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外伝 ココアはやっぱり
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「お疲れ様でした~」
「お?チョコレートなんて持ってどこに行くんだ?」
バレンタインの日、チョコレートの袋を持って帰ろうとしていると、スイトさんにそう聞かれた。
「スターダストの皆さんへチョコレートを差し入れようかと思いまして」
「そうか。てっきり彼氏にあげるのかと思ったぜ」
「そんな人はいません。仕事が忙しすぎて作る暇が無いので」
「それは結構なことで」
「張り倒しますよ??」
「お前が言うと犯罪予告なんだが?」
スイトさんの顔が分かりやすく引きつる。犯罪者の集団を1人で制圧する人に拳を向けられたら怖いか。
「お疲れ様でした~」
「おう、お疲れさん」
そんな感じで私は検察室を出る。そろそろ日も落ちそうだ。チョコレートを早く渡してしまおう。
「それにしても彼氏かぁ」
仕事が忙しいのは本当だけど、恋愛に興味が無いわけじゃない。けど、積極的に作ろうと思うかって言われると、そんな感じじゃない。まあ、今は仕事優先かな。
そんなことを考えていると、スターダストの皆さんの家に着いた。
門を開けて玄関まで行きインターホンを鳴らす。すると、中から誰かが走ってくる音がして扉が開いた。
「はーい、どちら様ですかー。ってラビお姉ちゃん?」
「こんばんはノエルちゃん。誰かいる?」
「今日は皆いるよ。何か御用?」
「バレンタインだから皆さんにチョコを渡そうって思って。勿論、ノエルちゃんにもあるよ」
「ほんと!?あがってあがって!」
ノエルちゃんに背中を押されるように家の中に入る。
「あれ?ラビさん?」
「どうかしたのか?」
リビングに案内されると、ロワさんとミエルさんがいた。お二人とも不思議そうな顔をしている。
「こんばんは。実はバレンタインのチョコを渡そうと思ったんですけど、ホウリさんとフランさんは何処ですか?」
リビングにホウリさんとフランの姿は無い。ノエルちゃんからは皆さんいるって聞いたんだけどなぁ?
「ホウリとフランは庭にいる。何かしらの実験をやっているみたいだぞ」
「そろそろ戻ってくる筈ですよ」
ロワさんがそう言うと、丁度玄関が開く音が聞こえた。
そして、リビングにホウリさんとフランさんが仲良く入って来た。
「ラビではないか?どうしたんじゃ?」
「お邪魔してます。バレンタインなのでチョコを差し入れにきました」
「お、ありがとな。コーヒー淹れるけど飲むか?」
「いただきます」
ホウリさんがキッチンに入り、フランさんがリビングの椅子に勢いよく座る。
「ふぅ、疲れたわい」
「お疲れー。今日は何してたの?」
「使えそうなスキルを片っ端から検証した。まったく、眠気を吹き飛ばすスキルなど、いつ使うんじゃ」
「なんだか不思議な事をしてますね」
聞く限りではホウリさんが試そうとしたんだろう。あの人の考えることは今でも良く分からない。
「して、チョコを貰っても良いか?」
「そうでしたね。少し待っていてください」
紙袋からチョコを取り出す。
「これはフランさんへです」
「うむ、有難く受け取ろう」
黒い箱に入ったチョコをフランさんに渡す。
「ブランデーが入ったチョコです。フランさんはお酒が好きと聞いたので」
「その通りじゃ」
フランさんが箱を開けると、瓶の形をしたチョコが詰め込まれていた。
「中々良い香りじゃな。それでは早速───」
「夕飯前だぞ」
フランさんがチョコに伸ばした手の横に、コーヒーカップが勢いよく置かれる。フランさんが横を見ると、睨みを効かせたホウリさんがコーヒーカップが乗せられたトレーを持っていた。
「食うとしても1つだけにしておけ」
「……うむ」
フランさんが不満気な表情でチョコを1つだけ手に取る。
「美味いのう。ブランデーの香りが良い」(もぐもぐ)
「それは良かったです」
