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【第三章】――大魔王のおでかけ――
ヴィヴィアンと盗品探し
「盗まれたものは何?」
「魔核と示現回路だよ。あと、皮とか、角とかだな」
私の問いに、ラークが受け応える。
ちなみに、魔核というのは魔物の持つ二つ目の心臓の事で。
魔物に変貌する時に取り込んだ魔気、現象核が集約され、凝固し、永い年月や度々の種族的進化を経て形成された『本能で魔力を生み出して利用するための器官』だ。それが、魔物や魔族の特性や能力、帯びている属性を作り出している。
そして、次元回路とは、魔核に接続され一部や全身に張り巡らされている、魔力神経網の様なモノ。それが魔核で作り出した魔力の利用方法を決めているのだ。
いわば、『生体術式図』と言っても良い。
これらを戦利品にしているということは、もはや日常的に魔物を狩る事が本格化されていて、人族たちは魔物の中に産まれた魔法的な素材を、活用し始めているわけだ。
たぶん。
先ほどのラークの剣さばきや装備品、アンシェルの魔法知識から察するに、二人の実力ではヴィヴィアンの遺跡内の魔物を相手にすることはまだ難しいだろう。
だから入手先は、外。
砂漠に生息している魔物のどれかだ。
「その戦利品で……このあたりの魔物だと、何になるのかしら」
「――サンドワームですか?」
ヴィヴィアンの予想に、ラークとアンシェルは表情を引きつらせて凍り付いた。
「さ、さ、さんどわーむぅ!?」
「冗談ですよね? 先輩たちはアレを狩るんですか……!?」
申し訳ないけどサンドワームが強いか弱いか、私にはまったくわからない。
ラークが飽きれ声で突っ込む。
「全然違う。砂漠小蠍だよ。っていうか、何の魔物だかは関係ないだろ?」
「そうね、ごめんなさい。つい」
「もういちどたおす……のは、ダメですか?」
ミラの言う選択も一理ある。
「ええ、確かに。同じ戦利品をもう一度採取するというのは?」
だけどラークは機嫌を悪くして。
「嫌だね。めちゃめちゃ大変だったんだぞ。硬ぇし、ハサミで剣の刃はボロボロになるし、刺されて毒食らったら大赤字だしさぁ」
「……だからラークのロングソードは、さっき新しいのを買ったばっかりなんです。毒を受けていたら治療代で破産するところでした」
と、アンシェルが続けて言う。
身の丈よりも強力な魔物を選択しているのか、この辺りの最弱の魔物がサソリしかいないのか、解らないので何とも言えないが、金銭で苦労しているようだ。
そう言えば何と言っていただろうか。
「代理人……? 大変なのね……」
「だからさ。戦利品を奪うなんて、とんでもないってわけ。絶対盗ったやつ捕まえてボコボコにしてやんないと気がすまないね!」
では、犯人捜しをするとしましょう。
「その、砂??蠍の魔核の保有属性は、土、木、金……割合的には、4:4:2 ――ってところね?」
「え……? そうなのか、アンシェル?」
「いえ、私は、だいたい『金』ぽい、って戦ってて思ってたくらいで……」
土は木に弱く、木は金に弱い。
土と木が同じ割合で相殺するために、 この中で弱点として機能するのは、金。
態勢として機能するのは、土。
総合すればこのサソリは、水の魔力にある程度弱く、火の魔力にちょっとだけ弱い。となる。
そしてこの魔核の醸し出す属性の色彩が、霊覚を凝らせば独特の色として醸し出されているのが見える。
まぁ、色というか、魔核に取り込まれていた現象核と言うべきか。
だから、それを追跡する。
「奪われた場所に案内してもらえるかしら?」
そうして、ラークとアンシェルに戦利品を盗られた場所に案内してもらい。 そこから、薄い煙のようにも見えるその僅かな色彩を追いかけるのだ。
意識のスイッチを入れ。
普段殺している感覚を呼び戻す。
私が感覚を研ぎ澄ませていると、
「……なにが見えてるんだ? あんたらにも見えるのか?」
ラークがヴィヴィアンとミラに尋ねる声が聞こえてきた。
「いえ……さすがにそこまでは見えないです。私には……」
そうして色濃く感じる場所は、割とすぐに見つかった。
街の端にある、魔道具を売っているお店。
私はその店の前で立ち止まる。
「ここだわ」
「いよっしゃ!」
勢いよく扉を開け。
いの一番にラークが踏み込んでいく。
どん、と。
音を立ててあいた扉。
その先のフロアに、そいつは居た。
客として。
「こんどこそ見つけたぜ、おまえ!」
真っ黒なローブの小柄な背中。
確かに、私を背中から見たらこんな感じにも見えるかもしれない。
ただし、かぶっている帽子は、黒いとんがり帽子だけれど。
あまり広いと言えない店の中に。
雪崩れ込んだ私達、5人。
そして振り返る。
今、魔道具の店主と取引をしようとしていたであろう。
その人物が――。
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