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【第三章】――大魔王のおでかけ――
ヴィヴィアンと、魔物を狩る者たちを狩るモノ
翌日。夕刻に。
私たち、マナ、ミラ、ヴィヴィアンは、砂漠都市ガラミッドの入り口で待ち合わせていた。
ラークとアンシェルにはもう少し聞きたいことがあった事と、もうひと仕事するという話をしていたので、同行してみたかったからだ。
今の世界の魔術。世界の情勢。
色々な事を知っておくほうが、魔法にも、錬金術にも、大魔王の仕事にも、関わるに違いない。
――なんてのは方便で。魔王城に居続けると、魔王の小言がうるさいので、それもあって物見遊山のようなものなのである。
ちなみに指定時間がおよそ日没の時間なのは、灼熱の砂漠を旅する時の知恵らしい。
そのことは、ヴィヴィアンが『昼間より涼しい』と言った一言で、察せられる。
人族には人族の知恵があるモノなのね。
そして暫くすると、ラークとアンシェルが出て来て合流することになった。
アンシェルが。
「今日は、昨日とは別の依頼で、サンドヴァイパーという砂漠の蛇を狩ります」
というので、引き続き工事中の街道から逸れて、砂漠地帯の西を目指すらしい。
そんな道中。
ラークがおもむろに問いかける。
「なぁ、名前、ヴィヴィアンだっけ? あんたたちも代理人なんだろ? 全員魔法使いなのか?」
「ラーク! せ・ん・ぱ・い、ヴィヴィアン先輩よ」
すかさず、アンシェルが、金髪剣士の無礼を諭す。
もう私達は、ふたりの中で先輩代理人という事になっているらしい。
この誤解を解くために、私達が何者なのかを偽装するほうが億劫なので。
当面はこのままでいいか、と思うのだけども。
そもそも代理人がどういう仕事なのか聞きづらいのは、少し問題かも。
「で、どうなん……。ですか、ヴィヴィアンせんぱい」
それにヴィヴィアンは、うーん、と少し悩んでから。
「いちおう魔術は――フルゥ先生に習っていて多少齧っていますが、少なくとも私は魔法使い、専門じゃ無いです」
ちなみにフルゥとは、フルゥ・ターク。
昨日名前を聞かれた時に名乗った私の偽名だ。
マナと言う名前ではややこしい上に、仮にも魔王の軍勢の最高責任者の名前は使わないほうが良いだろうと思ったから。
そして、私達の出で立ち、特にヴィヴィアンを見回すルークは、「でもさ」と怪訝な表情で。
「あんた武器とか杖とか、無いじゃんか? ……まさか素手? 格闘かよ!?」
ラークの言う通り。青年は腰に剣を差しているし、背中に丸っこい盾も背負っている。アンシェルだって、ロッドを携帯している。
それどころか私達は、カバンや水袋などサバイバルに必要な携帯品を何一つ持たない。とても不自然なほど身軽に見えている事だろう。
けれども武器に関してなら。
私とミラはともかく、ヴィヴィアンはそうではない。
「ヴィヴィアンは武器持ってるわ」
私はヴィヴィアンを指さす。
「はい。良く見える所にありますよ?」
そう言って、ヴィヴィアンはストールをひろげて、歩む歩幅をステップに代えて、くるくると華麗に舞った。
ヴェールが躍り、腰布や装飾品が靡き。
ヴィヴィアンの腰の左右に1本づつぶら下がっている、ふたつの大きな輪っかが、遠心力に遊ばれる。
しかし、ラークとアンシェルには伝わらなかった。
「え? どこだ?」
「先輩の持っている技術と経験が武器、そういうことですか?」
技術と経験が武器。
それに私は、思わず笑ってしまって。
「それはある意味、的を得た答えだけれども」
この場合は、ハズレ、だ。
そして、街道なんてない。
視界には砂しか映らない。
太陽と星と幾つかの月だけが、自分の居場所を教えてくれる。
そんな、完全に日の落ちた、夜の道すがら。
私とミラとヴィヴィアンは気にしていなかったが。
魔光のランタンを片手に歩いていたラークは、気づいたらしい。
「おいまて!」
「なに?」
「――これ、狙われてるんじゃないか!?」
「そうね?」
「そ、そうね……って!」
ランタンを砂地に投げ置き。
ラークが、慣れた所作で鞘から剣を抜き、背中の盾を手に取って構えを取る。
アンシェルが慌てて、杖を構える。
何に狙われているのか、私にはその魔物の知識が無い。
けど、砂漠の夜。
砂地に月光の影が落ちている。
私に解るのは一つだけだ。
「へび……では無いわよ?」
「そりゃぁ、そうだろ! ……空飛ぶ蛇が居てたまるかよ!」
そう、敵は飛んでいた。
