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破滅の足音
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東京復興祭は成功した。
追悼式はもしっかりと行われて、失われた命を噛み締める。
そして生ある者は死者達の眠りの安寧を願った。
統一東京防衛連合の規則に基づき、真昼は東京に残ることになった。他のメンバーは横浜衛士訓練校へと帰宅している。
そんな時だった。
柊シノアが暴走したと報告があったのは。
原因はデストロイヤーであるらしい。デストロイヤーの対処の最中に負の魔力を浴びせる存在と接触。彼女の精神を暴走させて高い火力を得るというスキルと相性は最悪だった。
その結果、柊シノアは行方知れずに。
そして真昼には、その原因となったデストロイヤーを討ち滅ぼす任務が与えられた。
浮遊霊の夕立時雨は渋い顔をしながら呟く。
『穏やかじゃないね』
「考えても仕方がないです。一ノ瀬真昼、出撃します!」
真昼は深い森の中を高速で移動しながら目的のデストロイヤーを追っていた。
ふわふわと、真昼についている夕立時雨は継続する。
『真昼、来るよ』
「はい!」
デストロイヤーが姿を現した瞬間、すぐさま真昼はシューティングモードに切り替えた銃撃がデストロイヤーを捉えた。
デストロイヤーは狙いをつけさせないように左右に揺れながら逃げていく。しかしその程度で狙いを外すような時雨ではない。
ズガン! と一発。
思い一撃がデストロイヤーにクリィーンヒットした。そのまま飛行維持できずに地面に転がっていく。
真昼は追いつくとシューティングモードにしたまま、土煙が晴れるのを待った。
そしてその時、背後より鋭い一閃が美鈴を襲った。間一髪のところで回避したが、それでも普通に避けれる攻撃ではなかった。
その攻撃の主人は柊シノア。
だが狂気を瞳に宿して、髪が真っ白に染まっている。綺麗な黒髪が反対の白に。
『真昼はシノアを抑えてて。デストロイヤーはボクがやる』
「わかりました」
夕立時雨は浮遊霊の状態から、魔力を集めて実体化すると、デストロイヤーを倒しに向かう。真昼はシノアと戦術機を交わす。力任せに一撃に、思わず呻き声が漏れそうな衝撃を受ける。しかしそれで終わらない。
この場における優劣は明らか。
振るわれる戦術機を戦術機が受ける。受けて、流して、防いで、その繰り返し。
傍目にも明確に、真昼はシノアに対して劣勢を強いられていた。
本来ならば白兵戦を得意とする真昼。しかし度重なる負傷でその精細を欠いていた。
一方、シノアは白兵戦を得手とする身で、相対する女の力量には驚愕していた。
その速度、その威力、その技巧、どれも自らより数段上。事実、繰り出される戦術機を、真昼は捌ききれていない。それほどに柊シノアの攻撃は苛烈で、凄まじく、一切の容赦がなかった。
死闘の中で真昼の記憶によぎるのは、時雨の姿。
夕立時雨の剣技の質は近しいものではない。
細部に至るまで精錬され、全てが極限の練度に修まった騎士道の完成形。理想の姿と謳われた騎士の剣と、シノアの攻撃はある意味で対極だ。
洗練されながらも荒々しく、一撃毎に魂までも込めるかのような雄々しい剣は、生命の力を象徴するかのような熱を帯びている。
性質としては真逆に位置する両者の剣。だがその脅威度は同等であると真昼は判断した。
真昼は市のが人間であるという認識はとうに捨てている。
白兵戦において己はシノアに劣ると判断。しかして真昼とて何度も死線を勝ち抜いた猛者である。
未熟な身で刃を重ねた激闘の数々。強いられてきた苦戦は、英雄たる真昼は小さくない糧として身に刻まれている。
劣勢の中で真昼を支えるのは、愚直な修練の果てに得た鉄の心。
『心眼』と呼ばれる戦闘経験からの洞察力が、ここまでの戦闘を繋いでいる。
それはいうならば攻撃箇所の調整だ。
自ら致命的と呼べる隙を作ることにより、その一点に攻撃を限定させる。
通常ならば対応しきれぬ力量差でも、その攻撃が読めていれば凌ぐことが可能になる。
