魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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魔王と勇者の二人旅 第三話 イミワカンナイ

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 街を出たわし達はお目当てのゴビゴビ遺跡まで向かっていた。
 だが、流石は世界一の砂漠。太陽が真上から俺達をジリジリと焼いてくる。加えて地面の砂も太陽の光を反射し、上下からの疑似的な挟み撃ちを仕掛けてきている。


「相変わらずあっっっついのう」
「スキルで体温を下げれば良いんじゃないか?」
「それでは冒険の意味がないじゃろ。辛いことも苦しいことも楽しんでこその冒険じゃ」
「それもそうか」


 わしはホウリの提案を一蹴する。今回の冒険はお宝じゃなくて楽しむのが目的じゃ。スキルで快適さを得ても楽しさは半減じゃ。


「ゴビゴビ遺跡まであとどれくらいじゃ?」
「もう着く。ガーディアンみたいに蜃気楼を使って隠れているだろうから、いきなり目の前に現れるぞ」
「あれか」


 鳥(蝙蝠)のガーディアンもそんな感じじゃったな。あやつは元気にやっておるじゃろうか?


「ホムンクルスって自然に適用できるんじゃろうか?」
「さあな。心配なら見に行っても良いんじゃないか」
「それも良いのう」


 ホウリなら何処にいるのかは目星がつくじゃろう。こういう時にホウリは便利じゃな。


「そろそろ水飲んでおけ」
「うむ、そうさせてもらおう」


 水筒を取り出して口に水を含む。そして、おやつ代わりにアキメヤシを口の中に放り込む。


「むぐむぐ、癖が無くて美味い」
「常食するには癖の無さは嬉しいよな」
「じゃよな。癖があると美味くても飽きるからのう」


 そんな事を話しつつ、2人でアキメヤシを楽しむ。すると、巨大は遺跡が出現した。


「お?これが例のゴビゴビ遺跡か?」


 石で出来た四角錐の形、ピラミッドのような建物が重々しい石の扉で封鎖されておる。扉には六角形の穴が6つ空いており、用意した石が嵌りそうじゃ。


「その通り、これがゴビゴビ遺跡だ」
「絵にかいたような遺跡じゃな。雰囲気があって良いのう」


 この中にスノーダストクリスタルがあるのか。ついに旅のメインディッシュという訳か。


「わくわくするのう。どんな罠や謎が待ち構えておるんじゃろうか」
「ガーディアンから貰った見取り図を見るに、そこそこ罠の数は多いみたいだな」
「そこそこ?沢山ではなくか?」
「ああ」
「それは残念じゃ」


 罠の数が少ないとスリルが減ってしまう。ホウリの事じゃし、罠の数もある程度は正しく分かるんじゃろう。


「そう残念がる必要は無いと思うぞ?」
「何故じゃ?」


 わしの疑問にホウリが遺跡の入口を指さす。そこにはディングにいた少女の幽霊が両腕を組んで仁王立ちしておった。


「遅い!ディングで会ってから1カ月以上たってるよ!何してたの!」
「あー、悪い悪い。オダリムの防衛戦に手間取っててな」
「後始末が終わったのが今日じゃったからのう。これでも早めに来たんじゃぞ?」
「何よそれ、意味わかんない」


 確かにわしらがワープするの知らんかったら意味が分からんか。


「遅れたのは謝るが、そこまで怒らなくてもいいだろ」
「怒るよ!せっかく罠を強化して待ってたのに!もう来ないかと思った!」
「罠を強化?」
「ディングの街でも言ってただろ?俺達が想定していない方法で石を集めたから罠を強化するって」
「ああ。そう言えばそうじゃったのう」


 1カ月以上も前の事じゃから忘れておったわい。ホウリが残念がる必要がないと言っておったのは、この事じゃったか。


「もう怒った!絶対に奥には到達できないくらいに罠を増やしてやる!もう手加減しないんだからね!」
「それは怖いのう」
「謝っても遅いんだからね!」


 そう言い残すと少女は跡形もなく消え去った。


「ホウリ」
「なんだ?」
「わしは笑いを堪えきれていたか?」
「普通の奴なら分からないくらいには抑えてた。流石は舞台女優だ」


 その言葉を聞いたわしは口角を限界まで上げる。


「罠の量を増やすじゃと?心が躍るでは無いか」
「それはお前だけだ。相手は殺しにくるぞ?」
「そうでなくては面白くない!」
「はぁ、フランが良いなら俺からは何も言わん」


 ホウリはため息を吐きながらも、わしの意見に賛同してくれる。


「そうと決まれば早速遺跡に入るぞ」


 わしは用意した5つの石を取り出して扉に嵌める。
 すると、扉が重々しい音と共に上に上がっていった、


「ここから遺跡を攻略していく訳じゃな」
「罠を回避したり解除したりするから俺が先に進む。フランは後からついてきてくれ」
「そんなまだるっこしいことするか。罠も関係なく突き進むぞ」
「殺す気の罠だぞ?俺が持たないんだよ」
「ある程度はわしがぶっ壊すから、残りは自分でなんとかせい」
「冒険の意味を説いていた奴とは思えない発言だな?」
「ちまちましたことが嫌いなだけじゃ」
「……はぁ、分かったよ」