頭上をずっと。
つけ狙っていた。
その巨体が――。
私たち、マナ、ミラ、ヴィヴィアンは、砂漠都市ガラミッドの入り口で待ち合わせていた。
ラークとアンシェルにはもう少し聞きたいことがあった事と、もうひと仕事するという話をしていたので、同行してみたかったからだ。
今の世界の魔術。世界の情勢。
色々な事を知っておくほうが、魔法にも、錬金術にも、大魔王の仕事にも、関わるに違いない。
――なんてのは方便で。魔王城に居続けると、魔王の小言がうるさいので、それもあって物見遊山のようなものなのである。
ちなみに指定時間がおよそ日没の時間なのは、灼熱の砂漠を旅する時の知恵らしい。
そのことは、ヴィヴィアンが『昼間より涼しい』と言った一言で、察せられる。
人族には人族の知恵があるモノなのね。
そして暫くすると、ラークとアンシェルが出て来て合流することになった。
アンシェルが。
「今日は、昨日とは別の依頼で、サンドヴァイパーという砂漠の蛇を狩ります」
というので、引き続き工事中の街道から逸れて、砂漠地帯の西を目指すらしい。
そんな道中。
ラークがおもむろに問いかける。
「なぁ、名前、ヴィヴィアンだっけ? あんたたちも代理人なんだろ? 全員魔法使いなのか?」
「ラーク! せ・ん・ぱ・い、ヴィヴィアン先輩よ」
すかさず、アンシェルが、金髪剣士の無礼を諭す。
もう私達は、ふたりの中で先輩代理人という事になっているらしい。
この誤解を解くために、私達が何者なのかを偽装するほうが億劫なので。
当面はこのままでいいか、と思うのだけども。
そもそも代理人がどういう仕事なのか聞きづらいのは、少し問題かも。
「で、どうなん……。ですか、ヴィヴィアンせんぱい」
それにヴィヴィアンは、うーん、と少し悩んでから。
「いちおう魔術は――フルゥ先生に習っていて多少齧っていますが、少なくとも私は魔法使い、専門じゃ無いです」
ちなみにフルゥとは、フルゥ・ターク。
昨日名前を聞かれた時に名乗った私の偽名だ。
マナと言う名前ではややこしい上に、仮にも魔王の軍勢の最高責任者の名前は使わないほうが良いだろうと思ったから。
そして、私達の出で立ち、特にヴィヴィアンを見回すルークは、「でもさ」と怪訝な表情で。
「あんた武器とか杖とか、無いじゃんか? ……まさか素手? 格闘かよ!?」
ラークの言う通り。青年は腰に剣を差しているし、背中に丸っこい盾も背負っている。アンシェルだって、ロッドを携帯している。
それどころか私達は、カバンや水袋などサバイバルに必要な携帯品を何一つ持たない。とても不自然なほど身軽に見えている事だろう。
けれども武器に関してなら。
私とミラはともかく、ヴィヴィアンはそうではない。
「ヴィヴィアンは武器持ってるわ」
私はヴィヴィアンを指さす。
「はい。良く見える所にありますよ?」
そう言って、ヴィヴィアンはストールをひろげて、歩む歩幅をステップに代えて、くるくると華麗に舞った。
ヴェールが躍り、腰布や装飾品が靡き。
ヴィヴィアンの腰の左右に1本づつぶら下がっている、ふたつの大きな輪っかが、遠心力に遊ばれる。
しかし、ラークとアンシェルには伝わらなかった。
「え? どこだ?」
「先輩の持っている技術と経験が武器、そういうことですか?」
技術と経験が武器。
それに私は、思わず笑ってしまって。
「それはある意味、的を得た答えだけれども」
この場合は、ハズレ、だ。
そして、街道なんてない。
視界には砂しか映らない。
太陽と星と幾つかの月だけが、自分の居場所を教えてくれる。
そんな、完全に日の落ちた、夜の道すがら。
私とミラとヴィヴィアンは気にしていなかったが。
魔光のランタンを片手に歩いていたラークは、気づいたらしい。
「おいまて!」
「なに?」
「――これ、狙われてるんじゃないか!?」
「そうね?」
「そ、そうね……って!」
ランタンを砂地に投げ置き。
ラークが、慣れた所作で鞘から剣を抜き、背中の盾を手に取って構えを取る。
アンシェルが慌てて、杖を構える。
何に狙われているのか、私にはその魔物の知識が無い。
けど、砂漠の夜。
砂地に月光の影が落ちている。
私に解るのは一つだけだ。
「へび……では無いわよ?」
「そりゃぁ、そうだろ! ……空飛ぶ蛇が居てたまるかよ!」
そう、敵は飛んでいた。
頭上をずっと。
つけ狙っていた。
その巨体が――。
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