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3.捕獲された桃
しおりを挟む何故脱衣所に一緒についてくるお主。
「っつーかなんで入ってくんのよ!? 男嫌いじゃなかったっけ!? 男の裸体見たいわけ!?」
「えー、ちと確かめたいことがあって」
「はぁ?」
「あぁ、気になさらず入った入った」
「気にするわ!」
まぁ? 先生は大の男嫌いだっつーことで、俺の貞操の危機は無さそうだし? 豪快に脱いでお風呂の扉に手をかけようとした、その時だった。
「ぎゃっ!?」
いきなりもんずと尻を鷲掴みされた。
「あーっ! やっぱりあった。しかもこんな所ぐはっ!」
思い切りイケメンの顔を蹴り上げてしまった。後方へ吹っ飛ぶ先生を侮蔑を込めた目かつジト目で見下ろしてやったわ。自業自得。仕方が無い。
「男嫌いだが興味を持った男の尻は揉むのかこの変態教師め!」
「うぅ・・・いい、蹴りだ」
マゾか! マゾなのか!?
俺の渾身の蹴りが効いてない・・・だと!?
「いやごめんごめん。男嫌いなのは一般人の話。桃の男はなくもない」
「物好きはあんたじゃねぇか変態!」
前言撤回。俺の貞操の危機!?
「いや君の足とお尻、下半身は好みだけど。顔はタイプじゃないから安心して、勃たないからさ」
最低なクソ男じゃねぇか。まぁ、勃たれても困る。
「もういいよ何でも。マジ風呂入ったら帰るから」
「あ、あぁ、ゆっくりどうぞ」
「すぐに出ます」
いっちょ前に檜風呂で正直凄くいいお風呂、むしろ温泉だった。こんな風呂に毎日入れるなんて、羨ましい大人だ。
「はぁ~・・・どうすっかなぁ」
外へ来たはいいものの、お金が無いと何も始まらない。桃源郷では鬼かもしくは桃同士で結婚し子供を作って繁栄させていくという人生のシナリオ。俺にはそれが嫌だった。決められた人生のようで自由がないと思った。むしろ、出来損ないで良かったと思っている。ここでは俺が当たり前だし、普通に生きていける。でもやっぱりお金だ。
風呂を出ると、事もあろうに求人雑誌を見ていた先生が。
「オムライス、凄く美味しかったよ」
胡散臭い言い方だ。
「いいお湯でした。帰りま」
「バイト探してるのかい?」
・・・す。最後まで言わせろや!
「そうですね。貧乏学生には金が必要なんで。大丈夫です」
先生から雑誌を奪ってエコバックにしまった。
「帰ります。扉」
む、と今度は口をへの字に曲げる。
「君はオレのことが嫌いなのか?」
「そうですね」
「即答!? 何でだい!? 鬼だからか」
「他に理由があるとしたら後初対面で慣れ慣れしいとか、尻触られたとか」
「男が男の尻触っても減るもんじゃないでしょう」
こいつ、開き直りやがった。このセクハラ野郎。正論だから言い返せねぇ。あぁ嫌本当に嫌。こんな大人にならないようにしよう。
「はぁ、そうですね。でも俺は普通の一般人ですから。もう揉まれることはないだろうし、監視も終わりですね」
「ぃや?」
ん? いや?
「厳密に言えば君は真なる桃太郎の先祖返りだ。その証がお尻・・・まぁ太ももの際どい付け根にあった」
やっぱり「証」のことは知ってるんだ。桃太郎印にも種類があって、一般なものはただの桃の絵だけなんだけど、先祖返りと呼ばれる希少な者は桃の絵に『桃の花』が描かれている。そう、俺の印だ。でも何の力もないし不作とされている。そういうこともあるんだ。
「君のことは報告しないといけなくなった。あぁ、こちらの桃太郎協会にね」
何そのダサい協会。
「鬼癒しに先祖返りが生まれたとなると、鬼殺しも君の血欲しさに狙って来るだろうね」
「俺を?」
「あぁそうだよ。本来溢れ出るはずの桃のフェロモンはそのブレスレットによって抑えられている。それはただのブレスレットじゃないよ」
「ふぇ? え? 何ソレ知らねぇし。このブレスレットが?」
ばあちゃんは何も言わなかったけど。
「材質は間違い無く木。となると昔の鬼の木か。調べる必要があるなぁ」
嫌な予感しかしない。
「えと、あの、扉・・・ひっ!」
扉があったはずの壁に壁ドンされた。
「監視レベルレッドだ。ここで会ったが百年目。帰すけどもう離せないね」
ううううう嘘でしょーっ!?
ここで会ったが百年目! とばかりな捕縛ムンムンオーラで捕まってしまった。
はぁ・・・来るんじゃなかった。
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