魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百十六話 「必」ず「殺」す訳では無い「技」

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「欲しいなぁ」
「藪から棒に何よ」


 ノエルはお勉強の休憩時間に呟いてしまう。そんなノエルにコアコちゃんが突っ込んでくる。


「欲しいって何がよ」
「必殺技」
『やけに唐突だな。どうした?』
「ノエルってさ、必殺技を持ってないなって思ってさ」
「持っている人の方が少ないと思うけど?」
「なんで欲しいのよ」
「だってカッコいいじゃん?」


 ホウリお兄ちゃんは爆破キック、ロワお兄ちゃんはトリシューラ、ミエルお姉ちゃんはシン・プロフェクションガード、フランお姉ちゃんは何かいっぱい。ノエルだけは必殺技っぽいのを持っていない。


「でも、必殺技がカッコいいっていうのは分かるかな」
「だよね!」
「で、具体的に何をしたいのよ」
「ふっふっふ、よく聞いてくれました」


 ノエルは部室の壁際に置いてあったホワイトボードを持ってくる。そして、ペンで大きく「ノエルの必殺技!」って書く。


「皆でノエルの必殺技を考えよう!」
「そうだと思ったわ」
「あはは……」


 あれ?なんだか皆のノリが悪いような?


「どうしたの?嫌だった?」
「というよりも、私達は戦いに詳しくないから、ノエルちゃんの力になれるのかなって思って」
「マカダはともかくね」
『俺も戦闘訓練を始めて1年経ってないしな』
「ノエルも戦い始めて1年くらいだよ?」
「ド素人しかいないじゃないの」


 サルミちゃんが呆れたようにため息を吐く。確かにスターダストの皆に相談した方が良い案は出るかもしれない。


「けど、まあ減るものじゃないし良いんじゃない?」
「適当だね?」
「お遊びみたいなものなら良いんじゃない?」
『それもそうだな』
「そうこなくっちゃ!それじゃ案がある人は手を上げて!」


 最初に手を上げたのはマカダ君だった。


「はい、マカダ君!」
『思いっきり魔装して殴れば良いんじゃないか?』
「うーん?必殺技っぽくないかな?」
「マカダは何て言ったのよ?」
「あ、えーっと……」


 マカダ君の言葉はノエルが常に翻訳している。けど、魔装についてはあんまり他の人には話したくない。


「力いっぱいパンチしたらどうかって」
「それって必殺技なの?」
「ピンとこないね」
「子供が思いっきり殴ったところで、たかが知れてるでしょ」
『そこまで言わなくてもいいだろ』


 ホワイトボードに『思いっきりパンチ』って書く。けど、他の皆からは不評みたい。


「他に意見がある人はいない?」
「は、はい!」


 珍しくコアコちゃんの手が上がった。こういう時ってコアコちゃんは自分の意見を言わないことが多いから意外だ。


「はい、コアコちゃん!」
「投げ技なんてどうかな?」
「投げ技?」


 コアコちゃんから意外な案が出た。


「投げ技って必殺技としては珍しいね?」
「この前、『柔道』ってスポーツを見たんだけど、結構派手だったの。それで、必殺技としてどうかなって思って」
「どういう技だったの?」
「腕を取って思いっきり投げるの」
「ノエル、出来そう?」
「うん」


 投げ技ならホウリお兄ちゃんから教わってるし、十分に技として使うことが出来る。


『だが、地味じゃないか?』
「そうね。それに魔物とかには有効なの?」
「ウルフ系の魔物も投げようと思えば投げられるよ。スライム系は難しいかも」
「そっか……じゃあダメだね」
「そんなこと無いよ。全部の魔物に効く技なんて無いし」
「力いっぱい殴る、よりはマシね」
『俺を引き合いに出すな』


 ホワイトボードに『投げ技』を書き加える。これは有力候補だ。


「他に案のある人はいる?」
『俺の案にケチばっかり付けてるんだ。サルミはさぞや良い案があるんだろうな?』
「戦いを知らない素人に期待しないでよね」


 そんな事を言いつつも、サルミちゃんは顎に手を当てて考え始める。


「……殴る時に手をパーの形にするの」
「それって強いの?」
「一点に力が掛かる分、普通に殴るよりも貫通力が増すわ。さらに、リーチも長くなってお得ね」
「抜き手だね」
「なんだ、既にある技術なのね」
「ノエルちゃんは使えるの?」
「うん」


