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6:不信感
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テオドールが退室し、国王夫妻だけが部屋に残り、どこか重たい空気になっていた。
「陛下はテオドールに冷たすぎるのではないですか? ご自身の御子ではありませんか」
アルフレッドは眉をひそめた。
クラウディアに言った言葉と似たような言葉を返されるとは思いもしなかった。
「では、なぜ君はティオゾ伯爵にそう普通に接しているのだ。憎くはないのか? 」
「それを貴方が言うのですね」
クラウディアは嘲笑をした。
「憎む相手が違いますわ。子に罪はありませんもの。国王の子ですもの、相応に愛情は向けてもおかしくないのでは? 」
刺々しいもの言いにアルフレッドは押し黙った。
クラウディアが誰を怨んでいるのか、誰を憎く思っているのか、そんなことはアルフレッドが一番知っている。
だが、彼女がテオドールを全く憎んでいないというのも嘘だ。少なくともはじめの頃は憎悪の感情があったはずだ。
「……俺も君が産んだ子なら誰でも愛せる」
「まるで私が不貞をはたらいているとでもいいたげですね。誰が貴方の子じゃないのかしら? やはり、一番にていない王太子かしら?」
「ディア! いい加減にしないか! あの子は君と俺の子だ。誰も疑ってなどいない」
「……少し子供染みたことをいいましたわ。きっと疲れていますの、先に休みます」
クラウディアは立ち上がり、寝室に消えていった。
王太子のルイ=クロードとティオゾ伯爵ジャン=テオドールとは一年しか歳の差がない。
つまるところ、アルフレッドはクラウディアが出産中にオートゥイユ夫人と関係を持ったのだ。
その事で一時期、王妃との不仲や王妃の子は別の種であるなど下衆な勘繰りをするものもいた。それをさらに助長させたのが、クロードとテオドールの見た目だった。
クロードは王妃に似ており、ブロンドヘアにグリーンの瞳をした愛らしい幼児であった。
一方のテオドールは、母親のオートゥイユ夫人に似た豊かな黒髪に国王と同じアンバー色のウルフアイズで、国王にひどく似ていた。
その為、一時、クロードは国王の子ではなく王妃が不貞をはたらいて産んだ子であるとまことしやかに語られた。
そんな噂は国王がクロードを溺愛していることですぐに消えたが、未だにそのように考えている者もいる。
「クロードは君と俺の子だ。それは一番、君が知っていることではないか。君が信じないで誰が信じるというのだ」
クラウディアの不貞はなかった。それは側で長く使えている侍女やリゼットも証言している。それに確かに初夜では処女であった。
クラウディアは隣国の王家の出だ。跡継ぎを産む責務の重大性は承知しており、それに励んでいた。彼女が他の男と寝所を共にできる暇などなかったとアルフレッドは知っている。
「君を不信にさせたのは俺のせいだ」
クラウディアのいない部屋で一人懺悔した。
彼女は彼をゆるすことも罰することもせずに生ぬるく不安定な地獄に投げ捨てたのだ。
「陛下はテオドールに冷たすぎるのではないですか? ご自身の御子ではありませんか」
アルフレッドは眉をひそめた。
クラウディアに言った言葉と似たような言葉を返されるとは思いもしなかった。
「では、なぜ君はティオゾ伯爵にそう普通に接しているのだ。憎くはないのか? 」
「それを貴方が言うのですね」
クラウディアは嘲笑をした。
「憎む相手が違いますわ。子に罪はありませんもの。国王の子ですもの、相応に愛情は向けてもおかしくないのでは? 」
刺々しいもの言いにアルフレッドは押し黙った。
クラウディアが誰を怨んでいるのか、誰を憎く思っているのか、そんなことはアルフレッドが一番知っている。
だが、彼女がテオドールを全く憎んでいないというのも嘘だ。少なくともはじめの頃は憎悪の感情があったはずだ。
「……俺も君が産んだ子なら誰でも愛せる」
「まるで私が不貞をはたらいているとでもいいたげですね。誰が貴方の子じゃないのかしら? やはり、一番にていない王太子かしら?」
「ディア! いい加減にしないか! あの子は君と俺の子だ。誰も疑ってなどいない」
「……少し子供染みたことをいいましたわ。きっと疲れていますの、先に休みます」
クラウディアは立ち上がり、寝室に消えていった。
王太子のルイ=クロードとティオゾ伯爵ジャン=テオドールとは一年しか歳の差がない。
つまるところ、アルフレッドはクラウディアが出産中にオートゥイユ夫人と関係を持ったのだ。
その事で一時期、王妃との不仲や王妃の子は別の種であるなど下衆な勘繰りをするものもいた。それをさらに助長させたのが、クロードとテオドールの見た目だった。
クロードは王妃に似ており、ブロンドヘアにグリーンの瞳をした愛らしい幼児であった。
一方のテオドールは、母親のオートゥイユ夫人に似た豊かな黒髪に国王と同じアンバー色のウルフアイズで、国王にひどく似ていた。
その為、一時、クロードは国王の子ではなく王妃が不貞をはたらいて産んだ子であるとまことしやかに語られた。
そんな噂は国王がクロードを溺愛していることですぐに消えたが、未だにそのように考えている者もいる。
「クロードは君と俺の子だ。それは一番、君が知っていることではないか。君が信じないで誰が信じるというのだ」
クラウディアの不貞はなかった。それは側で長く使えている侍女やリゼットも証言している。それに確かに初夜では処女であった。
クラウディアは隣国の王家の出だ。跡継ぎを産む責務の重大性は承知しており、それに励んでいた。彼女が他の男と寝所を共にできる暇などなかったとアルフレッドは知っている。
「君を不信にさせたのは俺のせいだ」
クラウディアのいない部屋で一人懺悔した。
彼女は彼をゆるすことも罰することもせずに生ぬるく不安定な地獄に投げ捨てたのだ。
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