 ホウリは新月を腰に刺して、ワイヤー発射装置を手首に付ける。


「好きにしろ。俺は後からついていく」
「そうさせてもらおう」


 ホウリが付いてこれる速さで進まんとな。そこだけ気を付けるとしよう。
 軽く屈伸をしてクラウチングスタートの体勢を取る。


「いくぞ、よーい……どん!」


 わしとホウリは同時に遺跡の中に踏み込む。瞬間、地面が凹み壁から矢が飛んできた。


「いきなりか!」


 わしは矢を受け止め地面に投げ捨てる。一歩目に罠を仕込んできたか!やはり相手も本気のようじゃな!


「ホウリ!無事か!」
「愚問!」
「そうじゃったな!」


 この程度の罠に引っかかるようなら、わしの相手としては相応しくない。聞くだけ野暮じゃったな。
 わしらは勢いを緩めずに通路を直進する。すると、今度は壁から紫色のガスが噴き出してきた。


「毒か?」


 じゃが、わしらは毒の耐性が非常に高い。この程度は進むのに障害には……


「いや、これは……」
「どうした?」


 わしの言葉に答えず、ホウリは懐から全身が覆えるほどの赤い布を取り出した。瞬間、


(ドッゴオオオオオン!)


 轟音と共にわしらの周りが爆ぜた。


「な、なんじゃ!?」


 黒煙が上がる中、何が起きたか分からず混乱する。


「さっきのガスに引火して爆破しやがった。殺すつもりって言うのは本当らしいな」


 混乱しながらも走っていると、ホウリが隣で何が起こったのか解説してくれる。なるほど、この狭い通路で爆破を起こせば普通はお陀仏じゃな。わしには効かんがな。


「俺はマジックシーツで防御したから心配ない。このまま突き進むぞ」
「うむ」


 ガスが出た瞬間から爆破を読んでおったか。流石じゃな。


「それにしても、本当に殺意が高いな」
「じゃがこの程度なら問題無い。突き進むぞ」
「俺は死にかけたんだけどな?」
「生きているから問題無かろう」
「そういう問題じゃねぇ」


 そんな軽口をたたいておると、また足場が深く沈んだ。


「む?またスイッチを押してしまったみたいじゃ」
「またかよ。今度は何が来る?」


 警戒しておると、背後から何か重い物が転がってくる音が聞こえた。


「まさか?」


 振り返ってみると、通路を覆いつくすほどの大きな鉄球が転がってきていた。


「これはなんともベタな仕掛けじゃな」
「普通だったら絶望するんだろうな」


 微妙に早くなっているし、このままだとホウリが危ないか。ならば……
 わしは立ち止って拳を振りかぶる。そして、向かってくる鉄球に対して拳を突き出した。


「せいっ!」


 わしの拳が鉄球を砕き粉々に砕く。
 鉄球を砕いたわしは先に走っているホウリを追いかける。


「奴は始末した」
「言い方が殺し屋なんだよ」


 こんな感じでわしらは遺跡の中を突き進んでいった。


☆   ☆   ☆   ☆


「せい!」


 突き当りにある石の扉を蹴り飛ばして中に入る。
 すると、そこは高さが10メートルほどもある空間の一番上じゃった。


「うおっ!?」
「ほう?」


 わしらは投げ出されて、地面に向かって落下する。


「くそっ!」


 ホウリは入って来た空間に向かってワイヤーを発射する。そして、ワイヤーを凹みに引っ掛けると、ブレーキを掛ける。
 わしはそのまま何もせずに地面に着地した。ホウリはブレーキを掛けつつ、魔装で足を保護して着地した。


「ふう、いきなり落ちるとはのう」
「全くだ。ここでMPポーションを使うことになるとはな」


 ワイヤーを戻しつつ、ホウリがMPポーションを呷る。


「して、ここは何処じゃ?なんであの大きさの遺跡にこんな空間があるんじゃ?」
「ここは遺跡の地下だ。通路も微妙に坂になっていたし、地下がメインなんだろうよ」
「なるほどのう」


 ここが終点。つまり、ここにスノーダストクリスタルがある訳じゃな。


「お宝は何処かのう?」
「あそこじゃないか?」


 ホウリが指を指す方向に石で出来た棺桶のような物があった。


「確かに怪しいのう。壊して確かめてみるか」
「普通に開けろ」


 腕を振りかぶるわしに冷静なツッコミが突き刺さる。まあ、力づくじゃとお宝も傷つけてしまうかもしれんし仕方ないか。
 わしは棺桶にむかって一歩踏み込んだ、すると、地面に黒い影が出現した。


