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次回予告「再会」
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泣きじゃくる麻百合をなだめながら、コウはレイから渡されたカードキーで指定された部屋に入った。そこは高層階のスイートルームだった。
目を腫らした麻百合が、そそくさとトイレに向かう。その間、コウは窓際に向かい、カーテンを開け放った。ネオンサインが煌めく街が一望出来た。
「何やってんだ、俺……」
泣いている麻百合を見た瞬間、コウの中で何かがはじけた。胸が締めつけられ、無性に苛立った。
俺じゃねえ男の前で、そんな姿を晒すな。
誰にも見られたくなくて、ふたりきりになると、すぐに抱きしめた。麻百合は逃げようとしたが、コウはそれを許さなかった。
か細い声でなぜいなくなったのかと問われたが、ごめんとしか言えなかった。自分がいなくなって、ひとりなって死にたくなったと訴えられたとき、思わず唇を塞いだ。
そこから先は止まらなくなって、ひたすら求めた。温もりと息遣い、絡み合う熱が、全てを忘れさせてくれた。このまま抱いてしまいたいという欲が溢れ出したとき、ようやく我に返った。
麻百合の知ってる俺は、もういないのに。
そのとき、背後から視線を感じた。咄嗟に上着の内ポケットに入れてある拳銃に手をかける。
「お待たせ、柳」
麻百合の声だった。振り向いて、ほっと胸を撫で下ろす。
「ごめんね。久しぶりだなって、ちょっとだけ見てた」
はにかみながら笑う麻百合に目が眩んで、すぐさま抱き寄せる。
「柳……?」
「俺は柳じゃねえ。レイやマキと同じ、亡霊なんだよ」
別れる間際のマキとの会話が、ふと蘇ってきた。
***
「今夜だけだよ。ボスには黙っとくからね。わかってると思うけど、イチャつくのは程々にしてね」
車の中の麻百合に聞こえないように、マキは扉を閉めてから話し出す。明日からコウにGPSの監視がつくことを、彼も知っているのだ。
「レイが準備した部屋なら、当然仕掛けてあるよな」
盗聴とモニター監視。ずっと一緒に過ごしてきたから、彼らに見られるのは仕方ないと思えた。
「ごめんね、それは外せない。何かあったらレイの責任になるから。絶対言わないだろうけど、あいつ、色々ボスに掛け合ったりしたんだよ」
それは、花村との顔合わせのときに思い知った。
「うん、わかるよ」
「GPSは一生外れないと思っておいた方がいい。だから、もし気が変わって、死にたくなったらいつでも言って。責任持ってバラしてあげるし、金田さんには僕がついてあげるから」
「俺が死んだら、麻百合には誰もつかないって話じゃなかったか?」
「気に入ったから、金田さんのこと。誕プレ選んでくれたお礼も兼ねてだよ。勿論ずっとは無理だけどね」
マキが自分を気にかけてくれることを、嬉しく思った。最初の出会いは強烈だったけれど、あのときもマキはコウを助けてくれたから。
***
「カネモトさんやマキさんに聞いた。あのときはよくわからなかったけど、今はわかる」
麻百合はもう泣いていなかった。これから先、彼女が発する言葉が怖い。拒絶されても仕方ないのに、コウはとても怖かった。
「私の知ってる柳は、金髪だったし、いつもラフな服しか着てなかった。こんなカッコよくなかった」
麻百合の両手が背中に回る。いつになく、コウは緊張していた。
「それでもいいから、側にいて」
声を震わせながら、麻百合は言った。
「花梨のこと、好きなままでいい。花梨の代わりでいい。名前なんかなんでもいい。ひとりにしないで」
麻百合に感情をぶつけられ、コウの胸は高鳴った。マキが運転する車の中で泣いている麻百合を見たとき、死にたくなったと言った麻百合を見たとき、なぜ苛立ってしまったのか、わかったから。
「……あなたのことが、好きだから」
俯く麻百合の顎に手をかけ、こちらを向かせる。目を潤ませて、必死に涙を堪えているのがわかった。
「泣くなって言ったろ」
「泣いて、ないよ」
花梨との約束だからとか、そんなのはただの言い訳だ。コウの中でとっくに気持ちは出来上がっていた。
「麻百合、キスしていいか?」
「え!? あ、でも……」
有無を言わさずキスをした。見られていようが、どうしようが、そんなことはかまわなかった。
(今度はきちんと麻百合と向き合ってね。ふたりが幸せになることを願っているから)
花梨、おまえはわかっていたんだな。だから俺を生かした。この気持ちを無駄にしないために。
「花梨に対する気持ちは愛情じゃなかった。だから最期は看取れなかった。あいつはそのことをわかってた。こんな俺を許してくれて、背中を押してくれた」
コウは麻百合と向き合い、現状を話すことにした。
「生前、花梨は俺に麻百合を護らせるよう掛け合ってくれてた。だから俺はコウという名の亡霊になった。明日からは、正式にハナムラコーポレーションの人間になって、麻百合専属のボディーガードになる。元刑事という肩書きが気に食わないからって、GPSで監視されることが決まってっけど」
「そんな、そんなのって!?」
「いいんだ、それでも」
コウは一瞬迷ったが、すぐ開き直った。
みっともなくても、情けなくても、拒絶されても、花梨のときのように、ごまかすことはもうやめる。
「俺が愛してんのは、おまえなんだよ、麻百合。だから引き受けた。他の奴に護らせるのは嫌だったから」
麻百合が目を大きく見開く、驚きを隠せないとでも言うように。
