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60話:東京防衛戦③

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『こちら司令部より各衛士へ。今出現した特型ギガント級デストロイヤーを「Гゲー標的」と命名。ラージ級以上のレーザー威力によって航空機が無効化される。そこで作戦を変更して、人造量産型衛士を空中投下ではなく、地上突撃によってファイズトランセンデンスを発動してデストロイヤーを撃破する。ポイント0854まで後退、そこで全衛士によって人造量産型衛士の道を切り開く。繰り返す』

 その指令を受けて今流星と宮川高城も撤退を開始した。道中にデストロイヤーを破壊しながらアーマードコアⅱ部隊や衛士達を共にポイントに向かう。
 その流星の顔は青褪めていた。
 それを見た高城は心の中で(言いたくないわね)と思いながら口を開いた。

「流星、さっきの司令部の言葉を気にしているんでしょう?」
先程命令は『こちら司令部より各衛士へ。三種類の特型デストロイヤーが確認され、三箇所に砦を築いている。そのデストロイヤーは人や味方のデストロイヤーを捕食して進化する個体であり、早急な対処が求められる。そこでXM3型強化リリィである一ノ瀬真昼、宮川高城、松村優珂の場所に集合して、それぞれの衛士は砦に攻撃を開始せよ』というものだ。

「XM3強化型衛士である宮川高城という言葉に私は動揺してるの」

 流星は口を結び、そして言った。

「どういうこと? なんで高城ちゃんが強化衛士になっているの?」
「内容は簡単よ。前に横浜基地に運ばれた時に、過去の傷が原因で治療できなかったの。そこでXM3型強化衛士にして手術に耐えられるようにしようって事になったの」

 流星の顔が更に血の気がひく。

「じゃ、じゃあ、高城ちゃんは私のせいで……?」

 実際はそうじゃないのだが、真昼に口止めされている手前、慰めの言葉をかけることしかできない。

「私は今の私で満足しているわ。この体は凄いのよ? 何の副作用なく巨大な力を振るえる。流星を守れる。これ以上の幸せはないわ。だからそんな顔しないで」
「じゃ、じゃあ! 私もMX3強化手術受ける! そして高城ちゃんと一緒に戦う!」
「それは……」

 実際問題、最初のやり方が問題だっただけでメリットしかないのは確かだ。流星が手術を受けても別に問題となる事はない。むしろオートで発動する魔力リフレクターとリジェネレターのおかげで死ににくくなる。
 魔力保有量も莫大で、レアスキルも使い続けられる。

「ええ、良いと思うわ。一緒に戦いましょう。戦術機も使ってもらってね」
「あ、高城ちゃん。その戦術機」
「アクティブイーグル先行試作は卒業。この黄金の戦術機はフェネクス。第四世代のUCシリーズの機体よ」
「第四世代……扱うのが難しいと聞いたけど」
「そうんなことないわ。例えば」

 高嶺はフェネクスからシールドファンネル射出して、デストロイヤーを貫通させて破壊する。シールドファンネルは高城の手足のように動いて敵を殲滅する。

「圧倒的ね」
「凄い」

 流星は高城が強化衛士になった事を悲しく思っていた。しかし、この戦いの時代。いつ死ぬかわからない以上、戦力はあった方が良い。強い衛士の方が良い。だから高城の強化は喜ぶべきだったのだ。

「高城ちゃん、GE.HE.NA.に違法な研究とかされてない? 辛くない?」
「大丈夫よ。私は何もされてない。ただ強くなっただけ」
「わかった。信じるからね。高城ちゃん。辛くなったら頼ってね」
「ええ、信頼して。流星も無茶したら駄目よ」
「もちろん!」

 高城と流星は拳をぶつけ合った。
 視線が交差する。
 お互い信頼し合っている。
 私達は繋がっている。
 愛し合っているのだ。

「ここが、ポイントよね」

 合流ポイントには無数の衛士と人造量産型衛士。更にアーマードコアⅡ部隊が揃っていた。防衛軍もいて、戦車や物資の運搬などまで忙しく動いている。そして、その正面には特型ギガント級が見える。
 無数のビルより大きい圧倒的なデカさだ。