無論、それは致死の一撃を受ける危機に常時晒されることを意味する綱渡りだ。
それでも、即死を恐れて傷を負い消耗するよりも、生か死かの綱渡りにこそ活路を見出した。
戦意に衰えはない。勝機は必ずある。
現状においても、予測できるだけで二十合は隙を作り・・・・凌ぐことが出来ると判断して――
「――なら! これならどうですか!?」
突如としてよぎった悪寒。
感覚に従い真昼は退がり、そこにこれまでを超越した力の一撃が炸裂した。
――穿たれたのは水面の大地。表層を抉られ、剥き出し情報体がその姿を晒している。
粉砕されたその跡は、これまでと破壊の規模が違う。
寸前までとは剣の質が違いすぎる。重なっていた騎士の姿は見えない。
そこに連想されるのは狂戦士の暴威だった。
「オオオォオォォォオォオオオオオォオオオォォォ!!!!」
雄叫びを上げながら、渾身の力を込めた一撃が振り下ろされる。
隙の有無などお構いなしに繰り出される暴力は、これまでの心眼では推し量れない。
一切の行動を放棄して回避に専念。その衝撃は触れていないにも関わらず肉を斬り裂き血を流させた。
あまりにも性質が変わりすぎている。安定した走りを見せる高速車両が、突如として暴走列車に変貌したかのような切り替り。
これがシノアの本性か。先ほどまでは偽りか。いいや否だ、どちらも夢結の持つ技量の一端である。
容赦なく攻撃を繰り出すシノアであるが、彼は決して勝負を急いではいない。
これほどの激戦を演じながらシノアの頭にあるのはどこまでも愛なのだ。相手が倒されるよりも反撃こそを期待している。
つまりは試しているのだ。己の繰り出す一撃を相手がいかに攻略するか、その雄々しい姿を熱望して待っている。
本来それは驕りとも言い換えられる。己は試す側、つまり相手よりも上だと無条件で豪語しているのだから。
そうしたものは通常、戦いにおいて隙となるものなのだが、柊シノアのそれは極めて畸形である。
仮に、必殺を期した一撃を防がれたとする。
その時に感じるものとは何か。多くの場合、それは相手の力量に対する驚愕か、誇りに泥を塗られたことへの怒りだろう。
だが柊シノアの場合、それは期待に応えてくれた相手への歓喜と、自らを向上させようとする奮起となる。
よくぞ防いだ素晴らしい。ならば己もより強く在らねば、と。
常識を外れた思考回路は、しかし戦闘に臨む心として一つの理想に到達している。
なにせこれ、折れることを知らない。如何なる反撃を受けようと怯まず、奮い立って更なる反撃を繰り出すのだから。
課す試練には手加減というものがない。生半可な攻勢では試練となり得ないと感じており、結果として隙がなくなる。
勝負を急いでいないからと、その現状に甘えようものならば即座に戦術を切り替える。緩むことを相手に許さない。
そして苛烈がすぎるその試練に付いてこれなくなった者に待つのは、ただ無残な敗北である。
「くっ――――!」
漏れた苦悶は狂わされた計算へ向けたものか。
もはや先までの心眼は通用しない。今の夢結の力は真昼の予測を超えている。
であるなら、先程よりも真昼は追い詰められているのかといえば、それも異なる。
技も戦術もなく振るわれる暴力は、まさに狂戦士のそれ。
全てを力に割り振った一撃は凄まじい。だが引き換えにそれまでの洗練された技の冴えは失われている。
突破口はある。暴れまわる狂戦士ならば、そのようにいなせば良い。すでに隙は見出している。
そう、隙は存在しているのだ――見え透いているほどに。
洞察している、これは誘いだと。
忘れてはならない。最初こそ柊シノアは狂化の檻に囚われていたが、今やそれは理性が包み込み、あくまで合理的な判断の下、自らの戦略に従って手法を変えているのだ。
突破可能な隙を自ら作り、敵にそこを攻撃するよう誘導する。他ならぬ真昼自身が用いていた戦術だ。
ならば誘いに乗らなければ、というのは甘い見通しだ。シノアの暴威は強力無比。迂闊な攻め口ならば容易く叩き潰される。
目に見えた突破口は、裏を返せばそれ以外の道が存在しないことを意味している。反撃を考えれば、結局はそこしかない。
