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第1事件 失踪事件 その3
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走ること数時間、車は周りが畑ばかりの地を走っていた。
ビルばかりだった先ほどとは異なり、見渡す限り畑しかない。右には電車の線路はあるが、それ以外に文明を感じさせられる物は無い。
そんな道を窓から眺めながら、ナッシュは口を開く。
「お二人はホウリ所長と親し気でしたけど、どういう関係なんですか?」
「ホウリさんとフランさんは探偵事務所を作る前からの知り合いですよ」
「探偵みたいなことは事務所を作る前からやっていたのだがな。それを仕事にしたいとロワが言い出したから、ホウリが探偵事務所を作った訳だ」
「つまり、探偵事務所は最初は4人だった訳ですか?」
「そういう訳だな」
「今じゃ25人、賑やかになりましたよね」
そんな雑談をしていると、車はとある駅に止まった。
「着きましたよ」
「この駅で加奈子さんが降りたんですよね?」
「そうだ」
ナッシュは車から降りて辺りを見渡す。
「何も無いですね」
「ですね」
「監視カメラも無いし、人も少ないだろうから目撃証言も少ないだろう」
「どうするんです?」
「地道に聞き込みをするしかないな」
「うへぇ、大変そうですね……」
「だがやるしかない。根気強く頑張るぞ」
嫌そうなナッシュをミエルがたしなめる。だが、ナッシュはまだ嫌そうな表情をする。
「探偵ってなんだか思っていたのと違いますね。思ってたよりも地味です」
「地味なのは分かるが、探偵なんてこんなものだ。しかし、プロの探偵たるもの、嫌でも顔に出さずにやるものだ」
「ロワさんも嫌そうですけど?」
「……ロワは探偵じゃないかもしてないな」
「探偵ですからね!?嫌ではありますけど、ちゃんとやりますよ!?」
ミエルは天を仰いだが、直ぐにロワとナッシュの方を向く。
「聞き込みをするにしても、この広さだと時間が掛かるのは事実だ。二手に分かれて聞き込みをしよう」
「分かりました。情報はスマホで共有ってことで良いですね?」
「そうしよう。私は一人で聞き込みをするから、ロワとナッシュで行動してくれ」
「わかりました。行きましょうかロワさん」
ロワと共に歩こうとしたナッシュだったが、ミエルに肩を叩かれた。
「どうしました?」
「言い忘れていたが、ロワの素顔は絶対に見るな」
「何故ですか?」
「ロワがイケメンすぎるからだ」
「は?」
「そう言う訳だから、気を付けてくれ」
それだけ言い残すと、ミエルは反対側の道へと歩いていった。
「あれ?ミエルさんと何か話してました?」
ロワはミエルとナッシュの話が聞こえていなかったみたいで、そんなことを聞いてくる。
ナッシュは困惑した表情のままロワの質問に答えた。
「はい。ロワさんの素顔は見るなって言われました」
「そういえば言ってませんでしたね。僕の素顔は見ないように注意してください」
「なんでですか?ミエルさんはイケメンすぎるからって言ってましたけど?」
「えーっと、まあ、そんな感じです」
ロワは言いにくそうにしている。自身がイケメンであるのは自覚しているようだが、自身の口から言うのは憚られるという気持ちが伺える。
「僕の顔を見た女性は、僕に異常な執着を持ちます。なので、僕は顔をマスクで隠しているんです」
ロワが口元を隠しているマスクを軽く摘まむ。
「極端に惚れられやすいって事ですか?」
「そうですね。過去にはとある女性に剥製にされそうになりました」
「そ、そんなにイケメンなんですか?」
「そうですね。ホウリさんには質の悪い呪いだって言われてます」
「分かりました。気を付けます」
ナッシュが身震いしつつ頷く。
「分かっていただけて何よりです。それでは行きましょうか」
「そういえば、補佐って何をすれば良いんですか?」
「主に情報の記録と精査ですね。例えば聞き込みの場合は、聞いた言葉だけではだけではないです。聞き込みをした人の表情や雰囲気なんかも記録してもらいます」
「そこまでする必要があるんですか?」
「聞き込みをした人が犯人だった、なんてこともありますからね。証言以外にも情報は転がっているんですよ」