「デストロイヤー接近!! ラージ! ラージ!」
「衛士!! 攻撃急げ!!」
「行こう、高城ちゃん」
「ええ、流星」

 二人は攻めてきたラージ級の群れの迎撃に参加する。人造量産型衛士は射撃援護だ。ラージ級のレーザーを掻い潜りながら一閃する。爆散する。

「流星!」

 敵を倒した隙を狙ったラージ級を吹き飛ばしてシールドファンネルを突き刺してトドメを刺す。お互いの背中を守り合った完璧なコンビネーションだった。そして、ラージ級の中から異様な奴が現れる。

「三種類の特型デストロイヤーの一体!」

 デストロイヤーは咆哮しながら見えないレーザー発射した。幸いにも高嶺に向けられたもので、マギリフレクターが防御した。高城は大声で警告する。

「このデストロイヤーは見えない攻撃をしてきます! 注意を!」
「なら近接戦で!」

 流星はデストロイヤーの下に潜り込み、背後に回って刃を振り下ろす。ガギン!! っと音が鳴って弾かれる。その隙に流星のデストロイヤーのパンチを受けてビルは激突する。

「流星!!」
「いいが、ら!! こ、けき!」

 高城は流星の救助から敵の撃破に切り替えて、叶星の方を向いているデストロイヤーの腕を切り落とす。そのまま足を切り飛ばして、止めを刺そうとしたところで、マギリフレクターが発動して弾き飛ばされる。

「あと少しだったのに! 流星! 動ける?」
「……ごふっ」

 特型デストロイヤーは全方位攻撃をしていたのだ。それを防御せず受けた叶星は全身に穴が開いていた。右目、心臓、お腹、腕、足。血が吹き出して地面に倒れる。
 高城の中で何かが弾けた。

「このッ!!」

 フェネクスが変形して、蒼い光が噴出する。
 デストロイモードが発動する。

「消えろ!!」

 高城の蒼い光を纏った巨大な斬撃でヒュージは一瞬で破壊される。高嶺は走る。血塗れの流星の元に走る。

「流星!!」

 流星は死んでいた。
 心臓と右目と脳の一部を失ったのだ。生きているはずがない。
 どうする? どうすれば助けられる? 今から強化手術をしてもらう? けどそんな装置はどこに。
 どうしたら。どうしたら。どうしたら。
 高城は心臓から流れる血を見て、ある事を思いつく。

「お願い、私はどうなっても構わない。だから流星だけでも!!」

 その願いは呼応するようにフェネクスが光り輝く。
 高城は戦術機を自分の心臓より少し離れた場所に突き刺した。そして戦術機を引き抜いて、左手で傷口から心臓を掴んで引きちぎる。そして流星の心臓がある部分は落とし込む。
 高城は穴という穴から血が溢れて頭痛と吐き気で全身が辛かった。
 リジェネーターが心臓をさせているのがわかる。

(もしリジェネーターが私の心臓と流星の体を誤認するなら、蘇る。私の心臓で体を治してくれる筈。お願い。お願い)

 ぴくり、と流星の指が動いた。
 そして大きく血を吐いた。そして悲鳴を上げた。
 流星の体が膨張して破裂してを繰り返す。骨が折れて、再生して、膨張して突き出して、肉の中に食い込まれて、ゴリギャリゴギャガカキカと酷い音がする。
 そして全て収まると、そこには綺麗な少女がいた。

「らゅう、せい」

 高城が流星の顔に手を添えると、ゆっくりと目を覚ます。

「高城、ちゃん? あれ、私は一体」
「流星!!」

 高城は流星に抱きついた。

「よかった、よかった、成功した。生き返った!!」
「流星ちゃん? 苦しいよ?」
「うん! うん! ごめん! でも! このままで!」

 流星は高城が泣き止むまで抱きしめられるのだった。
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