魔族との契約婚、物理で解決中

冬風蓮

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第1章:共生生活編

この契約、クーリングオフできますか?

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最近、変な男にやたらと絡まれる。

「ねえ、運命感じない?」「なんか……君から、光が見える……」

ナンパというには切羽詰まりすぎてるし、宗教勧誘かと思えば妙に距離が近い。しまいにはバイト先の店長(妻子持ち)にまで変な目で見られ、ユイは思った。

(これ……全部、契約のせいじゃない!?)

脳内常駐型魔族・ダクエルは、今日も変わらずツンとすました声で言う。

『む。そこの者、なかなか整った顔立ちではないか。我に紹介してみぬか?』

「誰が紹介するかバカ!!」

どうやら、婚約契約を結んだことでユイの存在は“冥界的に魅力的”な何かにカテゴライズされているらしい。そのせいで変な男ばかり引き寄せ、かつ、ユイに対して「婚約者の加護(?)」が発動しているせいか、妙に惚れられやすくなっていた。

(もううざい!! この契約、クーリングオフしたい!!)



その日の依頼は、近所の神社の井戸から不気味な声が聞こえるというものだった。
もちろんユイは最初、断るつもりだった。契約がなければ、こんな依頼に首を突っ込む義理もない。

……が、

『やめておけ。あれは冥界でも忌避される“声の契約”の可能性がある』

というダクエルの珍しく真剣な声に、つい足を向けてしまった。

井戸の底には、古びた指輪がひとつ落ちていた。触れた瞬間、ユイの耳に甘ったるい囁きが流れ込む。

《誓って……くれる……よね……?》

「うっわ気持ち悪っ」

『契約が発動する前に破壊しろ!』

「よっしゃ!!」

その場にあった鉄柵を、素手で引っこ抜いた。
ダクエルが一瞬で加工して輪状にし、ナックルダスター風の武器に変える。

「言っとくけど、今日は機嫌悪いんだからね!!」

振り下ろされた鉄拳が、井戸の底にある契約陣をぶち破った。
風が巻き起こり、怨念とも契約ともつかない霧が霧散する。

『……ふう。今ので、我の魔力の残り、二割になった……』

「は!? また!?」

『すべてはおまえが拳で解決しようとするからだ!』

「でも一番手っ取り早いじゃん!!」

睨み合いの末、ユイはふと空を見上げた。
いつもより少し青が濃くて、蝉の声がうるさい。

「……でもさ。あたし、別に特別な力が欲しかったわけじゃないし」

『……』

「魔法とかって、もっとこう、キラキラしてるかと思ってた」

『……そうだな』

「けど、結局いつも、殴って終わってる」

ふっと笑って、ユイは歩き出す。
その背中を、ダクエルの声が追いかけた。

『……ユイ』

「んー?」

『……次に美形が現れたら、我にも紹介を頼むぞ』

「ほんと懲りないなあ、もう」

(了)
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