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【番外編】9.元王様の悩み
しおりを挟む「・・・それを今思考しておりました。取り合えず歩いたら敷地から出られるかなぁと」
すると大きなため息が振って来た。
「言っておくが、ここの運転手も車のナビを見ながら走行する場所だぞ」
「えっ」
「道がランダムになるよう設計されている」
「え、は、へっ!? どどどどどどう」
「君は言わんとしていることは分かる。防犯対策としてやり過ぎたのは深く反省している。でも毎分道が変わるんだぞ? 楽しいだろうてふはははは」
そうだった。この熊人さんが元王だった。
「まるで生きているみたいだろう?」
この熊人さんは毎日毎分毎秒を楽しんでいるように思えた。
「ま、実際は地下装置で盛大に動かしているだけだがな? ゲーム感覚に」
「げぇむ・・・」
僕の大好きな言葉が聞こえた。
「ん、えほん。いいんだぞ? 元王だ。地下兵器ぐらい私の権限でみせてやっても」
兵器? 兵器っつった?
「みみみみ見たいです! いいんですか!?」
「ん、あぁいいとも。ハレムの・・・そうだな、五十番目になるならい・・・」
「なります。分かりました」
どうせこの熊人さんは諦めのタチが悪いタイプだとお見受けしたので、ハレムの一員にはなろう。入ったら入ったで、その事実で満足するタイプかもしれない。
僕はどうせ人形も同然だし。
「!? なるのか!?」
「はい。百一も五十も一緒でしょう。貴方様の真なるお気に入りはトップ十、いや五ですね。それ以外はいてもいなくても同じですから」
「そっ!? そういう、言われは・・・酷い、気がするが・・・」
「あ、これは僕の話ですよ? 他の、きちんとした身分の煌びやかな人達とは違いますから。あくまで、僕個人の話です」
いてもいなくても一緒。
僕には最初から家族なんていなかったんだ。
「・・・君は、何やら歪んでいるな?」
「そうですね、凄くそのお言葉、しっくり来ます」
「こ、肯定されても困るが・・・、まぁ、ハレムの一員になるのだ。私の部屋に来なさい」
「・・・・・・え?」
するりとごく自然に、腰に手が。
「さ、風邪を引く。私の家はこの敷地内にある。おいで」
「え、や、でも」
「アーニャよ」
「はぃ?」
「ハレムに入ったのだろう?」
「え、そ、そうですけどでも」
「なら、そういうことだ。ハレムとは私のものになったということ。私のものに印を付けるのは当然のことだろうて」
「え、いや、ええええええっ!?」
いくら僕でも何を言われているのかぐらいは分かる。
「どっちみち一人では帰れないさ」
この熊人さん!? もしかして確信犯!?
「いやぁ追いかけて良かった。こういう時の為に退路を断つ役割もあるのかこの我が道は。ふはははは」
言いおった、はっきり言ったぞ!?
「ぼぼぼぼぼ僕はっ!」
「ん?」
「そそそそそそういうのは、すっ好きな人としかやりませんので!」
顔が熱い。
何で? 何でこんな僕にその、よ、欲情するのかできるのか!?
「・・・・・・」
反応が返って来ない?
「僕は色気も上品さも可愛げもないただのオタクです! 好きなものはゲームです、あ、ホラー映画も大好きです。なので」
「ほぅ? これまた今までにないハレム員だな」
「でしょう!? だから」
「私の手籠めになれば莫大な財産が手に入るというのに。金に不自由することもなく、ゲームも買い放題やり放題だぞ」
う。凄く魅力的。だけども。
「僕は必要最低限のお金があればいいです。自分の働いたお金でゲームを買いたいんです。そんな財産がどうとか全く興味がないわけではありませんが、惹かれません」
レディアンに腰を抱かれるまま、薄暗い道を進む。彼が歩むと、何故か導かれているかのように道が見える気がする。
「失礼を承知で申し上げますが、その、もしやそうやって相手の方を口説かれていたんですか?」
しかしレディアンは頭を左右に振った。
「や、逆だな」
「? 逆?」
「あぁ。ハレム達が話していたのをうっかり聞いてしまってな」
あれま。
「私は金もあるし顔も頗るいいが、服のセンスが全く皆無の元王、というものらしい」
うっわぁ。
「・・・どうやら、私は皆に好かれ慕われているのだと勘違いしていた。元王という肩書が周りを集めているだけで、皆が求めているのは金だ。私自身には、あまり興味がないようだ」
ううん。王族も、いや元王族も、色々悩みを考えているらしい。
「その、一般人の僕が思うことを申し上げてもよろしいでしょうか」
「あぁ」
「無理もないですよ。貴方は今まで”王”として振る舞って来たんですから。民衆が見るのは、見ることが出来るのは、その貴方の王としての”顔”だけです。だからそれしか知らないんですよ。だって、王様ですよ? ただの僕らのような一般人が、そんな本当の王様の素顔をいつ見れるんです?」
「・・・そ、そう、か・・・」
「そうですよ。自分を見て欲しいなら、ちゃんと一人一人に本心に向き合うべきです。もう、王じゃないんですよ。いつまでその仮面を被っておられるんですか?」
レディアンの足取りが止まる。
「仮面・・・」
この際はっきり言って、帰して貰おう。
「はい。僕は貴方に好かれようとも思って無いのではっきり言わせて頂きますと、その王の仮面こそが、貴方の振る舞いに皆に”私は元だが王様だ。お金を持っているぞ~”って体現しているようなものです」
「・・・・・・」
こ、これは、ショックを受けているのでは。
「元とはいえ王様です。はっきり言われたことがないんじゃないですか?」
「あ・・・あぁ・・・」
これでトドメだ。
「皆が自分を見てくれない? 自分を見て欲しいなら、自分がそう見せるべきです」
「お、おぉ・・・?」
「甘えないでください」
夜風が冷たく吹き荒れる。
よし、これでもう僕の評価がだだ下がりだろう。このクソ生意気な若造に言われて、さすがのレディアンもお怒りだ。
「僕は生意気なんです。いかがでしたか? こんな小生意気な若造にモノ申された気分は? 腹が立ったでしょう?」
「立った!」
「大変申し訳ありませんでした。なので僕はもう家に帰」
レディアンが俺の右手を取って、自身の股間にやる。
「君の言葉に勃った!」
熊人特製らしい、軽い鎧とまでされる帷子をお召しになっているはずなのに、その股間部位が浮いていた。・・・っ、つまり。
立つって、”勃つ”の方?
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