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第一話 『踏み出す一歩』

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 さて、どうしたものでしょうか。




 まるで、ゴミのように他人ヒトを吐き出す、首都の門。
 
 あそこに入るという事は、汚すぎる排水溝に指を突っ込むくらいの勇気がいる。

 少なくとも、ローリエ――いや、すめらぎ愛海なるみには。

 
 しかし、行かねば目的の達成はない。
 
 やっぱり帰ろうかな、でも行かなくちゃ。

 そんな葛藤のループと共に、街の入り口。
 そこに繋がる街道の草むらで。

 ローリエは小一時間立ち往生している。
 実際には草の中に伏せているが。


 首都には入りたいけど、ヒトの往来の中には行きたくない。

 他人の往来という河にハマったとたん、ローリエの意識は亡くなるかもしれない。

 何か他の手を考えるべきだ。

 ローリエは、首都の様子。
 その外壁や、聳えたつ城を観察する。


 そして、そっと移動を始めた。
 街道に繋がる門から遠ざかる。


 ぐるりと高い外壁を迂回し、壁の近くまで来た。
 入口からは遠く、ヒトの姿もあまりない場所だ。

 そこから、外壁の上を見上げる。
 
 ローリエの能力ステータスなら、一足、二足で登れる気がした。 
 なんなら、ローリエは空中を短時間走ることもできるし、跳躍力を強化するスキルもある。


 よし、やってみよう。


 そう心に決め――。


 ――た時。


 外壁の上の兵士と目が合った。
 弓を手にしている、衛兵だった。
 城……つまりこの首都を所有しているギルドが雇っているNPCだが。
 変なことをすると、ギルドに通知が行く上に、指名手配されかねない。

 たぶん、NPC自体は倒すことができるだろう。
 しかし、その後の面倒くささを考えると、強行は出来ない。
 
 ――公衆の面前でさらし首にされ、死刑執行。

 そんな目に合うのは嫌だ。
 
 悪い妄想を消し飛ばし。

 ローリエは外壁の傍を立ち去った。


 


 さて、どうしたものでしょうか。

 状況はふりだしに戻った。

 いろいろと考えた結果。

 「そうだ……」

 あることを思い出した。

 ローリエは風のスキルを極めている。
 その上で、重力スキルもある程度育てている。
 
 特定の風スキルと重力スキルの習得で覚えるスキル。
 その中に、飛行できるスキルがあるのを思い出した。


 【飛行フライト


 ローリエはその魔法を使って、兵士の隙を狙って外壁の中に侵入する。
 そうして、民家の屋根に降り立った。


 さすがに、高空から急降下で侵入されては、兵士も気づかないようだった。


 「やった、入れた……」

 まるで、泥棒か怪盗みたいな入り方だが気にするまい。
 この世界では、かなりの自由が許されている。
 こんな変化球な街への入り方も、出来るならばやっていいのだ。
 その結果どうなるかは、自己責任だけども。


 さて。

 
 ローリエが降り立った屋根から見下ろすと、たくさんの人が、大通りを行き来している。
 路地にも、民家の下の道にも。

 あの中に入るのは御免だ。



 ローリエは身軽だ。
 
 STR――Strength
 VIT――Vitality
 DEX――Dexterity
 AGI――Agility
 FAI――Faith
 MEN――Mentality 

 の基本ステータスのうち、AGIとDEXに多くを振っている。
 細かく言えば、AGI極、DEX多め、VIT1、MENとSTRとFAIは中程度。
 といった具合だ。


 つまり、とても身軽で軽快な構成だといえる。

 なので、屋根を伝って、移動するくらいは簡単だ。



 さて、当初の目的通り、とりあえずパーティの募集を探さなければ……。 
 冒険者が集まる場所に行けば、たぶん募集があると思う。 

 それを真剣に考えた時。
 
「……うっ」

 あまりに困難すぎる想像がよぎって、頭を抱えてしまった。
 そもそも、冒険者があつまる場所が良く解らない。


 ――どこかに都合よくパーティーメンバーを募集している人が、人の少ない場所に居ない物だろうか。

 そんなことを考えながら、ローリエは首都グランタリスをうろつくのだった。
 正確には、首都の屋根の上を。
 

 
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