よくわかる異世界魔法ー『マナの書』ー

日傘差すバイト

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【第三章】――大魔王のおでかけ――

ヴィヴィアンと砂漠の襲撃者⑤

 ラークが、前に出て接近戦を挑んでゆく。

 既にボロボロなのに、昆虫種由来の生命力の高さなのか。
 振り回される魔物の尾は、まだ力強く。
 丸太のようなソレが、ラークを襲う。

「ちっ!」
 円形の大盾で防ぐラークは、懸命に吹き飛ばされないように踏ん張りを利かせて耐える。
 そして、隙を見て、ロングソードを振るい、攻撃を試みるが。
 頑丈な装甲に当たる切っ先は、がきん、がきん、と弾かれているように見えた。

 けれど、強化術式の成果か、落下時の負傷のせいかは解らないが。
 一見無効化されているように見えて、装甲には傷や亀裂が入り始めている。
 
 その間に。

「『放雷撃ホリゾンタルブリッツ』」

 アンシェルが術式宣言で魔法陣を起動し、魔術が準備される。
 
 私は、そんな代理人プロクシィの戦いの様子を見ていた。
 
 相手にしているのは、翼を持つ巨大なムカデに近い魔物だ。
 
 見た目は竜にも見えるけれど。
 その知能は、昆虫のソレらしく。

 尾を振り回す。
 翅による突風。
 翼での殴打。
 ――と、攻撃のパターンは少なく。
 それに加えて。
 なんとかの一つ覚えのように。
 度々無数の針を撃ち出して来る。

 私は、それを躱し、『黒曜石剣オブシダンソード』等で弾きつつ。

 咄嗟にラークが、跳び退いたと同時に。
 アンシェルの魔法陣が満ちたのを感じた。

 その瞬間。
 月の夜空が、昼間のように照らし出され。
 ずどん、と後方のアンシェルの杖から撃ちだされる『放雷撃ホリゾンタルブリッツ』が。
 ラークとアンシェルに命中する軌道の『針』を蒸発させていく。
 チラリと視界に入った私の動体視力が、その蒸発の瞬間を捉えた。

「なるほど……この飛ばしてくるモノは、『針』ではなく……尾の『脚』だったのね」

 別に知りたくも無かったが。
 勝手に知れたのだから、仕方がない。

 砂漠の戦場に、汚い絶叫が轟き。 

 雷撃が直撃し、発生する衝撃と感電に見舞われたヴェリフェラス・ペンドラの身体が、苦悶に蠢き、部分的に限界を超えた外骨格装甲がパラパラと砕けていく。

 そして。
 ミラに当たりそうだった『針』を、円月輪で弾いて防いでいたヴィヴィアンが言う。
「二人とも、戦えてますね」

「そうね。あなたの強化術式が効いているのもあるでしょうけれど、いつもこうやって、互いを補い合いながら戦っているのね」
 

 そんなヴィヴィアンの円月輪の形状は今、円月輪ではない。
 円形を解除され、今は2本とも、多数の刃がワイヤーで連結された鞭のような、鎖のような形状に形を変えている。
 ――それこそムカデのように。
 つまりフレキシブルなそれを縦横無尽に振るい、針を叩き落としていたというわけだ。

 それにしても。

 間近で見るヴェリフェラス・ペンドラは。
 顔も、身体も。
 その気色悪さはやはり昆虫のソレで。
 ムカデのような胴体の節一つ一つに備わる脚(針)が。
 みるみる再生し、装填されていく様子も。
 身体を支えて立ち、態勢を整えるひときわ長い六本の脚も。
 長い触覚の蠢く様も。

 ぜんぶぜんぶ、私には辛いビジュアルだ。
 
「はぁ」
 目を逸らしたい。
 けれど、それ以上に人族の戦う様に興味が及ぶ。


「くそ、また買い直さないとダメだな、こいつ……。まぁ、しょうがねえけどさ」
 
 金髪の青年剣士から、こぼれた愚痴が小声で聞こえ。
 刃毀れだらけのロングソードを掲げ、ラークが叫ぶ。
 後方の、魔術師姿のアンシェルに向けて。

「そろそろ、やるぜ、アンシェル!」

「解ったわ。――カウントダウン!」
 
「おう!」

 何か秘策をやるのかしら。
 とても興味がわくわね。
 
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