よくわかる異世界魔法ー『マナの書』ー

日傘差すバイト

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【第二章】――大魔王のおしごと――

第一の将、ティータ

 私は、玉座から降りる。

 そうして、いくつかの段差を降り、八輝将と同じ高さの床を歩み、立ち止まった。

「みんな、立って良いわよ」

 その言葉で、八輝将は立ち上がり、魔王とミラが静かに私の近くまでやってくる。
 そうして、順に各々の顔を見渡せば、すぐに記憶の底から皆のことが、つぶさに思い出されてくる。

 整列する5名の八輝将のうち、私は、まず緑色の魔族の前に赴いた。
 とはいえ、緑色といっても身に着けている服の色味のことで、肌はどちらかといえば色白な方だ。
 琥珀色の双眸が私の漆黒の出で立ちを追う。
 そんな少女の床に届きそうな程長い若草色の髪。そこから覗く顔が、私に向けられる。
 そして私は、私よりも少しだけ長身のその少女の名を、呼んだ。 

「ティータ」

「はい……、マナ様」

 落ち着いた雰囲気の、吹き抜けるそよ風のような声。

 
 その返事の主は、元はアルラウネという弱い魔物として生まれるべきところを、突然変異で、魔族として生まれた類稀たぐいまれな変異種だ。
 しかも、その身体は永い時を経て既に半分神霊の域に達している。

 
 ――生きた花の髪飾り、透明な花弁のミニ王冠、大きな桜色の花弁を重ねて表現されたスカート、背中にのびる木の枝のような骨格は、大きな蝶の羽に似た形を描き、一見して強力な魔物とは思えない。妖精か、不思議な雰囲気を持つ可憐な少女のようだ。
 そして、周囲に僅かに香る、花の匂。 
 
 加えて、枝を編んだような網状のコルセットと大きな葉を巻いて作られたドレス。  
 私の視線がその胸元に向く。
 そこには私がプレゼントした『黄魔抗石』のブローチが輝いていた。

「……気に入ってくれたようね、ソレ」

「はい、勿論です、マナ様」
 嬉々として返事をして。
 ティータが、ブローチに優しく手を添える。
 そして、
「……むしろ、良かったのでしょうか……」
 と、言葉を付け加えた。 

 価値の高い物かもしれない、と憂いているのだろう。
 けれど、それは気にするような出来栄えの代物ではない。 

「良いのよ。それは、私が趣味にしている錬金術で出来た余り物なのだから、気に病むことは無いわ」

「そうでしたか。ありがとうございます」

「でも、戦いに出るようなときには、必ず身に着けておくのよ。念のためにね」
 それはいわばお守りのようなもの。
 神霊になりつつあるティータは、黄系魔法――特に『ごん』の属性魔法が天敵になってきている。 『黄魔抗石』は、それを補うための魔法の品だ。
 
「大丈夫です、肌身離さず身に着けております」

 ぜひそうしていて欲しい。
 私は、ティータの綻んだ表情につられて目を細めた。


「ところで、魔術の練習はちゃんとやっているかしら?」

「はい。ですが、重属性と風属性の魔力が、まだそんなに早く作れなくて……」
 
 種族柄もともと惹きつけ易い得意な属性に比べて、少し縁遠い現象核オリジンの誘引に、手間取っているのではないだろうか、と予想しつつ。

「後で見せてもらうわ」

「お願いします、マナ様」

 そうして私は、一歩、横へズレる。

 次はティータの横に並んでいる長身な男性の前へ。



 
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