桃李し男は鬼愛し

佐橋 竜字

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21.愛が勝つって、マ?

 
 故郷、原点でもある桃源郷を離れて都市への進出を試みた桃達がいた。彼らは鬼との共存を信念に活動を続けた。そうして誕生したのが。
 桃月院。
 噂で聞いたことがあるけれど、まさか鬼にまで関与してるとは思ってはいなかった。あくまで自己防衛の手段として鬼癒しをしてるのだと考えていた。
「・・・懐かしい・・・」
 俺の部屋。必死に勉強した机に参考書、お世話になったベッド。埃がないことから、誰かが掃除してくれていたようだ。もうこの部屋も無くなっているものだと思っ。
「へぇ~」
「ぅわっ!?」
 いきなり背後から声がしたと思ったら。
「ここが董一郎君のお部屋?」
 本当に鬼は背後を取るのが上手いな。どうたら玲さんに後を付けられていたようだ。まぁ、粗方来られない先生の代わりだろう。
「そうです。まだ前のままでした」
 いきなり玲さんはベッドの下やら、襖を開ける。
「エロ本は~?」
「・・・ありませんありませんから!」
「何処に隠してるのよぉ」
「どぉからぁ! 無いんですってば!」
 玲さんはゆっくり襖を閉めた。
「ねぇ董一郎君」
「? はい」
「統吾のこと、何処まで知ってる?」
「何処まで・・・?」
 難しい質問だ。答えられるものが少ない。
「最近は、権力のある名家なんだなってのと、ついさっきお兄さんがいるのを知ったくらいですかね」
「ふふ、そうよね。あいつ、何も言わないでしょ?」
「俺も、知らなくていいんだと思ってました。だけど、先生は勝手に俺達の関係を進めてくから・・・」
 気が付けば婚約。この短期間でどうしてこうなった?
「お互いのこと、何も知らないのに。先生は・・・勝手です」
「そうよねぇ。早急っちゃ早急なんだけど。そうせざるを得なかった、ってのが言い訳なんだけど」
 この言いぶり。
「玲さんはその、知ってるんですか? せ、先生の・・・事情といいますか」
 玲さんは堂々と俺のベッドに座った。
「純血種の鬼はね、本来鬼同士での婚姻が義務付けられていたの。でも桃の進出で、鬼の攻撃特製が緩和されて、人間への被害が納まっていて、鬼癒しを施されたい鬼達が増えた。普通の人間達と普通に過ごせるように」
 普通に、普通の人間として。俺も望んでいたこと。
「でもね、頭の固いじじ共と、桃を毛嫌いする鬼はいてね、断固桃拒否って、純血を汚すなと、真純血派なんてものができちゃって」
 桃思の代表が鬼頭、つまり玲さんだ。
「・・・先生の家が」
「そう、真純血派。当の本人は他人に、桃にも興味が無くて。ただ、桃太郎の先祖返りには興味が少しあったみたいよ?」
「? なんでですか?」
 玲さんは苦笑する。
「また怒らないで欲しいんだけど。聞きたい?」
「怒りませんよ。先生の最初の俺に対する扱い、何だか知ってます? 護って欲しかったらセフレ以下の食事、扱いですよ? 今更です」
「・・・えっと、それは、その・・・」
「・・・?」
 何。鬼はそんな扱いが常識なのか!?
「先祖返りは鬼の力のブースター、増強させる力がある。桃としての癒しの力の質と量、器が大きい。それ故に鬼に大きな影響を与えるの」
 そういえばまどかに俺がブースターだとか言ってたっけ。つかなんで本人の俺が知らんし。
「先生が力を欲しがっていた、と?」
「あいつのお兄さん、正司さんって言うんだけど。あの人が本当に強くて。統吾も十分強いんだけど、何だろう? 何が強いっていうのかなぁ、兎に角強いのよ」
 まぁ、兄弟あるあるだな。
「お兄さんに勝つために俺を探して利用したということですね」
「あいつも言ってたでしょう? きっかけは不純な動機だったって。今は、指環が物語ってるし」
 指環・・・ねぇ。
「指環の素材が鬼の角? 性感帯? 言わば幼少時の鬼の第二のペニス? ・・・恥ずかしくて付けたくなくなりました」
「・・・ぅっ。お、お願い付けて上げて。桃に愛想をつかれた哀れな鬼のレッテルが貼られてしまうの」
 何だそれ。
「お願いぃ~、それだけは本当に可哀想だから止めたげてぇ~」
「そっ」
 そんなに!?
「鬼の力は桃から教えられた愛の力の方が何よりも強いの。それを知った以上、鬼は桃には勝てない逆らえない」
 なるほど。だから桃月院は鬼に干渉できるのか。
 先生の『愛して欲しい』って。
「・・・桃が鬼以上に愛したら、その鬼は強くなれるんですか?」
「えぇそれはもう。それで、わたしは第二にまで昇りつめたものぉ。そうよねぇ? 子供が出来ちゃうくらいまどかに愛されてるのよねぇわ・た・し♡」
 つまり鬼頭が玲さんの代で強くなったわけで、昔から強いわけではなかった?
「鬼倉は元祖鬼の力が強いから。でも今のままじゃ、わたしが勝つわね」
「えっ」
 玲さんがウインクしてみせる。
「誰かさんが愛してあげなければ、ね?」
「ぐ」
 コンコン。
 扉がノックされる。
「はーい」
 扉を開けたのは、お久しぶりの茶髪ツンツンヘアのヤンキー鬼塚さんだ。
「鬼塚さんっ!?」
「ちーっす、おひさ」
「鬼塚の。貴方もここへ来ていたの?」
「あぁ、密子と一緒にここへ呼ばれてな」
「そう」
「うちの妹がほんとすいません」
「ふはっ。ま、振り回されるのは慣れてるからよ」
 チャライ見かけに寄らず、懐が大きい。
「玲、統吾が呼んでる。こいつはオレっちが見てるからよ」
「統吾が? えぇ、お願いね」
 玲さんが俺にウインクをして立ち去る。
「さてと」
 鬼塚さんが俺に歩み寄る。正直この人と二人切りは気まずい。
「先生も反省した頃かな? 俺達も行きましょ・・・」
 行こうとした俺の腕が掴まれた。
「まぁまぁ」
「? く、くろづ・・・」
「オレっちのお嬢がおまえさんに会いたがっててよ」
 鬼塚さんのお嬢?
 ふとバタバタと騒がしい足音が聞こえだす。
「え」
 俺と鬼塚さんの下に何やら怪しげな光が光出す。
「え、え」
「ちょっくら誘拐、されてくんね?」
「・・・・・・へっ!?」
 ゆゆゆゆゆ誘拐っ!? こんな堂々と!?
「董一郎!」
「せっふぐ」
 口を押さえられた。先生が物凄く睨んでいる。今にも襲い掛かりそうだけど苦虫を噛んだ表情だけだ。来られない事情でもあるのか。
「んじゃーなぁ統吾! こっちの姫さんによろしくー☆」
 光が眩しくて見えなる直前、先生の焦った表情を見た。
「は~最高。煽るの楽しぃー☆」
「ふがが!」
 煽るな! と俺は言った。
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