そしてシノアの気質を考えるに、恐らくそれは更なる苦難の道へと通じている。そこに乗るのが正しいか、真昼は判断しかねている。
危険であると経験は告げる。
しかしこのまま徒に消耗を強いられるのも得策ではない。
進むか、退くか。迫られる決断に真昼の意思が揺れる。
何度も。
何度も何度も。
何度も何度も何度も。
感情を叩きつけるように刃が振るわれる。
「どうして! どうして! どうしてどうしてどうして!」
「何を言いたいのかわからないよ! 叫んでばかりで!」
「どうして時雨お姉様なのですか!? 姉妹誓約を結ぶために努力しました! 貴方に好かれようと全力で自分を磨きました! なのにどうして貴方は時雨お姉様ばかり見るのですか!?」
予想外の返答に真昼の対処が遅れる。
真昼はシノアから腹に蹴りをもらい吹き飛ばされる。そして馬乗りになり、首を絞められる。
「そんなにお姉様が好きですか? ええ、私も好きですよお姉様こと愛してます。真昼お姉様のことなら誰にも負けるつもりはありませんですがあの女は別ですいつもいつも欲しい笑顔ばかり掠めっていく。私だって笑って欲しいのに。私にだって笑顔を向けて欲しいのにどうしてあの人なんですか」
「ぐっあが」
真昼はシノアの両腕を掴んで引きちぎる。反撃が来ると予想したシノアは大きく体を逸らすが、何もこなかった。
「それはね、まだ何も知らなかったからだよ。私は貴方のことを何も知らない。貴方は私のことを知っているかも知れないけど私は何も知らないんだ。ごめんね。頑張ってくれていたんだよね」
「ああ、あああああっ」
ラプラスによる負の魔力の浄化によって、シノアは正気を取り戻していく。涙を流しながら、シノアは、顔を掻きむしる。
それを真昼は抱きしめる。
「ああ、何で私は罪深いことを」
「いや、いい機会になったよ。私が貴方にしてあげられることは鍛えることだけじゃないみたい。だから、これで良かったんだ」
シノアは泣きじゃくりながら真昼の胸の中に飛び込む。
少しすると時雨の方もデストロイヤーを討滅したようで、これで小さな異変は終わった。しかし、再び東京に何かが起きようとしていた
追悼式はもしっかりと行われて、失われた命を噛み締める。
そして生ある者は死者達の眠りの安寧を願った。
統一東京防衛連合の規則に基づき、真昼は東京に残ることになった。他のメンバーは横浜衛士訓練校へと帰宅している。
そんな時だった。
柊シノアが暴走したと報告があったのは。
原因はデストロイヤーであるらしい。デストロイヤーの対処の最中に負の魔力を浴びせる存在と接触。彼女の精神を暴走させて高い火力を得るというスキルと相性は最悪だった。
その結果、柊シノアは行方知れずに。
そして真昼には、その原因となったデストロイヤーを討ち滅ぼす任務が与えられた。
浮遊霊の夕立時雨は渋い顔をしながら呟く。
『穏やかじゃないね』
「考えても仕方がないです。一ノ瀬真昼、出撃します!」
真昼は深い森の中を高速で移動しながら目的のデストロイヤーを追っていた。
ふわふわと、真昼についている夕立時雨は継続する。
『真昼、来るよ』
「はい!」
デストロイヤーが姿を現した瞬間、すぐさま真昼はシューティングモードに切り替えた銃撃がデストロイヤーを捉えた。
デストロイヤーは狙いをつけさせないように左右に揺れながら逃げていく。しかしその程度で狙いを外すような時雨ではない。
ズガン! と一発。
思い一撃がデストロイヤーにクリィーンヒットした。そのまま飛行維持できずに地面に転がっていく。
真昼は追いつくとシューティングモードにしたまま、土煙が晴れるのを待った。
そしてその時、背後より鋭い一閃が美鈴を襲った。間一髪のところで回避したが、それでも普通に避けれる攻撃ではなかった。
その攻撃の主人は柊シノア。
だが狂気を瞳に宿して、髪が真っ白に染まっている。綺麗な黒髪が反対の白に。
『真昼はシノアを抑えてて。デストロイヤーはボクがやる』
「わかりました」
