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【番外編】10.王様の言うことは絶対
しおりを挟む「ふんんぬぅ~っ! ぐぎぎ」
いつまで僕の手をその股間に触れさせるつもりなんだっ!? 引き剥がせない! 熊人の力は本当に強いな!?
「先ほども心臓に矢が刺さったが、この私にそんな愛のある言葉を向けてくれる人はいなかった・・・」
愛? 今の何処にっ!?
「手ぇ! 手、放して貰えますかっ!?」
「あ、あぁすまない」
ようやく放して貰えた。
「か、勘違いしないで下さい!? 僕は貴方の怒りを買う為にですねはっきり言ったんです。こんなヒト族に生意気なこと言われて、腹が立たないんですか?」
きょとんと、首を傾げる元王。
「腹が立つ・・・か。すまんな。私はあんまりその、怒る、という感情を感じたことがなくてなぁ」
ピシャーンッ!
青天の霹靂とはこのことだ。
「おおおお怒ったこと、ないんですか!?」
「う? ううぅ~ん、かなぁ」
冷たい風が鼻をかすめる。
「はっくしょいっ!」
盛大に遠慮のないくしゃみを放ってしまった。
「ふ、ふははははは。可愛いくしゃみだな」
「・・・今の!? 何処がですか!?」
ぐいっとまた腰を囲まれた。
「さ、風邪を引く。行こう」
行くんかい。でも、確かに寒くなって来た。
ふと門構えが見えてきた。一体この敷地だけで、いくつの家があるのだろうか。
温かそうな赤いレンガの家に招かれた。そして物凄く広いお宅。
「おかえりなさいませ坊ちゃま」
「あぁ、帰った」
銀髪で眼鏡をかけた年配の男性が深く頭を垂らした。
「坊ちゃま、その方は・・・」
「アーニャだ」
ご挨拶をしなければ。
「初めまして、アーニャ・クロエと申します」
「アーニャ様ですね。わたくしはこのベルモンド家にお仕えする執事、テンバート・レスリーと申します。どうぞ、バートとお呼びください」
「は、はい。バートさん」
「はい、アーニャ様」
何で様付け?
「あ、あの、様付けなんて恐れ多いですから、さん、か呼び捨てで構いませんので」
「! そ、そんな滅相もございません。レディアン様のお連れのお客様でございます故」
「あ、あぁ・・・そうですか・・・」
やっぱり元王、でも王なんだって感じ。
「バート、風呂に入る」
「畏まりました」
「さ、アーニャ、こっちだ」
「あ、はい」
案内されたのは大理石のお風呂場。獅子さんがお口からお湯を出してるアレ。
「入ろうか」
「え」
「? なんだ?」
「いいいいいや一人で入りますから」
「? 二人で入ればいいだろう?」
「!? 何で!?」
「? 何で? 逆に聞きたいのだが。独りだと寂しいだろう?」
「寂しくなんかなっ、ぎゃっ!」
テキパキと服を脱がされた。完全に慣れている! 慣れた手つきだ。
「何をそんなに恥ずかしがっている?」
レディアンに背を向けて蹲った。
「恥ずかしいに決まってるでしょ!? 人前で裸になるなんて!」
「・・・・・・」
無言にならないで欲しいんだけど!?
「うぅ~もぅヤダ帰りたいぃ~!」
「君は・・・」
「ななな何ですかっ!?」
「まことにウブで可愛らしいなぁ」
「はぁっ!? ちょっ」
ひょいっと肩に担がれた。
「さぁ、ここで私は待っててあげるから」
「扉! 絶対に閉めてくださいね!?」
「ふふ、あぁ、するする。体を洗って、湯船に浸かったら呼んでくれ」
「!? 本当に一緒に入る気ですか!?」
何なの? 熊人は皆こうなの!?
「勿論」
即答だし!
「ダメって言っても?」
「あぁ」
「何で!? 何で拒否権ないの!?」
「うぅ~ん、ここは私の家、私の城、つまり、ここでは私が王様だからだ」
「なにそれっ!?」
「王様の言うことは”絶対”だ」
「へへへへへ屁理屈だ! 子供みたいなこと言わないでくださいよ!?」
「はいはい」
レディアンは言うだけ言って風呂場を後にした。
何なの?
あしらわれたし!
ふんっ! どうせ僕はそういう大人の付き合い方を知らない引き籠りオタクですよ!
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