「そういう物ですか」
ナッシュは納得していない様子ながらも、とりあえずといった様子で頷く。
「それじゃ、行きましょうか」
「あ、ちょっと待ってください」
ロワはポケットからボタンが付いた鍵を取り出す。そして、車に向かって鍵を向けてボタンを押す。
すると、車は徐々に縮んでいった。
「え!?え!?」
ナッシュが驚愕している最中にも車は縮んでいき、遂にはミニカーほどのサイズになった。ロワは小さくなった車を拾って懐に入れる。
「なんですかそれ!?」
「『携帯できる車』って名前らしいです。その名の通り、この鍵で携帯できるくらいに小さくできます」
「そんな車、どこで売っているんですか?」
「うちの探偵事務所には優秀な発明家がいますからね。この車や僕の弾丸は、その発明家が作ってます」
「そんな凄い人もいるんですか。一度会ってみたいです」
「どうですかね?気難しい人なので、特定の1人以外には心を開きませんし」
「そうなんですか」
「この探偵事務所の仕事を続けていれば会えるかもしれませんよ」
がっかりした様子のナッシュの肩を叩くロワ。
「それよりも早く聞き込みを始めましょう」
「分かりました」
聞き込みのために2人は田舎道を進むのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「……誰もいないですね」
「そうですね」
出発してから2時間、2人は誰にも会う事なく歩いていた。ナッシュは額の汗をハンカチで拭う。まだ涼しいとはいえ、長い時間歩いていると汗が噴き出してくる。
「ここって本当に人いるんですか?」
本当に人に会えるのか不安な様子のナッシュ。ロワはスマホで今いる街について調べる。
「この町の人口は13人。少ないですが人はいるはずです」
「13人ですか。本当に会えるんでしょうか」
「会えたとしても情報が得られるかは分かりませんしね」
あぜ道を歩き、疲れた表情のナッシュがうんざりとした表情で呟く。
「はぁ、人の位置が分かる発明品なんてあれば良いんですけどね」
ナッシュの呟きを聞いたロワは歩みを止めて目を見開いた。
「ん?どうしました?」
「……あります」
「え?」
「人を探知する発明品、あります」
「はあああああああ!?」
ナッシュがロワの胸倉に掴みかかる。
「なんで早く出さないんですか!それがあれば!こんなに苦労する事も無かったのに!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
激しく前後に揺らされながらロワが絶叫する。しばらくロワを揺さぶっていたナッシュだったが、疲れたのか息を切らせながら手を離した。
「はぁはぁ……」
「本当にすみません、今すぐ探知しますね」
ロワは襟を整えながらスマホを取り出す。
「スマホには探知ができるアプリが入ってます。このアプリで人を探知します」
「そのスマホってそんなに便利なんですか」
「多分ですけど、ナッシュさんが想定しているよりも便利ですよ」
ロワがスマホを操作しながら答える。
「なんでそんな便利なものを忘れているんですか」
「す、すみません……」
ロワが申し訳なさそうに頭を下げる。この探偵は本当に大丈夫なのだろうか、そんな思いがナッシュの中に湧き上がる。もっとも、湧き上がってくるのは2回目だが。
ナッシュの考えていることが分かっているのか、ロワが必死にスマホを操作している。
「あ!いましたよ!直線距離で北北西に500mの所に人を検知しました!」
「じゃあ行きましょうか」
ロワを無視してナッシュは力無い様子で歩き出す。
「わ、分かりました」
ナッシュの後をロワが急いで追いかける。まるでナッシュが探偵でロワが助手のような立ち振る舞いだ。
スマホを元にロワとナッシュはあぜ道を進む。すると、スマホに表示された場所には、帽子を被って畑の縁に座っている初老の男性がいた。初老の男性は畑の縁に座って茶碗に入っているお茶を飲んでいた。
「休憩中でしょうか」
「聞いてみれば分かりますよ」
「え?でも……」
「ナッシュさんはスマホで記録しておいてください。証言だけではなくて、見たものとかも記録してくださいね」
ナッシュが躊躇っている間に、ロワが初老の男性に近づく。ナッシュは慌てた様子でスマホを構えた。
「こんにちは」
「ん?」