夕立時雨は浮遊霊の状態から、魔力を集めて実体化すると、デストロイヤーを倒しに向かう。真昼はシノアと戦術機を交わす。力任せに一撃に、思わず呻き声が漏れそうな衝撃を受ける。しかしそれで終わらない。
この場における優劣は明らか。
振るわれる戦術機を戦術機が受ける。受けて、流して、防いで、その繰り返し。
傍目にも明確に、真昼はシノアに対して劣勢を強いられていた。
本来ならば白兵戦を得意とする真昼。しかし度重なる負傷でその精細を欠いていた。
一方、シノアは白兵戦を得手とする身で、相対する女の力量には驚愕していた。
その速度、その威力、その技巧、どれも自らより数段上。事実、繰り出される戦術機を、真昼は捌ききれていない。それほどに柊シノアの攻撃は苛烈で、凄まじく、一切の容赦がなかった。
死闘の中で真昼の記憶によぎるのは、時雨の姿。
夕立時雨の剣技の質は近しいものではない。
細部に至るまで精錬され、全てが極限の練度に修まった騎士道の完成形。理想の姿と謳われた騎士の剣と、シノアの攻撃はある意味で対極だ。
洗練されながらも荒々しく、一撃毎に魂までも込めるかのような雄々しい剣は、生命の力を象徴するかのような熱を帯びている。
性質としては真逆に位置する両者の剣。だがその脅威度は同等であると真昼は判断した。
真昼は市のが人間であるという認識はとうに捨てている。
白兵戦において己はシノアに劣ると判断。しかして真昼とて何度も死線を勝ち抜いた猛者である。
未熟な身で刃を重ねた激闘の数々。強いられてきた苦戦は、英雄たる真昼は小さくない糧として身に刻まれている。
劣勢の中で真昼を支えるのは、愚直な修練の果てに得た鉄の心。
『心眼』と呼ばれる戦闘経験からの洞察力が、ここまでの戦闘を繋いでいる。
それはいうならば攻撃箇所の調整だ。
自ら致命的と呼べる隙を作ることにより、その一点に攻撃を限定させる。
通常ならば対応しきれぬ力量差でも、その攻撃が読めていれば凌ぐことが可能になる。
無論、それは致死の一撃を受ける危機に常時晒されることを意味する綱渡りだ。
それでも、即死を恐れて傷を負い消耗するよりも、生か死かの綱渡りにこそ活路を見出した。
戦意に衰えはない。勝機は必ずある。
現状においても、予測できるだけで二十合は隙を作り・・・・凌ぐことが出来ると判断して――
「――なら! これならどうですか!?」
突如としてよぎった悪寒。
感覚に従い真昼は退がり、そこにこれまでを超越した力の一撃が炸裂した。
――穿たれたのは水面の大地。表層を抉られ、剥き出し情報体がその姿を晒している。
粉砕されたその跡は、これまでと破壊の規模が違う。
寸前までとは剣の質が違いすぎる。重なっていた騎士の姿は見えない。
そこに連想されるのは狂戦士の暴威だった。
「オオオォオォォォオォオオオオオォオオオォォォ!!!!」
雄叫びを上げながら、渾身の力を込めた一撃が振り下ろされる。
隙の有無などお構いなしに繰り出される暴力は、これまでの心眼では推し量れない。
一切の行動を放棄して回避に専念。その衝撃は触れていないにも関わらず肉を斬り裂き血を流させた。
あまりにも性質が変わりすぎている。安定した走りを見せる高速車両が、突如として暴走列車に変貌したかのような切り替り。
これがシノアの本性か。先ほどまでは偽りか。いいや否だ、どちらも夢結の持つ技量の一端である。
容赦なく攻撃を繰り出すシノアであるが、彼は決して勝負を急いではいない。
これほどの激戦を演じながらシノアの頭にあるのはどこまでも愛なのだ。相手が倒されるよりも反撃こそを期待している。
つまりは試しているのだ。己の繰り出す一撃を相手がいかに攻略するか、その雄々しい姿を熱望して待っている。
本来それは驕りとも言い換えられる。己は試す側、つまり相手よりも上だと無条件で豪語しているのだから。
そうしたものは通常、戦いにおいて隙となるものなのだが、柊シノアのそれは極めて畸形である。
仮に、必殺を期した一撃を防がれたとする。
その時に感じるものとは何か。多くの場合、それは相手の力量に対する驚愕か、誇りに泥を塗られたことへの怒りだろう。
