剣と銃がついたデカイ武器を振り回す女の子は好きですか!?

ウィリアム・ブロック

文字の大きさ
13 / 114

13話:レギオン結成⑥

しおりを挟む
 横浜衛士訓練校の廊下で風間と二水と一緒にシノアは歩いていた。

「レギオンメンバー探し順調ですわね」
「二人ともありがとう」
「まさか愛花さんと葉風さんにも了承して頂けなんて。葉風さんの狙撃凄かったですね」
「頼もしいわね」
「はい! とても」
「あとは二人ですね。あとできればアーセナルの方とも仲良くなりたいものですわ」
「アーセナル?」
「ええ、シノアさんはご存じなくて? レギオンに一人は必ずアーセナルを作るのが通例になっているんですのよ」
「戦術機は消耗品ですからね。かといって戦車一個分の武器をポンポン買い替えるわけにはいきませんし」

 ちなみに戦車一個分は最低八億だ。カスタム機によってはそれ以上の値段になる。それらは全て訓練校が負担している。国防に関する事なのだから当然だが、しかし戦術機の破損は戦場での死を意味する。なので意外と破損させて買い替えという事態は起きない。破損させた衛士は死んでいるからだ。

 よく破損させつつも生還する衛士といえば七草詩織くらいのものだろう。クロスハンドによる戦術機二刀流で敵を薙ぎ倒すが、その戦術機の使い方は荒く激しい。

「そんな事をすれば大抵の訓練校は破産してしまいますからね。定期メンテナンスで長持ちさせるんですの」
「そうなのね。アーセナル、あのエレーミアさんとかどうかしら?」

 アーセナルは衛士の武器、戦術機を開発、改良、メンテナンス、改造する者達の総称だ。レギオンに一人は専属のアーセナルがつき、メンテナンスを担当する。臨時で他のレギオンのものを担当するが、大抵は専属だ。

「良いかもしれませんね! 今度誘ってみましょう!」
「あと一人は放課後にみんなで相談して……」

 そこでシノアは言葉を止めた。
 戦術機の格納箱を持った二階堂胡蝶が歩いてきたのだ。顔には包帯が巻かれており、左目が見えない。

「ごきげんよう。傷の方は大丈夫かしら」
「……問題ない」

 胡蝶は包帯を取った。そこには傷ひとつなかった。

「保険医が過剰なだけ。私はすぐに傷は治る。急いでいるから退いてくれる?」
「それはごめんなさい。気をつけてね」

 完全装備の胡蝶を見送り、シノアは少し思考に耽った。
 胡蝶はシノア達と離れたあと、敷地内に停められた車の中に入る。するとそこには桃色の髪の衛士がいた。

「何でアンタがいるの?」
「GE.HE.NA.との契約の関係上、胡蝶ちゃんの実験と被っちゃったんだ」
「そう」

 胡蝶は不機嫌そうに鼻を鳴らして席についた。
 横浜衛士訓練校は反GE.HE.NA.と呼ばれている学校だ。GE.HE.NA.は非道な実験や倫理観を放棄した行為を繰り返す多国籍企業で多くの人に貢献しつつも多くの人達に嫌われている。

 反GE.HE.NA.を掲げる横浜衛士訓練校はその接触を禁じているほどだ。胡蝶も例外ではない。本来ならGE.HE.NA.とは関わりたくないが、元々GE.HE.NA.の所有物であった胡蝶は身柄を横浜衛士訓練校に移すのと交換に実験に参加するように交渉されてしまったのだ。

 多数の成果を出すGE.HE.NA.に、非人道だからといって胡蝶を保護することは横浜衛士訓練校といえどできなかった。
 だからこそ、胡蝶は真昼を嫌悪する。自分が嫌々GE.HE.NA.に従っているにも関わらず、真昼は自分からGE.HE.NA.に契約を持ちかけたと噂がある。

 自由を自ら放棄するなんて、正気とは思えない。だから真昼が嫌いだった。

「包帯取っちゃったんだ。先生悲しむよ」
「要らないわよ、あんなもの。検査だって不要」
「GE.HE.NA.の施設から解放されて半年でしょ? 自分の体を労わりなさい」
「ふん、どうせデータが取りたいだけでしょ」
「横浜衛士訓練校はそんなデータに興味はないよ」
「どうだか。じゃあ何のために私を保護したのよ。横浜の引き抜き癖は有名だからね、どうせ強い衛士が欲しいからに決まってる」
「歪んでるなぁ、もっと人の善意を信じないと」
「人の善意があれば私は強化衛士なんてやってないよ」

