魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第二百九十四話 エ駄死!

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「えー、ではこれよりロワ・タタンの裁判を始める」
「異議あり!」


 僕の言葉が宿の食堂の中に響き渡る。
 そんな僕の言葉に裁判官の格好をしたホウリさんが呆れた表情になる。


「まだ始まったばっかりだぞ。何に対しての異議だ」
「この状況に対してですよ!」
「この状況?」
「貼り付けにされてて異議が無い訳ないでしょ!?」


 朝起きたら、僕は十字架に張り付けれていた。これで異議が無いというのは無理があるだろう。


「というか、これは何ですか!?」
「裁判だって言っただろ」
「何に対しての裁判かを聞いているんですけど!?」


 寝ぼけ眼で周りの状況を確認してみる。
 前には台で高くなった席にホウリさんが座っている。右と左には検察席と弁護席があって、検察席にはミエルさんが座っている。
 周りには他の宿泊客が朝ごはんを食べながら見物している。なんだか、見世物になってる気分だ。


「じゃあ、被告人の罪状を読み上げる。被告人は被害者、ミエル・クランに酔った勢いで告白をした」
「へ?告白?」
「その様子だと、覚えてないみたいだな?」


 ホウリさんの言う通り、告白した記憶なんて全くない。


「僕がミエルさんに告白したんですか?」
「その通りだ。被告人の罪状は告白を酔った勢いで行い、あまつさえ覚えていないことだ」


 そっか。確かにそれは失礼だ。罪とまでは行かなくても、何かしらの責任は取らないといけないだろう。


「どんな罪に問われるんですか?」
「そうだな、女性を勘違いさせるような行動をとったんだし……」


 ミエルさんの好きなものでも買うとか?それとも、防衛戦のシフトを変わるとか?


「死刑だな」
「極刑!?」


 僕が悪いとはいえ死刑は流石に酷すぎないかな!?


「異議あり!流石に死刑はやりすぎです!」
「安心しろ、俺は裁判官の経験も豊富だ。判決を間違えることは無い」
「じゃあ死刑も冗談だったり?」
「それは本当だ」
「そこは冗談であってほしかった!」


 周りの皆さんの視線が僕に突き刺さる。もう恥ずかしさとか恐怖とかが混ざって感情がごちゃごちゃだ。


「というか、これ外してくれませんか?これじゃ被告人じゃなくて死刑囚ですよ」
「似たようなものだろ?」
「似てないですよ!そうだ、弁護士!僕の弁護士はどこに!?」
「今回は弁護士はいない。自己弁護しろ」
「そんな横暴な!?」
「その代わり、検察もいない。ミエルが検察の代わりだ」
「そうだミエルさん!何とか言ってくださいよ!」


 スーツを着たミエルさんが俯いたまま何も話さない。


「ミエルさん?」
「……その、1つ聞いても良いか?」
「なんですか?」


 ミエルさんが顔をあげて僕を見つめて来る。


「その……ロワは私の事が好きなのか?」
「え?好きですよ?」
「…………」(ポッ)
『ヒュー!』
『こんな大勢の前で告白かよ。やるな』


 僕の言葉にミエルさんの顔が赤くなる。周りも騒がしくなってる。
 あれ?何か変な事を言ったかな?


「あの、僕からも1つ良いですか?」
「ダメだ」
「なんでですか!?」
「被告人に発言権があると思うなよ?」
「扱いが酷すぎないですか!?」


 体を縛られて、発言すら認められないなんて酷い!


「じゃあ、今から質問する。その回答によっては助けてやっても良いぞ」


 僕の悲痛な叫びが届いたのか、ホウリさんがそんな事を言い出した。
 正直、答えによって処遇が決まるのも可笑しいけど、今は従うしかない。


「分かりました。何を聞きたいんですか?」
「ミエルが好きって言ったな?」
「はい」
「それは恋人になりたいってことか?」
「いえ?違いますよ?」


 僕が首を傾げながら答える。すると、皆さんの視線が冷めたものになった、気がした。
 俯いていたミエルさんの目が鋭くなっていく。


「ロワ?どういうことだ?私のこと好きなんだよな?」
「そうですね。ミエルさんも好きですよ」
「私?」
「ええ。ホウリさんもフランさんもノエルちゃんも大好きですよ」
「………………」