初老の男性はロワに気が付くと目を丸くした。
「あれま。またこの町に外から人が来るなんて」
「また?」
ロワは引っ掛かりを覚えたが、気にせずに質問を続ける。
「実は人を探してまして。何か知ってることが無いか聞きたいんですよ」
「人?」
「この人なんですけど」
スマホに加奈子さんの画像を映して初老の男性へと見せる。
「おお。この人なら前に見たよ」
「本当ですか!?何処で見ました!?」
「何日か前に、この道を通ったのを見ただよ」
「何処に行きましたか!?」
「ここの道をずーっと真っすぐ進んでいったでな」
「そうなんですか!?」
ロワが聞き出したことをナッシュは必死にメモに取る。
「この道ってどこに通じてるんですか?」
「空き家だぁよ。いや?最近、買い手が見つかったんだったかな?」
「買い手ですか」
必死にメモを取っているナッシュは、そこに探している加奈子が居ると確信した。
「その人って今日は見ましたか?」
「いんや?見てないだよ」
「そうでしたか。ありがとうございました」
ロワさんが微笑みつつ頭を下げる。
「そうだや、あんたらも茶を飲んでいくだがや?」
「お茶ですか?」
初老の男性が縁に置いてあった空の茶碗を軽く上げる。
「すみません、私達急いでいるので……」
「お言葉に甘えましょうか」
「え!?ロワさん!?」
驚いているナッシュをしり目にロワは畑の縁に座る。
「お茶請け持ってますよ。食べますか?」
「お、美味そうだがや」
ロワは懐からせんべいが入った袋を取り出す。そして、袋からせんべいを取り出すと、隣の初老の男性に渡す。
「美味しいな」
「ですよね。お茶と良く合います」
「ちょっと!?何で呑気にお茶なんか飲んでるんですか!?」
「急いでも仕方ないですからね。少しはゆっくりしましょう」
「なんで呑気してるんですか!?こうしている間にも加奈子さんが大変な目に合ってるかもしれないんですよ!?」
「ナッシュさん、あまり調査内容は言わないでくださいね」
「非常識な人に常識を諭された!?」
「ナッシュさんも疲れたでしょう?疲れたままだと調査に支障をきたしますよ」
「いやいやいや!?」
「お嬢ちゃんは元気だなや」
怒鳴るナッシュと呑気に茶を啜るロワ。結局、出発したのは30分後だった。
ビルばかりだった先ほどとは異なり、見渡す限り畑しかない。右には電車の線路はあるが、それ以外に文明を感じさせられる物は無い。
そんな道を窓から眺めながら、ナッシュは口を開く。
「お二人はホウリ所長と親し気でしたけど、どういう関係なんですか?」
「ホウリさんとフランさんは探偵事務所を作る前からの知り合いですよ」
「探偵みたいなことは事務所を作る前からやっていたのだがな。それを仕事にしたいとロワが言い出したから、ホウリが探偵事務所を作った訳だ」
「つまり、探偵事務所は最初は4人だった訳ですか?」
「そういう訳だな」
「今じゃ25人、賑やかになりましたよね」
そんな雑談をしていると、車はとある駅に止まった。
「着きましたよ」
「この駅で加奈子さんが降りたんですよね?」
「そうだ」
ナッシュは車から降りて辺りを見渡す。
「何も無いですね」
「ですね」
「監視カメラも無いし、人も少ないだろうから目撃証言も少ないだろう」
「どうするんです?」
「地道に聞き込みをするしかないな」
「うへぇ、大変そうですね……」
「だがやるしかない。根気強く頑張るぞ」
嫌そうなナッシュをミエルがたしなめる。だが、ナッシュはまだ嫌そうな表情をする。
「探偵ってなんだか思っていたのと違いますね。思ってたよりも地味です」
「地味なのは分かるが、探偵なんてこんなものだ。しかし、プロの探偵たるもの、嫌でも顔に出さずにやるものだ」
「ロワさんも嫌そうですけど?」
「……ロワは探偵じゃないかもしてないな」
「探偵ですからね!?嫌ではありますけど、ちゃんとやりますよ!?」
ミエルは天を仰いだが、直ぐにロワとナッシュの方を向く。
「聞き込みをするにしても、この広さだと時間が掛かるのは事実だ。二手に分かれて聞き込みをしよう」
「分かりました。情報はスマホで共有ってことで良いですね?」
「そうしよう。私は一人で聞き込みをするから、ロワとナッシュで行動してくれ」
「わかりました。行きましょうかロワさん」
