1 / 34
ここはどこ?私は私。じゃなかった
しおりを挟む今日も今日とていつもの道を歩いて帰宅する。お昼休憩なしは当たり前で、サービス残業は毎日。所謂ブラック企業に勤めている私こと山田絵実は、社会人四年目のストレス過多OLである。
毎日上司には叱責され、新入社員には疎まれ、辞めようとするそぶりを少しでもすると引き留めようとする。
忙しすぎて交際六年目になる彼氏にも捨てられそうである。
本当に辞める準備をしていたこともある。預金がそんなにないので次を決めてからの退職は必須。だけど僅かな休みの日は、溜まった家事と彼氏のご機嫌取り及び睡眠。就職活動をする暇なんてない。
という訳でズルズルとここまで来ているのである。
今日も酷く疲れてアパートの階段を上っていく。部屋を見上げると明かりがついていてため息を漏らした。
彼氏が来ているのである。この彼氏は平日たまに訪れては晩御飯を食べて帰っていく。もちろん作るのは私で、どんなに帰りが遅かろうと待っていて「腹減った」とのたまう。
最近ようやく気付いたけど私のストレスって彼氏も含まれるのでは?
とにかく今日は疲れ過ぎて作る気力が無いので、コンビニ行ってお弁当でも買ってこよう。てか連絡しろよ、合鍵渡すんじゃなかった。と体の方向を変えた瞬間バランスを崩し、そのまま階段から落ちていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
頭が重い。
海の底から体が浮き上がってくるような感覚がして目が覚めた。どうやら生きてるみたい。ここはどこだろう。ゆっくりと辺りを見回すと、恐ろしく広いベッドの上に寝かされていた。しかもピンクフリフリ乙女の天蓋付き。年齢が合ってない趣味な気もするけど病院のお高い部屋かな。もしかしてベッドが空いてなくて、前にお金持ちが使ってた個室に入れられたとかじゃないよね?そんなお金無いのにどうしようと冷や汗をかいてたら、扉からノックの音が聞こえた。
反射的に「どうぞ」と返事をする。声がカスカスである。
「まあまあまあまあまあ!」
慌ただしく入ってきたのは母くらいの年に見える看護師さんだった。制服もメイドさんのようでオシャレである。
「奥様! 気が付かれましたか」
「奥様? 私は山田ですけど」
看護師さんはほっとした表情で傍まで寄ってきた。
「心配しておりましたのよ。一週間も目を覚まさなかったものですから。お加減はどうですか?」
「一週間も? 少し頭が痛いですが他は大丈夫だと思います」
安心しましたと言いながら体を起こしてくれ、水を飲ませてくれた。
「まだ起きたばかりでもありますし、お医者様の診察が終わりましたら消化に良いものをご用意致しますわね」
「はい。ありがとうございます」
私の返事に優しく微笑んだ看護師さんは「旦那様にもお知らせしてお帰りになって頂かないと」と言いながら速足で去っていった。
とても丁寧な言葉使いで、もしかして病院自体がセレブご用達なんじゃ……と思い再び冷や汗をかいた。
程なく先生が来て、異常は無さそうだが3日ほどは安静にしているように、少しでも気になることがあったらすぐに知らせるようにと看護師さんに伝えてから出て行った。
持ってきてくれた温かいスープを飲み、ほっとひと息ついた。誰かが荷物を持ってきてくれたのか確認していると、引き出しの中に花柄ファンシーな手鏡があったので何気なく覗いてみた。一週間寝てたとは言え疲れた顔してるんだろうなと思ってたら……誰だこれ?超のつく美少女がいた。目はぱっちり大きく色はライトグリーン、鼻筋が通り高過ぎずバランスがいい。唇はぽってりしていて可愛いだけでなく、全体的に色気のある顔である。髪の毛は少しボサついているが綺麗なブロンドで、神が造りたもうた完璧な造形美と言えよう。ほんとに誰だこれ?
その時ドタドタと走る音が響き扉がいきなり開いた。そのままベッドに近づく大柄な人物を見上げて酷く驚いた。
(──顔面凶器だ!)
私はそのまま暗い意識の中に飲み込まれていった。簡単に言うと気絶である。
(好みすぎて辛い……)
0
あなたにおすすめの小説
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる