【完結】しろくまニアック!

佐橋 竜字

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【番外編】24.泣き虫アーニャ

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「さてと・・・」
「?」
 レディアンが満面の笑みだ。
「邪魔者はいなくなったことだし・・・」
 嫌な予感がする。
「レ、レディアン? 仕事は?」
「あ、あぁ、今日の所は終わったかな?」
「レ、レン様は? 確か、ご一緒でしたよね?」
 む。
 そんな顔をされた。
「・・・ゲームの続きが気になって仕方が無いと、君を連れて来いと言われてここへ来たんだ」
「! そうだったんですか! いやぁ僕も気になってて! まさか、そうですか~、バルド・・・社長も僕の動画をぐふふ、嬉しいなぁ」
「むむむっ!」
 もはや声に出ていますよレディアン。
「私のおかげであることを忘れてはいないかアーニャよ!」
「ソウデスネ」
「むっ! ご、ご褒美! は!?」
「・・・はい?」
「褒美があってもいいだろう?」
 はて?
「まさかニルエのツガイが、君との繋がりがあるとは思っていなかったけれど、その縁を結んだのは紛れも無くこのわたっ、ボクだ! これからの君の大好きなゲーム実況と言う仕事にも火が付く。ね? ボクのおかげでしょ?」
 おかげでしょって。いい大人が。
「・・・ふふ」
「??? アーニャ?」
「な、何ソレ、ふふ」 
「なっ、何だよアーニャ?」
「ふふ、可愛い」
 あ。
 言った時には既にお寿司。・・・あ、間違えた、遅し。
「ふぎゅ」
 もうレディアンの厚い胸の中だった。
「あぁーっ! ムラムラするーっ!」
「はいっ!?」
「可愛いのは君でしょ!? はぁ、早く閉じ込めて交尾しまくって孕ませたい」
 危機感を覚える。
「心の声ぇ! 駄々洩れです! まず考えてから言葉をチョイスして貰えますかっ!?」
「あーっ! いたいたーっ!」
 ハッ! この声は!
「チッ」
 僕の上から舌打ちが振って来た。すぐにレディアンが僕を解放。
「レン様ぁーっ!」
 レン様がギロリと、レディアンに睨みを効かす。
「レディアン?」
「・・・はい」
「俺はアーニャを連れて来てって、それだけのお仕事なのに、なのに何でこんなに遅いのかな? 待ちくたびれのびれの助だよ」
「・・・ちょっと、色々あってだな」
「んー? 色々? 色々って?」
 レン様の笑顔が怖いので。
「あ、レン様、実はですね・・・」
 僕が間に入って、先ほどの出会いやらを説明申し上げた。
「へぇ~・・・」
「そうなんですよ。レン様、ゲーム、ゲームしましょ!」
「そうだね、しよう。しよう、でも」
「ヒッ」
 レン様が拳をガッと、決め込んだ。
「ど~して熊人は寝てる間に悪さをするのかな? 結果オーライかもだけど、ニルエ君は受胎の実を仕込まれただぁ? 熊人王妃代表として、その、バルド、さん? 後で来て貰おうかな? ねぇ? レディアン?」
「わ、わ、わかりまひた・・・」
 あのレディアンが耳と尾を縮めて、震え切っている。
 レン様が僕の手を取る。
「さ、ゲームの続き、しようか」
「はい」
「ミルフィオリ終わって、次のゲームさ」
「はい」
「ニルエ君も誘おうか」
「! はいっ、是非!」
「そしたら嫌でも社長殿が来るもんね?」
 あっ、察し。
「あ、あはは・・・。ソウデスネ・・・はい」
 怖い沈黙が流れたけれど、また僕達はゲーム家に戻った。
「あれ?」
 既にモニターがついており、画面はもうミルフィオリの一時停止状態だった。
「ごめん実は・・・」
 なんと。
 いつの間にか、レア様は動画チャンネルを開設していて、ゲームの続きが気になり過ぎて夜も眠れず、こっそり少し配信してしまったのだという。確かに、動画のチャンネル開設や配信など、必要注意事項諸々の説明はしていたけれど。
「ぃや、さすがレア様・・・。行動力にびっくりです」
「本当は一緒に最初からアーニャとするつもりだったけど、配信予告時間になっちゃったし。少し始めちゃったけど、んもぅほんとレディアンが中々アーニャを連れて来ないからさ、今休憩中ってことでミュートにしてるよ」
「なるほど」
「途中参加だけど、俺の初配信のゲーム実況、来てくれる?」
「いいいいいいいんですかっ!?」
「当然じゃん」
 涙がまた出そう。
「こ、光栄ですレン様」
 レン様がにかっと微笑む。
「アーニャの動画配信のきっかけがバルド社長なら、俺のきっかけは」
 ツンっと額を指で突かれた。
「アーニャ、君の動画なんだから」
 ぶわっ。
 ダメだ。色んな汁ぅが溢れて来た。
「アーニャって、泣き虫なんだね」
「うぅ・・・、し、あわぜでずうぅ・・・」
 本当に。
 本当の本当に。
 バーチャルライバーとして、自分を見て、そんな自分と同じことを始めようと思ってくれることは、凄く嬉しいことだと思う。
 だって、同じことをするってことは、僕に、惹かれたってことだ。つまりそれは、僕がその人のお手本であり、僕をいつも見てくれているということ。だから、僕は、僕のままでいいんだ。
「ほら、泣いてないでやるよ」
「ふぁい」
 僕は今、凄く幸せである。
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