よくわかる異世界魔法ー『マナの書』ー

日傘差すバイト

文字の大きさ
44 / 66
【第三章】――大魔王のおでかけ――

ヴィヴィアンと砂漠の襲撃者④


「すげえ!」
「やった!」

 ラークたちの歓喜の声が上がる。

 ヴィヴィアンが儀式魔術を中断し。
 私たちは、落ちた魔物の傍まで、ゆっくりと距離を詰めた。

 魔物は横たわったまま動かない。

 人の数倍は優にある長い身体を丸めた姿は、内臓が破裂したのか、その周囲の砂地に体液を滲ませている。

「マナさま……!」

 ミラが、私の名を呼び、近くにやってくる。
 でも、今の私はフルゥ・タークなのよ。偽名を忘れてるわ。

「ミラ……」
 指摘しようかと、したその時。

 ずどっ、と音がして。
 ミラの真っ白で小さな体に、衝撃が奔る。

 巨大な何かが、はじけて飛び散っていった。

「うそだろ!?」

 起き上がったのだ。
 トンボのように長く発達した節足で、ヨロヨロと。  
 ヴェリフェラス・ペンドラが。
 
 いや、それよりも。
「翼が……!?」
 アンシェルが気付いた通り。
 片方のコウモリのような翼は、いつの間にか千切れてなくなっていた。

 なぜなら、今しがた弾けて飛んでいったからだ。

 私は、無傷のミラを庇うように前に出る。

「ヴィヴィアン、ミラを殴らせちゃ駄目よ」 

「はい! では、こうですね!」
 
 ヴィヴィアンがミラの壁になるかのように、私の真横に並んだ。
 ――と言うかもう密着している。
 こちらを見ていないで、魔物を見なさい、魔物を。 

 そんなヴィヴィアンはさておき。

「これで、あいつはもうまともに飛べないわ」
 そのうえ、落下のダメージが効いていて、身体を支えている六本の脚がややおぼつかなく、長い尾のような身体からは、体液が滴ったままだ。

「さすがに、ここまで弱ってたらいけるかもしれない。見せればいいんだな。俺たちの戦い方!」

「ええ、見守らせてもらうわ」

 しかし、ヴィヴィアンはダンスを辞めている。
 今は強化が無い状態だ。

 すると、言うまでも無くヴィヴィアンが動く。

「――広域化・強化魔術エクステンシヴ・レインフォース……『火属性概念憑依パワー・オブ・ファイア』、『熱属性概念憑依エナジー・オブ・ヒート』、『土属性概念憑依タフ・オブ・ソイル』、『重属性概念憑依エンデュアランス・オブ・グラヴィティ』、『風属性概念憑依アジリティ・オブ・ウィンド』『雷属性概念憑依リフレクシズ・オブ・サンダー』、『月属性概念憑依エゴイスト・オブ・ダーク』、『邪属性概念憑依セヴンスセンス・オブ・イヴィル』」

 筋力。
 スタミナ。
 生命力。
 身体強度。
 俊敏性。
 神経伝達速度。
 魔気再生力。
 魔術に対する感覚感度。

 それらの全ての項目が、一度に強化される。

「一度にこんなに強化を!? ありがとうございます、先輩」

 アンシェルが礼を言い。

「ここまでしてもらって、応えられないようじゃ、俺の気が済まねぇ。やるぞ、アンシェル!」

「うん、お兄ちゃん!」

 ふたりは構えを取る。

 

  
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。