フランさんの顔を見るに、口に合ったのは本当みたいだ。
……ダメだ。最近は犯罪者の取り調べをすることが多いから、嘘かどうかを疑う癖がついてしまった。
「良い傾向なんじゃないか」
「勝手に心を読まないでくれませんか?」
顔に出てただろうか。いや、ホウリさんなら顔に出ていなくても、心を読むくらいはしてきそうだ。
「ほら、コーヒー入ったぞ」
「ありがとうございます」
「あと、俺は心は読めないからな?」
「その言葉は心が読めないと出ませんよね?」
ホウリさんからコーヒーカップを受け取る。
何か変なもの入っていないよね?いや、来客者に毒とかは入れないか。でもホウリさんだしなぁ……。
「安心せい、変な物は入っとらん」
「フランさんも心読めます?」
「今のは感情が顔に出てただけじゃ」
「そんなに分かりやすいですか?」
「そうだな。ロワ以外は分かっていただろう」
「自然に僕の悪口になってませんか?」
そんなことを離しつつ、私はコーヒーを啜る。苦みが弱い私好みの味だ。
「ねーねー、ノエルには無いの?」
「勿論あるよ。はい、どーぞ」
ハート形の箱に入ったチョコをノエルちゃんに渡す。
「わーい!」
箱を開けると赤く光沢のある紙に包まれたチョコが並んで入っていた。
「食べていい?」
「1つだけな」
「はーい」
ノエルちゃんがチョコの包みを剥いで口に入れる。
「イチゴ味だ!すっごく美味しい!」
「良かった。ロワさんとミエルさんもこれをどうぞ」
ロワさんに黒い箱、ミエルさんに赤い箱を渡す。
「ロワさんは甘さを控えたビターチョコ、ミエルさんには爽やかなチョコミントです」
「ありがとうございます」
「私好みのチョコだな。食後にいただくとしよう」
「僕も後でいただきますね」
お二人は今食べないみたいだ。すぐに感想を聞けないのは残念だけど、後日聞けばいっか。
「それで?俺へのチョコはあるのか?」
「はい。一応、一番お世話になった人なので」
「それは楽しみだな」
ホウリさんが頬杖をついってニヤリと笑う。真っすぐ感謝を伝えるのは照れくさいけど、今日くらいはいいだろう。
私は袋では無く、アイテムボックスからチョコが詰まった1メートルはある大きな袋を取り出す。
「はい、どーぞ」
「ありがとな」
ホウリさんは袋を受け取ると、口を開けて中を確認しだした。
「ホウリお兄ちゃんだけいっぱい貰ってずるーい」
「ホウリはラビに色々と指導しておるからのう」
「あと、ホウリさんは量が多ければ外れないかなって思いまして」
「俺のことを良く分かっているじゃないか」
ホウリさんが機嫌よく中を確認していると、すると、ふと個包装されたチョコチップクッキーを取り出した。
「これはラビが作ったのか?」
「なんでそう思ったんですか?」
「他のチョコは既製品だが、これだけは手作りだ。わざわざ他の奴が作った物を入れたとも考えにくいし、ラビが作ったものだと判断した。察するに憲兵で配ったあまりだろ?」
「その通りです。憲兵所の皆さんに作った時の余りです」
「ホウリさんに作った訳じゃないんですね」
「ですね」
余ったらスターダストの皆さんにもあげようかと思った。けど、少ししか残らなかったからホウリさんの袋の中に入れたわけだ。
「1ついただくぞ」
「どうぞ」
ホウリさんが個包装されたクッキーを1つ取り出して口に入れる。
「うん、美味いな」
「ありがとうございます」
スイーツに関してはホウリさんはお世辞は言わない。だから、この誉め言葉は素直に嬉しい。
「残りは後でいただくとしよう」
「美味しくいただいてくださいね」
「おう」
「では、チョコも渡したので私は帰りますね」
「えー、もうちょっと居てよー」
立ち上がろうとすると、いつの間にか傍にいたノエルちゃんに袖を掴まれた。
「でも、遅くまでいると迷惑じゃない?」
「お主がおって迷惑に思う奴はおらん」
「夕飯くらいは食っていけよ」
「うーん、ではご相伴にあずかります」
これだけ引き留められていて、帰るのも失礼だろう。