 目的地に着くと、そこにはデストロイヤーが多数存在していた。

『今より実験を開始する。デストロイヤーを攻撃するデストロイヤーを製作した。それがもし暴走した場合は全て処分しろ』

 スピーカーから男の声がする。

「了解」
「わかりました」

 檻から改造実験デストロイヤーが姿を現し、デストロイヤーを攻撃し始める。だがすぐに負けてしまい、殺されてしまう。
 そして次の獲物に、真昼と胡蝶が選ばれた。

「やるよ」
「うん、合わせるよ」

 二人はよく実験で一緒になった。だからお互いの闘い方はわかっている。二人はデストロイヤーの群れに飛び込むとお互いをカバーし合いながらデストロイヤーを始末していった。

『実験は終了だ。帰投する。車に戻れ』
「はいはい」

 そして車に戻って横浜衛士訓練校に戻る。そして次の実験に備えて体力を回復させておく。
 それが、胡蝶の日常だった。
 翌日の昼休み。
 胡蝶が一人で昼食を食べていた。
 のんびりと雑談をしながら食事をする生徒達を見ると、彼女は所詮上級階級の騎士なのだと思う。

 横浜衛士訓練校の衛士は騎士だ。戦場に立ち命を落とすことはあるが、そこには誇りと尊厳と自由がある。一人の人間として認められている。しかし胡蝶は違う。
 兵器だ。消耗品だ。戦術機でデストロイヤーを倒すための道具。そこに自由も尊厳もない。

 GE.HE.NA.の非道な実験は過酷なものだった。投薬に、デストロイヤー細胞の移植、更に神経の光ファイバー化、体を人間以外のものに作り替えられて、もう自分の体を自分だとは思えなくなっていた。

「あら、ごきげんよう。胡蝶さん」
「は?」

 胡蝶は柊シノアを睨みつける。

「ご一緒させてもらうわ」
「許可を取りなさいよ」
「ご一緒させてもらうわ」
「何だお前」
「じゃあ私達もご一緒させてもらおうかしら」
「失礼しますねー」

 シノアに引き続き風間も二水も胡蝶と同じ席に座る。

「貴方達……いいわ、なんでもない」

 シノアの強引さに苛立ちを覚えたが、諦めて食事に戻る。

「ところで、私たちはレギオンメンバーを集めているのよ」
「何、突然」
「私たちのレギオンに入らない?」
「入らない」
「そんな筈はない筈よ、貴方は心の中では入りたいと思っている筈。このバナナのように皮を被っているだけなのよ」
「バナナの皮で滑って死んでしまえ」

 単純に戦力としてみるなら胡蝶は強いだろう。GE.HE.NA.の外道な倫理観を無視した生体実験によって、筋力増加、反射神経の加速、防御結界の出力強化、傷の超高速再生を得た。

 結局、こいつらも力が目的か、と侮蔑する。
 胡蝶自身は求められない。力だけを求めている。そんなのに付き合っていられない。胡蝶は人付き合いをやめて、GE.HE.NA.からの命令だけを実行する機械になろうとした。

 ただのデストロイヤーを殺戮する機械。

「人が足りなくて困っているのよ。私達を助けると思って入ってみない? そうすれば貴方も一人で任務に行く必要もなくなり、危険度も減るはずよ」
(困っている、ですって?)

 その軽々しい物言いに苛立ちを覚える。

「困っているから助けろ? 出会ったばかりの私に? 貴方一体何様なの?」

 強い言葉が出た。それにシノアは真っ向から見つめてくる。

「私はね、胡蝶のさん。真昼様を救いたいの」
「アイツを?」
「真昼様は人々を助ける為に自身を蔑ろにして傷ついている。それをどうにかしたい。そのためには仲間を集めて、真昼様の仲間になる必要があるの。真昼様が自分を助けないなら私たちが助ける。お互いを助けるレギオンを作りたい」
「……」
「貴方の噂は知っているわ。事実かはわからないけど、もし事実なら助けが必要でしょう? どちらかが助けるだけじゃない。助け合おう、と私は言っているの」
「そう。立派な考えね。私は別に貴方の助けを必要としていないわ。じゃあね」

 シノアの言葉は胡蝶には信じられなかった。
 胡蝶はトレーを持って去っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

処理中です...