死にたいと思って明日を作る

謎希

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第一章

同じ考え

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ある日、私は一人の小説サイトのユーザーからDMが送られてきた。
「すみません。お願いがあって、DMを送りました。ぜひ、うちの社で小説を書いていただけないでしょうか。そうすれば、即、万冊突破まんさつとっぱは目に見えます。ですから、どうでしょうか。お考えください。」
私はこういうさそいだけはきらいだった。私は「おことわりします。」とたったそれだけを書いて送った。
こういう活動をすると同じようなDMだけは一番嫌いだ。その会社の利益りえきのために私の小説が使われる。それだけはいやだった。自分がみんなの心を救うためだけに小説を書いている。その小説が他の目的のために使われるのは私は嫌だった。
 昔学校の小説コンテストで私の小説が選ばれ、次の年に入ってきた一年生は何も考えないで文学部に入部してきた。私は色々な部活を彷徨ほうこうしていたためあまりみんなに顔を見せなかったけど、見ただけでわかる。ただ私のコンテストに出した小説を読んだだけで、背筋せすじをなぞられた感覚がしただけで文学部に入るなんて反吐へどが出るほどだった。そんな感覚を持ったような顔しか新しい一年生にはなかった。
 ただ私の作品を読んで、感動して欲しかった。私、僕なんてこんな小説を書くなんてほど遠いんだって思って欲しかった。自分だって当時は重宝ちょうほうされるような小説を書けたわけじゃない。でも、その感覚はわかった。そこから一年は小説を書かなかった。そんなんじゃ私の心すら救えないと気づいたから。
 私はふと昔のことを思い出して、胃がムカムカしてきた。足早にお手洗いに向かい、まってたものを出した。こんなことが高校生になってからよくある。私はそのせいで何も食べる気になれず、今日はパソコンのマウスではなくコントローラを取った。
冷蔵庫れいぞうこから取ってきた天然水てんねんすい傍近そばちかくに起き、ゲームを起動した。
このゲームはうまくもないし下手でもない。これだけはいくらやっても上達じょうたつしない。授業の時間になるまでゲームをやることにした。三回ぐらい試合ができた。
でも、やっぱり上達してない。むいてないのかなとも思った。このゲームは好きだからむいてなくてもやりたいゲームだからやめはしない。
 それから授業を受けて、ご飯を食べる気にはなれなかったから水を飲んだ。
いつもと同じ時間にDMが届いた。送り主の名前には綾沙あやさと書いてあった。このDMの主は私に小説のヒントであったりという手助けをしてくれる。声ではないが、内容が暖かい。そのDMの内容は『お昼の時間にごめんなさい。今回の作品はかなり私的に好きでした。ありがとうございます。シリーズ作品とかも書いたらどうですか。』と書いてくれている。ありがたい。
 私は前回の作品のコメント欄を見た。一つコメントが増えていた。私はそれを見て、ホッとため息をついた。
今日中学生の時の二年生三組のメンバーと遊ぶ会があるのだが、正直行きたくない。
電話が入った。元中二の三の今西幸樹いまにしこうきくんから電話がかかってきた。今西くんはクラスではムードメーカーである。今はどうかわからないが。
「はい。もしもし、神崎です。」
『今日来れるか。』
「多分、行く。」と言って、電話を切った。私はいつもの格好で言われたところに向かった。
 私の使っている小説サイトはマネーチャットと言って、ユーザーがお金を使って、小説にしたいパーセントをためることができる。そのパーセントゲージが10レベルに達すとそのサイトのスタッフと電話やDMを通じて、本にすることができる。そのパーセントレベルを4レベルまで上げてもらえるほど私はお金を入れてもらっている。なので今日の遊ぶ会で私はかんになったとしてもいけるであろうがくを入れていった。
 私は指定された場所の手前までたどり着いた。でも、そこから足が動かなかった。
みんなが楽しそうにしゃべっている、そんなところに“私なんか”が混ざれない。中学生の時は私は基本話しかけられるのを待っていた。そう思って、きびすを返した。やっぱり居場所いばしょなんかなかった。深くため息をついて、ひとつ呟いた。
「私の存在価値ってなんだろう。」もちろんそれに対しての答えは返ってこなかった。
太陽を常日頃嫌っている私は久しぶりに日光を浴びた気がした。やっぱり嫌いだ。強く世の中を照らす。暗い方が落ち着いて気持ちいいのにといつも思っている。
こんな些細ささいなことで自分の存在価値そんざいかちを問うてしまう。大変自分があわれに思えた。
そんなことを思いながら信号を待っていると、反対側に中学の頃によく話しかけてくれた氷川結愛ひかわゆうあがいた。自分はそれを見て動けなくなった。彼女を見てから帰ることができなくなったからだ。中学生の時自分は彼女のおかげで人としていることがいれたからだ。横断歩道おうだんほどうを渡り終えた結愛が言った。