「ちなみにメニューはなんですか?」
「カレーだ」
「付け合わせはいりますか?」
「らっきょう漬けをお願いします」
「分かりました」
ホウリさんとロワさんがキッチンへと入っていく。
「作ったのはホウリさんですか?」
「そうじゃな」
「だったら期待できそうですね」
「味は普通だと思うぞ?」
「そうなんですか?」
ホウリさんの事だから、今まで食べたことがないほどに美味しいカレーなんだと思ってた。
「ホウリが本気を出して美味い料理を作ると、味のハードルが上がってしまう。じゃから、ホウリが料理を作る時は意図的に手を抜いているらしい」
「舌が肥えるって奴ですね」
確かに食事を楽しめなくなる可能性があるんだ。そこまで考えてたんだ。
「ラビお姉ちゃんがいるからいつもより美味しくしてるとか無いかな?」
「ラビが来たときには煮込むだけじゃったと思うから、味を変えることはせんと思うぞ」
「貰ったチョコを入れるくらいか?」
「私ってチョコ入りのカレーって食べたこと無いんですよね」
「わしもじゃ」
「ノエルも食べたーい!」
「ならば今度やってみるか」
そんな事を話していると、キッチンからお盆にカレーとサラダを乗せたホウリさんとロワさんがやってきた。
「出来たぞー」
「わーい!」
お二人は皆の前に料理を並べていく。
皆の前に料理が並べられたところで、お二人は自分の席に着く。
「それじゃ、いただきます」
「「「「「いただきまーす!」」」」」
スプーンを手に取りカレーを掬って口に入れる。
「……普通のカレーだ」
「だから言っただろう?」
「なんだ?豪華なカレーを期待していたのか?」
「はい。ガッカリです」
「チョコは入っていないのか?」
「今回のカレーには合わないから入れてない」
「今度入れて~」
「良いぞ」
そんなことを話ながら和気あいあいと食事を続けていく。こんなに大勢でご飯を食べるなんて久しぶりだ。なんだか、疲れた心に活力が漲ってくるような気がする。
「そういえば、ラビは本命チョコは誰かに渡したのかのう?」
「私てないですよ。本命を上げる相手がいませんので」
「親しくなくても、気になっている人とかいないのか?」
フランさんとミエルさんの尋問……もとい質問に圧を感じる気がする。
「いないですよ」
「そうなのか?」
「関わるのが上司か同僚か犯罪者なので、そういう人はいないですね。最近は休みも少ないので、出会いがほとんどないです」
自分でも悲しくなるくらいに浮いた話がない。いっそのこと、クイーンさんにでも頼んで合コンでもセッティングして貰おうか。
「じゃあ、ホウリさんはどうですか?」
「「はぁ?」」
ロワさんの言葉に、私とホウリさんの声がハモってしまう。ホウリさんの方を見てみると、物凄く怪訝そうな顔をしていた。多分、私も同じような顔をしているんだろう。
「何言ってんだ?」
「え?でも、ホウリさんってラビさんの師匠みたいなものなんですよね?」
「師匠と弟子の恋……物語ではよくある展開だな」
何故だかミエルさんもロワさんの言葉に賛同している。
「それで、どうなんだ?」
「そうですね。率直に言うとホウリさんだけは恋愛対象として見られないですね」
「率直すぎませんか?」
「隣の家のお爺ちゃんの方が恋愛対象として見られますよ」
「ホウリはお爺さんに負けたのか……」
当のホウリさんはこれだけ言われても涼しい顔をしている。多分、私に恋愛感情がまるで無いことを知っているんだろう。
「何でですか?ホウリさんってそんなにダメですか?」
「ダメって訳じゃないですよ?憲兵として尊敬していますし、友人としては好きですよ。けど、恋愛って面だけはまっっっっったく興味が無いですね」
「だろうな」
ホウリさんはそれだけ言うと、カレーを食べるのに集中した。
「ホウリさんもその気が無いみたいですし、私達が恋人になる可能性は0ですね」
「そうなのか。なんともロマンの無い話だ」
「恋愛にロマンを求めますか」
ミエルさんって意外とロマンチストなのかな?