 ミエルさんの顔から感情が消えていく。
 そして、ホウリさんが裁判官が持っているような木槌を打ち鳴らす。


「判決、死刑」
「異議なし」
「異議ありまくりですよ!?」
「誰か、粗大ごみを火にくべるのを手伝ってもらえないか?」
『俺に任せろ』
『力仕事なら出番だな』
「なんで皆さんノリノリなんですか!?あ、ちょっと待って!」
「壁とか燃やしちゃダメだよ?」
「心配するなディーヌ。壁や床にはダメージは与えず、ごみだけ燃やす」
「それなら良いんだけど」
「全然良くないんですけどぉぉぉぉぉぉ!?」


 ディーヌさんのサムズアップを見ながら、僕の体は火に包まれていったのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


「し、死ぬかと思った……」


 何とか火の中から生還した僕は食堂の机に突っ伏していた。


「これに懲りたら酒の飲みすぎには注意するんだな」
「もうお酒は飲みません」
「そうしろ」


 焼けた体を回復させるために、HPポーションをチビチビと飲んでいく。


「痛てて……。なんだか頭が痛くなってきました」
「酸欠と二日酔いだな。解毒ポーションも飲んでおけ」
「はーい」


 解毒ポーションをHPポーションに混ぜて飲む。味が混ざって、えぐみが増したけど贅沢は言ってられない。そんなことよりも今は……
 僕はポーションを飲みながら隣のミエルさんに視線を向ける。
 ミエルさんはふくれっ面でソッポを向いている。


「あのー、ミエルさん?」
「ふんっ!」


 僕が話しかけても、ミエルさんは何も言ってくれない。これは相当怒っているみたいだ。


「ご、ごめんなさい。酔っていたとはいえ、僕に好きなんて言われるのは迷惑でしたよね……」
「……ふんっ!」


 謝ると更にミエルさんの顔が鋭くなった。なんだか、謝る前よりも怒っているような?
 これって、どうした方がいいんだろう?


「あの、ホウリさん……」
「俺は何もしない。自分でなんとかしろ」
「はーい……」


 ホウリさんにも見捨てられて、僕は頭を抱えそうになる。けど、僕が悪いんだし頑張って何とかしよう。


「で、今日の防衛戦についてだが」
「ああ。そうでしたね」


 裁判ごっこがあったからすっかり忘れてたや。


「今日はどこで何時までですか?」
「場所は昨日と同じ東地区。時間は午前0時までだ」
「約12時間ですか」
「本当はロワとミエルは同じ地区で戦闘させるつもりだったが、どこかのボケがやらかしやがったからな。ミエルは南地区で戦闘を頼む」
「了解だ」


 ミエルさんの顔に表情が無い。帰ったらまた謝らないと。


「そういえば、銀の閃光の皆さんに聞いたんですけど、オダリムの物流って魔法陣で管理しているんですよね?」
「その通りだ」
「あれだけの物流を魔法陣で監理するって、魔石は足りてるんですか?」
「なんとか足りさせている。素材の買い取りとかオダリムからの支援を受けて、足りない分は俺のポケットマネーでなんとかしている」
「でも、お金があってもMPが足りないのでは?」


 魔石はMPを込めれば何度でも使える。けど、込めるMPも膨大なものになるはずだ。お金があってもなんとかなるとは思えない。


「確かに普通の方法だとMPは集めにくいな」
「じゃあどうやって集めているんですか?」
「ロワも知ってる方法だ」
「僕も知ってる方法?」
「膨大なMPが欲しいってなったらどうする?」


 膨大なMPが欲しい時?そりゃ、ノエルちゃんに────


「あ、そっか」
「そういうことだ」


 魔石を王都に持って行って、ノエルちゃんにMPを込めて貰っているんだ。
 ある程度の量と質の魔石を揃えれば、1週間は持つだろうしね。
 ホウリさんが方法を明言しなかったのも、ノエルちゃんが関わっているからと考えれば納得がいく。


「分かってると思うが、口には出すなよ?」
「分かってますよ」
「口を滑らせた瞬間、また燃やすからな?」
「わ、分かってますよ」


 ホウリさんなら本気でやりかねない。
 そんな感じで、4日目の討伐戦が始まったのだった。
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