悪魔の王女と、魔獣の側近

桜咲かな

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第1話『アイリの卒業と、ディアの求婚』

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アイリは慌てて話を変えようとする。

「そ、そういう真菜ちゃんは、どうなの!?お兄ちゃんとは……」
「え?コランくん?相変わらずだけど」

『コラン』とはアイリの兄で、魔界の王子。未来の魔王である。
そして真菜は、高校の時からコランと付き合っていて、すでに将来を約束している。
甘々なアイリとディアとは逆に、真菜とコランの関係はピュアでサッパリとしている。

「コランくんが魔王になってから結婚する約束だから、何百年先だか分からないわ」
「じゃあ、真菜ちゃんは、これからどうするの?」
「コランくんを支えるには、まだまだ勉強が必要だし、魔界の専門学校に通おうかなって」

真菜は、コランの妃になる以前に、彼の側近を目指しているのだ。
アイリは、真直ぐ夢に向かって進む真菜を見て感心した。
同級生だったのに、すごく大人っぽく見えるのだ。
……その時。

バァン!!

アイリの部屋の扉が乱暴に開かれた。

「アイリ、真菜!!入るぞ~~!!」

許可の返事も待たずに、一人の少年が部屋に入ってきた。
悪魔特有の褐色肌に、紫の髪、赤の瞳。
見た目はアイリ、真菜と同年代で、高校生ほどの少年。
彼こそが、アイリの兄であり、未来の魔王『コラン』である。
コランとアイリは400くらい歳が離れているが、見た目年齢は同じくらいなのだ。
アイリは扉の方を見て叫んだ。

「お兄ちゃん、女子の部屋に勝手に入ってきちゃダメ~!!」
「え?なんだよ、いいじゃん!アイリはオレの妹だし、真菜はオレの嫁だし!」

コランはイケメンではあるが、底抜けに明るく無邪気で、言動が子供っぽい。
そんなコランを見て、スッと真菜が立ち上がった。どこか冷ややかな目線だ。

「ちょっと、コランくん。私、まだ嫁じゃないけど」
「あ、そっか!じゃあ、オレの『カノジョ』だな!」
「そうだっけ?」
「そうだろ!?オレ達、毎日ラブラブじゃん!!ラブラブファイヤーじゃん!!」
「ちょっと意味分かんない」
「そんな、真菜ぁ~!!今日も冷めてるな、でも大好きだ!!」
「もう……分かったから」

このカップルの会話は漫才のようになるが、結局はノロケで終わる。
コランの愛情表現はストレートだが、真菜は照れ隠しなのか、いつも冷めた態度で返すのだ。
そんな二人を見て微笑ましくなったアイリは、クスリと笑った。

「それで、お兄ちゃん。何か用なの?」
「ん?あ~~そうだ!父ちゃんが大事な話があるから、オレと一緒に部屋まで来いって」
「大事な話?」

アイリは思い当たる節がなくて、首を傾げた。
父ちゃん……つまり『魔王』が、息子と娘に『大事な話』とは、何だろうか。
真菜はアイリとコランの会話から、何か緊迫した空気を感じ取った。

「アイリちゃん、行ってきて。私、ここで待ってるから」
「うん。ごめんね、真菜ちゃん。少し待っててね」

真菜を部屋に残して、アイリとコランは魔王の部屋へと向かった。
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