「おまえを護るためなら、人殺しだってやる。嫌いになっていいし、憎んでもいい。それでも俺は、おまえを護ることをやめたりしないから」
それが、今の俺に出来る唯一のことだから。
目を腫らした麻百合が、そそくさとトイレに向かう。その間、コウは窓際に向かい、カーテンを開け放った。ネオンサインが煌めく街が一望出来た。
「何やってんだ、俺……」
泣いている麻百合を見た瞬間、コウの中で何かがはじけた。胸が締めつけられ、無性に苛立った。
俺じゃねえ男の前で、そんな姿を晒すな。
誰にも見られたくなくて、ふたりきりになると、すぐに抱きしめた。麻百合は逃げようとしたが、コウはそれを許さなかった。
か細い声でなぜいなくなったのかと問われたが、ごめんとしか言えなかった。自分がいなくなって、ひとりなって死にたくなったと訴えられたとき、思わず唇を塞いだ。
そこから先は止まらなくなって、ひたすら求めた。温もりと息遣い、絡み合う熱が、全てを忘れさせてくれた。このまま抱いてしまいたいという欲が溢れ出したとき、ようやく我に返った。
麻百合の知ってる俺は、もういないのに。
そのとき、背後から視線を感じた。咄嗟に上着の内ポケットに入れてある拳銃に手をかける。
「お待たせ、柳」
麻百合の声だった。振り向いて、ほっと胸を撫で下ろす。
「ごめんね。久しぶりだなって、ちょっとだけ見てた」
はにかみながら笑う麻百合に目が眩んで、すぐさま抱き寄せる。
「柳……?」
「俺は柳じゃねえ。レイやマキと同じ、亡霊なんだよ」
別れる間際のマキとの会話が、ふと蘇ってきた。
***
「今夜だけだよ。ボスには黙っとくからね。わかってると思うけど、イチャつくのは程々にしてね」
車の中の麻百合に聞こえないように、マキは扉を閉めてから話し出す。明日からコウにGPSの監視がつくことを、彼も知っているのだ。
「レイが準備した部屋なら、当然仕掛けてあるよな」
盗聴とモニター監視。ずっと一緒に過ごしてきたから、彼らに見られるのは仕方ないと思えた。
「ごめんね、それは外せない。何かあったらレイの責任になるから。絶対言わないだろうけど、あいつ、色々ボスに掛け合ったりしたんだよ」
それは、花村との顔合わせのときに思い知った。
「うん、わかるよ」
「GPSは一生外れないと思っておいた方がいい。だから、もし気が変わって、死にたくなったらいつでも言って。責任持ってバラしてあげるし、金田さんには僕がついてあげるから」
「俺が死んだら、麻百合には誰もつかないって話じゃなかったか?」
「気に入ったから、金田さんのこと。誕プレ選んでくれたお礼も兼ねてだよ。勿論ずっとは無理だけどね」
マキが自分を気にかけてくれることを、嬉しく思った。最初の出会いは強烈だったけれど、あのときもマキはコウを助けてくれたから。
***
「カネモトさんやマキさんに聞いた。あのときはよくわからなかったけど、今はわかる」
麻百合はもう泣いていなかった。これから先、彼女が発する言葉が怖い。拒絶されても仕方ないのに、コウはとても怖かった。
「私の知ってる柳は、金髪だったし、いつもラフな服しか着てなかった。こんなカッコよくなかった」
麻百合の両手が背中に回る。いつになく、コウは緊張していた。
「それでもいいから、側にいて」
声を震わせながら、麻百合は言った。
「花梨のこと、好きなままでいい。花梨の代わりでいい。名前なんかなんでもいい。ひとりにしないで」
麻百合に感情をぶつけられ、コウの胸は高鳴った。マキが運転する車の中で泣いている麻百合を見たとき、死にたくなったと言った麻百合を見たとき、なぜ苛立ってしまったのか、わかったから。
「……あなたのことが、好きだから」
俯く麻百合の顎に手をかけ、こちらを向かせる。目を潤ませて、必死に涙を堪えているのがわかった。
「泣くなって言ったろ」
「泣いて、ないよ」
花梨との約束だからとか、そんなのはただの言い訳だ。コウの中でとっくに気持ちは出来上がっていた。
「麻百合、キスしていいか?」
「え!? あ、でも……」
有無を言わさずキスをした。見られていようが、どうしようが、そんなことはかまわなかった。
(今度はきちんと麻百合と向き合ってね。ふたりが幸せになることを願っているから)
花梨、おまえはわかっていたんだな。だから俺を生かした。この気持ちを無駄にしないために。
「花梨に対する気持ちは愛情じゃなかった。だから最期は看取れなかった。あいつはそのことをわかってた。こんな俺を許してくれて、背中を押してくれた」
コウは麻百合と向き合い、現状を話すことにした。
「生前、花梨は俺に麻百合を護らせるよう掛け合ってくれてた。だから俺はコウという名の亡霊になった。明日からは、正式にハナムラコーポレーションの人間になって、麻百合専属のボディーガードになる。元刑事という肩書きが気に食わないからって、GPSで監視されることが決まってっけど」
「そんな、そんなのって!?」
「いいんだ、それでも」
コウは一瞬迷ったが、すぐ開き直った。
みっともなくても、情けなくても、拒絶されても、花梨のときのように、ごまかすことはもうやめる。
「俺が愛してんのは、おまえなんだよ、麻百合。だから引き受けた。他の奴に護らせるのは嫌だったから」
麻百合が目を大きく見開く、驚きを隠せないとでも言うように。
「おまえを護るためなら、人殺しだってやる。嫌いになっていいし、憎んでもいい。それでも俺は、おまえを護ることをやめたりしないから」
それが、今の俺に出来る唯一のことだから。
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