対にあなたたちには最奥までたどり着けませんからね!」
そう言うと、少女は跡形も無く消え去った。
少女が消え去った後に、ホウリがわしに視線を向けて来る。
「だそうだが、どう思う?」
「決まっとるじゃろ?」
わしはニヤリと笑って答える。
「俄然燃えて来たわい」
「それは良かったな」
わしらは宿を取り、部屋の中で今後の行動を話し合う。
「フランは物資の調達、俺は情報の収集な。3時間後に部屋に集合だ」
「うむ」
砂漠の移動で、水や食料が不足した。じゃから、情報の収集も兼ねてディングに寄る事になったんじゃ。
「遅れたら昼飯おごりだからな。気を付けろよ?」
「分かっておるわい」
ちなみに、わしのこだわりで旅の時の食料や水、消耗品は現地で調達するようにしている。
王都にワープしたら簡単に調達は可能じゃが、それだと旅の醍醐味がなくなるからのう。
そんな訳で、わしはホウリと別れ街の中に繰り出したのじゃった。
☆ ☆ ☆ ☆
ディングは砂漠の街というだけあって、王都の建物と造りが違う。
コンクリート白い壁で出来ていて、平館が多い。壁には窓のように穴が開いてあって風通しが良さそうじゃ。
行きかう人も、日差しを防ぐために顔まで厚着している人ばかり。王都ではまず見ない光景じゃな。
商品は地面に敷かれた布の上に並べてある。
「安いよー」
「そこのお姉さん、この果物買ってかない?」
「この道具どうだい?ここでしか手に入らないよ?」
店の前で、店員たちは行きかう人たちに声を掛けておる。
そう思っていると、わしにもおじさんに声を掛けられた。
「お姉ちゃん、冒険者だね?このヤシの実、買ってかないかい?」
「ヤシの実?」
商品に目を向けると、乾いたレーズンのような物が入った袋が山のように積まれていた。1つ1000Gか。
「これがヤシの実?ヤシの実って大きなものではないのか?」
「これはここらで生っている『アキノヤシ』を乾燥させたものだ。栄養価が高くて保存も効く。旅にうってつけさ」
「ふむ、珍しいのう。1つくれ」
「まいどあり」
1000Gを渡し、袋を受け取る。袋を開けてアキノヤシを口に入れてみる。
意外と甘くて癖が無く食べやすい。噛めば噛むほど甘みが出て美味いのう。これなら、普通にお菓子作りにも使えそうじゃ。
「中々良いのう。10個もらおうか」
「まいどあり!」
1万Gを手渡し、10個の袋を受け取る。こういう珍しい食料も旅の醍醐味じゃな。
ホクホク顔で街の中を練り歩き、干し肉や乾パン、水などを買って歩く。
「ふう、これだけ買えば10日間は持つな」
「おねーさん」
買い出しも終わり、街の観光に移ろうとすると、小さい女の子に呼び止められた。
相変わらず顔まで厚着をしておって表情は伺い知れん。目だけが暗い服の中で光っている。
「なんじゃ?」
「ねえねえ、掘り出し物があるんだけど買わない?」
「掘り出し物?どんなものじゃ?」
少女は懐から半透明の黄色味を帯びたクリスタルじゃった。
「なんじゃこれ?」
「綺麗な石だよ。買わない?」
「綺麗な以外に価値はないのか?」
「無いよ!」
「元気だけは良いのう」
誇って言うことではないと思うんじゃがな。それにしても綺麗なだけの石か。ふむ……
わしは石をジッと見つめてみる。
「いくらじゃ?」
「1000万Gだよ!」
「買った」
「え!?」
少女の目が分かりやすく大きく見開かれる。
「な!?1000万Gだよ!?1000Gじゃないよ!?」
「分かっておるわい」
「ただの石だよ!?何の価値もないよ!?」
「それも聞いた」
「あ、もしかして、からかってる?お金が無いのに見栄を張ったらダメだよ?」
わしは金貨の入った袋を少女に突き出す。
少女は袋を受け取って中を覗く。すると、さっきよりも大きく目を見開いた。
「これ全部10万Gコイン!?」
「そうじゃ。100枚あるから1000万Gじゃ。これで文句なかろう?」
「ええ……」
なぜか少女がドン引きする。わしは普通に買い物をしただけなんじゃがのう。
「それで?売らぬのか?」
「……まあ、いっか」
少女は石をわしに手渡してくれる。
「うむ確かに」
「ただの石に1000万Gも出すなんて、おねーさんも物好きだね?」
「ただの石に1000万Gも出すわけなかろうが」
「え?どういうこと?」
「そのままの意味じゃ」
わしは買った石をアイテムボックスに仕舞いながら説明する。
「この石ってただの石ではないじゃろ?」
「え!?」
3度目となる少女の驚愕。
「なんでそう思ったの!?」
「鑑定しただけじゃ。これってゴビゴビ遺跡の宝を手に入れるためのカギなんじゃろ?」
「嘘!?鑑定しただけで分かるものじゃ……」
「わしなら分かる」
わしの鑑定で分からぬことなどほとんど無い。ミエルの毒くらいのものでないと、わしの鑑定を誤魔化すことはできん。
「じゃが、これって1つじゃと意味ないんじゃろ?」
「……ふふふ、これは面白くなりそうだね?」
「どういうことじゃ?」
わしの質問に少女が楽しそうに答える。
「実はね、その石はおねーさん以外にも渡したんだ」
「わしの他にも1000万Gを用意した奴がいるのか?」
「そんなのおねーさん以外にいないよ。本当だったら、私の無理難題をこなした人だけが手に入れられるんだ」
「無理難題?」
「ここらに出没する怪鳥の討伐とか、砂漠で採れるレアなフルーツを持って来たりとかね」
「ふーん?」
それならやりそうな奴もおるか?
