桃李し男は鬼愛し

佐橋 竜字

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11.俺の体で何やってんスか!?



『・・・君、誰だ?』
「えぇ? どうしたの突然」
『・・・董一郎はどうした?』
「ふふ、何を言ってるの先生?」
『バレバレなんだよね』
「・・・・・・どういうこと?」
『君と彼じゃ香りが全く違う』
「嘘よ。同じ一卵性だもの」
『いいや。似ても似つかないね。少なくとも、彼はこんなまだ会ったばかりの男に馬乗りになって腰を振る卑しい青年ではないよ』
「・・・ふぅん。萎えた?」
『そのようだね。彼の香りの方がオレの息子は反応するようだね』
「でも、男だよ? 貴方の大嫌いな」
『そのはず、なんだけどね。悪いけど、全然気持ちよくなくなった』
「・・・・・・でも、この体がいいんでしょう?」
『さぁ? それはどうだろう』
「何それ。はっきりしない男ね」
『美女に口説かれてるのは分かるんだけど。君は誰か分からないし』
「夢で会ってるわ」
『・・・そうか、やっぱりか。聞いたことのある艶のある声からして美女だなぁと思ってたけど。夢の君か』
「そう。ねぇ、桃源郷に会いに来て。そうしたら、あたしの本物の体を抱かせてあげる」
『うう~ん、実に魅力的なお誘いなんだけどなぁ。オレはそっちにはいけない種類の鬼だから』
「大丈夫。あたしなら、貴方を迎えることができる」
『・・・それくらい君は地位が高いのかな』
「えぇ。桃巫女だもの」
『・・・なるほど。まさか巫女自らコンタクトを取って来てくれてたなんて』
「あたし、貴方が気に入ったの。知ってる? あっちでは多夫一婦でもいいの。貴方次第では別に他所の女とも関係を続けながら、あたしと婚約できるのよ? 貴方には、いい話じゃない?」
『なるほど。また魅力的だね。考えておこうかな』
「考えておく? いいえ、貴方は絶対にこっちに来ざるを得なくなるわ」
『・・・どういう意味かな』
「ふふ、そのままの意味よ。じゃぁ、あたしの可愛い可愛いお兄様を返してあげるわ」


ーねぇ、お兄様?


「っ!」
 見慣れない和室で温かい敷布団。なんか夢を見ていた気がするけど、忘れた。
「あれ? えっと・・・」
 そうだ。槐の木のブレスレットを作りに、友樹の家にお邪魔して。何でか先生に噛まれたんだった。けれど噛まれた跡が綺麗さっぱりない。あれも夢? 何処からが現実だ?
「ぅえ~? 皆何処~?」
 布団から出ると、夕陽をバックに障子に人影が現れた。この影の大きさ。
「あ、友樹か!?」
「あぁ」
 ? あぁって。それに、なんか影のご様子がおかしい。
「入って来ないのかよ」
「・・・開けられない。開けてくれ」
 開けられない? 
「はぁ? なんで」
「いや、開けるな!」
「は」
「いや開けろ! 開けるんだ!」
「は? どっちなんだよ」
 何一人劇団やってんだ?
 スン。
 襖越しに香る知っている香り。これは。
「陽菜っ!?」
 襖を開けると、友樹が立っていた。
「なんだ・・・やっぱり友・・・」
 気が付いたら、敷布団に組み敷かれていた。
「ゆ、うき?」
「グルルルルルル・・・ガァァ・・・」
 友樹の顔が狼に変わる。もしゃもしゃしたごわついた体毛が生え始める。
「おい、友樹おまえどうし」
 俺の両足を左右に強引に広げ、股間に昂るモノを押し当てて来る。
「友樹!? おまえ何やっ」
 スン。
 この香り。
 間違いない。陽菜の香りだ!
「友樹! しっかりしろ馬鹿!」
 焦点があっていない。
「あっ」
 パンツを破かれ、友樹のペニスが股に。
「友樹! 馬鹿友樹ーっ!」
「ガゥルルルルル」
 ダメだ。理性がない。
 何で、どうしたらいい。
「ゆぅ・・・」
 浮かんだのは。
「せ、せんせぇーっ!」
 先生先生先生ほんと助けて先生!
 何が起こったのか分からなかった。俺の影から、巨大な黒い拳が現れた。
「ガフッ!」
 友樹がもう何度目だろうか。また吹っ飛んで行った。
「せ、先生・・・?」
 巨大な黒い手が俺の影に戻る。
 そして、ざざっとノイズが走ったかのように、世界が揺らぐ。
「へ?」
 開いたままのはずの襖が、いつの間にか閉まっていた。さっきとまた雰囲気が違う?
 そしてまた豪快に障子がスパンッ! と開かれた。
「董一郎!」
 先生の顔を見たら思わず脱力した。俺のヒーローキター。これで勝つる。
「せ、先生~・・・」
「大丈夫か」
「はは。ありがと先生。ちょっと状況分からないけど、おかげで・・・はは、セーフ、だった」
 男に、しかも友達に襲われるとか笑えるわ。しかも怖かったとか、あはは、震えてるし恥ずかしい。女じゃあるまいし。
「・・・董一郎」
 先生に覆い被さられた時は全然怖くなかったのに。
「董一郎?」
「あっ、ごめん。さっきの手、先生?」
「? 手?」
「俺の影から出た、黒い手」
「・・・・・・」
 先生が顎に手を置いた。
「逆に聞きたい、何で『手』?」
「へぁ?」
「普通、オレが顕現するんだけどなぁ」
「? よく分からんけど、先生が助けてくれたってことなんだよな?」
「え、あ、まぁ。なんで・・・手・・・手・・・? 手・・・」
 よく分からないけどしつこい。
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