そんな他愛のない話をしながら、楽しい夕食の時間は過ぎっていったのだった。
「お?チョコレートなんて持ってどこに行くんだ?」
バレンタインの日、チョコレートの袋を持って帰ろうとしていると、スイトさんにそう聞かれた。
「スターダストの皆さんへチョコレートを差し入れようかと思いまして」
「そうか。てっきり彼氏にあげるのかと思ったぜ」
「そんな人はいません。仕事が忙しすぎて作る暇が無いので」
「それは結構なことで」
「張り倒しますよ??」
「お前が言うと犯罪予告なんだが?」
スイトさんの顔が分かりやすく引きつる。犯罪者の集団を1人で制圧する人に拳を向けられたら怖いか。
「お疲れ様でした~」
「おう、お疲れさん」
そんな感じで私は検察室を出る。そろそろ日も落ちそうだ。チョコレートを早く渡してしまおう。
「それにしても彼氏かぁ」
仕事が忙しいのは本当だけど、恋愛に興味が無いわけじゃない。けど、積極的に作ろうと思うかって言われると、そんな感じじゃない。まあ、今は仕事優先かな。
そんなことを考えていると、スターダストの皆さんの家に着いた。
門を開けて玄関まで行きインターホンを鳴らす。すると、中から誰かが走ってくる音がして扉が開いた。
「はーい、どちら様ですかー。ってラビお姉ちゃん?」
「こんばんはノエルちゃん。誰かいる?」
「今日は皆いるよ。何か御用?」
「バレンタインだから皆さんにチョコを渡そうって思って。勿論、ノエルちゃんにもあるよ」
「ほんと!?あがってあがって!」
ノエルちゃんに背中を押されるように家の中に入る。
「あれ?ラビさん?」
「どうかしたのか?」
リビングに案内されると、ロワさんとミエルさんがいた。お二人とも不思議そうな顔をしている。
「こんばんは。実はバレンタインのチョコを渡そうと思ったんですけど、ホウリさんとフランさんは何処ですか?」
リビングにホウリさんとフランの姿は無い。ノエルちゃんからは皆さんいるって聞いたんだけどなぁ?
「ホウリとフランは庭にいる。何かしらの実験をやっているみたいだぞ」
「そろそろ戻ってくる筈ですよ」
ロワさんがそう言うと、丁度玄関が開く音が聞こえた。
そして、リビングにホウリさんとフランさんが仲良く入って来た。
「ラビではないか?どうしたんじゃ?」
「お邪魔してます。バレンタインなのでチョコを差し入れにきました」
「お、ありがとな。コーヒー淹れるけど飲むか?」
「いただきます」
ホウリさんがキッチンに入り、フランさんがリビングの椅子に勢いよく座る。
「ふぅ、疲れたわい」
「お疲れー。今日は何してたの?」
「使えそうなスキルを片っ端から検証した。まったく、眠気を吹き飛ばすスキルなど、いつ使うんじゃ」
「なんだか不思議な事をしてますね」
聞く限りではホウリさんが試そうとしたんだろう。あの人の考えることは今でも良く分からない。
「して、チョコを貰っても良いか?」
「そうでしたね。少し待っていてください」
紙袋からチョコを取り出す。
「これはフランさんへです」
「うむ、有難く受け取ろう」
黒い箱に入ったチョコをフランさんに渡す。
「ブランデーが入ったチョコです。フランさんはお酒が好きと聞いたので」
「その通りじゃ」
フランさんが箱を開けると、瓶の形をしたチョコが詰め込まれていた。
「中々良い香りじゃな。それでは早速───」
「夕飯前だぞ」
フランさんがチョコに伸ばした手の横に、コーヒーカップが勢いよく置かれる。フランさんが横を見ると、睨みを効かせたホウリさんがコーヒーカップが乗せられたトレーを持っていた。
「食うとしても1つだけにしておけ」
「……うむ」
フランさんが不満気な表情でチョコを1つだけ手に取る。
「美味いのう。ブランデーの香りが良い」(もぐもぐ)
「それは良かったです」
フランさんの顔を見るに、口に合ったのは本当みたいだ。
……ダメだ。最近は犯罪者の取り調べをすることが多いから、嘘かどうかを疑う癖がついてしまった。