「じゃが、ただの石と説明して、そこまでする奴がおるか?」
「それは、お話していく過程で、そこはかとなく明かすつもりだったんです」
「そうじゃったのか?」
つまり、ただの石が1000万Gという衝撃を与え、後から遺跡のカギを明かす。そして、欲しくなったところに無理難題を吹っ掛ける、のが本来の流れなんじゃな。
「わしはそれらをすっ飛ばして、この石を手に入れた訳か。なんだか申し訳ないのう?」
「別に良いけどね。そのおかげで面白そうなものを見られそうだし」
「どういう事じゃ?」
「言ったでしょ?その石の残りはこの街の人に配ったって」
「成程のう。石を奪い合えということか」
こいつはわしらが石を取り合うのを見たいわけなんじゃな。悪趣味なやつじゃ。
「何人に配った?」
「おねーさんを含めて5人。他の持ち主と協力できれば、別に奪う必要はないよ?」
「無理難題を言うでない」
ゴビゴビ遺跡にあるスノーダストクリスタルは1つだけ、大人しく協力できるとは思えん。
「じゃあ奪い合うしかないね」
「それが狙いじゃろうが」
「まあね。じゃ、私はこれで」
そう言うと、少女は跡形も無く消え去ったのだった。後には買った石だけが残ったのだった。
「さてと、ここからどうするべきか」
わしらもスノーダストクリスタルを狙う以上、石を集める必要がある。となると、まずは持っている奴の特定。そして石の奪取。
「ホウリに相談するか」
そう思い、わしは宿まで戻ったのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「──ということがあったのじゃ」
「成程」
「何か分かったか?」
「そいつ、人間じゃないな」
「それはわしにも分かる」
先ほどのやり取り最中、わしは少女を鑑定してみた。
誰も深部まで行ったことが無い遺跡のカギ、それをただの少女が持っている。そんなの不自然じゃ。
じゃが、鑑定しても少女の情報は微塵も出てこなかった。
「あやつの正体は?」
「遺跡の亡霊か何かだろ。気にすることじゃない」
「気になるわい」
どんなことを経験したら亡霊を気にならなくなるんじゃろうな?
「で、どうやって他の持ち主を特定する?」
「そこは俺に任せろ。1時間で特定してやる」
「1時間で4人も特定するのか?」
ホウリとはいえ、流石に早すぎる気がする。何をするつもりじゃ?
「いや、まずは1人を特定する」
「1人だけか?」
「ああ、気になる事があってな」
「気になる事?」
「その石を手に入れる時、相手の想定を超えたんだろ?だったら今回も超えてやろうぜ」
ホウリがニヤリと笑う。その顔にわしも思わずニヤリと笑い返した。
「じゃな。あんな奴の思い通りになるのはシャクじゃ」
「決まりだな」
「それで、どうやって特定するんじゃ?」
「遺跡のカギを欲しがるのは冒険者や調査隊だ。そういう風帽で誰かを探していそうな奴を見つける。見つけたら鎌をかける」
「意外と簡単じゃな?」
もっと手間がかかると思ったが、そうでもないのか。意外と拍子抜けじゃな。
「行くぞ。時間をかけると、この街が戦場になる」
「かもしれぬのう」
スノーダストクリスタルの手がかりがあるのだ。持っていそうな奴を襲う者が出てきても可笑しくない。
わしらは再び街に繰り出し、石を持っていそうな奴を探してみる。
「あやつは怪しくないか?」
「あれは落とし物を探しているだけだな。視線が下に向いてるだろ?人を探すには不自然だ」
「そうか。ならば、あやつはどうじゃ?何かを探しているように、辺りを見渡しておるぞ?」
「あれは人を待ってるだけだな。石を持ってる奴を探しているなら、もっと観察するような視線のはずだ」
「そうか。ならば、あやつはどうじゃ?一人の女子を観察するように見ておるぞ?」
「あれはただのストーカーだ」
「ふむ、難しいのう?」
「ぐぼわっ!?」
とりあえず、ディメンションでストーカーの腹を殴り、他の目ぼしい者を探す。
すると、ホウリが1人の男に目を向けた。
「お、あいつだな」
「本当か?」
男は行きかう人をジッと観察しておる。まさに、石を探しておるような視線じゃ。
「よし、殴って奪うか」
「待て待て待て」
腕まくりをしながら拳を振り上げると、ホウリに肩を掴まれた。
「なんじゃ?殴って奪えば解決じゃろ?何か問題があるか?」
「明らかに強盗だろうが。問題しかねぇよ」
「あ、そうか」
冷静になって拳を収める。そういえば、法律なんてものがあったのう?面倒じゃな。
「今、魔王として思ってはいけない事を考えなかったか?」
「別にそんなことないぞ?」
勘のいい奴じゃ。
「じゃが、殴って奪えないのだったら、どうすれば良いんじゃ?」
「姿を消してアイテムボックスからこっそり奪ってこい」
「それも犯罪じゃからな!?」
犯罪を止めたくせに、犯罪を命じてくるか!?正気かこいつ!?
