よくわかる異世界魔法ー『マナの書』ー

日傘差すバイト

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【第三章】――大魔王のおでかけ――

ヴィヴィアンと砂漠の襲撃者②

「すげえ、なんだこれ!?」

「強化? の……魔術ですか!? ――……しかもこんな……!」

 一瞬、上空の竜蠍の事を忘れ。
 ラークとアンシェルが、思わず驚きを口にする。

 そうでしょうね。
 私だって、ダンスで儀式魔術を起こすなんて、あり得ないと思っているのだから。
 特に魔法使いのアンシェルが驚くのは無理もないと思う。

 けれどこれの欠点は、踊り続けなければ効力は1分も経たずに失われるという事と、幾つもの強化を一度に施せないという事だ。

 まぁでも。
 そんなことよりも。
「……驚いてる場合なのかしら」
 
 その合間に。
 がきん、と音を轟かせ。
 私は、竜蠍が放った攻撃を、手にした『剣』で弾き飛ばした。 

「はっ!?」

 ラークたちが気付いた瞬間にはもう、それは雨となり。
 飛来する無数の『ニードル』。

 それを私は、黒曜石剣オブシダンソードの双剣を振るい、打ち払う。
 ついでアンシェルに向かう軌道の数本を蹴り飛ばし、左右二連、投げつけた黒曜石剣オブシダンソードがすべてを粉砕し、防ぎきった。

 その途中の視界には。
 ラークが咄嗟に構えた盾で、それを防御する様が見えていた。

 後方の砂地では。
 弾き、外れた『ニードル』がドドドドン、と盛大な音を響かせて着弾し、砂煙を巻き上てゆく。

 そしてミラは、踊るヴィヴィアンの『円月輪チャクラム』に守られて無事だったようだ。
 そもそも、ミラに心配するのは愚の骨頂だけど。
 
 ラークに念のために聞こう。  
 
「大丈夫?」

「――……いつもの俺だったら今のでくたばってたかもな。……助かったぜ、ヴィヴィアンせんぱい」

「助かりました。ヴィヴィアン先輩、フルゥ先輩」
 
「そう」
 ヴィヴィアンの強化のお陰か。
 服や防具はやや損傷がみられるが、二人は元気そうだ。

「私たちでサポートするわ。あなた達のいつもの戦い方を見せてくれないかしら?」

「はい……」

 そういって、アンシェルは魔術書らしきものを取り出し。
 片手に本、片手にロッドを構え。
 アンシェルは、『術式宣言』とともに、魔法陣を展開する。

 私はその様子を観察する。 

 魔力合成は、まだ未熟。
 描かれる陣は、隠蔽が施されてなくて、何の術かバレバレ。
 本は、術式図が掲載されたモノらしく、構成の補助に使っているようで。
 背伸びした難易度の術式展開は。
 およそ技術的にも。
 魔力の生成速度的にも。
 ギリギリだと思われた。 
 

 けど。
 魔力を紡ぎ出すだけで、人族なら50年はかかるだろうという所。
 10代半ばか、後半ととれるアンシェルと言う名の魔法使いのそれは、努力と才能に溢れ。
 自身の実力を繊細に分析しているからこその、限界いっぱいの魔術。

 私は、素晴らしいと感じた。

 そして、放たれる。




 ――『落雷サンダーボルト』――。




 アンシェルの選んだ属性は。
 木属性要素を含むことが多い昆虫への最適解。

 それは、まさしく、的中であって。


 ずどぉおん、と夜空の風と砂を、両断するかのように。
 極太の雷が、空を飛ぶ巨体を直撃する。

 汚い叫び声をあげ。
 長い身体をくねらせ、バランスを崩しかけるヴェリフェラス・ペンドラ。

 魔術による攻撃は見事だった。

 けど。

 ――あまりに相手が悪かったのだろう。

「くっ……、私の最大なのに!」

 相手は、かすり傷さえ負っているように見えない。 
 頑丈過ぎたか、タフ過ぎたか。

 雷の魔術1発程度では、相手の敵意を増大させただけだったようだ。

「せめて、地面に降りてくればな……」

 ……なるほど。

 その時。

 ヴィヴィアンの手から、それは放たれた。

 舞踏の遠心力さえ利用して。
 少し魔力をこめて。

 手の円環の二つを、投擲したのだ。

 ひゅるひゅると、高速回転する輪の外側に収納されていた刃が展開し。
 ヴィヴィアンの魔力を帯びたまま、空中の巨躯へ。

 それは向かっていく。
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