【完結】私たちの今

MIA

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不器用な私が描く未来

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私は進路のプリントに、射程圏内の高校を書き込む。

専門。
行ってみたいな。

趣味としてではなく、仕事として活かせる技術を学んでみたい。

だけど、そしたら…。

そこまで考えると頭を振る。

今は良いか。

私は思考を無理矢理追いやりスマホを手に取る。

メールを知らせる光の点滅。
有紗だ。

嫌な予感がしつつもメールを開く。

ーまじでリツ、ムカつくー

やっぱり。
こうなるだろうと予想はしていた。

有紗が莉月を良く思ってないことを知ったのは、3年に上がってすぐだった。
2年で同じグループになってから、そんな素振りを一度も見せたことなかったのに。
突然、私にポロリと零した気持ち。

その冷えた感情を怖い。
そう感じた。
私はそれを悟られないように、控えめに同調することで精一杯だった。

それ以来、莉月の言動に何か思うたび。
こうやってメールをしてくる。

アイドル発言が爆弾だろうか。
何が原因か、理由も書かれていない無機質な文章は、私をやたらソワソワさせる。

返信しなきゃ。

ーわかる!ー

思ってもみない言葉を打ち込み、感情を失った表情でスマホを見つめる。

暗くなった画面に映る自分の顔を見て深いため息が出た。

何て顔してんだ、私。

人間関係って本当に疲れるな。
でも。
一人にはなりたくない。

私も、こうやって言われてるのかも。

そう思うと怖くてたまらなくなる。
だから、その不安にそっと蓋をしめて。
全てを無かったことにした。

中学校という戦場は、あと少しで離れることができる。
でも、次は高校。
大学?専門学校?社会?

私たちは、いつまで戦わなくちゃいけないんだろう。

っていうか。
私は一体、何と戦ってるんだろう。

友達の表と裏の顔。
先を決めなきゃいけない分岐点。
取り繕わなきゃいけない自分。

子どもと大人の狭間。

いつまでも子どもでいたい気持ちと、早く大人になりたい気持ち。
甘えたい、甘えたくない。
相反する気持ちを抱えて、一体どうしたいんだと問いかける。

大人になるって…何だろう。

思考の沼にハマって、叫び出したくなる気持ちを必死に抑える。
何もかも投げ出して、どこかに逃げることが出来たら良いのに。

でも。
きっと、大人になるって。
苦しくても、逃げないってことなんだ。



メールの着信音。

有紗からの返信に、蓋をしたはずの感情が再び浮き上がる。

反応があったことへの安堵と同時に、その内容への不安も押し寄せる。

ー凛ならそう言うと思った!これうちらの秘密ね!真由美にもナイショだよー

良かった。
拗れなくて。

でも。
凛なら…。
その言葉に小さな引っ掛かりを覚える。

私の何がわかるの?

その決めつけに、胸の中に得体の知れない黒い何かがじんわりと広がっていく。
そして、それはすぐに答えへと行き着く。

あぁ。
そうか。

私は、私を見せたことないんだ。

拒絶されることが怖くて。
否定されることに怯えて。

仮面を被り続けているのは、私だ。

傷付くことを恐れて、いつまでも自分を偽り続けてる。
私は、何て弱いんだろう。

こんな自分が。
大嫌い。

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