「どうしたの。逆方向だよ。一緒に行こうか。」その優しさが逆に苦るしい。答えないのは余計に苦しくなるから答えざるを得なかった。
「うん、行こう。」と言った。でも、私は今回は足を動かせる気がした。二人でみんなが待ってる場所についた。
 私は喋る人はいなかった。だから、これまでの作品のコメント欄を読んでいた。少しでも増えていたのは一番最初に投稿した作品だった。その作品名は『終える花の名前は。』というものだ。そのコメントを見ていると
「ねえ、神崎さんってその小説好きなの。僕好きなんだよね。」といきなり話しかけてきたのは増田翔太ますだしょうただ。彼は意外と人気で人の興味を持っているものに自分も興味を持ったり、人と話して、人にいろんな作品であったりを広めたりしている。基本私たちのクラスで流行っている本とかは翔太が広めたものだった。その翔太が
私はおどろいて言葉に詰まった。
「やめたりなよ。渚戸惑とまどってるじゃん。」と結愛がフォローしてくれた。
でも、作品って言葉に驚いて、結愛は私のスマホ画面をのぞき込む。
「私もその作品好きだな。」と言った。正確には言ってくれたと表現したほうがいいかもしれない。
「その小説ちゃんと本になってほしいな。」と結愛は呟いた。
私は悩んだ。本屋で買えるようになってしまうとネットで無料で読める意味がなくなってしまう。でも、広めないとみんなの心を救えない。それだけは今でも悩みに悩んでいる。
そのことだけで悩んでいるといつの間にか全員集まった。
 「行くぞ。」と今西くんが言った。私はスマホをしまって、みんなの後ろをついていった。
レストランに着いたら、彼は財布さいふからカードを出した。
「みんないいや、僕が全員分払うから。先言っておいてよ。後に自分の分払うよってお金渡そうとした人怒るからね。」彼今西くんはアニメとかにはよくいるお金持ちの子供だった。でも、中学生の頃は今西君はお金をたくさん持っているからと言って人の上に立とうとせず、自分から企画を計画して、その分のお金を先に払っておく。テレビ業界で言うと敏腕びんわんな企画係担当者とでも言ったらいいのかな。
 私はお腹があまり空いてなかったから一人でホットのコーヒーとマシュマロだけを取って、席に座った。
蒲田大吾かまだだいごはいつも悪気はなく話を振ってしまうことがあるが、たまに空気を変える話をしてくれることがある。その蒲田が
「ねえねえ、神崎さんも一緒に話そう?」と言ってくれた。その言葉は正直嬉しかった。でも、私はあまり今は話したくなかった。じゃあ、なんでだろうとその瞬間しゅんかん頭が真っ白になってしまったただ理由もなく。
なぜか今更いまさらここにきたことに後悔こうかいしてしまった。多分、もうしてた。けど、今まで公開していたのを理解できてないだけだったのだと頭に言い聞かせた。
「今どうしてる。」と結愛が話を私に振る。
「えっと、」本当は話したい。けど、言葉が出てこない。
「じゃあ、高校どうしてる?楽しい?」と聞いてきた。
「うん。楽しい...」と答えた。声が最後になるにつれて、小さくなった。曖昧あいまいな答えだったのかどうかは知らない。けど、自分がいるせいでこうなってしまったそうなったのは私がこう答えたからだ。答えてしまった時には確実に空気が重くなっていったのに気づいた。自分がしてしまったからだ。
 私は今の空気が嫌で今皿の上にあるマシュマロを早く口に詰めて、お手洗いに向かった。
「やっぱり来るべきじゃなかった。みんなに逆に気を遣わせるだけなのに。」私は用を足すために向かったのではない。ただただ自分の泣き顔をさらしたくないからだ。みんなの前で泣いてしまってもみんながその処理で大変になるだけだから。私はお手洗いのところにある鏡に涙に濡れた私の顔が反射している。
「ねえ、どうして私なの。なんで私はこんなに未熟なの。私が私であるのが嫌なようにみんながみんなでいられることが嫌なの。辛いよ、しんどいよ。生きてることが、生きてて感じてしまう何もかもが。みんなとは違って、それが外れてるように感じてしまう。みんな違ってみんな良い。なんて言葉馬鹿みたい。私だけ考え方が違う。何度考えたってみんなと同じような答えにはならない。」そこまで言ってもう一度鏡を見た。
さっきより涙で汚れてしまった私の顔がある。醜く、人からかけ離れた何かを感じた。
「死にたいのに、死ねない。だから、私が嫌になる。気持ち悪いよ、ムカムカした気持ちが溜まってドロドロした感情に変わっていく。」
私はお手洗い場から出て廊下ろうかに座り込んでしまった。私は涙を拭かず、じっと膝を抱えた。この瞬間に死んでしまえたらっていつも思ってた。こんな私を慰めてくれる人なんていないんだって、背中をさすって「生きてるだけで偉いよ。十分渚は頑張ったから。ね、大丈夫だよ。」言ってくれる人なんていなかった。孤独なのかなと前みたいに自分に問うた。でも、やっぱり答えは返ってこない。かばんを開けて、スマホを取り出した。そして、私はスマホで作者ページを開いて、題名欄だいめいらんのところに打ち込んだ『孤独こどくという病気をわずらってしまった僕』と。
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