異世界転生したら顔面凶器の公爵に愛されました

牧野きうい

文字の大きさ
14 / 34

強面同盟

しおりを挟む
「アメリア様。あなたにお聞きしたいことがあるの」
「なんでしょう」

 するどい目で見られたが負けてなるものか。静かにエイダ様を見返した。

「リックメラー公爵との馴れ初めを教えてくださらない?」
「は?」

 エイダ様の言葉がうまく呑み込めなかった。何か裏があるのか、それとも純粋に聞いているのかが分からない。

「政略結婚ですが……」
「まあ! でも公爵はアメリア様にメロメロってお聞きしたわよ。アメリア様はどうなの?」

 まさかの普通に恋バナだった。これは答えなくてはいけないのだろうか。見ると質問したエイダ様はもちろんのこと、エミリア様まで瞳を輝かせている。サマンサ様も興味津々のようだ。

「ええと、わたくしもお慕いして……おります」

 最後は消え入るような声になってしまった。恥ずかしさに耐えながらもなんとか言い切った私を、誰か褒めてほしい。

「まああああああ!」

 きゃいきゃいと女子らしくはしゃいでいるのが微笑ましくもあるが、ほんともう勘弁して欲しい。

「でもねアメリア様。公爵はそのう……お顔があれでしょ? それで……」
「変わっていると思われるかもしれませんが、わたくしルイス様のお顔が好みですの」
「まあああああああ! やっぱり!」

 聞けばエイダ様を始め、残りのお二人もその……あまり言いたくないけどつまり怖いお顔が好みらしく、それについて話がしたいとこのメンバーでのお茶会を計画したのだとか。私のことは夜会での件が噂になっており、真偽を確かめるために招待したのだそう。そういえばこの三人とは夜会で会わなかったわね。

「それでね。わたくしたちで強面コワモテ同盟を作ろうかと思って」
「強面同盟?」
「そうよ。特殊な好みで誰にも理解してもらえない。それでも誰かと喋りたい。そしてあわよくば強面の良さを広めたいの!」

 それからはお茶会と言うよりも女子会になり、大変盛り上がった。

「いつも怖いお顔なんですけど、それが崩れる瞬間の可愛さったら──」
「照れている時なんか最高ですわよね」
「たまに出る笑顔が貴重で──」
「わたくしだけに見せてくれるんですの──」

 その後はファッションやインテリアの話になったりして、大変楽しかった。妹がいたらこんな風だったかな、なんて思ったりもした。そして再びお茶の話に戻った時、サマンサ様がおっしゃった。

「うちの領地のお茶もなかなかですのよ。隣国から仕入れたお茶とブレンドして、フレイバーをつけてあるものですの。今度お持ちいたしますわ」

 そういえばこれは内緒にして欲しいのですけど、と前置きしてから声を潜め、改めてサマンサ様が話し始めた。

「隣国といえば、最近怪しげな薬草がこの国に密輸されているらしいんですの」

 小耳に挟んだんですけれどもとおっしゃっているが、つまりは盗み聞きのようである。

「怪しげとは? 毒みたいなものですか?」
「詳しくは分からないのですけど、蔓延したらまずいことになると夫が言っておりましたわ」

 サマンサ様の旦那様は、国境を守る南方将軍でもある。ただその話を聞いても私達にできることはほぼない。情報として頭の片隅に置いておくぐらいしかないだろう。

 最後の話でその場が少し暗くなってしまったが、また会う約束をして帰途についた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。 そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。 毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。 もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。 気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。 果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは? 意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。 とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。 小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

魔王様は転生王女を溺愛したい

みおな
恋愛
 私はローズマリー・サフィロスとして、転生した。サフィロス王家の第2王女として。  私を愛してくださるお兄様たちやお姉様、申し訳ございません。私、魔王陛下の溺愛を受けているようです。 *****  タイトル、キャラの名前、年齢等改めて書き始めます。  よろしくお願いします。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜

hanakuro
恋愛
転生してみたら、そこは大好きな漫画の世界だった・・・ OLの梨奈は、事故により突然その生涯閉じる。 しかし次に気付くと、彼女は伯爵令嬢に転生していた。しかも、大好きだった漫画の中のたったのワンシーンに出てくる名もないモブ。 モブならお気楽に推しのヒロインを観察して過ごせると思っていたら、まさかのヒロインがいない!? そして、推し不在に落胆する彼女に王子からまさかの強引なアプローチが・・ 王子!その愛情はヒロインに向けてっ! 私、モブですから! 果たしてヒロインは、どこに行ったのか!? そしてリーナは、王子の強引なアプローチから逃れることはできるのか!? イケメン王子に翻弄される伯爵令嬢の恋模様が始まる。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...