よくわかる異世界魔法ー『マナの書』ー

日傘差すバイト

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【第三章】――大魔王のおでかけ――

ヴィヴィアンと砂漠の襲撃者③

 超高速回転で、ヴェリフェラス・ペンドラに突撃する二枚の大輪。

 それが長大な尾や、腹部に直撃する。

 がぎん、と見上げて見守る私の耳に、硬質的な音が届く。
 尾の方は、頑丈な外骨格に阻まれて弾かれた。

 しかし、もう1枚。
 腹部に突き刺さった円刃は、その皮膚を切り裂いて傷を負わせる。

 そして、その武器は宙空をユーターンし、再び巨躯へ向かっていく。

 ヴィヴィアンの魔力によるものだ。
 通常の投擲武器は、命中すれば戻ってこない。
 けれど、ヴィヴィアンは僅かな魔力を付与し、簡易な制御を可能にしている。

 とはいえ、その目論見はダメだった。
 二度目は許されなかった。
 ヴィヴィアンの武器は、ヴェリフェラス・ペンドラの硬い翼に防がれ。
 二枚目も、急旋回した反動で振り回された尾で打ち飛ばされて、傷を与えるに至らない。

 確かに、一太刀浴びせることは出来ている。けど。
「私の武器では、落とすのは難しそうですね……」
 ひゅるひゅると、音とともに戻ってきた輪を掴みつつ。
 ヴィヴィアンはそう言った。

「何か、空中の敵を落とせる術式があれば……」

 アンシェルが、持っている魔術書をめくって探している。
 しかし、どちらにせよ魔法陣型の魔術師アーキテクトであるアンシェルには、この場で魔術を用意するのは難しいだろう。 

 となると……仕方がない。
 
 急ごしらえの、魔術で作り出した双剣オブシダンソードで。
 再び打ち出される、『針の雨』をさばきながら。

「私が落とすわ。――その後は頼むわよ、ラーク、アンシェル」

 私は、今の人族の技術を知りたいのだ。
 この二人は、代理人プロクシィだと言って、度々魔物を狩っているのだと言っていた。
 それならば、きっとあるはずだ。
 代理人プロクシィという仕事、魔術、生き方、規則。
 それらに関わる、培ってきた個人、社会の技術、方法という物が。

 それは、私の興味でもあり。
 仕事と趣味にも生かせる情報でもあるだろうから。

 だから、最低限の手助けはする――。

 驚きと期待の声をあげるラークたちを尻目に。 
 
 上空の巨体に向けて、私は、掌をかざす。



 そして――。

 私の魔気オド
 天空の魔素マナ
 地上に眠る、重力の現象核オリジン


 この中で、魔法使いが自身の意志でコントロールできるのは、魔気オドだけだ。
 だから、それを魔素マナ現象核オリジンに接続し、集め、もう一度分解し。

 手の中で、魔力として組み上げる。

 これこそが、魔力合成とよぶ魔法使いの基礎技術。
 そうして作り出した、魔力の分子を。

 定めた術式に流し込む。
 その役割を、言霊スペルに乗せて――。
 

 私は詠う。


「不屈の闘志は秘奥のかいな、骸をほどきてすべてを紡ぐ――追懐せよ、汝にくびきあらんことを――」

 そして、我は世界に術式の発動を宣言する。

 重属性初級難度攻撃用術式――。

「――『落魄せし大翼フォールンダウン』――!!」


 それは標的の受ける重力加速度を、再設定する術式。
 その値をとりあえず、20倍程度にしておいた。
 
 ヴェリフェラス・ペンドラ。
 あなたにはとりあえず、地上に落ちてもらう。

 私のために。
 
「効いてる!」
「お、落ちる……? マジで!?」

 
 そうしてアンシェルとラークの驚きの通り。
 術式の効力により、その巨体は落ち始める。
 いくら、四対もの翼で浮力を得ていようとも。
 
 10キログラムが200キログラムになるこの瞬間だけは。
 抗う事は絶対に不可能。 


 急激に増大した自重に耐えれるはずもなく。
 
 やがて。

 爆風。

 それに近い衝撃音が轟き。

 膨大な砂塵を巻き上げながら。
 巨体は地上へ、叩きつけられる――。

 
 生命力に秀でた昆虫種族ならば、死ぬようなことは無いはずだ……。
 しかし。

 砂塵が徐々に薄れても。

 墜ちた影は地面に沈み込み。
 魔物に立ち上がる気配はない。

「やった……?」
 ミラが疑念を口にする。

「……しまった……?」
 術式の設定加減を間違えたか。
 私の策略は、無に帰してしまったらしい。

 困るんだけど。
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