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クールな俺が変わる時
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藤四郎がクラスを見回すと、加藤に視線を止め、静かに口を開く。
「加藤。今日は君にとってかなり辛い時間になってしまう。それでも先生は君にもいて欲しい。勝手な願いを押し付けて済まない。」
「大丈夫です。」
そうハッキリと答える彼女は、今どんな顔をしているのかはわからない。
それでも、その声からは強い意志がひしひしと伝わってきた。
藤四郎は一つ頷くと、改めてクラス全体へと視線を向ける。
「みんな、お家の人から話は聞いているね?それを踏まえて。先生は、今回の件で加藤に『謝れ』とは言わない。」
突然の言葉に、俺たちは息を飲む。
「先生が謝りなさいと言ったら、君たちはきっと加藤に謝るだろう。だけど、それは心からの謝罪じゃない。そうやって、上辺だけで片付けて済むことじゃない。これから君たちに、先生は伝えたいことがある。それを聞いて、心が少しでも揺れたなら。自ずと自分が取るべき行動が見えてくるはずだ。」
そう前置きをすると、藤四郎は一つ、息を吐き出した。
「もしも。加藤が君たちのせいで、死んでしまったら。君たちはその責任をおえるか?」
俺は思わず加藤を見る。
みんなも同じように、加藤に視線を送る。
明らかに動揺する俺たちとは別に、加藤だけがジッとその言葉に耳を傾けていた。
「親御さん、ご親戚、加藤を大切に思っている全ての人たちから一生憎しみを受け。この先、高校、大学、社会人と死ぬまで罪悪感という十字架を背負い。自分の人生と引き換えに罪を償い続け。それでも尚、許されない事を受け入れる。その覚悟はあるか?」
ザワつく教室。
戸惑う俺たちを置き去りにして、話は続く。
「良いか。これは大げさな話なんかじゃない。一歩間違えたら、現実になりえる話なんだ。君たちが、何も気付かず。何も考えず。この先もずっと同じようなことが繰り返されたら、それでも大丈夫だと誰が言える?」
突然、一人の女子が泣き出す。
それからまた一人、また一人。
俺の顔も、きっと今青ざめているだろう。
それほどまでに、藤四郎の話は衝撃だった。
ー加藤が君たちのせいで死んでしまったらー
その言葉が刃のように心に突き刺さる。
加藤が親に助けを求めてくれたから、今、彼女がここにいる。
もしも、誰にも言わず。
一人で戦い続けていたら?
考えて、背筋が凍る。
ーキツイに決まってるー
あの時の、彼女の泣き顔と声が頭をよぎる。
案外気にしてないのかも。
直前まで呑気にそう思って、助けようとしない自分を正当化させた。
中途半端な同情を、優しさだと勘違いしていた。
いつだって堂々としていた加藤が見せた一瞬の隙。
違う。
もう、あの時にはすでに限界ギリギリだったんだ。
今はただ。
加藤がここにいる。
その事実だけで、とにかく思いっきり泣きたくなる。
「加藤。今日は君にとってかなり辛い時間になってしまう。それでも先生は君にもいて欲しい。勝手な願いを押し付けて済まない。」
「大丈夫です。」
そうハッキリと答える彼女は、今どんな顔をしているのかはわからない。
それでも、その声からは強い意志がひしひしと伝わってきた。
藤四郎は一つ頷くと、改めてクラス全体へと視線を向ける。
「みんな、お家の人から話は聞いているね?それを踏まえて。先生は、今回の件で加藤に『謝れ』とは言わない。」
突然の言葉に、俺たちは息を飲む。
「先生が謝りなさいと言ったら、君たちはきっと加藤に謝るだろう。だけど、それは心からの謝罪じゃない。そうやって、上辺だけで片付けて済むことじゃない。これから君たちに、先生は伝えたいことがある。それを聞いて、心が少しでも揺れたなら。自ずと自分が取るべき行動が見えてくるはずだ。」
そう前置きをすると、藤四郎は一つ、息を吐き出した。
「もしも。加藤が君たちのせいで、死んでしまったら。君たちはその責任をおえるか?」
俺は思わず加藤を見る。
みんなも同じように、加藤に視線を送る。
明らかに動揺する俺たちとは別に、加藤だけがジッとその言葉に耳を傾けていた。
「親御さん、ご親戚、加藤を大切に思っている全ての人たちから一生憎しみを受け。この先、高校、大学、社会人と死ぬまで罪悪感という十字架を背負い。自分の人生と引き換えに罪を償い続け。それでも尚、許されない事を受け入れる。その覚悟はあるか?」
ザワつく教室。
戸惑う俺たちを置き去りにして、話は続く。
「良いか。これは大げさな話なんかじゃない。一歩間違えたら、現実になりえる話なんだ。君たちが、何も気付かず。何も考えず。この先もずっと同じようなことが繰り返されたら、それでも大丈夫だと誰が言える?」
突然、一人の女子が泣き出す。
それからまた一人、また一人。
俺の顔も、きっと今青ざめているだろう。
それほどまでに、藤四郎の話は衝撃だった。
ー加藤が君たちのせいで死んでしまったらー
その言葉が刃のように心に突き刺さる。
加藤が親に助けを求めてくれたから、今、彼女がここにいる。
もしも、誰にも言わず。
一人で戦い続けていたら?
考えて、背筋が凍る。
ーキツイに決まってるー
あの時の、彼女の泣き顔と声が頭をよぎる。
案外気にしてないのかも。
直前まで呑気にそう思って、助けようとしない自分を正当化させた。
中途半端な同情を、優しさだと勘違いしていた。
いつだって堂々としていた加藤が見せた一瞬の隙。
違う。
もう、あの時にはすでに限界ギリギリだったんだ。
今はただ。
加藤がここにいる。
その事実だけで、とにかく思いっきり泣きたくなる。
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