ロワと共に歩こうとしたナッシュだったが、ミエルに肩を叩かれた。
「どうしました?」
「言い忘れていたが、ロワの素顔は絶対に見るな」
「何故ですか?」
「ロワがイケメンすぎるからだ」
「は?」
「そう言う訳だから、気を付けてくれ」
それだけ言い残すと、ミエルは反対側の道へと歩いていった。
「あれ?ミエルさんと何か話してました?」
ロワはミエルとナッシュの話が聞こえていなかったみたいで、そんなことを聞いてくる。
ナッシュは困惑した表情のままロワの質問に答えた。
「はい。ロワさんの素顔は見るなって言われました」
「そういえば言ってませんでしたね。僕の素顔は見ないように注意してください」
「なんでですか?ミエルさんはイケメンすぎるからって言ってましたけど?」
「えーっと、まあ、そんな感じです」
ロワは言いにくそうにしている。自身がイケメンであるのは自覚しているようだが、自身の口から言うのは憚られるという気持ちが伺える。
「僕の顔を見た女性は、僕に異常な執着を持ちます。なので、僕は顔をマスクで隠しているんです」
ロワが口元を隠しているマスクを軽く摘まむ。
「極端に惚れられやすいって事ですか?」
「そうですね。過去にはとある女性に剥製にされそうになりました」
「そ、そんなにイケメンなんですか?」
「そうですね。ホウリさんには質の悪い呪いだって言われてます」
「分かりました。気を付けます」
ナッシュが身震いしつつ頷く。
「分かっていただけて何よりです。それでは行きましょうか」
「そういえば、補佐って何をすれば良いんですか?」
「主に情報の記録と精査ですね。例えば聞き込みの場合は、聞いた言葉だけではだけではないです。聞き込みをした人の表情や雰囲気なんかも記録してもらいます」
「そこまでする必要があるんですか?」
「聞き込みをした人が犯人だった、なんてこともありますからね。証言以外にも情報は転がっているんですよ」
「そういう物ですか」
ナッシュは納得していない様子ながらも、とりあえずといった様子で頷く。
「それじゃ、行きましょうか」
「あ、ちょっと待ってください」
ロワはポケットからボタンが付いた鍵を取り出す。そして、車に向かって鍵を向けてボタンを押す。
すると、車は徐々に縮んでいった。
「え!?え!?」
ナッシュが驚愕している最中にも車は縮んでいき、遂にはミニカーほどのサイズになった。ロワは小さくなった車を拾って懐に入れる。
「なんですかそれ!?」
「『携帯できる車』って名前らしいです。その名の通り、この鍵で携帯できるくらいに小さくできます」
「そんな車、どこで売っているんですか?」
「うちの探偵事務所には優秀な発明家がいますからね。この車や僕の弾丸は、その発明家が作ってます」
「そんな凄い人もいるんですか。一度会ってみたいです」
「どうですかね?気難しい人なので、特定の1人以外には心を開きませんし」
「そうなんですか」
「この探偵事務所の仕事を続けていれば会えるかもしれませんよ」
がっかりした様子のナッシュの肩を叩くロワ。
「それよりも早く聞き込みを始めましょう」
「分かりました」
聞き込みのために2人は田舎道を進むのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「……誰もいないですね」
「そうですね」
出発してから2時間、2人は誰にも会う事なく歩いていた。ナッシュは額の汗をハンカチで拭う。まだ涼しいとはいえ、長い時間歩いていると汗が噴き出してくる。
「ここって本当に人いるんですか?」
本当に人に会えるのか不安な様子のナッシュ。ロワはスマホで今いる街について調べる。
「この町の人口は13人。少ないですが人はいるはずです」
「13人ですか。本当に会えるんでしょうか」
「会えたとしても情報が得られるかは分かりませんしね」
あぜ道を歩き、疲れた表情のナッシュがうんざりとした表情で呟く。
「はぁ、人の位置が分かる発明品なんてあれば良いんですけどね」
ナッシュの呟きを聞いたロワは歩みを止めて目を見開いた。
「ん?どうしました?」
「……あります」
「え?」
「人を探知する発明品、あります」
「はあああああああ!?」
ナッシュがロワの胸倉に掴みかかる。