「良い傾向なんじゃないか」
「勝手に心を読まないでくれませんか?」
顔に出てただろうか。いや、ホウリさんなら顔に出ていなくても、心を読むくらいはしてきそうだ。
「ほら、コーヒー入ったぞ」
「ありがとうございます」
「あと、俺は心は読めないからな?」
「その言葉は心が読めないと出ませんよね?」
ホウリさんからコーヒーカップを受け取る。
何か変なもの入っていないよね?いや、来客者に毒とかは入れないか。でもホウリさんだしなぁ……。
「安心せい、変な物は入っとらん」
「フランさんも心読めます?」
「今のは感情が顔に出てただけじゃ」
「そんなに分かりやすいですか?」
「そうだな。ロワ以外は分かっていただろう」
「自然に僕の悪口になってませんか?」
そんなことを離しつつ、私はコーヒーを啜る。苦みが弱い私好みの味だ。
「ねーねー、ノエルには無いの?」
「勿論あるよ。はい、どーぞ」
ハート形の箱に入ったチョコをノエルちゃんに渡す。
「わーい!」
箱を開けると赤く光沢のある紙に包まれたチョコが並んで入っていた。
「食べていい?」
「1つだけな」
「はーい」
ノエルちゃんがチョコの包みを剥いで口に入れる。
「イチゴ味だ!すっごく美味しい!」
「良かった。ロワさんとミエルさんもこれをどうぞ」
ロワさんに黒い箱、ミエルさんに赤い箱を渡す。
「ロワさんは甘さを控えたビターチョコ、ミエルさんには爽やかなチョコミントです」
「ありがとうございます」
「私好みのチョコだな。食後にいただくとしよう」
「僕も後でいただきますね」
お二人は今食べないみたいだ。すぐに感想を聞けないのは残念だけど、後日聞けばいっか。
「それで?俺へのチョコはあるのか?」
「はい。一応、一番お世話になった人なので」
「それは楽しみだな」
ホウリさんが頬杖をついってニヤリと笑う。真っすぐ感謝を伝えるのは照れくさいけど、今日くらいはいいだろう。
私は袋では無く、アイテムボックスからチョコが詰まった1メートルはある大きな袋を取り出す。
「はい、どーぞ」
「ありがとな」
ホウリさんは袋を受け取ると、口を開けて中を確認しだした。
「ホウリお兄ちゃんだけいっぱい貰ってずるーい」
「ホウリはラビに色々と指導しておるからのう」
「あと、ホウリさんは量が多ければ外れないかなって思いまして」
「俺のことを良く分かっているじゃないか」
ホウリさんが機嫌よく中を確認していると、すると、ふと個包装されたチョコチップクッキーを取り出した。
「これはラビが作ったのか?」
「なんでそう思ったんですか?」
「他のチョコは既製品だが、これだけは手作りだ。わざわざ他の奴が作った物を入れたとも考えにくいし、ラビが作ったものだと判断した。察するに憲兵で配ったあまりだろ?」
「その通りです。憲兵所の皆さんに作った時の余りです」
「ホウリさんに作った訳じゃないんですね」
「ですね」
余ったらスターダストの皆さんにもあげようかと思った。けど、少ししか残らなかったからホウリさんの袋の中に入れたわけだ。
「1ついただくぞ」
「どうぞ」
ホウリさんが個包装されたクッキーを1つ取り出して口に入れる。
「うん、美味いな」
「ありがとうございます」
スイーツに関してはホウリさんはお世辞は言わない。だから、この誉め言葉は素直に嬉しい。
「残りは後でいただくとしよう」
「美味しくいただいてくださいね」
「おう」
「では、チョコも渡したので私は帰りますね」
「えー、もうちょっと居てよー」
立ち上がろうとすると、いつの間にか傍にいたノエルちゃんに袖を掴まれた。
「でも、遅くまでいると迷惑じゃない?」
「お主がおって迷惑に思う奴はおらん」
「夕飯くらいは食っていけよ」
「うーん、ではご相伴にあずかります」
これだけ引き留められていて、帰るのも失礼だろう。
「ちなみにメニューはなんですか?」
「カレーだ」
「付け合わせはいりますか?」
「らっきょう漬けをお願いします」
「分かりました」
