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第1章:共生生活編
この契約、クーリングオフできますか?
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最近、変な男にやたらと絡まれる。
「ねえ、運命感じない?」「なんか……君から、光が見える……」
ナンパというには切羽詰まりすぎてるし、宗教勧誘かと思えば妙に距離が近い。しまいにはバイト先の店長(妻子持ち)にまで変な目で見られ、ユイは思った。
(これ……全部、契約のせいじゃない!?)
脳内常駐型魔族・ダクエルは、今日も変わらずツンとすました声で言う。
『む。そこの者、なかなか整った顔立ちではないか。我に紹介してみぬか?』
「誰が紹介するかバカ!!」
どうやら、婚約契約を結んだことでユイの存在は“冥界的に魅力的”な何かにカテゴライズされているらしい。そのせいで変な男ばかり引き寄せ、かつ、ユイに対して「婚約者の加護(?)」が発動しているせいか、妙に惚れられやすくなっていた。
(もううざい!! この契約、クーリングオフしたい!!)
*
その日の依頼は、近所の神社の井戸から不気味な声が聞こえるというものだった。
もちろんユイは最初、断るつもりだった。契約がなければ、こんな依頼に首を突っ込む義理もない。
……が、
『やめておけ。あれは冥界でも忌避される“声の契約”の可能性がある』
というダクエルの珍しく真剣な声に、つい足を向けてしまった。
井戸の底には、古びた指輪がひとつ落ちていた。触れた瞬間、ユイの耳に甘ったるい囁きが流れ込む。
《誓って……くれる……よね……?》
「うっわ気持ち悪っ」
『契約が発動する前に破壊しろ!』
「よっしゃ!!」
その場にあった鉄柵を、素手で引っこ抜いた。
ダクエルが一瞬で加工して輪状にし、ナックルダスター風の武器に変える。
「言っとくけど、今日は機嫌悪いんだからね!!」
振り下ろされた鉄拳が、井戸の底にある契約陣をぶち破った。
風が巻き起こり、怨念とも契約ともつかない霧が霧散する。
『……ふう。今ので、我の魔力の残り、二割になった……』
「は!? また!?」
『すべてはおまえが拳で解決しようとするからだ!』
「でも一番手っ取り早いじゃん!!」
睨み合いの末、ユイはふと空を見上げた。
いつもより少し青が濃くて、蝉の声がうるさい。
「……でもさ。あたし、別に特別な力が欲しかったわけじゃないし」
『……』
「魔法とかって、もっとこう、キラキラしてるかと思ってた」
『……そうだな』
「けど、結局いつも、殴って終わってる」
ふっと笑って、ユイは歩き出す。
その背中を、ダクエルの声が追いかけた。
『……ユイ』
「んー?」
『……次に美形が現れたら、我にも紹介を頼むぞ』
「ほんと懲りないなあ、もう」
(了)
「ねえ、運命感じない?」「なんか……君から、光が見える……」
ナンパというには切羽詰まりすぎてるし、宗教勧誘かと思えば妙に距離が近い。しまいにはバイト先の店長(妻子持ち)にまで変な目で見られ、ユイは思った。
(これ……全部、契約のせいじゃない!?)
脳内常駐型魔族・ダクエルは、今日も変わらずツンとすました声で言う。
『む。そこの者、なかなか整った顔立ちではないか。我に紹介してみぬか?』
「誰が紹介するかバカ!!」
どうやら、婚約契約を結んだことでユイの存在は“冥界的に魅力的”な何かにカテゴライズされているらしい。そのせいで変な男ばかり引き寄せ、かつ、ユイに対して「婚約者の加護(?)」が発動しているせいか、妙に惚れられやすくなっていた。
(もううざい!! この契約、クーリングオフしたい!!)
*
その日の依頼は、近所の神社の井戸から不気味な声が聞こえるというものだった。
もちろんユイは最初、断るつもりだった。契約がなければ、こんな依頼に首を突っ込む義理もない。
……が、
『やめておけ。あれは冥界でも忌避される“声の契約”の可能性がある』
というダクエルの珍しく真剣な声に、つい足を向けてしまった。
井戸の底には、古びた指輪がひとつ落ちていた。触れた瞬間、ユイの耳に甘ったるい囁きが流れ込む。
《誓って……くれる……よね……?》
「うっわ気持ち悪っ」
『契約が発動する前に破壊しろ!』
「よっしゃ!!」
その場にあった鉄柵を、素手で引っこ抜いた。
ダクエルが一瞬で加工して輪状にし、ナックルダスター風の武器に変える。
「言っとくけど、今日は機嫌悪いんだからね!!」
振り下ろされた鉄拳が、井戸の底にある契約陣をぶち破った。
風が巻き起こり、怨念とも契約ともつかない霧が霧散する。
『……ふう。今ので、我の魔力の残り、二割になった……』
「は!? また!?」
『すべてはおまえが拳で解決しようとするからだ!』
「でも一番手っ取り早いじゃん!!」
睨み合いの末、ユイはふと空を見上げた。
いつもより少し青が濃くて、蝉の声がうるさい。
「……でもさ。あたし、別に特別な力が欲しかったわけじゃないし」
『……』
「魔法とかって、もっとこう、キラキラしてるかと思ってた」
『……そうだな』
「けど、結局いつも、殴って終わってる」
ふっと笑って、ユイは歩き出す。
その背中を、ダクエルの声が追いかけた。
『……ユイ』
「んー?」
『……次に美形が現れたら、我にも紹介を頼むぞ』
「ほんと懲りないなあ、もう」
(了)
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