「なんで早く出さないんですか!それがあれば!こんなに苦労する事も無かったのに!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
激しく前後に揺らされながらロワが絶叫する。しばらくロワを揺さぶっていたナッシュだったが、疲れたのか息を切らせながら手を離した。
「はぁはぁ……」
「本当にすみません、今すぐ探知しますね」
ロワは襟を整えながらスマホを取り出す。
「スマホには探知ができるアプリが入ってます。このアプリで人を探知します」
「そのスマホってそんなに便利なんですか」
「多分ですけど、ナッシュさんが想定しているよりも便利ですよ」
ロワがスマホを操作しながら答える。
「なんでそんな便利なものを忘れているんですか」
「す、すみません……」
ロワが申し訳なさそうに頭を下げる。この探偵は本当に大丈夫なのだろうか、そんな思いがナッシュの中に湧き上がる。もっとも、湧き上がってくるのは2回目だが。
ナッシュの考えていることが分かっているのか、ロワが必死にスマホを操作している。
「あ!いましたよ!直線距離で北北西に500mの所に人を検知しました!」
「じゃあ行きましょうか」
ロワを無視してナッシュは力無い様子で歩き出す。
「わ、分かりました」
ナッシュの後をロワが急いで追いかける。まるでナッシュが探偵でロワが助手のような立ち振る舞いだ。
スマホを元にロワとナッシュはあぜ道を進む。すると、スマホに表示された場所には、帽子を被って畑の縁に座っている初老の男性がいた。初老の男性は畑の縁に座って茶碗に入っているお茶を飲んでいた。
「休憩中でしょうか」
「聞いてみれば分かりますよ」
「え?でも……」
「ナッシュさんはスマホで記録しておいてください。証言だけではなくて、見たものとかも記録してくださいね」
ナッシュが躊躇っている間に、ロワが初老の男性に近づく。ナッシュは慌てた様子でスマホを構えた。
「こんにちは」
「ん?」
初老の男性はロワに気が付くと目を丸くした。
「あれま。またこの町に外から人が来るなんて」
「また?」
ロワは引っ掛かりを覚えたが、気にせずに質問を続ける。
「実は人を探してまして。何か知ってることが無いか聞きたいんですよ」
「人?」
「この人なんですけど」
スマホに加奈子さんの画像を映して初老の男性へと見せる。
「おお。この人なら前に見たよ」
「本当ですか!?何処で見ました!?」
「何日か前に、この道を通ったのを見ただよ」
「何処に行きましたか!?」
「ここの道をずーっと真っすぐ進んでいったでな」
「そうなんですか!?」
ロワが聞き出したことをナッシュは必死にメモに取る。
「この道ってどこに通じてるんですか?」
「空き家だぁよ。いや?最近、買い手が見つかったんだったかな?」
「買い手ですか」
必死にメモを取っているナッシュは、そこに探している加奈子が居ると確信した。
「その人って今日は見ましたか?」
「いんや?見てないだよ」
「そうでしたか。ありがとうございました」
ロワさんが微笑みつつ頭を下げる。
「そうだや、あんたらも茶を飲んでいくだがや?」
「お茶ですか?」
初老の男性が縁に置いてあった空の茶碗を軽く上げる。
「すみません、私達急いでいるので……」
「お言葉に甘えましょうか」
「え!?ロワさん!?」
驚いているナッシュをしり目にロワは畑の縁に座る。
「お茶請け持ってますよ。食べますか?」
「お、美味そうだがや」
ロワは懐からせんべいが入った袋を取り出す。そして、袋からせんべいを取り出すと、隣の初老の男性に渡す。
「美味しいな」
「ですよね。お茶と良く合います」
「ちょっと!?何で呑気にお茶なんか飲んでるんですか!?」
「急いでも仕方ないですからね。少しはゆっくりしましょう」
「なんで呑気してるんですか!?こうしている間にも加奈子さんが大変な目に合ってるかもしれないんですよ!?」
「ナッシュさん、あまり調査内容は言わないでくださいね」
「非常識な人に常識を諭された!?」
「ナッシュさんも疲れたでしょう?疲れたままだと調査に支障をきたしますよ」
「いやいやいや!?」
「お嬢ちゃんは元気だなや」
怒鳴るナッシュと呑気に茶を啜るロワ。結局、出発したのは30分後だった。
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