【完結】私たちの今

MIA

文字の大きさ
上 下
7 / 37
クールな俺が変わる時

しおりを挟む
翌日、学校へ行くと教室の中は異様な空気に包まれていた。

何人か目を腫らした女子の姿もある。
口数が減り、暗い表情をした奴らが声を潜めて会話する。

ー昨日のさ…。ー
ーでも俺ら関係なくない?ー
ーってか、悪いの結城さんたちじゃん。ー
ー加藤さんも加藤さんじゃない?ー

そんな声を聞きながら、チラッと加藤を見やる。

いつも姿勢良く座っている彼女が、今日は背中を丸めて俯いていた。

加藤、今日来たんだ。

あんな事があったのに、加藤は休まなかった。

昨日あれから大人達は学校へと集まった。
結城の親を筆頭に、みんなで謝罪をしたという。
それから、子どもたちのSNS問題。
クラスでの状況改善を、何時間もかけ話し合ったようだ。
帰宅した母さんに、これでもかと言うくらい説教されたのは、きっと俺だけじゃない。

結城は泣き腫らした顔で白井に必死に文句を言っている。

先生から話があるということで、今日はなるべく欠席しないように言われていた。

加藤は休んでも良かったんじゃないか。
だけど、加藤はわかってるんだ。
ここで休んだら、何も変えられないってことを。

加藤はきっと、俺たちよりもずっとずっと、大人に近づいている。
凄いよ。
お前は。

そうして、暫くして藤四郎が教室へと入ってきた。

一斉に静まり返る教室。
誰もが何も言わず、自然と席につく。

藤四郎の表情もいつもと違った。

いや。
藤四郎だけじゃない。
全てが。
いつもと違うこの教室の空気そのものが、ことの重要さを物語っている。

改めてわかる。

俺たちは、想像以上にとんでもないことをしてしまった、と。

もう自分は関係ない。
なんて通用しない、と。

沢山の大人たちが動いて、この問題に向き合っている。

誰が。
じゃない。
これは俺たち全員の責任で、その後始末を大人たちがしてくれているんだ。

ー誰も、誰かに知らせないことでこうなった。ー

父さんの昨日の言葉が蘇る。

もしも、誰か一人でも。
あのクラスチャットを見ていた誰か一人でも、親に、先生に、こんなやり取りがあったと。
そう伝えることが出来ていたら…。

加藤がこんなにも深く傷付くことを防げたかもしれない。

俺が。
あの時の加藤の言葉を、大人に伝えていたら…。

こんなことが起きるよりも先に、どうにかなったかもしれない。

大人なんて、結局何もできない。
そう決めつけて、勝手に自分たちだけの問題にして。
しいては加藤自身の問題だと、見て見ぬふりをし続けた。

いつか、何とかなる。
いつか、どうにかできる。
そうやってタカを括っていた。

その結果が、これだ。

何て浅はかで、幼い。
今の俺たちは…。

どんなに背伸びをしても、やっぱり、子どものままだ。
しおりを挟む

処理中です...