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哀しみリプレイ
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休み明けに出勤した柳は上司に呼び出され、衝撃的な事実を知らされる。
「未明に起きた殺人事件の現場はおまえの実家だ。ご両親と弟さんが犠牲になった」
これこそドラマではないのか。それとも、悪夢の中にいるのだろうか。
どこかぼんやりとした頭で、柳は身元確認のために病院へと向かい、変わり果てた三人と対面する。
「おい、蓮司、いつまで寝てんだ、仕事だろ。佳乃さんもなんでそんな顔してんだよ。ほら、和人、学校に遅れんぞ、早く起きろって……」
柳の呼びかけに、誰も反応しなかった。彼らは既に人ではなくなっていたから。
「なあ、起きろって、蓮司、佳乃さん、和人。なんで、なんで俺だけ、置いてきぼりなんだよ!」
血の繋がりはなくとも、柳にとって、彼らはかけがえのない家族であり、大切な存在だった。それを踏みにじられて、正気でいられるわけがなかった。
捜査は難航した。手掛かりとなる遺留品はいくつか残されていたが、どれも大量に市場に出回っているものばかりで、犯人に結びつく手掛かりにはならず、現場の指紋も前科者リストと一致しなかった。
被害者が身内ということもあり、柳は捜査から外され、自宅待機を命じられていた。しかし捜査状況が気になって毎日のように本部に顔を出し、一向に進まない状況に苛立ちを募らせていた。
そんなときだった。捜査に当たっていた刑事からこんな話を聞いたのは。
「どんな情報も調べ上げる凄い奴がいるらしいんだと。そいつとコンタクトを取るのは命懸けで、大金を必要とするが、そいつにかかれば、わからないものはないんだってさ」
「噂で聞いたことがある。裏で殺しもやってるって話だろ。関わりにならない方がいいぞ」
話を聞いて、柳は休暇を取った。身内をなくしたショックで体調を崩したと言えば、仕事のことは気にせずゆっくり休んでいいと言われた。柳が単独で動こうとしていることに誰一人気づかなかったのだ。
「よくここまでたどり着けたな、柳広哲」
情報屋のレイと対面するまでに、柳は何度となく危険な目に遭った。目隠しをされ、切られる、蹴られる、殴られるといった一通りの暴力を長時間受け続け、心身共に大きなダメージを負った。
「現役の刑事が嗅ぎ回っているって聞けば、誰だって警戒する。死なずに俺と対面出来たことは奇跡なんだぞ」
レイの隣には、前髪の長い若い男がいた。両手をポケットに突っ込んだまま、唇を歪め、傷だらけの柳の側にやってくる。そのまま柳の頭を踏みつけると、顔を近づけ、こんな言葉を放った。
「刑事さんがこんなところに来たらダメだよ。そんなに死にたいわけ?」
そう言ってクスクスと笑う。自分と対して変わらない年齢なのに、彼らには独特のオーラがあった。
「俺は、刑事としてここに来たわけじゃねえよ」
それでも精一杯刃向かってやる。柳の心はまだ死んではいなかった。
「いや、あんたは刑事だ。僕らが何をやって生きているか、知ってるよね?」
カチリという音と共に、鉄の塊を頭に押しつけられた。クスクスと笑いながら、男は左手で前髪をかきあげる。
はっとした。髪で隠れていた男の右目が灰色だったから。レイの相棒とされる殺し屋は、左右で目の色が違うオッドアイ。彼の素顔を見たものはいないと聞いていた。
「ほらね、僕のこと、よーく知ってる。生かすわけにはいかないよ」
どうやらここが限界か。柳が全てを諦めかけたとき、ふと、和人の最後の言葉が蘇った。
(コウ兄は正義の味方だよ。だから、悪い人は絶対捕まえてね)
挫けそうになっていた気持ちを奮い立たせ、柳は男の背後に悠然と佇むレイを見つめ、訴えた。
「情報屋のレイと殺し屋のオッドアイ。おまえらに目をつけられたら、生きて帰れねえことを承知でここまで来た」
柳が危ない橋を渡ってここに来たのは、和人達を殺した犯人を見つけ出したかったから。まだ何も始まっていない。だから終わっていいはずがない。
「殺す前に、俺の話を聞け!」
最後の最後まで決して諦めるな。
「それぐらいにしとけ、マキ」
レイが声が発するまでに、どれほど時間がかかったのか、柳はよく覚えていない。
「レイ、変なものでも食べた?」
「食ってねえ」
「まさか、助けるの? こいつ、刑事だよ」
「だからこそだよ。休暇中の刑事ならいくらでも情報を引っ張れる」
情報を引っ張る? いったい何の話だ?