「フラン!上だ!」
「上?」


 見上げると巨大な何かが降ってきていた。わしは後ろに大きく飛び退くと拳を構える。


『ぐおおおお!』


 降って来たものは、巨大なゴーレムじゃった。建物3階ほどの身長に通常のゴーレムよりも太い腕と足。


「なるほど、こいつがボスという訳か。ホウリ──」
「俺は手を出さない。好きにやってくれ」
「分かっておるではないか」


 ホウリが壁際まで後退したのを確認して、わしはゴーレムと対峙する。これだけ大きなゴーレムなら期待できそうじゃ。
 ここまでの道中で滾った心をそのまま拳に乗せる。


「いくぞ!」


 ゴーレムが拳を繰り出すと同時にわしも拳をぶつける。わしの拳はゴーレムの拳を砕き、そのままゴーレムの胸元まで直進する。そして、


「…………あ」


 ゴーレムの中にある赤色の宝石、核をそのまま砕いてしまった。
 核を砕かれたゴーレムは体を保てなくなり、そのまま崩れ去っていく。


「………………」
「瞬殺だったな」


 いつの間にか来ていたホウリに肩を叩かれる。


「……高いテンションのまま戦ってしまった」
「それで力の入れ方を間違えたって訳か。残念だったな」
「……うむ」


 楽しめそうな相手じゃっただけに、残念さもひときわ強い。


「もう少し楽しみたかったのう……」
「切り替えろ。お宝は目の前だぞ」


 そう言うと、ホウリは棺桶まで歩みを進める。わしは悲しみを飲み込んで、ホウリの後を追った。


「いくぞ?」
「うむ」


 ホウリが石の棺桶の蓋に手を掛けて思いっきり力を込める。蓋は石が擦れる音と共に、ゆっくりと開いた。
 蓋が開き切ると、わしとホウリは一緒に中を覗き込んだ。


「……これは?」


 棺桶の中には目当てのスノーダストクリスタルがあった。透き通った青色の宝石が雪の結晶のような形になっておる。そして何より周りには冷気が漂っておる。ずっと見ていたいような神秘的な宝石。じゃが、わしが目を奪われたのはそこじゃない。


「これはミイラか?」
「みたいだな」


 スノーダストクリスタルはミイラが包み込むように持っていた。わしはミイラからスノーダストクリスタルを取る。


「棺桶だしミイラが入っていても可笑しくは無いか」
「言われてみればそうなんじゃがな。じゃが、誰のミイラじゃ?」
「そんなの決まっているだろ」


 そう言ってホウリは振り向く。わしもつられて振り向くと、少女の幽霊が立っておった。


「あーあ、貴方達がクリアしちゃったんだ」
「残念だったか?」
「最初はクリアさせるかって思ってたけどね。今は貴方達で良かったって思ってるよ」
「一応聞くが、これはお主の亡骸か?」
「うん、そうだよ」


 少女が微笑んで頷く。さっきまで激昂しておった者とは思えん。


「そのスノーダストクリスタルは私をこの世に縛りつけているの。だから、誰かに取って貰わないと、私の魂は解放されないんだ」
「だからスノーダストクリスタルの情報を流したって訳か?」
「そう」
「ならば何故妨害した?」
「あのゴーレムだけは私が用意したものじゃないの。だから、ゴーレムを倒せるような人を選別するために、道中に罠を仕掛けたの」
「ふむ?別に罠を仕掛ける必要は無いのではないか?戦う者は増える分には良いじゃろ?」
「それはダメだ。ゴーレムの特性を思い出せ」
「ゴーレムの特性?」


 確か防御力と攻撃力が高く、MPを吸収してステータスを上げる……あ。


「無駄に戦ってMPを吸収されると、強くなりすぎるということか?」
「そういうことだ。強くなりすぎて誰も倒せなくなるのを防ぎたかったんだろうよ」
「そう言うこと。街で石を配ってたのも、強い人に石を集中させるため」


 石に関しては思惑通りにはいかなかったが、結局はわしらが来た訳じゃ。こやつの思った通りの結果になったということか。


「じゃが、この宝石をお主の亡骸に入れるとは、入れた奴は性格が悪いのう」
「それを入れたのは、私のお父さんとお母さんなの」
「親に嫌われておったのか?」
「スノーダストクリスタルは魔除けとして考えられていたようだ。だから、娘が安心してあの世に行けるように、両親からの願いが込められているんだろうよ」
「そうじゃったか」


 魔除けのつもりが娘を縛る鎖となっておったか。皮肉なものじゃ。


「最後に言い残すことはあるか?」
「何かあれば聞くぞ」
「ありがと。でも大丈夫」


 少女は満面の笑みで両手を振る。


「貴方達に合えて良かった!ばいばい!」
「うむ。さよなら」
「さよなら」


 少女は笑顔で消えていった。後に残されたのは青く光る世界に二つとない宝石じゃった。


「ホウリ」
「なんだ?」
「冒険って楽しいだけでは無いんじゃな」
「なら、やめるか?」
「バカを抜かせ」


 わしはスノーダストクリスタルを天井に掲げる。


「わしらの冒険はまだ始まったばかりじゃ!」
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