「別に奪ったままにしろって訳じゃない。石の鑑定を済ませたら、アイテムボックスに返してこい」
「む?良く分からんが分かった」
ホウリの考えは分からんが、やれというならやった方がいいじゃろう。
わしはインビシブルで姿を見えなくして、男の隣に移動する。そして、スキルで男のアイテムボックスを開ける。
ふむ、やはり石があったな。ホウリの見る目は確かのようじゃ。
石を取り出して鑑定をして、念話でホウリと連絡を取る。
『鑑定が終わったぞ』
『どうだった?』
『わしが持っている石と同じじゃ』
『やっぱりな。石を元に戻して帰ってこい』
『了解じゃ』
バレぬように石をアイテムボックスに戻して、ホウリの元へ戻る。
「で、何をするつもりじゃ?」
わしの問いにホウリは答える代わりに右手の人差し指を立てて3回振る。そして、左手で〇を作ると目の前に持って来た。
「そういことだ」
「成程のう」
わしは全てを察し、それ以上は何も聞かなかった。
「明日、この街を出発する。それまでは自由行動だな」
「お主はどうする?」
「美味そうなスイーツ屋があったから、それを巡るつもりだ」
「わしも一緒に行って良いか?」
「勿論だ」
こうして、わしらは石のことを忘れてディングの街を楽しんだのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「いやー、楽しかったのう」
「だな」
「お主は一番どこが良かった?」
「一番最初のスイーツ店だな。アキノヤシを使ったパウンドケーキが見事だった。フランは?」
「わしはスパじゃな。気持ち良すぎて、稽古の疲れが消し飛んだわい」
「また来たな」
「じゃな~」
「ちょっと待って!」
わしらがお喋りをしながら街を出ていくと、昨日の少女が目の前に出現した。
「ああ、昨日の」
「こいつが話に聞いていたやつか。始めまして」
「これはご丁寧に……じゃなくて!」
少女は怒っているのか、地団太を踏む。
「まだ石は全部手に入れてないでしょ!?なんで街をでているの!?」
「だって、必要無いし」
「必要ない!?おねーさん達ってゴビゴビ遺跡に行くんじゃないの!?」
「その通りじゃ。間違って無いぞ」
「じゃあなんで……」
「そりゃあ、必要無くなったからだ」
わしらは買った石をアイテムボックスから5個取り出した。
「え!?なんで5個持ってるの!?おねーさんってただ遊んでただけだよね!?」
「やっぱり見てたか」
こやつは奪い合いを楽しみにしておった。つまり、こやつは何処かでわしらを見ている筈じゃ。
じゃから、わしらは敢えて戦闘は避けた。こやつの思惑に乗るのが癪だからのう。
「それで、この石をなぜ5個持っているかだったな」
「そうだよ!他の皆はちゃんと持ってるの確認したよ!」
「複製したんじゃよ」
「複製できるものじゃないよ!?出来たとしても物凄いMPを使う筈だよ!?」
「わしなら楽勝じゃ」
ホウリは石が同じであると確認し、複製で数が揃えられることを確信した。
だから、わしが石を複製して数をそろえたという訳じゃ。
「まあ、石の特徴がそれぞれ違ってたとしても、持っている奴から盗んで複製するけどな」
「どの道、戦闘を避けられる訳じゃ」
「くっ……私はこんなの認めないんだからね!」
「じゃあどうするんだ?」
「遺跡のトラップを凶悪にしてやる!絶対にあなたたちには最奥までたどり着けませんからね!」
そう言うと、少女は跡形も無く消え去った。
少女が消え去った後に、ホウリがわしに視線を向けて来る。
「だそうだが、どう思う?」
「決まっとるじゃろ?」
わしはニヤリと笑って答える。
「俄然燃えて来たわい」
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彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
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※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
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