動揺した柳を見て、レイはおかしそうに笑った。
「そんな驚いた顔をするなよ。おまえが俺にすがってきた理由はわかっている。知りたいなら教えてやってもいい。だが、タダというわけにはいかない」
レイは柳の目的をわかっているようだった。ここは潔く負けを認めるしかないだろう。
「もう金はねえよ。どうしてもっていうのなら、銀行強盗でもやるしかないが、捕まるリスクの方が高いぜ」
「俺がほしいのは金じゃない。おまえ自身だよ」
今度はレイが額に銃口を突きつけたが、柳は怯まなかった。
「その前に、俺が欲しい情報を全て寄越しやがれ。話はそれからだ」
柳から家族を奪った犯人だけは、この手で捕まえると決めていた。そのためなら、死神に魂を売ってもかまわない。
「いいだろう。その心意気に免じて、おまえが望むもの全てを与えてやる。命と引き替えにな」
「未明に起きた殺人事件の現場はおまえの実家だ。ご両親と弟さんが犠牲になった」
これこそドラマではないのか。それとも、悪夢の中にいるのだろうか。
どこかぼんやりとした頭で、柳は身元確認のために病院へと向かい、変わり果てた三人と対面する。
「おい、蓮司、いつまで寝てんだ、仕事だろ。佳乃さんもなんでそんな顔してんだよ。ほら、和人、学校に遅れんぞ、早く起きろって……」
柳の呼びかけに、誰も反応しなかった。彼らは既に人ではなくなっていたから。
「なあ、起きろって、蓮司、佳乃さん、和人。なんで、なんで俺だけ、置いてきぼりなんだよ!」
血の繋がりはなくとも、柳にとって、彼らはかけがえのない家族であり、大切な存在だった。それを踏みにじられて、正気でいられるわけがなかった。
捜査は難航した。手掛かりとなる遺留品はいくつか残されていたが、どれも大量に市場に出回っているものばかりで、犯人に結びつく手掛かりにはならず、現場の指紋も前科者リストと一致しなかった。
被害者が身内ということもあり、柳は捜査から外され、自宅待機を命じられていた。しかし捜査状況が気になって毎日のように本部に顔を出し、一向に進まない状況に苛立ちを募らせていた。
そんなときだった。捜査に当たっていた刑事からこんな話を聞いたのは。
「どんな情報も調べ上げる凄い奴がいるらしいんだと。そいつとコンタクトを取るのは命懸けで、大金を必要とするが、そいつにかかれば、わからないものはないんだってさ」
「噂で聞いたことがある。裏で殺しもやってるって話だろ。関わりにならない方がいいぞ」
話を聞いて、柳は休暇を取った。身内をなくしたショックで体調を崩したと言えば、仕事のことは気にせずゆっくり休んでいいと言われた。柳が単独で動こうとしていることに誰一人気づかなかったのだ。
「よくここまでたどり着けたな、柳広哲」
情報屋のレイと対面するまでに、柳は何度となく危険な目に遭った。目隠しをされ、切られる、蹴られる、殴られるといった一通りの暴力を長時間受け続け、心身共に大きなダメージを負った。
「現役の刑事が嗅ぎ回っているって聞けば、誰だって警戒する。死なずに俺と対面出来たことは奇跡なんだぞ」
レイの隣には、前髪の長い若い男がいた。両手をポケットに突っ込んだまま、唇を歪め、傷だらけの柳の側にやってくる。そのまま柳の頭を踏みつけると、顔を近づけ、こんな言葉を放った。
「刑事さんがこんなところに来たらダメだよ。そんなに死にたいわけ?」
そう言ってクスクスと笑う。自分と対して変わらない年齢なのに、彼らには独特のオーラがあった。
「俺は、刑事としてここに来たわけじゃねえよ」
それでも精一杯刃向かってやる。柳の心はまだ死んではいなかった。
「いや、あんたは刑事だ。僕らが何をやって生きているか、知ってるよね?」
カチリという音と共に、鉄の塊を頭に押しつけられた。クスクスと笑いながら、男は左手で前髪をかきあげる。
はっとした。髪で隠れていた男の右目が灰色だったから。レイの相棒とされる殺し屋は、左右で目の色が違うオッドアイ。彼の素顔を見たものはいないと聞いていた。
「ほらね、僕のこと、よーく知ってる。生かすわけにはいかないよ」
どうやらここが限界か。柳が全てを諦めかけたとき、ふと、和人の最後の言葉が蘇った。
(コウ兄は正義の味方だよ。だから、悪い人は絶対捕まえてね)
挫けそうになっていた気持ちを奮い立たせ、柳は男の背後に悠然と佇むレイを見つめ、訴えた。
「情報屋のレイと殺し屋のオッドアイ。おまえらに目をつけられたら、生きて帰れねえことを承知でここまで来た」
柳が危ない橋を渡ってここに来たのは、和人達を殺した犯人を見つけ出したかったから。まだ何も始まっていない。だから終わっていいはずがない。
「殺す前に、俺の話を聞け!」
最後の最後まで決して諦めるな。
「それぐらいにしとけ、マキ」
レイが声が発するまでに、どれほど時間がかかったのか、柳はよく覚えていない。
「レイ、変なものでも食べた?」
「食ってねえ」
「まさか、助けるの? こいつ、刑事だよ」
「だからこそだよ。休暇中の刑事ならいくらでも情報を引っ張れる」
情報を引っ張る? いったい何の話だ?
動揺した柳を見て、レイはおかしそうに笑った。
「そんな驚いた顔をするなよ。おまえが俺にすがってきた理由はわかっている。知りたいなら教えてやってもいい。だが、タダというわけにはいかない」
レイは柳の目的をわかっているようだった。ここは潔く負けを認めるしかないだろう。
「もう金はねえよ。どうしてもっていうのなら、銀行強盗でもやるしかないが、捕まるリスクの方が高いぜ」
「俺がほしいのは金じゃない。おまえ自身だよ」
今度はレイが額に銃口を突きつけたが、柳は怯まなかった。
「その前に、俺が欲しい情報を全て寄越しやがれ。話はそれからだ」
柳から家族を奪った犯人だけは、この手で捕まえると決めていた。そのためなら、死神に魂を売ってもかまわない。
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