上 下
8 / 18
第二章 契約開始編

一緒にお買い物

しおりを挟む
「ねえね、暁人サン。これも買いましょうよー」
 

 そう言って、咲良はカゴの中にどっさりとお菓子を入れた。
 どれどれ。チョコレートに、ポテトチップス、それにクッキーまで……。
 どんだけ食べんだよ、こいつ。


「却下だ」

「えーなんで。お菓子が一杯あれば盛り上がんじゃん」

「ダメなものはダメだ。つうか、こんな量いつ食べるんだよ?」

「夕食を食べたあと。それに、明日も一緒に食べることになるだろーし。すこーしぐらい多めに買うぐらい、いいじゃんか。俺が払うんだし」

「だとしてもだな……って、なんで俺が明日お前ん家に行く前提になってんだよ。今日いっぱい作るし、足りんだろ」

「え──」

 
 不満を口にしながら、咲良は唇を尖らせる。
 
「俺だって、バイトがあるんだ。しょっちゅうお前ん家に行くわけにはいかないんだよ。何回説明すればわかるんだ」

「何回説明されたって、納得できないものは納得できない」

「はぁ─、ガキかよ……」

「ガキでもいいし。暁人サンが構ってくれるなら」

「ほら、さっさと買い物を済ませないと日が暮れるぞ」

 大学生にもなって駄々をこねまくっている咲良を残し、さっさとお肉コーナーへと向かうのだった。



 色々とありつつも、ほぼ全ての買い物を済ませた。あとは──。

「ピーマンだけだな……」

 ぼそっと呟いた言葉に、咲良が間抜けな声を上げる。
 なんだ、と言いながら振り返ると、冷や汗をだらだらと垂らした咲良の姿があった。

「どうしたんだよ、咲良」

「いや、なんでもない」

 そう言いながら、咲良は俺から視線をそっと外す。
 もしかして。

「咲良、ピーマンが苦手なのか?」

「そんなわけ……っ」

 いつも飄々とした態度を貫いている咲良が声を荒げた。
 間違いない。こいつ、ピーマンが苦手だ。俺の弟たちとまったく同じ反応をしている。
 
「じゃあ、今日はピーマンの肉詰めだな」

「げ、やめてよ。暁人サン」


 こうして、俺と咲良の買い物は終了するのだった。
 
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:241pt お気に入り:3,405

サドオスと口説かれデート♡

BL / 完結 24h.ポイント:1,412pt お気に入り:30

ナニワのおハナくん!わくわく☆輪姦体験

BL / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:35

孤独を埋め合う吸血鬼と人間の話

269
BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:6

今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:33,435pt お気に入り:3,451

わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:33,848pt お気に入り:2,591

オネェな王弟はおっとり悪役令嬢を溺愛する

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:36,828pt お気に入り:2,583

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:18,587pt お気に入り:7,958

【完結】痴漢希望の匿名くん

BL / 完結 24h.ポイント:369pt お気に入り:214

【BL】僕(18歳)、イケメン吸血鬼に飼い慣らされる。

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:280

処理中です...