【完結】私たちの今

MIA

文字の大きさ
上 下
32 / 37
不器用な私が描く未来

しおりを挟む
翌日。
学校へ行くと、有紗と莉月は仲良さそうに笑い合っていた。

何度見てもその光景に慣れない。
自分だけが取り残されたような、そんな気持ちになる。
それでも。
私も結局は何事もなかった顔をするのは、それが正解だと知っているからだ。

「おはよ。」

二人に声をかけると、莉月が話し出す。

「りんりん聞いてー。アイドル、ママにめっちゃ怒られたぁ。芸能事務所じゃなくて高校行けってぇ。」

えーん、と泣き真似をする莉月の頭をよしよし。と撫で、そっと有紗を見やる。

有紗と目が合うと、こっそり。

ーぶりっ子。ー

声にならない言葉を口だけで表す。

莉月のこういうところが、有紗の神経を刺激しているのだとわかる。

「おは。」

後ろから真由美の声。
気だるそうに挨拶だけを済ますと、さっさと自分の席へ着く。

「うわ。機嫌悪…。」

有紗は嫌な顔をしたものの、真由美のそれは今に始まったことではない。
そして、これが原因で真由美の事を悪く言う。ということもこれまでにない。

自分の言動に素直な二人。
だけど、一方は許されず。一方は許される。
この違いは何だろう。

進路を考えなきゃいけないのに。
今の私の頭の中をしめるのは友達のことばかり。
小学生の頃だって同じような事はあったのに、あの頃よりもずっとずっと敏感になってる自分に戸惑う。

先生が教室に入ってくると、それぞれが自分の席へと着きだす。

有馬の横を通った時。
チラッと見えた進路のプリント。

ーゲームプログラミング専門学校(通信教育)ー

通信?
有馬、学校行かないんだ?
やっぱ…、学校楽しくないんだな。

私は今の有馬の置かれてる現状に、妙に納得をした。

1年の頃はそれこそ本当に一人ぼっちだったけど、クラス替えをしてからは気の合う友達ができたらしい。
それでもクラスからは『陰キャグループ』として嫌煙されている。

小学校の頃の栄光を知ってるいる有馬。
この違いが苦しくないわけがない。

だって、私はそうなりたくないから。
今も必死に自分を演じている。

明るく、優しく、ノリが良い、私。
彼女たちに相応しい自分でいれば、群れから追い出されることはない。

有馬みたいに、なりたくない。

そう思ってハッとする。

私。
今、何を思った?

自分の心の汚さに軽いショックを覚えつつ、今日も一日が過ぎていく。

何もなく、穏やかな一日。
授業を聞いて、休み時間に友達と戯れる。

これで良い。
自分を主張せず、周りに合わせることができれば。
それだけで、この中学校という戦場は無傷で過ごせるのだ。

だから、これで良い。

誰に問いかけるわけでもなく、私は私の心にそっと言い聞かせる。
しおりを挟む

処理中です...