よくわかる異世界魔法ー『マナの書』ー

日傘差すバイト

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【第五章】――大魔王と魔導人形――

大魔王の魔導人形

 確かに、魔王城に戻ると、魔王が言っていた通り、自室の机に書類や巻物が積まれていた。

 大半の事は魔王に任せてあるが。
 各拠点での創世輝晶マザークリスタルの定期点検結果の確認や。
 魔術、魔法に関する相談などは私の領分になる。

 積まれた書類は、だいたいそれ系のものばかりだろう。
 どれも、地味だが重要な職務だ。

 だが、私はその全て無視して、錬金術用の別室に籠っている。

 いや、正確に言えば。
 別室と言うか完全に別の建物――『研究棟』の一室だ。

 その広く薄暗い室内は、ところどころがランプで照らされ。 

 敷物ラグの上には、煮詰めるための釜が置かれ。
 ずらりと壁に整列する棚には、様々な素材、結晶、完成品が並べられ。
 奥に見える倉庫部屋には、見た目だけは立派な刀剣や槍などの数々が、乱雑にゴミのように突っ込まれている。

 部屋にはいくつもの作業台が置かれていて。
 
 作業の種類ごとに分けられ、それぞれ様々な加工用道具が置かれている。

 そんななか。
 いつもの魔法衣で、私が座っているのは、結晶加工用の作業台の前だ。

 そしてそばには助手ミラも居る。
 その手には、魔法のランプのような形の入れ物を持っていて。
 中にはキラキラ輝く星屑のような粉がいっぱいまで入れられている。

「ほじゅうします」
 ミラが踏み台に乗り、作業台の装置の上部タンクに、大量の粉末を流し入れる。
 ――それは、私の魔気オドを記憶させた魔草の粉末と、魔素結晶粉末を混ぜ、出来た混合粉末だ。

 補充を確認し、私が、装置のハンドルを回せば、組付けられた歯車と機構が回り出し、並べられた筒状の金属に、定量の混合粉末が順番に充填され、弾頭とプライマーが籠められていく。そばの木箱には、何百、何千と準備された筒が入っており、私はハンドルを回し続け、ミラは粉と弾頭とプライマーを補充し続ける。

 じゃらじゃらと、足元の空き箱に、出来上がった弾頭付の薬莢カードリッジが落ちていく。

 その作業は、数時間にわたって繰り返された。



 やがて。

「全部終ったわ。」
 私は息を吐く。
 気の抜けない作業から解放され、緊張が解ける。
 
「おつかれさまです、マナさま」

 でも作業はこれで終わりではない。
 足元には、大きい弾薬と、小さい弾薬が入った木箱が幾つか置かれていて。
 それぞれを所定の弾倉に籠めなければいけない。

「次の工程に移るわ。ミラは、こっちの組み付けね」 
「はい、マナさま」

 さらに数時間。
 すべてが終わる。
 
「よし、全部仕舞ってちょうだい。広間に持って行くわよ」

「りょうかい」

 ミラが、【合わせ鏡の無限世界ザ・ワールド・オブ・インフィニット・ミラーズ】に完成したそれらを収納する。


 
 研究棟を出て、『転送門』に入り、回廊を歩き、大扉を開けて。
 
 ミラとともに広間へ着くと、その人物は中央に立っていた。
 会った時と同じ位置、姿、直立不動の姿勢のまま。

「待たせたわね、アリス」 

 その少女は、微笑を形作って、抑揚の少ない声で答える。
「いいえ、マスター。以前からまだ130,373秒しか経っておりません」

 フロアに立つ少女の名はアリス。
 
 その容姿は、特別で。
 美しく造形された顔や、プロポーションだけではなく。

 全身は、157センチメートルの肢体を覆うようにぴっちりした装甲で覆われ。
 真っ直ぐな水色の髪が届く先には、腰部大型のスカートアーマーがあって。
 
 そして。

 頭部には、ウサミミか、おっきなリボンのようにも見えるアンテナ。
 肩部には、大型のシールドモジュール。
 背部には、推進用兼姿勢制御用のブースターユニット。
 及び、折りたたまれた可変大型ウィング。
 腰部には、武装懸架用アームと、燕尾服のような補助用ウィング。
 
 その色合いは、白と水色を基調にした、淡いカラー。

 そんな少女は。
 魔導人形――。
 私が、作った、少女型の戦闘用魔導機械式ゴーレムなのである。 
 





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