 抜き手もホウリお兄ちゃんから学んだ技術だ。慣れるまでは痛かった、今は魔装しなくても使うことが出来る。


「あんたは何なら出来ないのよ」
「一通りの戦闘技術はホウリお兄ちゃんから学んだかな。けど、まだまだだってホウリお兄ちゃんは言ってるよ?」
『俺は話にならないって言われてるけどな』
「始めたばかりだったら仕方ないよ」


 ホワイトボードに『抜き手』を書き加える。


「ノエルちゃん的には、抜き手は必殺技になれるの?」
「うーん?どうだろ?」
『貫通力が上がるだけだからな。必殺技にしてはインパクトが弱いんじゃないか?』
「あんたの案よりはマシよ」
『どうだか』
「はいはい喧嘩しないの」


 険悪になってきたサルミちゃんとマカダ君を手を叩いて制する。2人は睨みあいになったけど、とりあえずは口論をやめてくれた。


「最後はパンプ君だけど、何かある?無ければ無理に言う必要は無いよ?」
「案も何も、僕ってノエルがどういう風に戦うかあんまり知らないんだけど?」
「そうなの?」
「うん」


 そういえば、パンプ君にはあんまり戦った所は見せてなかったっけ。


「ノエルはね、近接戦ではナイフを使って遠距離戦では銃を使うんだ」
「ナイフと銃?なのに皆は徒手空拳の技を提案してたの?」
「そういえばそうだったわね」
『忘れてたな』
「あのね……」


 皆の言葉にパンプ君が頭を抱える。まあ、武器を使うよりも素手の方が戦いやすかったりするんだけどね。


「じゃあ、ナイフを使った技が良いと思うんだけど……、ごめん全く思いつかないや」
「大丈夫、大丈夫」


 戦わない人はナイフの使い方とか分かんないだろうしね。


「ノエルって魔装は使えないの?」
「ま、魔装?」
「MPを武器にまとわせる技術よね?かなり難しいって聞くけど、まさか使えるの?」


 日常的に使ってます、とは言えないよね。でも、完全に使えないって嘘を吐くのもなぁ。
 悩んだノエルは指をちょっとだけ開けて答える。


「少しは使えるかな」
「少しでも使えるのね」
「じゃあ、その魔装を必殺技にしたら?」
「あ、それ良いかも」


 魔装っていつも使っているから特別感は無かったけど、使いようによっては必殺技になるかも。


「ナイフを魔装しての一撃。カッコいいんじゃない?」
「確かにね」


 ナイフじゃなくて手に魔装しても物を切ることが出来る。徒手空拳であっても使える技術だ。
 まあ、ノエルは徒手空拳で使うことが多いけど。
 ノエルはホワイトボードに『魔装』と書き加える。


「うーん、4つか」
「ノエルちゃんはどれが一番良いの?」


 ノエルは改めてホワイトボードに書いてある文字を見つめる。
 『思いっきりパンチ』『投げ技』『抜き手』『魔装』。どれも良さそうではあるかな。


「どれも捨てがたいかな」
「でも、1つだけ論外なものがあるわよ」
『どれの事だ?』
「喧嘩はダメだよ?」


 険悪になりかけたところをコアコちゃんが制する。


「選べないなら全部使えば良いんじゃない?必殺技って1つに決める必要は無いんだし」
「全部使う?」


 そっか、1つに決める必要は無いんだ。ん?てことは?
 ホワイトボードに書かれた文字を眺めつつ、湧いて出たアイディアをまとめる。


「……うん、これなら必殺技になる」
「どれか決めたの?」
「ううん。全部使うことにしたの」
「じゃあこの話は終わりね。時間も良い感じだし、そろそろ帰るわよ」
「それはちょっと待って」
「何よ、まだなにかあるの?」
「うん。必殺技の案があと3つ必要なの」
「は?そんなに必殺技を作って何するのよ」
「いいから、いいから」


 不満気なサルミちゃんを座らせて、ノエルは再び必殺技の案を募った。
 ふっふっふ、スターダストの皆の驚く顔が目に浮かぶなぁ。
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