だが柊シノアの場合、それは期待に応えてくれた相手への歓喜と、自らを向上させようとする奮起となる。
よくぞ防いだ素晴らしい。ならば己もより強く在らねば、と。
常識を外れた思考回路は、しかし戦闘に臨む心として一つの理想に到達している。
なにせこれ、折れることを知らない。如何なる反撃を受けようと怯まず、奮い立って更なる反撃を繰り出すのだから。
課す試練には手加減というものがない。生半可な攻勢では試練となり得ないと感じており、結果として隙がなくなる。
勝負を急いでいないからと、その現状に甘えようものならば即座に戦術を切り替える。緩むことを相手に許さない。
そして苛烈がすぎるその試練に付いてこれなくなった者に待つのは、ただ無残な敗北である。
「くっ――――!」
漏れた苦悶は狂わされた計算へ向けたものか。
もはや先までの心眼は通用しない。今の夢結の力は真昼の予測を超えている。
であるなら、先程よりも真昼は追い詰められているのかといえば、それも異なる。
技も戦術もなく振るわれる暴力は、まさに狂戦士のそれ。
全てを力に割り振った一撃は凄まじい。だが引き換えにそれまでの洗練された技の冴えは失われている。
突破口はある。暴れまわる狂戦士ならば、そのようにいなせば良い。すでに隙は見出している。
そう、隙は存在しているのだ――見え透いているほどに。
洞察している、これは誘いだと。
忘れてはならない。最初こそ柊シノアは狂化の檻に囚われていたが、今やそれは理性が包み込み、あくまで合理的な判断の下、自らの戦略に従って手法を変えているのだ。
突破可能な隙を自ら作り、敵にそこを攻撃するよう誘導する。他ならぬ真昼自身が用いていた戦術だ。
ならば誘いに乗らなければ、というのは甘い見通しだ。シノアの暴威は強力無比。迂闊な攻め口ならば容易く叩き潰される。
目に見えた突破口は、裏を返せばそれ以外の道が存在しないことを意味している。反撃を考えれば、結局はそこしかない。
そしてシノアの気質を考えるに、恐らくそれは更なる苦難の道へと通じている。そこに乗るのが正しいか、真昼は判断しかねている。
危険であると経験は告げる。
しかしこのまま徒に消耗を強いられるのも得策ではない。
進むか、退くか。迫られる決断に真昼の意思が揺れる。
何度も。
何度も何度も。
何度も何度も何度も。
感情を叩きつけるように刃が振るわれる。
「どうして! どうして! どうしてどうしてどうして!」
「何を言いたいのかわからないよ! 叫んでばかりで!」
「どうして時雨お姉様なのですか!? 姉妹誓約を結ぶために努力しました! 貴方に好かれようと全力で自分を磨きました! なのにどうして貴方は時雨お姉様ばかり見るのですか!?」
予想外の返答に真昼の対処が遅れる。
真昼はシノアから腹に蹴りをもらい吹き飛ばされる。そして馬乗りになり、首を絞められる。
「そんなにお姉様が好きですか? ええ、私も好きですよお姉様こと愛してます。真昼お姉様のことなら誰にも負けるつもりはありませんですがあの女は別ですいつもいつも欲しい笑顔ばかり掠めっていく。私だって笑って欲しいのに。私にだって笑顔を向けて欲しいのにどうしてあの人なんですか」
「ぐっあが」
真昼はシノアの両腕を掴んで引きちぎる。反撃が来ると予想したシノアは大きく体を逸らすが、何もこなかった。
「それはね、まだ何も知らなかったからだよ。私は貴方のことを何も知らない。貴方は私のことを知っているかも知れないけど私は何も知らないんだ。ごめんね。頑張ってくれていたんだよね」
「ああ、あああああっ」
ラプラスによる負の魔力の浄化によって、シノアは正気を取り戻していく。涙を流しながら、シノアは、顔を掻きむしる。
それを真昼は抱きしめる。
「ああ、何で私は罪深いことを」
「いや、いい機会になったよ。私が貴方にしてあげられることは鍛えることだけじゃないみたい。だから、これで良かったんだ」
シノアは泣きじゃくりながら真昼の胸の中に飛び込む。
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