ホウリさんとロワさんがキッチンへと入っていく。
「作ったのはホウリさんですか?」
「そうじゃな」
「だったら期待できそうですね」
「味は普通だと思うぞ?」
「そうなんですか?」
ホウリさんの事だから、今まで食べたことがないほどに美味しいカレーなんだと思ってた。
「ホウリが本気を出して美味い料理を作ると、味のハードルが上がってしまう。じゃから、ホウリが料理を作る時は意図的に手を抜いているらしい」
「舌が肥えるって奴ですね」
確かに食事を楽しめなくなる可能性があるんだ。そこまで考えてたんだ。
「ラビお姉ちゃんがいるからいつもより美味しくしてるとか無いかな?」
「ラビが来たときには煮込むだけじゃったと思うから、味を変えることはせんと思うぞ」
「貰ったチョコを入れるくらいか?」
「私ってチョコ入りのカレーって食べたこと無いんですよね」
「わしもじゃ」
「ノエルも食べたーい!」
「ならば今度やってみるか」
そんな事を話していると、キッチンからお盆にカレーとサラダを乗せたホウリさんとロワさんがやってきた。
「出来たぞー」
「わーい!」
お二人は皆の前に料理を並べていく。
皆の前に料理が並べられたところで、お二人は自分の席に着く。
「それじゃ、いただきます」
「「「「「いただきまーす!」」」」」
スプーンを手に取りカレーを掬って口に入れる。
「……普通のカレーだ」
「だから言っただろう?」
「なんだ?豪華なカレーを期待していたのか?」
「はい。ガッカリです」
「チョコは入っていないのか?」
「今回のカレーには合わないから入れてない」
「今度入れて~」
「良いぞ」
そんなことを話ながら和気あいあいと食事を続けていく。こんなに大勢でご飯を食べるなんて久しぶりだ。なんだか、疲れた心に活力が漲ってくるような気がする。
「そういえば、ラビは本命チョコは誰かに渡したのかのう?」
「私てないですよ。本命を上げる相手がいませんので」
「親しくなくても、気になっている人とかいないのか?」
フランさんとミエルさんの尋問……もとい質問に圧を感じる気がする。
「いないですよ」
「そうなのか?」
「関わるのが上司か同僚か犯罪者なので、そういう人はいないですね。最近は休みも少ないので、出会いがほとんどないです」
自分でも悲しくなるくらいに浮いた話がない。いっそのこと、クイーンさんにでも頼んで合コンでもセッティングして貰おうか。
「じゃあ、ホウリさんはどうですか?」
「「はぁ?」」
ロワさんの言葉に、私とホウリさんの声がハモってしまう。ホウリさんの方を見てみると、物凄く怪訝そうな顔をしていた。多分、私も同じような顔をしているんだろう。
「何言ってんだ?」
「え?でも、ホウリさんってラビさんの師匠みたいなものなんですよね?」
「師匠と弟子の恋……物語ではよくある展開だな」
何故だかミエルさんもロワさんの言葉に賛同している。
「それで、どうなんだ?」
「そうですね。率直に言うとホウリさんだけは恋愛対象として見られないですね」
「率直すぎませんか?」
「隣の家のお爺ちゃんの方が恋愛対象として見られますよ」
「ホウリはお爺さんに負けたのか……」
当のホウリさんはこれだけ言われても涼しい顔をしている。多分、私に恋愛感情がまるで無いことを知っているんだろう。
「何でですか?ホウリさんってそんなにダメですか?」
「ダメって訳じゃないですよ?憲兵として尊敬していますし、友人としては好きですよ。けど、恋愛って面だけはまっっっっったく興味が無いですね」
「だろうな」
ホウリさんはそれだけ言うと、カレーを食べるのに集中した。
「ホウリさんもその気が無いみたいですし、私達が恋人になる可能性は0ですね」
「そうなのか。なんともロマンの無い話だ」
「恋愛にロマンを求めますか」
ミエルさんって意外とロマンチストなのかな?
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